d-10) ソモソモなぜ 「核分裂」 させるのか?

2023年4月

このページの内容は、きわめて基本的な
ものです。
なぜ、原子炉ではワザワザ核分裂を
起こすのか?
「発電」 だけ考えているのであれば、
実は 「核分裂」 なんてさせなくても、水蒸気を
発生させることはできるのに。
「原子炉」 とは本来、何の道具なのか?
このページで扱う問題を考えていただければ
その 「正体」 はすぐに明らかになるハズ。

ネズミ発電 まわれ~~まわれ~~

ネズミ発電
まわれ~~まわれ~~

要するに発電タービンを回したい

太陽光パネルなどを除き、現在の発電所の
多くでは何らかの発電タービンを回します。
きわめて乱暴に言ってしまえば、
– 風力 → “風車” で発電タービンを回す
– 水力 → “水車” で回す
– 火力と核発電 → 湯を沸かして、水蒸気で
回す
ということですよね。

水を原子炉の冷却材に使っている、現在
主流のBWRやPWRの場合なら、次の
ような大雑把な仕組みになります:

発熱体に 「やかん」 をのせる ⇒ 水蒸気発生 ⇒ 発電タービンを回す

発熱体に 「やかん」 をのせる ⇒
水蒸気発生 ⇒
発電タービンを回す

これが、IFRやFBRだと、原子炉の
冷却材はナトリウムとかになりますよね?
(「液体の鉛は?」 とか、ややこしいことは
ここでは言わないでね。話の本筋から
外れてしまうので):

冷却材がNaの場合 「やかん」 のうちに熱交換器を含む

冷却材がNaの場合
「やかん」 のうちに熱交換器を含む

要するに、「お湯を沸かす」 熱が欲しい

今までの “原子力” (核発電) の原理説明を
見ていると、
この 「熱」 を発生させるために、原子炉内では
適切な濃度のU‐235に中性子線をぶつけて、
核分裂の連鎖反応を起こします。このとき、
大量の熱が発生します。
Uの濃度が適切なので、原爆のような
核爆発は起こりません

てな感じの説明が多かったですよね?

さて、そんな感じの説明で納得できました
でしょうか?
「やかんをのせたら~~」 の読者の皆様なら
次の疑問を持たれたのでは??

熱が欲しけりゃ、なんで崩壊熱を使わない?

放射性物質は、中性子線などぶつけなくても、
“勝手に” 放射線を出しながら、他の元素に
“変身” していきますよね。(「崩壊」)
その際に発するのが、「崩壊熱」 ということ
でした。

放射性物質の崩壊の例
ウラニウム235の場合
U-235 ⇒ アルファ線や崩壊熱を出しながら
(アルファ崩壊) Th-231に(半減期は
約7億400万年)
⇒さらに崩壊は続き、最後は鉛 Pb-207に。

つまり、
ワザワザ核分裂なんて起こさずとも、
自然界で 「勝手に」 発生する崩壊熱を、
なんで利用しないの??
これ、疑問ですよね?

崩壊熱も充分に強い

この崩壊熱、「核燃料が熱くなる」 程度の熱じゃ
ないんです。

崩壊熱  (使用済みも含めた) 核燃料  送電グリッド ディーゼル発電機 ~~ 燃料があとわずか 冷ましてくれ~~!

~~ 燃料があとわずか
冷ましてくれ~~!

例として:
★ 2023年4月現在、ザポリージャ原発
停止してますよね。でも、送電グリッドとの
接続云々が問題になってます。
なぜか?
崩壊熱を冷まさないといけないからですよね。
その冷ますのに、外部からの電力供給が
必要だと。
ところが戦闘で送電グリッドから原発への
電力供給が行えなくなる事態が頻発 ⇒
緊急用のディーゼル発電装置を使う
ところが、そのディーゼル燃料が残り僅か
になっている ・・・ いかに深刻な事態か、
お分かりと思います。

要するに、
原発とは単に発電施設であるだけじゃ
なくて、電力をかなり消費する施設
でもある ~~
崩壊熱を冷まさないと危険だから
ってことです。

★ 自然界の地熱
ウラニウム鉱石は、どこから取り出すのか?
今までのところ、地中からですよね。
(海水から取り出そう ・・・ なんて案もあります
が、今のところ実用化できてません)
Uに限らず、地中には天然の放射性物質が
あって、その崩壊熱が 「地熱」 でしたよね。
特に日本列島は地熱には恵まれていて、
東京都内にすら天然温泉があるほどです。
北海道の有名な登別にある間欠泉など
ご覧になった方なら、地熱つまり崩壊熱の
強さをご存じのはず。

あつい、あつい~~

あつい、あつい~~

じゃあ、「お湯を沸かす熱」 がほしけりゃ、
なんで崩壊熱を使わない??
疑問になりますよね

むろん、核分裂のほうが崩壊熱以上に巨大な
熱を出しますが、必要なのはあくまで 「発電に
適切な熱量」 であって、「多けりゃよい」 って
もんじゃないですよね。

ワザワザUを掘り出して、使用後また埋める??

では、現在の
ウラニウムを掘り出す ⇒ 精製・濃縮 ⇒ 核燃料
にして、原子炉で核分裂 (発電) ⇒ 使用後、
冷却・固化など・地層処分 (地下に埋める)
という核発電の流れと、
地熱という崩壊熱で発電する場合と、次の図で
おおざっぱに比較してみます:

地下から掘り出し、加工 ⇒ 核分裂 ⇒ そして地下に戻す そんな面倒なこと、わざわざやらなくても ・・・

地下から掘り出し、加工 ⇒ 核分裂 ⇒
そして地下に戻す
そんな面倒なこと、わざわざやらなくても ・・・

なお、よく指摘される問題として、地熱利用
では地層を刺激して地震の遠因を作る
危険性があるそうですが、
核廃棄物の地層処分でも、地層を刺激する
危険はありますよね。

以上、「核分裂発電」 が 「ワザワザ~~」 な
発電方法であることを、ご理解いただけました
でしょうか?

なんで、「ワザワザ~~」を??

ここまで、「やかんをのせたら~~」 としては
珍しく、大変基本的な事項を説明してきました
が~~
本題は、ここから。

なんでワザワザ、ウラニウム鉱石を掘り出し、
精製、濃縮、加工、核分裂させて発電、冷却、
固化、埋め戻し ・・・
なんて面倒なことをやることに?

その答えは、「やかんをのせたら~~」 を
読んでくださっている読者の皆様には、
もうお分かりのことでしょう。

はい、
・ 原子炉とは本来 「発電用機械」 じゃなくて、
・ 核兵器用Pu-239の製造機械として
設計された (今も、Puは作ってしまう)
・ その 「Pu製造機械」 に “やかん” を
のせて水蒸気発生 ⇒ 発電タービンを回す
ことにしたのが、原発
ということですよね。

上の黒いメニュー (項目は基本的に
アルファベット順) で固定ページのシリーズ
b-x) や d-x) などをお読みくだされば。

つまり、「核分裂」 を意図的に引き起こして
いるという事実そのものが、「原子炉の正体」
を物語っているわけですね。
「熱が欲しいんじゃなくて、Puがほしい」
場合には、核分裂を起こさないとPuが
できないのです。

分裂たこやき 分裂には、何かある ・・・

分裂たこやき
分裂には、何かある ・・・

その他の諸問題も ・・・

すでに固定ページ d-7) で述べたことの
反復になりますが、
「Pu製造装置」 という原子炉の “本性” から
下記のような諸問題もすぐに予想できますよね。
そして、実際に発生しています。

1) 本来、原爆用Pu製造装置 ⇒
proliferation risks (核兵器拡散リスク)
一例として、北朝鮮のヨンビョンの原子炉で
できたPuが核兵器になっているのは、
もはや広く報道されていますよね。

2) 本来、原爆用Pu製造装置 ⇒
当然、放射性廃棄物が出る
(本来、Puなどの “放射性廃棄物” を
作るための機械

3) 核分裂を人為的に起こすという
無茶なことをやっているので、原発の大事故
も発生

4) 発熱量が半端ないので、冷却材が
大量に必要 ⇒ 冷却材 (主に水) を、
大量に放出
放出するCO2が少なくても、代わりに
近隣の海域や河川などを温めてしまう
(固定ページの 付録 w-1, -2, -3, -4, -10)
など参照)」

5) 作業員の被ばく (ページ e-1) など参照)

核発電問題の主なものは、この 「原子炉の
正体」 から、容易に予測できますよね。

「Pu製造装置に ”やかんをのせた” ことの、当然の帰結」 要約

「Pu製造装置に ”やかんをのせた” ことの、当然の帰結」
要約

だから ・・・

日本での今までの状況を振り返るに、
★ 「反原発」 勢力と 「反核兵器」 勢力とに
いまだに分裂が見られますが、いかに
「原子炉の正体」 を見失っていることか。
一言で言っちゃえば、この分裂を終わらせ
たくて、「やかんをのせたら~~」 をやって
おります!

☆ 「やかんをのせたら~~」 では時折、
アメリカのメリーランド州に本拠を置く
反核団体Beyond NuclearのBulletin
から記事など紹介していますが、
Home – Beyond Nuclear: energy advocacy non-profit
で明らかなように、
Working for a world free from nuclear
power and nuclear weapons
(核発電も核兵器もない世界を目指して、
活動してます)
という団体です。
まさしく、我が意を得たり! のNPOなの
ですね。
Beyond Nuclear Bulletinにsubscribe
したい方は、
Beyond Nuclear : Sign Up to Stay in Touch (constantcontact.com)
をご覧くださいな。

では、次回アップロードする固定ページは
シリーズb-x) に戻り中国での核導入を
取り上げる予定です。
(予告なく変更する可能性もございます。
アシカラズ)

20-min croquis + background added later / 20分クロッキー + 後で背景
Standing firm on two feet –(両足でしっかりと)
私の20分クロッキー

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