The Foundation for Defense of Democraciesのウェブサイトより
9 Myths About Iran’s Uranium Enrichment Program
9 Myths about Iran’s Uranium Enrichment Program
(イランの核プログラムに関する、9つの神話)
私(ひで)は、なにもアメリカやイスラエルのサイドに立ちたい
わけじゃ、ありません。
ただ、誰様の主張であれ、根拠があるのか否かは問題にせざるを
得ないのですね。
その意味で ・・・
以前からイランは「NPT条約の下で、U濃縮はイランの当然の
権利だ」と主張してきたのですが、はたしてNPTにはそんな
規定があるのでしょうか??
The Foundation for Defense of Democraciesの研究フェロー、
Andrea Strickerさんによる論考を紹介しますね。
要約・抜粋・日本語化で紹介しますね
< > 内は、私からの補足説明です
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Andrea Strickerさん(核不拡散プログラムのディレクター
代理、研究フェロー>
2025年5月21日 <6月の軍事攻撃以前のものである点には、
ご注意くださいな>
トランプ大統領とその政権は、イランがその核兵器プログ
ラムを完全かつ恒久的に廃止し、それを検証できるようにせよ
と要求してきている。それには、イランが濃縮ウラニウムを
製造する能力の廃棄も含む。その廃絶が、どのような核合意を
今後締結するにせよ、その前提となるのだ。だが、イランの
ウラニウム濃縮プログラムに関してはいくつもの誤った神話が
あり、その脅威が歪曲され、今後の存続もいびつに正当化され、
その過去や性質も誤って伝えられている。核プログラムの
廃止を実現させたいのであれば、そうした神話の誤りを
証明することが不可欠だ。
神話その1: イランには、ウラニウム濃縮する
法的な権利がある
事実は: 無条件でウラニウム濃縮を行う権利など、
イランにはない
核兵器製造の第一歩となるのが、核兵器に必要な爆薬の
製造だ。イランは既に60%の濃縮を達成しており、
・・・(中略)・・・ この濃縮度にまで達してしまうと、
核兵器グレードのウラニウムを製造する作業の99%は達成済み
なのだ。イラン政府はたびたび、核不拡散条約(NPT)の
締結国であるイランにはウラニウム濃縮を行う法的な権利が
あると主張してきたが、実はNPTの規定には、ウラニウム
濃縮やプルトニウム再処理を 締結国が行う権利を有すると
明言している条文など、ないのだ。・・・(中略)・・・
NPT の第4条には、「核エネルギーの研究・製造・利用を
展開する、犯すべからざる権利」を締結国が有すると明記
してある。<下記の*参照> ただし、それは「平和目的」
のものに限定される。しかもそうした研究も、同条約の
第1条と第2条とに準じて行わねばならない。この2つの
条文は、核兵器の譲渡や受領を禁じている。イランはもう
何年もこの第2条に違反しており、これは非核兵器保有
締結国が「核兵器やその他の核爆発装置を製造、あるいは
その他の手段で入手してはならない。また、核兵器や
その他の核爆発装置の製造のためのいかなる支援も求め、
ないしは受けてはならない」と定めているのだ。このため
IAEAは2002年以来現在までイランの核関連活動の監視を
続けている。2006年以降、国連の安全保障理事会はこと
あるごとにイランに対し、「ウラニウム濃縮とプルトニウム
再処理に関する一切の活動を停止するよう」要求して
きている。これには「研究開発活動も含む」
<* NPTの条文は、いずれ紹介しますね>
神話その2: イランは核兵器保有を目指しては、
いない
事実は: 将来の核兵器製造に役立つような取り組みを、
イランは積極的に進めている
2025年2月のNew York Timesの報道によれば、アメリカと
イスラエルはイランの秘密チームの存在を発見した。この
チームは「粗末な」核兵器の製造に取り組んでいる。組み
立てるために必要となる核実験や機能保証が少なくて済む
核兵器だ。現時点でイランには、最低でも核爆弾7個を製造
できるだけの高濃縮ウラニウムがある。
さらに2024年始めにアメリカとイスラエルは、イランが
「兵器化」にかかわる二重用途の活動 <つまり、核発電と
核兵器という二重用途> に取り組んでいたことを検知した
と報じられていた。つまり、核の装置の製造であった。
<当時の> バイデン政権は、そうした取り組みをやめさせ
ようと、警告を発した。同年7月にはアメリカの国家情報
長官室 (Director of National Intelligence、ODNI)も、
それまで長年抱いていたイランは核兵器保有を目指しては
いないという見方を変更した。そして10月、イスラエルが
<イランの> タレガン2という施設を破壊した。これは、
パルチンという複合軍事施設の中にある核施設だ。<なお、
2025年10月の時点で、再建工事が行われていた模様です:
詳細は、ここをクリック> この核施設でイランは、核兵器
開発に関わる実験を進めていたようだ。
・・・(中略)・・・
神話その3: イランの核施設を攻撃すると、
放射線漏出の関わる災害を招く
事実は: イランに軍事攻撃を実施しても、死の灰を招く
ことにはならない
・・・(中略)・・・.
さらにイランの3か所にあるウラニウム濃縮施設や転換
施設に大規模なバンカーバスターの攻撃を行ったとすれば、
施設内にある濃縮ウラニウムのストックを地下に埋め、
拡散を制限する結果になる可能性もある。仮に最小限の
大気中への漏出が発生したとしても、環境や健康への被害は
局所的なものに留まろう。エスファハンのウラニウム転換
施設から酸化ウラニウムの放出があれば、もっと被害はひどい
ものとなるだろう。そうであっても、その被害範囲は限られた
もので同施設のすぐ周辺に限定されるはずだ。周辺住民の
被爆は、回避できよう。
神話その4: イランの核プログラムは平和利用の
ものだ
事実は: 2025年2月という遠からぬ時点でのIAEAの
報告によれば、イランの核プログラムが「平和目的のみ
のもの」だという「保証はできない」
・・・(中略)・・・ イランは2015年に一度は核合意を
締結、そこではNPTの規定に則り決して核兵器を
入手しないと繰り返し約束していたのだが、一方で2004年
以前の核兵器製造の計画を詳細に記した核開発関連ファイル
のアーカイブを秘匿していた。このアーカイブのファイル
から、イランは当時国際社会からの非難とアメリカによる
軍事攻撃の公算の大きさとから、2003年半ばには核兵器の
製造を中止するものの、製造できる能力は保持するという
選択をしたことが判明した。 ・・・(中略)・・・
神話その5: イランは自国の原発の燃料とする
ために、ウラニウムを濃縮する必要がある
事実は: イランには稼働中の原発は1か所だけだが、
その燃料はロシアが供給している
確かにイランはウラニウム濃縮に何千億ドルもの資金を投じ、
国内の3か所の核施設で何千キログラムものウラニウムを
濃縮、それを「産業用」の濃縮プログラムだと主張している。
つまり、発電用原子炉の燃料だというのだ。ところが、
ブシェールにある同国唯一の稼働中原発の核燃料を自給
できずにいる。そのうえ、イラン政府はさらに原発を増設
する計画でいるのだが、それもロシアが建設を担当する。
ロシアは通常、<他国で> 原発を建設した場合、その
核燃料も供給している。2015年の核合意では、イランは
テヘラン研究原子炉という小型原子炉のための20%濃縮
ウラニウムもロシアから輸入する計画でいた。この小型
原子炉は、医療用の同位体を製造するためのものだ。
イランはいずれ、また同様の輸入を考える可能性もある。
つまりイランの濃縮プログラムは昔から常に、核兵器用の
濃縮ウラニウムを製造することに向けられたもので
あったのだ。
神話その6: イランは国外からは濃縮ウラニウム
燃料を入手できず、国内で濃縮を行う能力を
保持する必要がある
事実は: 国際市場で多くの諸国が濃縮ウラニウム燃料を
商業的に販売している
現時点でウラニウム燃料を供給販売している諸国としては、
フランス、中国、ロシアがあり、さらにURENCOという
コンソーシアムもある。これは、英国・ドイツ・オランダの
多国籍コンソーシアムだ。アメリカも近い将来、商業規模での
濃縮ウラニウム燃料の製造を開始する。またカザフスタンに
あるIAEAの核燃料バンクは、原子炉用低濃縮ウラニウムの
供給が厳しくなった場合に備え、最後の供給源となっている。
そのうえ、世界では23の諸国が平和目的の核エネルギーの
プログラムを展開しており、そのために必要な核燃料を輸入
している。これら諸国は、ウラニウム濃縮とプルトニウム
再処理という経費が巨額で核兵器の拡散にもつながりかねない
プロセスを破棄したのである。
神話その7: 低濃縮ウラニウムであれば、核兵器
拡散リスクなしに、イランは製造できる
事実は: イランが国内で濃縮能力を有していれば、たとえ
低濃縮であっても、核兵器グレードのウラニウムを製造する
能力とインフラストラクチャーとをイランが有している
ことになる
例として、イラン政府が何かの核合意を締結し、製造する濃縮
ウラニウムは3.67%まで、つまり原子炉用核燃料のレベル
までにしたとしても、3.7%までの濃縮が出来れば、核兵器
グレードにまで濃縮するための作業のうちおよそ70%は完了
したことになるのだ。<下記の * 参照> 科学国際安全保障
研究所 <Institute for Science and International Security、ISIS、
アメリカの非営利・非政府研究機関> によれば、イランの
掌中に低濃縮ウラニウムのストックと最新式の高速遠心
分離機 <ウラニウム濃縮に使います> 13,000台以上とを
残す以上、イランのいわゆる「breakout time」つまり核兵器
グレードのウラニウムを製造するための所要期間は、1か月
未満となる。兵器グレードの核燃料をイランが製造できない
ようにできる確実な方法とは、ウラニウム濃縮ならびに
プルトニウム再処理能力のすべてを、完全かつ恒久的に
破棄し検証することだけなのだ。
<* U濃縮は「線形的に」つまり正比例的に濃度が高まる
わけではなく、最初の0.7% から1%、2%、3%と高めていく
「最初のプロセス」が大変なのです。いったん4%まで
高めると、そこからさらに濃縮していくのはかなり楽に
なります。特に20%前後まで達すると、核兵器グレード
までの道のりは遠くありません>
神話その8: ウラニウム濃縮とプルトニウム
再処理なんて、世界で広く行われている
事実は: ウラニウム濃縮とプルトニウム再処理とは、
少数の国しか行っていない
アメリカとその同盟諸国は方針として、ウラニウム濃縮と
プルトニウム再処理の能力とを厳密に管理し、その普及
防止に努めてきている。NPTへの参加・不参加を問わず
核兵器を保有している9か国を除けば、ウラニウム濃縮を
行っているのはアルゼンチン、ブラジル、ドイツ、日本、
オランダだけである。ただし日本だけは、ウラニウム濃縮
とプルトニウム再処理の両方を行っている。<なぜ日本
だけが?これ、結構な謎なんですよ> イランとは異なり、
こうしたNPT加盟の核兵器非保有諸国はいずれも、IAEAの
セイフガードに違反していないか、核兵器製造の活動を
秘密裏に行っていないか、というIAEAの査察を今の
ところ受けていない。
神話その9: イランのウラニウム濃縮プログ
ラムは、自国で独自に始めたものだ
事実は: イランの <核開発用> 機材は非合法に入手し、
施設も秘密裏に建設したもので、そのウラニウム濃縮は
合法的な <IAEAの> セイフガード規定 <核の拡散を
防止するための規定> に違反するものだ
秘密裏の核兵器開発プログラムを進めていた他の諸国、
たとえばリビアや北朝鮮もそうであったが、イランも最初に
入手したウラニウム濃縮用のガス遠心分離機技術は、
パキスタンに本拠を置くA.Q. Khanのネットワークの闇市場
<下の*参照> ならびにドイツの企業の汚職エグゼクティブ
たちから手に入れたものであった。そのようにして、NPTに
直接的に違反してイランは秘密のうちに <核物質製造の>
能力を身に着けたのであった。
<* Khanの闇の核ネットワークについては、上の黒い
メニューにある次の各ページで既に言及しております:
b-11) の中ほどの「カーンの参入」という段落、
f-3) の「・・・「カーンの闇のネットワーク」です」という段落
f-8) の「闇に潜む核」という段落
***********************************
繰り返しますが、私は何もアメリカのサイドに立ってイランを
非難したいわけじゃ、ありません。
そうじゃなくて、このイランの実例は、今後の他国による
「秘密の核兵器開発」を防ぐための知識・洞察として役立つと
考えるのですね。






