|
2012.12.15-17 「原子力安全に関する福島閣僚会議」 |
国際原子力機関(IAEA)が今月、2012年12月15日から17日の期間、福島県郡山市において「原子力安全に関する福島閣僚会議」を開く。私たちは、史上最悪の原発事故が起きた地、福島でさらなる原発の推進を議論しようとする本会議に対して強い憤りを表明するとともに会議の中止を求めるものである。
IAEAは会議後に福島県と共に、県内の健康管理と除染についてのプロジェクトを立ち上げるとしており、天野・IAEA事務局長は「福島事故の教訓を世界と共有する」と語っている(朝日新聞デジタル版12月2日付)。だが、この「教訓」とは一体何か?福島第一原発の事故は収束の見通しすらついてはいない。今なお大気中だけでも毎時1000万bqもの放射性物質が放出され続け、廃炉には30年とも40年ともいわれる膨大な時間が必要な状況である。こうした状況の中で原発そのものへの反省もなく、事故の責任や避難している人々への補償についてもうやむやにしたままに行われる「福島事故の教訓を生かす」会議とは結局のところ、「より安全な原発」という更なる原発政策の推進を図ることに他ならない。
福島は原発事故の「教訓」のための場所ではない。190万余の人々が原発事故による放射線の脅威のもと、東日本大震災の復興と生活の再建に日々苦闘している地である。そうした人々の生活を破壊し、長期にわたる放射線の被害をもたらした国、電力会社、原発メーカーそして国際的な原子力複合体が過酷事故だけでは飽き足らず、史上最悪の原発事故が起きた福島の地において原発政策の継続を世界に向けてアピールするのであるならば、これほど犯罪的、非人道的な行為はないであろう。今、真に必要なことは福島事故から原発の真実を学ぶことである。そのうえで事故の原因と責任を明らかにし、国、電力会社、原発メーカーの猛省を得ることである。そして、何より原発災害で避難を余儀なくされている16万人の生活の再建を保障すること、また福島県及び近隣諸県民の健康被害を調査し必要な措置を講じることである。
IAEAをはじめとする国際機関、日本政府が本来行うべきことは、世界が原発(核発電)を放棄することに積極的なイニシアチブを発揮することである。それこそが、スリーマイル、チェルノブイリそしてフクシマという原発事故の歴史から得るべき唯一の「教訓」である。原発はウランの採掘、通常の運転時における労働者及び近隣住民の被ばく、そして事故の時の被ばく、さらに子孫に負の遺産を遺すという無数の犠牲の上においてはじめて存在しうる発電である。差別と搾取を内包する一方、原子力複合体に莫大な利益をもたらすこの不平等かつ非人間的なテクノロジーを私たちは今こそ廃絶するべきである。福島事故を利用し、福島の人々の尊厳を踏みにじる今回のIAEA国際会議の開催中止を強く求める。
2012年12月13日
No Nukes Asia Actions-Japan ( NNAA-J)
事務局長 崔 勝久
|
|