付録 w-28) クラゲが見せる本質的課題(初学者向け)
2026年8月
フランス北部の原発が、またもやクラゲの大群のせいでシャット
ダウンしている、との報道がReutersより入ってきました。
「それ、去年の話やろ?」と思われた方、優れた記憶力をお持ちです!
でも、今回は現在の事件でして、1年遅れの話じゃありません。
つまり、同じ「クラゲのせいで原発停止」が、今年も発生したって
ことです。
そもそも本「やかんをのせたら~~」は本来、原発事故ではなく
軍事面での危険性にフォーカスしたサイトです。ただ、
・ 日本ではいまだに、「原発問題」というと「事故!」という反応を
いわば ”条件反射的に” 起こす方々が少なくない。
・ 今回のフランスでのクラゲの件からは、原子炉での発電という
技術の根底にある基本的問題が見えてくる。
⇒ 基本を学びたい人には、良い「学習材料」
という2点から、特に「付録」として本固定ページを作成することに
したわけですね。
そんなわけで、原子炉発電の基本メカニズムをすでにご存じの方々には、
本ページは不要です。無視なさってくださいね。
ではまず、「クラゲの件」:
Reutersのウェブサイトより
Jellyfish-hit French nuclear plant shuts down three reactors | Reuters
まずは、フランスのGravelines原発で原子炉3基がクラゲのせいで停止、
というニュースです。この原発はフランスの最北部、ドーヴァー海峡に
面したベルギーとの国境近くにあります。1980年11月に稼働を開始した
原発で、900MWのPWRが6基です。
要するに、原子炉とは本来、核分裂を起こしてU-238をPu-239に
変身させるための「核兵器製造機械」。ただ、その際に膨大な熱が
出るので、それでお湯を沸かして水蒸気でタービンを回す ⇒発電
だが、この熱を冷却できなくなると、当然メルトダウンに。
ではこの記事を、私が日本語で要約します。
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Jellyfish-hit French nuclear plant shuts down three reactors
(クラゲの大群に襲われたフランスの原発、原子炉3基を停止)
Forrest Crellinさん
2026年8月11日
パリ発、8月11日(Reuters): フランス <の北部、ベルギーとの
国境近くで北海の海岸にあるGravelinesという場所にある> Gravelines
原発で、原子炉3基が月曜日 <10日> 遅くにシャットダウンされた。
クラゲの巨大な群れが襲来、昨年の襲来時に実施した事故対処策を
実行したためであった。昨年の襲来時には同原発の原子炉すべてが
停止となり、その対処策を採択したのだ。同原発の運用業者である
EDF <というフランスの主要電力会社> からの情報による。
同原発は北海につながっている運河の海水で冷却され、フランスでも
最大級の原発の1つだ。第2,3,4号機がクラゲのせいで停止、1号機は
出力を50%に低減、5号機は既に定期点検のため停止しており、6号機は
フル稼働できる状態にあると、EDFは発表している。.
<以下、私が要点を抜粋>
・ EDFでは昨年の全停止を教訓に新たなモニター活動とクラゲを
捕獲するトロール処理を開始した。
・ ある技術者の話では、EDFは取水運河とフィルタードラムの網に
固定カメラを設置、取水ブロックが発生すれば迅速に察知できる
ようにしている。
・ EDFではフランスの漁協ならびに救命団体とも提携、クラゲの群が
発生していないかを監視してもらうとともに、警報を発して
フィッシャーの方々に標的を決めたトロール捕獲を実施してもらい、
クラゲの大群が原発に近づかないうちにその群れを希薄化する。
・ この土曜日にも最初の警報が出た後に漁船が出動、クラゲによる
被害を軽減した。すでに同原発付近に来ていたクラゲについては、
真空式吸引トラックで除去している。
・ 科学者たちが警報を発しているのだが、地球温暖化や侵略的外来種の
侵入、捕食者の生息域喪失、過剰な漁獲などのため、こうした問題は
さらに増加してしまう危険性があるそうだ。
・ クラゲ以外にも今年の熱波のため、フランス北部では川の水位低下で
別の原発の原子炉がこの夏の大半にわたり停止しており、さらに別の
原子炉も7月の大半に及ぶ期間リスタートが充分にできず発電稼働が
できずにいた。
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でも、単にクラゲが大量に ⇒ 原発が止まった
という現象面だけを見ていては、もっと重要な本質を見逃すことに
なります。
冷却水の取水口をふさいでしまうのがクラゲでなくても、それが海藻で
あろうが、テロリストが付着させた粘着物質であろうが、冷却水を
取水できなくなれば、原発は稼働できないのです。
つまり、
冷却ができないとメルトダウンしてしまう ⇒ 冷却水(または、空冷の
場合には冷却空気)の取り入れが必須
⇔ (でも)
原子炉内には放射性物質がある以上、密閉しないといけない
つまり、「密閉したまま、冷却材だけは充分に流さないといけない」
という自己矛盾を構造的に抱えているのが、原発というもの
なのですね。
では下記では、その自己矛盾を初学者の皆様向けに説明します。
密閉を保ったまま、冷却材だけは絶えず流し通づける
まず、Gravelinesは6基ともPWRなので、PWR(加圧水型)の構成
概略を:
熱交換器を2段階で使っており、事故や故障がない限り放射性物質は
格納容器内にのみ留まる設計ですね。
先日(5月8日)、日本の美浜原発で発電タービン付近からの蒸気漏れが
ありました(美浜発電所3号機 高圧タービンからの蒸気漏れに関する調査状況)が、上の図でお分かりのようにPWRではタービンを通過する
のは二次冷却系の水蒸気です。放射性物質を含む熱湯は一次冷却系に
留まる設計なので、熱交換器などの異常がない限り、タービン周辺から
の蒸気漏れでは放射性物質の漏出を心配する必要はないわけですね。
要するに、
・ 放射性物質がある箇所(原子炉や一次冷却系など)は”密封隔離”
したまま、
・ 炉心を冷却するための冷却材(PWRの場合には、”お水”)は流し
続ける
・ そのためには、一次冷却系 ⇒二次 ⇒ 三次 ⇒ 環境(川とか海とか)
へと熱を移す必要
・ そこで、熱交換器を使用している
今回の事件では、その環境からの取水がクラゲのためにできなくなった
⇒ 原子炉を停止させるしか、なくなった
というわけですね。
ただ、図でお分かりのようにPWRは熱交換器を2段階使用する複雑な
構造になってますよね。これよりも単純といえば単純なのが、BWR
(沸騰水型)です。
BWRでは熱交換機は1段階です。こちらでは、もし蒸気タービン周辺
から蒸気漏れがあると、まともに放射性物質も出てしまいます。
ここで想像していただきたいのですが
下のような、架空の原子炉を考えてみてくださいな:
a) 「直流型」原子炉 ・・ 冷却材は豊富に得られるけど、
放射性物質を「密封」しない
大きな川から取水 ⇒ 原子炉内で蒸気に ⇒ 蒸気タービンを回す ⇒
川に直接捨てる
これだと、川の水位が下がり過ぎない限り、冷却材(ここでは、
川の水)には事欠きませんよね。メルトダウンは起こりにくい。
でも、川の下流は放射性物質だらけになって~~
b) 「完全密封型」原子炉 ・・ 放射性物質を完璧に密封できるけど、
いずれ冷却ができなくなる
巨大な密閉直方体の中を冷却材(水など)で満たし、その中に原子炉を
沈める。
例えば、次の図のような感じ。
放射性物質は直方体内部に完璧に密封できますが、いずれ冷却材全体の
温度が上がっていき、冷却が不能に ⇒ メルトダウンに
∴ 結局、
・ 放射性物質は密封しながら
・ 冷却材とその流れは確保して、
・ 熱を環境に放出する
という自己矛盾を保たないといけない。それが、原発ってもんです。
そうしているうちに、
・ 自己矛盾を維持できなくなると、メルトダウン ⇒ 放射性物質も
環境へと漏出
・ 維持できている場合、熱を環境に放出する以上、川なり海なり
大気なりを温める
という結末を避けられないのです。
それと、上の紹介記事の終わりの方に
「科学者たちが警報を発しているのだが、地球温暖化や侵略的外来種の
侵入、捕食者の生息域喪失、過剰な漁獲などのため、こうした問題は
さらに増加してしまう危険性がある」
とあることにも、ご注意くださいね。
原発が海なり川なりに放出する使用後の冷却水は無論、元の水よりも
水温が上がっています。もしこれがクラゲの大群の発生した誘因の
1つになっていたのなら、
海/川などから冷却水を取水 ⇒ 温まった冷却水を海/川に排出 ⇒
周辺水温が上がって、クラゲの大群発生 ⇒ 海/川からの冷却水取水が
できなくなり、原発停止
というわけですから、原発とは一種の「緩慢な自己破壊機械」に
他ならないことに なりますね。
原発推進勢力は「原発は安定した電力供給減」だと主張して
いますが、クラゲの大量発生で停止するようだと ~~








