付録 w-15) 原発の冷却って?(基礎的内容)

2024年1月

2024年が、皆様にとって祝福の1年と
なりますように!
で、お正月早々、能登半島方面で大地震
がありました。
被害にあわれた方々に迅速に救援が
行われること、被害地域の復興が着実
に成し遂げられることを祈って
おります。

で、核発電との関連では、北陸電力の
志賀原発の使用済み核燃料「冷却」
プールの水が地震の揺れであふれ出た、
との報道が聞こえてきました。
たとえば、
志賀原発、使用済み燃料プールの水あふれる 外部へ影響なし 北陸電 (msn.com)

グリッドからの外部電源を受け取る
システムも一部停止してしまって
いた模様です:
志賀原発 外部電源一部使えず 安全上重要な機器の電源は確保 | NHK | 令和6年能登半島地震

また、既に2022年から今も、
ウクライナ南部にあるザポリージャ
原発の「冷却」が、外部からの電源供給
が途絶えたため支障をきたしているとの
報道がたびたびあり、多くを本「やかん
をのせたら~~」でも日本語化して紹介
してきました。(上の黒いメニューで
Homeをクリック ⇒ スクロールダウン)

A happy new year!? I need more than that!

その一方、数年前、とある反原発
セミナーで質疑応答の時間に、
オーディエンスのある方から
「原発って、停止中でも冷却
しないといけないんですか!?」
とのご質問が講師の方に対してあったり
しました。
横からそれを見ていた私は正直に申し
上げて、反原発側の一部の人たちの
不勉強に呆れたのでした。

そんなわけで本ページでは、原発の冷却
に関して極めて基本的な説明をします。
詳細を学びたい方々は、原発技術の
専門家の方々によるウェブサイトや
書物をお読みくださいませ。以下は、
あくまで基本的な説明です。この話題
での「入門レベル」の方々を主な対象
しております。

そもそも原発では、何を「冷やす」
のか??

主な「冷やさないといけないもの」は
2つ、原子炉と使用済み核燃料冷却
プールです。
この2つのいずれの冷却ができなく
なっても、大事故の危険性があります。
では、その2つの冷却を順に
説明します。

★ 原子炉
発電用の場合と、上の黒いメニューに
あるページ d-1) で紹介したように、
「発電しない原子炉」もあります。
その場合でも原子炉の冷却は必要です
が、冷やし方が異なります。
その両方を、かなり簡略化した略図を
使って下で説明します:

1) 発電を行わない原子炉の実例の1つ
「発電をしない原子炉って??」と
訝しがってらっしゃる方は、時間を
割いて必ず上の黒いメニューにある
固定ページ d-1) と b-1) とをお読み
ください。ある問題の過去の事実を
知っておくということは、たとえば
正社員を採用するときに「履歴書」と
いう過去の事実説明が必ず求められる
ように、必須行為ですね。

話が本題からずれますが、「もともと
原子炉とは、何のために開発された
ものだったのか?」という過去の事実
をわきまえないままでは、
;; -_-) たとえば、「電気代高すぎる!
早く原発再稼働して、電気代下げて!」
と叫んでも、
あるいは
;; -_-) たとえば、「やっぱり地震が
来たら、志賀原発でも冷却プールの水が
あふれ出たじゃないか!原発廃止!」
と訴えても、
どちらも履歴書すらなしで正社員を
採用してしまっています。

話を本題に戻します。
発電をしない原子炉の良く知られた
実例として、ページ d-1) でも紹介
したWindscale Pileの略図を
再掲しますね。

発電しない実用原子炉カルダーホールの概略図、再掲

プルトニウム製造専用の、つまり
「本来の」原子炉ですね。もちろん、
原爆製造のためです。Production
reactorと英語では呼んでいます。
この場合、空冷ですから空気の流れが
遮られれば事故になります。実際、
この原子炉は1957年に大火災を起こし
かなりの放射性物質をまき散らし
ました。
現代では、production reactorは
あまり報じられていません。しかし
将来、核兵器を秘かに製造しようと
する国家やテロリスト組織がこの種の
原子炉を小型で持たないという保証は
どこにもありません。(小さいって
ことは、地下などに隠しやすいって
ことでもあります。
「発電用で~~す」といって、建物の
大半が地下に設置されるSMRを購入 ⇒
トンネル下の地下などに設置、衛星画像
では認識できない ⇒ 空冷式
production reactorに改造
といった悪夢が現実化しないという
保証は、ないのです)

それとこのタイプの原子炉の場合、
原子炉内を吹き抜けて原子炉を冷却し
外気に放出される空気を「煙突」の
フィルターで浄化しているだけなので、
原子炉周辺で戦闘が行われた場合、
フィルターに損傷が発生すれば放射性
物質は駄々洩れになります。

なお、将来の「第4世代」原子炉の一種
であるHTGRでも原子炉そのものの冷却
には気体(Heとか)を用いるようですが
発電には水蒸気を使います。Heの熱 ⇒
水蒸気発生の変換には、熱交換器を使う
そうです。(ページ h-1) 参照)

2)現時点での発電用原子炉の代表
PWRの場合
ページ d-2) でもPWRの略図を紹介しま
したが、今度は外部水源(湖とか大きな
河川とか海とか)まで入れた図を。

PWRでの冷却

つまり、水蒸気タービンを使った発電
系統そのものが原子炉炉心を冷却するの
ですが、その蒸気を冷やすためにさらに
外部からの冷却水も必要になるわけ
ですね。

当然、たとえばポンプが動かなくなって
冷却水のいずれかが滞った場合、原子炉
の冷却ができなくなります。すると、
最悪メルトダウンに至ります。

稼働停止中でも冷却は必要
放射性物質は、中性子線をぶつけて
核分裂を起こさなくても、「勝手に」
放射線を出して他の元素に「変身」
します。(「崩壊」と呼びます)
ページ  d-10) をご覧くださいませ。
この崩壊の際、放射線や熱を「勝手に」
出します。この熱が、崩壊熱です。

*ついでながら、中性子線をぶつけなく
ても、放射性物質はかき混ぜや並び
合わせなどによって、自然に核分裂を
起こしてしまう場合もあります。
1999年9月に茨城県東海村で起きた
JCO臨界事故を思い出してくだされば。

ですから、発電をしていない時でも、
原子炉は放射性物質(核燃料)が中に
ある限り、冷却しないと熱を持つわけ
ですね。

では、崩壊熱はどの程度の熱なのか??
The World Nuclear Industry Status
Report 2022のNuclear Power and
Warという箇所から、抜粋・日本語化
して紹介しますね。
原文を読みたい方は、
The World Nuclear Industry Status Report 2022 (HTML) (worldnuclearreport.org)
をご覧ください。

いつもどおり、私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。

これでも、火事になることはありまっせ

+++++++++++++++++++++++
p. 245
全力稼働していた原子炉をシャット
ダウンした直後、その中での崩壊熱は
稼働時の発熱量の約7%程度だ。
<現在の商用軽水炉の平均的なもので
ある> 発電量1,000 MWの原子炉の
場合、発熱量はおよそ 3,000 MW と
なる。<つまり、原子炉の発熱のうち
およそ1/3が電気になる、ってこと
です> この場合、発熱量の7 %とは
210 MWに相当する。シャットダウン
から1日経過すると、崩壊熱はフル
稼働時発熱量の約0.5%にまで低下
する。それでもなお、これは15 MWで
あり、それだけの熱を冷却せねば
ならない。さらに厄介なことに、
<炉内で発生を続ける> 崩壊熱は
ゆっくりとしか減少しない。シャット
ダウンから10日経過後でも、崩壊熱は
約0.25%に達する。こういうわけで、
原子炉はシャットダウンした後でも
絶えず冷却しないと、過熱してしまう
のだ。

p. 246
<原文のこのページには、核燃料を
原子炉から取り出した場合の、経過年月
と崩壊熱発生量を示すグラフ Figure 49
があります。また少し前のFigure 47は
福島第一の大事故後何か月かの崩壊熱の
変化を示すグラフです>
Figure 47には、福島第一原発での
大事故発生後6か月間における1号
原子炉から3号原子炉での崩壊熱の変化
を示す。 ・・・中略 ・・・ 事故後
しばらくは、崩壊熱は急速に減少した。
だがその後になると、減少がゆっくりに
なる。
********************

感覚的に捉えやすくするため、停止から
10日経過した時点での0.25% の場合を
考えてみます。
3,000MW x 0.25/100 = 7.5MW
(7,500,000W)
1個当たり600Wの電気ヒーター何個分
に相当するのかを単純計算してみま
しょう。無論、実際には600W電気
ストーブがそのまま600W相当の熱を
発生するわけじゃないですが、機種に
よる違いなどがあってヤヤコシクなる
ので、600Wの発熱をするものと単純
想定しますね。
すると、
7,500,000W / 600W = 125,000
つまり、この電気ヒーター125,000個
相当の崩壊熱が、この時点でもまだ出て
いるわけですね。実際にはヒーターから
熱量で計算すべきですが、そちらで
計算しても膨大なヒーター台数になる
ことは、容易に推察できるでしょう。
冷却しないと大変なことになると、
誰でもお分かりいただけますよね。

電気ヒーター、こんなに大量に集めて使っちゃイケマセン

★ 使用済み核燃料の冷却プール
こちらも2つの場合があります。冷却
プールのみの場合と、ある程度プール
で冷やしてからキャスクという容器に
入れて空気冷却する「乾式」の場合
ですね。

まずは水で冷却するプールの略図を。

使用済み核燃料冷却プールの冷却
プールからの温排水がややこしいのですが、これは放射性物質を含むので、熱交換器を使って冷却します:
プールの温排水(放射性)⇒ 熱交換器で冷却 (熱を、湖などからの水に交換器経由でうつす) ⇒ 冷めたプールからの水は、プールに戻す + 湖などからの水は湖などに戻す

ここでもポンプを使う ⇒ ポンプを
動かす電力が必要 ⇒ 外部のグリッド
から電力を供給してもらう必要
ということですね。

ここでも、外部からの電力供給が切れた
場合には、深刻な事故になりえます。
それに備えてディーゼル発電装置などを
備えてはいますが、それで何週間も対応
できるわけじゃ、ありません。特に、
戦争などでディーゼル燃料が途絶え
たら ・・・

それと、2024年1月初めに日本の
志賀原発で、地震の揺れのため使用
済み核燃料冷却プールの水があふれ
出たことが問題になり、広く報道され
ました。
このプールの冷却水は当然、放射性
物質を含んだものです。それが大きな
プールの中に入っているわけですから、
地震の揺れが大きければ当然、放射能を
帯びた水が飛び出す結果になります。
戦闘が原発近くで行われてプールが破壊
された場合には、さらに大量に放射能水
が漏れ出す結果になりましょう。

なお、たびたび本「やかんをのせたら
~~」で述べてきたように、上述の
ような原発の冷却を行うためには、
外部(グリッド)からの電力供給が必要
です。外からの電力供給を受けないと、
原発は発電も、停止状態でいることも、
できないのですね。(後述のisland
operationの場合を除く) 志賀原発も、
今回の地震発生時点で停止中だったはず
です。
この外部グリッドとのつながりの地点
で、トランスフォーマー(変圧器)が
必要になります。報道を見る限りでは、
今回の志賀原発ではそうしたトランスが
壊れた様子ですね。(ということは、
要するに志賀原発への外部電源供給に
一次的な問題あが発生したはずだと、
私は見ております。SFPの火災などに
ならなかったのは、thank God!

プールと大地震

★ 乾式冷却保管(キャスク)
こちらでは、水を使わない空冷なので、
ポンプはありません。したがって、
冷却のための外部電源は必ずしも必要
ありません。
でも、取り出した使用済み核燃料を
すぐにキャスクに入れられるわけじゃ
ありません。
上述の冷却プールで数年冷やしてから
やっとキャスクに移せるのですね。

やはり、The World Nuclear Industry
Status Report 2022のNuclear Power
and Warという箇所から。
************************
p. 248
核発電を営んでいる多くの諸国では使用
済み核燃料を保管プールの冷却水の中に
何十年か保管している。だが、どれだけ
使用済み核燃料をプール内に密集させて
保管しても、いずれは満杯になり
もっとも古い燃料(もっともよく冷めた
もの)を取り出すしかなくなる新たに
原子炉から取り出した使用済み核燃料を
プールに入れるためのスペースを設ける
ためだ。しかし一部諸国では中央保管
プールを設けている。あるいはもう1つ
のやり方として、崩壊熱が充分に除去
された時点で核燃料集合体を乾式保管
キャスクと呼ばれる容器に入れて保管
する、という方法もある。こうした
キャスクに使用済み核燃料を入れると、
その残る崩壊熱はキャスクの外側壁面
経由で大気中へと放出される。この外側
表面は、熱放出に適したものとなって
いる。 周囲の空気がどういう動きを
するかは、キャスクの切開により
異なる。キャスクの保管施設の中には
キャスクを外気の中に並べているものも
あって、そうした場合には特に空気の
流れを導く必要はない。他のタイプの
キャスクでは、キャスクを鉄筋
コンクリートのシールドで囲む。その
シールドとキャスク容器の間の隙間を、
空気が流れるのだ。さらに、キャスクを
建築物の内部に保管する施設もあって、
この場合には大がかりな空気の入口と
出口があり大気からの空気の流れを
起こす。<現時点で> 核発電を行って
いる諸国のうち、アメリカとドイツ <
このレポート、2022年版です> など
数か国だけが大型のこうした乾式保管
施設を設けている。乾式保管キャスク
に使用済み核燃料を移すには、原子炉
からその核燃料を取り出してから3年
前後を要するのだが、現実には
それよりもかなり長期間を設定して
いる場合も多い。

************************
これで、キャスクがどんなものか、
いくらかお分かりいただけました
でしょ?
でも、どんなものか目で見ないと。
そこで、概略図を。

乾式冷却のキャスク、一例

つまり、主に冷やす必要があるのは
原子炉と使用済み核燃料プール

ここまで述べた通り、原子炉も使用済み
核燃料冷却プールも、外部(グリッド)
からの電力供給がなくなれば、
過熱 ⇒ 火災、最悪はメルトダウン
という危険が存在するわけですね。

原発にグリッドから電力を送り込む電線
をドローン攻撃で切断した場合の危険性
について、ページ g-6) でも言及
しました。繰り返しになりますが、
その危険性を略図で示しますね。

ドローン攻撃 ⇒ station blackout (発電所への外部からの電力供給ストップ) ⇒ 最悪、メルトダウン

・ 原発では、原子炉も使用済み核燃料
冷却プールも、冷却しないとヤバい
・ どちらも、冷却するには外部グリッド
からの電力を使う
・ したがって、長期間つまり非常用
ディーゼル発電装置などで対応できない
期間にわたり外部電力の供給が途絶えた
場合、大変危険。最悪、メルトダウンに
・ そのため、原発周辺で戦闘が
行われた場合、その原発が最悪でメルト
ダウンを起こしてしまう危険性は確実に
存在する

それと戦争やテロの場合、緊急用の
ディーゼル発電装置などが破壊されて
しまう危険性もありますよね。

以上、お分かりいただけましたで
しょうか??

「まだ分からない、もっと説明しろ!」
と仰る方は、私まで直接お問い合わせ
くださいな。何が分からないのか、
具体的にお知らせくださいませ。
yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp
 (<–  [at] を @ に置き換えてくださいませ)
まで!

追記
Island operationもあるじゃないか!

以上に対し、「island operationは?」
という反論があるはずです。

まず、island operationとは:
原発でわずかな量の発電を行い、
その電力でその原発の冷却水を駆動、
原子炉炉心と冷却プールの冷却だけを
行う稼働です。外部への送電は
しません

その概略図を:

プールからの温排水の処理については、上の「★ 使用済み核燃料の冷却プール」にある説明図を参照

しかし。図を見てお分かりの通り、
原発内の冷却のためだけに適切な量の
発電を行うのは、容易ではありません。

・発電が少なすぎる ⇒ 充分に冷えない
・多すぎる ⇒ 通常の発電とあまり変わら
ないじゃないか!

ということで、難しさはすぐにお分かり
になりましょう。
そのため、island operationという
言葉を報道などではあまり耳にしない
わけですね。

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