t-0) (トリチウム) トリチウムの何についての話か?

2021年10月

t-0) (トリチウム) トリチウムの何についての話か?

3H(トリチウム)といえば、日本では大抵の方が福島第一原発敷地に「積み上げられている」汚染水タンクの列を想起されることでしょう。確かに、3Hは「厄介な」核分裂生成物で、内部被ばくを考えると有害な物質です。こんなものを海に流さず、他の処理方法に切り替えて欲しいと私は願っています。(後でたぶん言及しますが、50年タンクで保管できれば、濃度云々ではなく3Hの絶対量が1/16に減ってくれるのですが ・・・) 地元で漁業を営む方々のためにも、ぜひ「海に流しちまう」なんて安直な処理はやめて欲しいです。(海水で希釈して海に流すというのですから、絶対量はまったく減っていない。それに対し、放射性物質が自然に起こす崩壊の時間をとれば、3H自体の絶対量が減ってくれます)

 

3Hの半減期は約12.3年

3Hの半減期は約12.3年

しかし。3Hには内部被ばく以上に危険な側面があるのです。そちらの側面については、日本語メディアがほとんど報じていないのが、正直言って腹立たしい! 日本語メディアの多数派は、「3H → 福島の処理水」という一面的認識でも、日本の一般市民に植え付けたいのでしょうか??

では、その「危険な側面」とは?具体的には、たとえばアメリカ原子力規制委員会による2005年6月付のTritium Productionという文書の一部、次の段落はどう理解すればよいのでしょう??

Fact Sheet: Tritium Production. (nrc.gov) にあります。

(私が日本語化したもの)

1996年5月22日、当時のアメリカのエネルギー長官とNRC(原子力規制委員会)委員長とは、ある合意の覚書に署名した。この合意により、エネルギー省(DOE)が商業用原子炉(原発)を利用してトリチウムを製造しようという件に関する、NRCによるレビューや諮問の基盤が固まった。この覚書はDOEとNRCが1978年に交わした合意を補強するもので、トリチウム製造だけに関するものであった。

DOEは、商業用加圧水式原子炉でトリチウムを製造する新技術を開発していた。この新技術では、中性子を吸収する材料として、それまで主流であったホウ素ではなくリチウムを使用する。リチウムを特殊な棒の中に入れ、それに炉心で中性子を照射すると、棒の中のリチウムがトリチウムに核種変換する。その後その棒を燃料集合体から取り除き、DOEがトリチウムを抽出するのだ。

トリチウム製造に関するDOEの決定

1998年12月22日、DOE長官はトリチウム製造の主な手法として軽水炉(一般的な原発)を利用する技術を採用すると発表した。リチウム製造にはこれ以外にも粒子加速器を利用する技術もあるが、それはバックアップとして位置付ける。同長官はテネシー峡谷開発公社(TVA)のワッツ バー原発ならびにセコイヤ原発の1号機と2号機とを、今後のトリチウム製造のための優先的施設として選んでいる。

ヨーロッパや北米の原発には、こんな風に大きな川のそばにあるものが多く、川への温水排出を減らすため冷却塔があります。 日本の原発の場合、すべて海岸にあるので、冷却塔を省いています。でも、海岸にあると、地震が発生すると津波をまともに受けますよね。

ヨーロッパや北米の原発には、こんな風に大きな川のそばにあるものが多く、川への温水排出を減らすため冷却塔があります。
日本の原発の場合、すべて海岸にあるので、冷却塔を省いています。でも、海岸にあると、地震が発生すると津波をまともに受けますよね。

お分かりのとおり、アメリカ エネルギー省がわざわざ製造技術を新たに開発してまで、意図的に3Hを製造することにした、というわけですね。こんなやっかいな有害物質をわざわざ製造して、何に使うのでしょうか?

それを説明するため、この t-x) 固定ページでは、以下の各話題を取り上げていきます。

t-1) アメリカにある商業用原発での3H製造 ― 「核発電と核兵器の不可分性」の顕著な実例
そして、中国への2H(重水素、デューテリウム)輸出禁止

t-2) 核爆弾の種類 ― 2Hと3Hがなにをやらかすのか

t-3) そんなわけでアメリカは、商用原発で3Hを製造する一方、中国への2H輸出を禁止
さらに、インドや北朝鮮での例

t-4) そして、3H製造の凍結から始める核廃絶を ― ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の提案

では、上の t-1) から順に投稿していきますね。固定ページですので、上の黒いメニューの中ほどを探してくださいませ。

2023年9月追記
「処理水」か「汚染水」か、という
二項対立

9月現在、この用語の二項対立が喧しい
ですが、そうした煩瑣な二項対立に
とらわれ、t-1) 以降で述べるような
もっと深刻な問題を見失ってしまう
のは、馬鹿げていると私は考えます。

そのため、私自身は本「やかんを
のせたら~~」において、「処理水」
と「汚染水」とを互換的に使って
おります。

それがお気に召さないのなら、
「トリティウム水」と呼んだら
いかがでしょうか??
その場合、トリティウムとは
thermonuclear核兵器(日本でいう
水爆)に欠かせない材料だという
認識も社会一般に広めておくこと
が重要ですが。
詳しくは、ページ t-1) 以降を
お読みくださいませ!

この下の追記が長い~~
私の20分クロッキー

2024年9月、「トリティウム水の
海洋放出」に関する追記

本「やかんをのせたら~~」では、
福島第一から太平洋へのトリティウム
水放出については、このページくらい
でしか取り上げておりません。

★そもそも「やかんをのせたら~~」
はあくまでproliferationなどの軍事的
リスクにフォーカスしたウェブサイト
なので、「放出問題」などについては
そちらを専門的に取り上げてらっ
しゃる方々に委ねております。

★それでも、たとえば各種新型原子炉
の特徴や問題点も紹介しました。
(たとえば、上の黒いメニューに
あるページ h-x)、if-x)、p-x) などなど)
これは、今までのところ、日本語で
この種の問題指摘をしている人が
私以外に見当たらないためです。

★Homeでずっと下、今年の8月1日
の「メルトダウンしない原子力発電所」
・・・という投稿でも述べたように、
新型原子炉の一部、たとえばPBRは
実際に冷却系の遮断という実験をして
みても、原子炉の核分裂反応が
「勝手に」停止、メルトダウンしません
でしたよね。
ページ p-0) から p-3) 、 h-4) なども
参照。

無論、メルトダウンも大問題だけど・・・

メルトダウンが最大の問題なんじゃ、
ない!

★ところが。日本の反原発運動の主流派の
関心は、ほぼ専ら「メルトダウンと
その結果」にありますよね。

★そこに、「メルトダウンしにくい」
新型原子炉が実験実証を経て登場し
たら?
反原発運動の大半の部分は、足をすく
われてしまいますよね。
「反原発運動の皆さん、今までご苦労様。
メルトダウンしない新型原子炉を普及
させますので、皆様の反対運動は今後は
不要になりますよ。どうぞ、ゆっくりと
お休みくださいませ」てなことに

★現実には、新型原子炉各種にはメルト
ダウン以外の重大な問題点があります。
それらを各新型炉ごとに説明したのが、
p-0) から p-3) や if-x)、s-x) その他
の各ページですね。

エラそーな口を叩くようですが ・・・

★2021年春ごろの時点で、新型原子炉
各種の問題点を指摘していた人が、
インターネットの日本語圏では見当
たらなかったのですよ。(推進の立場
から長所を喧伝する意見は、あったの
ですが)

★なら、私が一人で日本語での問題
指摘をするしか、選択肢があり
ません。

1日には24時間しかない~~

★でも、私も自分の仕事を持つ人間
であり、時間は限られています。
そんな人間が新型原子炉の主なもの
すべての問題点を紹介しようという
以上、核関連の各種問題系のうち、
既に多数の人たちが扱っているもの
については、私自身が扱う領域から
は切り捨てるしか、ございません

そんなわけで、トリティウム海洋放出
そのものについては、今後も「やかん
をのせたら~~」では取り上げません。
他に多数ある日本語報道などをお読み
くださいな

それでも、以下の場合、私にできる
協力は喜んで致します

1) 六ヶ所村再処理施設を諦めさせる
ためのプロテスト

そもそも今回の福島第一からの放出が
六ヶ所村再処理施設で計画している
「恒常的トリティウム放出」の
正当化には不可欠であるとの指摘は、
たとえば小出裕章さんなどが既に
なさってらっしゃいます。

で、この再処理工場、要は使用済み
核燃料からPu-239などを取り出す
ための施設です。正常に稼働し
トリティウムだけを放出 ~~ それ
だけでも問題ですが、地震や事故など
あれば、Puの海洋放出なんて危険性
も ・・・ (やめてくれ!!)

それと、再処理という行為そのものが、
核兵器に直結しうるのでほとんどの国
では認められていないのに、なぜか
核兵器を現時点で保有していない諸国
のなかでは日本だけ、IAEAが再処理を
認めているという奇妙な現状です。

★ならば、海洋汚染を憂える人たち
だけでなく、proliferationに
フォーカスしている人たちなども
集結して、六ヶ所再処理工場への
プロテストを盛り上げていく必要が
あるのでは??

海底のPu

2) とっくに行われてきている危険行為

★ご存じの通り、フランスのLa Hague
再処理工場と日本の間で、使用済み
核燃料などの輸送が行われてきました。

★問題は~ その輸送船が万一、沈没
したら??キャスクなどに格納されて
いるとはいえ、海の底に使用済み
核燃料が沈む結果になりますよね。
汚染の程度として、ALPSで処理した水
などとは比べ物にならない、ヒドイ
放射性物質汚染を招きます。

なんで、こちらへのプロテストは、
あまり聞こえてこないのでしょうか??

アメリカから連絡があって、
日本からは来ない

3) 北米の反核勢力とも

★2024年7月、アメリカのFukushima
Fallout Awareness Network
という
団体から、ある署名の依頼が私に届き
ました。
ご覧の通り、「やかんをのせたら~~」
は日本語サイトでして、日本語圏を
対象にしておりますが。それにも
関わらず、です。

★一方、日本国内の反原発団体からは
今のところ何の協力要請も届いており
ません。(何、考えとんねん??)

★北米の反核団体などが心配するのは
当然のことで、黒潮が北上してどんな
海流につながっているのかを考えれば
・・・
六ヶ所再処理工場からの放射性汚染は、
日本列島周辺だけの問題ではなく、
北米西岸などもまともに被害を受け
ます。

★なら、北米の反核団体などとも
協力して国際的プロテストを展開
すべきでしょう。
韓国や中国からの抗議があると、
なぜか感情的反発を招きやすい
のですが、
六ヶ所再処理工場からの放出への
北米からの抗議であれば、
海流の流れからして、当然の
プロテストとなりましょう。

あんな遠くから・・・
私の昔の作品 “Light Gazing”
紙にソフトパステル

上記のような国際抗議活動のため
北米の団体とのやり取りで
英語の翻訳や通訳のボランティアが
必要になる場合、私も協力できる
かもしれません。

yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp  まで!

 

Comments are closed.