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―抗 議 声 明― |
株式会社 日本製鋼所 殿
世界を震撼させた福島第一原子力発電所の事故から、はや1年半が経過しました。
今、国家及び電力・原子力業界は、想定外という自然界からの手痛い警告を受けたにもかかわらず、誰一人としてその責任を取ろうとはせず、命の問題をないがしろにして、なかば強制的ともいえる原発の再稼働を推し進め、中断した建設の再開をもくろむなど、そこには反省のかけらも見受けられません。
己の利益を追求して、経済を最優先させたところで、母なる大地であるかけがえのないこの地球の存在なくしては、誰一人として生きていくことはできません。
この宇宙にあって、地球上の生きとし生けるもの全ての生命活動を司る太陽は、核エネルギーという人口の太陽に疎外されながらも変転することなく、今日も頭上に輝き、地球はそのエネルギーに支えられながら、寸部の狂いもなく、自転・公転し、自然の法則ともいうべき秩序を保っています。
そして、地球に育まれた自然のものすべては、私たち人類にとって必要不可欠な存在であり、お互いが助けたり、助けられたりという相互扶助の関係を保って、絶妙なバランスの中で命をつないでいます。
さらに、私たちの生活は、計り知れない自然からの恩恵という様々なシステムに依存して、成り立っております。
そのような秩序だった自然の仕組みに対して、人類の勝手な都合により、それらを作り替えたり、破壊したりする行為など、絶対に許されるものではありません。
ましてや、物質の最小の単位と考えられ、ある意味では、命の根源とも解釈できる原子を破壊する行為は、人間の体を原子としてたとえるなら、五体をバラバラに引き裂き、死に至らしめる殺人行為に等しく、到底容認できるものではありません。
ウランやプルトニウムの原子核分裂(破壊)では、生物にとって極めて有害な放射線が放出され、その放射線にさらされた細胞の中の遺伝子は深くダメージを受け続けます。
結果、その影響下にあった生物は、まともな子孫を残すことができず、絶滅状態に追い込まれてしまうのです。
これほどの自然に対する冒涜があるのでしょうか。
この地球上で、種の存続を自ら絶やそうとする生き物が、どこにいるというのでしょうか。
そのような行為を平然とやってのける生き物を、断じて私たちは人間と呼ぶことはできません。
今、原子力推進者は、自然界の秩序だった仕組みを根源から破壊し、地球上の全ての生命を破滅へと導こうとしております。
その証左と考えられるのが、全世界に配備された核兵器であり、各国で稼働している原発の存在です。
これが原子力開発の正体です。
また、原発が放射能を出さなければよいというものでもありません。
原発は、その仕組みにおいて原爆と根本的には変わりません。
それは、人類史上最悪の自然破壊工場であると言えるでしょう。
貴社は世界の原子力メーカーとつながり、原子炉の心臓部に相当する原子炉圧力容器を製作し、世界の原発向けの大型鍛鋼品で世界シェアの実に80%を占有していますが、壊滅的打撃を受けた福島の原発事故を目の当たりにして、何を感じ、何を思い、何を学んだのでしょうか。
故郷を追われ、生きる望みを奪われ、成すすべもなく苦しみ続け、ガンの恐怖と戦いながら、絶望の淵へと追い込まれた人々、そしてもの言えず命果てていった罪もなき生き物たちの悲惨な最期の姿、これらの光景を見て心が痛みませんか。
それでもなお原子炉圧力容器を作り続けますか。
原子力業界の関係者曰く、「室蘭が止まれば、世界の原発建設がストップする」と・・・・・・
もちろん貴社は、このフレーズをご存じですね。
であるなら、即刻その製造を中止して下さい。
貴社と原子力メーカーと電力会社の利益のために、地球上の全ての生命を危険にさらす権利などあなた方にはありません。
貴社の企業行動基準と環境基本方針には、「環境との調和」「生態系と調和した社会」「人権の尊重」「持続可能な社会の創造」等の文言が並んでいますが、天然に存在するウランを強制的に破壊し、危険極まりない放射能発生装置でもある原子炉圧力容器を作り続けることが、貴社が掲げた「環境や生態系と調和し、人権を尊重」するという、企業行動基準や環境基本方針に合致するのでしょうか。
安楽性や利便性を追い続ける生活との引き換えに、貴社が命を脅かすその元凶となる圧力容器を作り続ける限り、地球は核に埋もれ、人類の存在も危うくなることは明白です。
その責任は誰が負うのですか。
貴社ですか、原子力メーカーですか、電力会社ですか、国策として推進する国家ですか。
それとも、地球の未来を託した子供たちにその後始末を押し付け、責任をも背負わせるつもりでしょうか。
もちろん、核が破壊的な物質文明の延長線上で誕生したものである以上、それに依存してきた私たちにも当然責任があり、この責任から、地球上の誰一人として逃れられるものではありません。
また、核廃棄物で汚染された地球も元の姿には戻りません。
しかし、だからこそ、けがれのない豊かな大地、きれいな空気と水をたたえた緑豊かな地球、それを築き上げ、それを守る“アイヌ・ネノ・アン・アイヌ”、すなわち人間らしい人間。
そして、太陽のごとく万民に平等で、平和な世界を子孫に引き継がせるべく最大限努力をすることが、今生きている人々に課せられ、求められている人間としての絶対的な使命であるはずです。
自然災害はいつ発生するか誰にもわかりません。
今日かもしれません。
自然をあなどり、利益を最優先させて自分さえよければよいという非人間的な企業のおごりに対し、私たち“原子炉メーカーを糾弾する会”“ベクレルフリー北海道”“NO NUKES ASIA ACTIONS (NNAA)”他賛同者一同は、心より反核を願う全人類の声を代弁して、ここ人間の大地アイヌモシリより、貴社の反社会的企業活動を糾弾するべく、原子炉関連部門からの即時撤退・廃止、並びに輸出の中止を強く求めます。
最後に日本製鋼所の全社員の皆さんに訴えます。
貴社が社運を懸けているであろう圧力容器が、日本をはじめとする海外の原子力メーカーへと供給され、それが、人類の生命の尊厳をおびやかす殺人的マシンと化して今日に至っていることは、すでにご存じですね。
貴社の世界に比類なき高度な技術は、エネルギーとしての電力を生み出す一方、かけがえのない生命を奪い去るという二面性を併せ持っています。
皆さんは命とエネルギーのいずれを選択されるのでしょうか。
真実と正義はいかなる権力にも勝ります。
勇気をもって、他の人のために、人間としての力強い第一歩を踏み出す人が皆様の中から現れることを、切に願うものであります。
2012年9月20日
実行委員 斎藤武一
結城幸司 布川誠一 他一同
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