THE CONVERSATIONというウェブサイト
(ニュースと学術発表を内容とする、非営利
ウェブサイト)
With Iran purportedly capable of making a nuclear bomb in a matter of months, what will its leaders do next? (theconversation.com)
より
イランはすでに 「潜在的核兵器保有国」 と
みなされています (日本もそうですよ) が、
では今後どうなるのか??
実に心配ですよね。
まさしくその問題に関する論考です。
ニュースだと 「新しさ」 も大切になりますが、
下記はニュースというよりも論考なので、
発表日から1週間近く経過した本日 (17日)
になって読み、アレコレ考えるのも良い
でしょう。
いつもどおり
私による抜粋・日本語化
< > 内は私からの補足説明
で紹介します。
U濃縮以外でも ~~ 「平和利用」 は実は
核兵器と不可分⇒ 核兵器開発へ、という
典型的な実例か?
**************************
With Iran purportedly capable of
making a nuclear bomb in a matter
of months,
what will its leaders do next?
(2-3か月で核兵器を製造する能力をイラン
が手に入れたとみられる中、同国指導層の
次の動きは?)
Amin Naeni
オーストラリアのDeakin大学の市民権と
グローバル化に関する研究所で、博士号
候補
2023年4月11日
Atomic Energy Organization of Iran/AP
もはや、これに構ってられん~~
イランと西側諸国の間での、イランの核開発
プログラムに関する交渉は従来から一進一退
を重ねてきているが、またもや両者間の
食い違いのため足踏みしている。
アメリカのアントニー ブリンケン国務長官は
交渉テーブルを再構築する 「機会をつぶした」
としてイランを非難、バイデン政権にとって
この交渉はもはや優先事項ではないという
主張を保持している。
一方のイランは、実際に核兵器を製造
できる地点にじりじりと近づいているようだ。
IAEAの査察官たちによれば、イランは
すでに84%のウラニウム濃縮を実行して
おり、核兵器に必要となる90%濃縮まで
後わずかだ。
アメリカの統合参謀本部議長マーク ミリー
大将 (General Mark Milley)がこの3月
終わりに米国下院に述べたところでは、
イランは 「2週間もかからずに」 核爆弾を
製造するに充分な核分裂性物質を保有して
おり、<核爆弾部分だけでなく完成品として
の> 核兵器自体も数か月で製造できる。
こうした展開の中、<イランと西側が>
合意に至る余地はあるのだろうか?
アメリカの政治専門ケーブル チャネル
C-SPANによるTweetからの引用
Mark Milley議長: 「イランは2週間も
かからずに核爆弾を製造するに充分な
核分裂性物質を製造でき、核兵器自体も
数か月で製造できる」
これじゃ、目の前しか見えない ・・・
私の点描練習
核交渉の視野狭窄
この2年間、アメリカとEUは <2015年
締結の> 核合意を再建しようと躍起だった。
Joint Comprehensive Plan of Action
(JCPOA、包括的共同作業計画) という
この合意だが、2018年にアメリカのドナルド
トランプ大統領 <当時> が廃棄した。
だが西側の再建努力はいまだに結実して
いない。これは、イラン側が 「過剰な要求」
しているためだとされている。そうした要求の
一例として、アメリカが認めるアメリカ国外
のテロ組織のリストから、イスラム革命防衛隊
<というイランの武装政府機関> を除外せよ
というものもある。
そうした困難にも関わらず、JCPOAは今も、
イランの核プログラムに対する唯一の対処
策だ。アメリカは確かにこの交渉を優先課題
から外してはいるのだが、まだこの交渉が
終わってしまったとの正式な発表もして
いない。
そうした視野狭窄に陥ると、2015年以降の
変化やイランにおける全般的な意思決定の
パターンを見落とすことになる。
この核合意を支持する勢力はよく、この合意
によってイランの核開発能力が大きく制限
されたと主張しているのだが、イランの核
プログラムは実際にはわずか2年間で拡張
されている。さらに近年には、革命防衛隊に
関連しているニュース情報源によれば、
イランは 「正当な理由で核爆弾を製造する
科学的手法をあきらめることはない」
とのことだ。
慎重に、ゆっくり ~~
現時点での重大な問題とは、イラン指導層が
次にどう動くかだ。ウィリアム バーンズ
CIA 長官がこの2月に述べたところでは、
イランの最高指導者はまだ核兵器製造の
決定を下してはいないと同長官は認識して
いる。
では、当のイラン指導層はどう考えているの
だろうか?こうした質問に答えるためには、
イランの歴史における意思決定のパターン
が重要な要因となるが、それが広く忘れられて
しまっている。
<ここにもTweetの引用がありますが、省略>
念入りな審議という歴史
1979年のイスラム革命以来今まで <それ
以前のイランは世俗的な王国でしたが、この
年にイスラム革命がおこり、イスラム共和国に
なりました>、イランの指導者たちは重大な
決定を下す際には大変慎重で時間のかかる
アプローチを取ってきている。
イランでこうした時間がかかる意思決定の
プロセスを採用している根底には、政権を
長く存続させたいという不安感がある。
この40年間、イランの政権は国内国外
両面での各種脅威に対抗してきているのだ。
例として、イスラム革命の翌年、1980年には
<イラク軍が侵攻して> イランVSイラク
戦争が始まったのだが、その停戦と和平
交渉をイランが受諾するには8年を要した。
ずいぶん先まで ・・・
私の点描練習
さらに2003年にはイランの核開発
プログラムが世界に知られることになった
のだが、それを受けてのアメリカおよび世界
主要国との核合意に向けた真剣な交渉を
イラン当局が始めるまでには、10年を要して
いる。
また、イランが 「東を重視」 する政策を
初めて提唱したのは2000年代半ば、
まだモハムード アフマディネジャドが大統領
であったころだが、その方針に則った主要
政策をイランが策定し始めたのは2015年
のことであった。その方針の表れとして、
シリア <の内戦> そして今ではウクライナ
での戦争において、イランはロシアと軍事的に
協力している。さらに中国とも、長的な経済・
軍事・安全保障の合意を締結している。
だが、核兵器の製造は間違いなく、1979年
のイスラム革命以降にイラン指導層が下した
重要な決定の中でも、もっとも重大なもの
となろう。
西側は、どう対応できるのか?
今までのところ、こうしたイラン指導層による
意思決定プロセスの遅さが大きな要因となり、
核開発プログラムはまだ核兵器プログラム
にはなっていない。
この、イラン指導層の制約は、西側にとっては
良い機会でもある。現在イラン国内では、
各地で反政府抗議活動が巻き起こって
いるのだ。
一人の女性から ・・・
私の20分クロッキー2つ
私の20分クロッキー
こうした抗議活動はすでに何か月も続いて
いるが、それらが始まったきっかけは昨年、
「道徳警察」 に拘留されていた女性が
死亡したことであった。こうした広義の広がり
のため、国内では政権への支持の衰えが
加速、国際世界からも新たな制裁が科せ
られることとなった。
西側諸国がJCPOA再建へのこだわりを
捨て、イラン市民たちによる抗議活動への
支援を外交と経済面でのプレッシャーによって
継続するならば、イラン指導者たちには強力な
合図を送ることになろう。つまり、政権の存続に
対する脅威とは何も軍事的要因だけから
生じるわけでなく、国内からも生じ強力化して
いるのだ、という合図である。
こうした市民による抗議活動のただなか、
イラン政府高官たちや強硬派メディアが
核合意はなくなったわけではない、交渉は
今も継続中であると頻繁に力説してきたと
いう事実は重要だ。そもそもそうした勢力の
大半は以前には、西側とはどのような合意
もすべきではないと主張していたのだ。
この事実から、核交渉が失敗した場合の
リスクに対応する用意がイスラム共和国
にはないことが分かる。すなわち、<核交渉
が失敗 ⇒ 新たな制裁による> さらなる
経済ショックとなった場合には、広く市民たち
からの抗議が一層激しさを増す、という
事態だ。
したがって、イラン政府と市民の間の勢力の
バランス不安定が長く続くほど、近未来に
政権が核兵器に関する断固たる決定を下す
可能性は小さい。
したがってこれは、長期的にはさらに強固で
効果的な合意を締結するうえでの、強力な
機会をもたらしえる。
*********************
核 VS people
確かに、核問題というととかく軍事・外交と
いった面ばかりに目が向くのですが、国内
の経済事情や民主化といった要因も、
当然影響を及ぼしますよね。
「核兵器と核発電の不可分性」 という視点
からは、これは当然の結論です。原発の
誘致や推進といった問題には、その国に
おける民主主義の未熟さや情報歪曲
(たとえば、「MSRならメルトダウンし
にくいよ~」 といった面だけを訴え、
その他の諸側面での問題を言わない、
など) といった問題が絡んでいますもんね。