ウクライナからは、攻撃はしない ― ザポリージャ

The Guardian
Zelenskiy pledged not to attack nuclear plant in Zaporizhzhia, says IAEA chief | Ukraine | The Guardian

しばらく、アメリカ国内でのHALEU製造
の話題に目を向けていましたが、
ザポリージャ原発の近況も忘れては
おりません。
英国の日刊紙 The Guardianのウェブ
サイトより。

いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は 私からの補足説明
です。

こちらからは、攻撃しないよ

こちらからは、攻撃しないよ

**********************
Zelenskiy pledged not to attack nuclear
plant in Zaporizhzhia, says IAEA Chief
(ゼレンスキーがザポリージャ原発への
攻撃はしないと約束 ー IAEA事務局長)

Rafael Grossi によると、ウクライナは
反撃攻勢において「ザポリージャ原発に
直接に砲撃や爆撃を行うことはない」と
ゼレンスキー大統領は個人的にGrossi
に約束したとのこと。

Dan Sabbagh記者(国防と安全保障
担当エディター)
2023年10月10日

IAEAのヘッドRafael Grossiによれば、
ヴォロディミール ゼレンスキーは
ウクライナがヨーロッパ最大の原発
<であるザポリージャ原発> を、
対ロシア反撃攻勢の一環としては
ウクライナが攻撃することはないと
約束したそうだ。

約束は、守ってね

約束は、守ってね

The Guardianとのインタビューで,この
IAEAチーフが語ったところでは、
Grossiにとってはザポリージャ原発が
ウクライナとロシア間の戦闘に巻き
込まれてしまうのでは、という問題が
最大の関心事であったのだが、
ウクライナ大統領からは <同原発を
直接攻撃することはないとの> 確約を
得られたと断言していた。

「ゼレンスキー大統領は個人として、
同原発に直接に爆撃や砲撃を行うこと
はないと、私に約束してくださった」
と、Grossiは述べた。ただし、さらに
Grossiは、ザポリージャ原発を
ウクライナが取り戻すためには 「それ
以外の選択肢は、すべて実行可能だ」
というゼレンスキーの発言もあったと
語った。

つまりウクライナは、新たな核安全の
5原則の1つ目「原発を攻撃するなかれ」
を順守するということだ。この5原則は
当初、今年5月終わりに国選安全保障
理事会でGrossiが「破局的事故」を
回避するため骨子を示したものだ。

ザポリージャ原発をロシア軍は2022年
3月に占拠したが、これは戦時に原発が
占拠された事態としては、世界史上初の
ものであった。1986年には <現在の
ウクライナで> チョルノービ原発の
爆発があり、全ヨーロッパに放射性物質
をまき散らしたのだが、その同じ国で
新たな核事故が起きるのでは、という
不安を掻き立てている。

こんな場所だと、何が起きても ・・・

こんな場所だと、何が起きても ・・・

Grossiによれば、現在の軍事情勢に
あっては、「いつ・何が起きても、
おかしくない」という危険が存在して
いる。「(ザポリージャ原発は)
現時点で、安全なのか?」という質問を
私はよく受ける。安全なはずはない。
反撃攻勢の戦闘地帯の真っただ中にある
のだから」と、Grossiは述べている。

彼の見方では「主な問題が2つある」
と、Grossiは語った。その中でも特に
深刻なのが原発の敷地内の比較的防御の
甘い地域への「直接攻撃」で、もう1つ
の問題が冷却水の保持だ。ザポリージャ
の6つある原子炉はすべて停止中では
あるが、停止中でも水による冷却は必要
である。

ウクライナは今回の戦争の初めにロシア
侵略軍に奪われた領土の奪還に努めて
きており、特に激しい戦闘はOrikhiv
<という町。ザポリージャ州にある> の
南にある南部前線から東に97㎞までの
地帯で行われている。 .

今年夏の間にはウクライナ軍の侵攻は
ゆっくりとしたものであったが、
ウクライナはいずれザポリージャ原発
周辺地域も奪還し、原発施設そのものも
取り戻すつもりだ。現時点では同原発は
500から600名程度のロシア軍部隊の
基地となっている。

Grossiによれば、「原子炉そのもの以外
にも脆弱な個所がいくつかあり」、
それらが特に心配だという。その1つが
「まだ防御のできていない使用済み
核燃料保管区域」であり、他にも未使用
の核燃料保管区域も心配だという。

「未使用核燃料を補完するホールは
2022年8月に砲撃を受けていたことを
忘れないでいただきたい」と、Grossiは
述べている。この攻撃のため、原発の
この主要施設の屋根に穴ができ、衛星
画像でも観察されたのだが、その時の
被害のことを彼は述べていたのだ。

いつ、こうなることやら・・・

いつ、こうなることやら・・・

 

インタビューの数日後、Grossiは前線
を渡って ザポリージャ原発を現地訪問
した。今回の戦争が始まって以来、
三度目の視察である。そこで彼は、
上述の攻撃の跡を観察したと述べて
いる。「わずか数メーター離れた
ところに、未使用核燃料を載せた
ラックがあった」

弧の損傷はどうも、ウクライナ側からの
攻撃によるものであったようなのだが、
Grossiは誰のせいなのかは言うまいと
述べている。「私には、(どちらの責任
なのかを判断する)法的な権限がない。
(ウクライナによるものだ)と、ロシア
なら言うことは明らかだ」

IAEA の監視員たちが恒久的に同原発
には配置されているのだが、先週
グリーンピースが発表したところでは、
監視員たちの人数はわずか4人であり
安全を効果的に確保できない。検査
要求を出すとき、1週間前に出すこと
が要求されているためだ。

Grossiは、IAEAが安全性の管理を
できると主張して譲らない。「困難な
状況もある。現場に入れないような
場合だ。だから、少々の公論はあると
思う。だが、そんなことには、我々は
慣れっこだ。監視員が来るのを歓迎
する人など、いないものだ」 イラン
など、ロシア以外の諸国でも立ち入り
についてはIAEAは困難を体験して
きたことを指している。

こんな状態になっては、安全も何も ・・・

こんな状態になっては、安全も何も ・・・

ロシアの核エネルギー公社 Rosatom が
同原発の運営権を奪っているが、戦前
からこの原発にいるウクライナ人
スタッフの一部に依存せねば、原発の
稼働ができない。Grossiによれば、
職員の人数は侵略開始以前には12,000
人であったものが、今では およそ
2,000人にまで減ってしまった。ただし
Grossiによると、ロシア人職員が現場に
到着しており、職員数は回復しつつ
あるそうだ。

下流にあるノヴァ カホヴカ ダムが6月
に爆破され、同原発そばのドニプロ
貯水湖から水が大量に漏出、原発の予備
の貯水池が干上がった後では、冷却水の
確保が大きな懸念となった。

蒸発と漏水のため、この貯水池の水位は
毎日1㎝ずつ下がっていた。だが井戸を
掘って新たに水を供給することで、この
問題は解消した。「言えることは、今の
ところは原発の管理努力によって状態は
安定している、ということだ」 と
Grossiは述べている。

だがGrossi は、この原発が両国間の
軍事的な瀬戸際戦略に利用されて
しまったことについては、遺憾の意を
表明している。「こんな形での戦争が
起きるとは、予想していなかった」

核の規制に当たる諸関係者の関心は
近年、テロリストやサイバー攻撃の
リスクに向かっており、ヨーロッパ
での地上戦にはあまり注意を向け
なかった。Grossiによれば 「私はこれ
まで、前線を三度も超えて行かねば
ならなかった。外交官ではあるが、
自分のキャリアでそんなことになる
とは、思わなかった。両国の兵士たち
がにらみ合う、その現場に行ってきた
のだ。IAEAは、その中間にいる」
*************************

こういう状態は、困る!

こういう状態は、困る!

なお、Grossi事務局長が定めた新たな
5原則とは以下の通りです:
IAEA chief outlines five principles to avert nuclear ‘catastrophe’ in Ukraine | UN News
念のため、私の日本語化も入れて
おきますが、この程度の英語テキスト
は、ご自分でお読みになれることを
お勧めしておきます。

Mr. Grossi developed five concrete
principles essential for averting “a
catastrophic incident” at the
Zaporizhzhya plant.
Grossi氏は、ザポリージャ原発での
「破局的事態」を回避するために
不可欠な5か条の具体的な原則を
策定した。

“There should be no attack of any kind
rom or against the plant, in particular
targeting the reactors, spent fuel
storage, other critical infrastructure,
or personnel,” he said, outlining the
first point.
その第1を要約して、Grossiはこう
述べている: 「同原発からも、それに
対しても、いかなる攻撃も行っては
ならない。特に原子炉や使用済み核燃料
保管施設、その他の重要なインフラ
ストラクチャーや人員に対して」

The nuclear plant also should not be
used as storage or a base for heavy
weapons, such as multiple rocket
launchers, or military personnel that
could be used for an attack emanating
from it.
また同原発を、多段層ロケット発射装置
などの重兵器や、原発からの攻撃を行い
うる軍人員の保管場所あるいは基地と
して利用してはならない。、

Off-site power to the plant should not be
put at risk, and all efforts should be
made to ensure supply remains available
and secure at all times, he said.
同原発への賀部からの電力供給をリスク
に晒してはならない。電力供給を常時
利用でき確保できるよう、あらゆる努力
を払うこと。

Furthermore, all structures, systems and
components essential to the safe and
secure operation of the plant should be
protected from attacks or sabotage.
Finally, no action should be taken that
undermines the principles.
さらに、同原発の安全で確実な稼働に
不可欠なすべての構造物やシステム、
コンポーネントを攻撃や破壊行為から
守ること。
最後に、上記の諸原則に抵触する
行為は、一切行ってはならない。

学ぶことが、多い ・・・ 私の点描練習

学ぶことが、多い ・・・
私の点描練習

なお、proliferation risksを考えるなら、
核エネルギー技術や世界情勢、軍事
動向などが不可分に絡みます。そうした
分野では、英語をある程度理解できる
ことが現実上必須になってしまう
ので、英語の理解力を身に付ける
ことをお勧めしておきます  ・・ 核兵器
と核発電の不可分性という問題系に
進んでいきたいのであれば。

About FrancisH

A freelance painter, copywriter, and beading artist
This entry was posted in Uncategorized. Bookmark the permalink.

Comments are closed.