tw-1) (TWR) TWRとは??

TWRとは?? ー FBRと比較すれば、本質が分かる

「ビル ゲーツ氏出資の新型炉」といった感じの報道がなされている、Traveling Wave Reactor (TWR) ですが、いったいどこが「新しい」のでしょうか?

もっとも「新しい」のは、原子炉内での核燃料の分裂の進め方ですね。

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「分裂の進め方」って、分裂に種類なんてあるのかよ~~?
私の20分クロッキーより

238U –> 239Pu という「核種変換」

TWRも含めた「高速増殖炉とその親戚」の理解においては、次の「核種変換」が
カギになります。
なお、これ以降「高速増殖炉」つまり Fast Breeder Reactor のことを、FBRと
呼びますね。

核種変換の一例、FBRやTWRでは特にこの例が重要

核種変換の一例、FBRやTWRでは特にこの例が重要

つまり、ウラニウム238(いわゆる劣化ウラン)に中性子をぶつけると、
「核種変換」つまり別の元素への変身を遂げて、プルトニウム239に変身する
ということですね。

プルトニウム239は言わずと知れた核分裂性物質で、

  • 良く知られているように、高濃度では長崎型原爆の「爆薬」になります
  • 低い濃度のものは核発電所の燃料になります

なお、一般的な軽水炉の核燃料にも238Uは大量に含まれており、それに原子炉内で中性子線をぶつけているわけですから、239Puは生成されています。そして、それにも中性子線が照射されている以上、核分裂を起こして大量の熱を発生させます。そして自分は、たとえば134Xe(キセノン)や102Zr (ジルコニウム)その他アレコレに「変身」します。もちろん、この熱も発電に利用されています。

高速中性子と「熱」(遅くした)中性子

ところが軽水炉では、上の「核種変換」は部分的にしか起こりません。238Uが大量に残り、放射性物質ですからその辺に捨てるわけにはいかないし、ウラニウムの価格が高かった時代には「もったいない」ってことに。

「熱」(遅くした)中性子
それは、軽水炉では核分裂性物質に対し、「熱中性子つまり減速した中性子」をぶつけているためですね。
なぜ、わざわざ「減速」するのか?下の漫画をご覧くださいませ。

熱(遅くした)中性子と高速中性子

熱(遅くした)中性子と高速中性子

要するに、「ぶつかりやすく」するため、減速させているのですね。
この減速材としては軽水炉では、軽水つまりフツーの水を使っています。
水の分子との衝突が、中性子を遅くするわけですね。
重水を使うと、「重水炉」になります。グラファイト(黒鉛)を使うのが、
「黒鉛炉」です。なお、多くの軽水炉では「お水」が減速材と冷却材を兼ねます。

減速させている以上、中性子の運動エネルギーが小さくなっており、
238Uからの239Pu生成率が劣ります。それと、平均的な軽水炉だと核燃料の
中にある潜在的なエネルギーのうち1%未満しか使用しておらず、
あとは「核ゴミ」となっています。

対して、「遅くしない」高速中性子
これに対し、高速のままの中性子を使う原子炉では、239Pu生成率が高くなるのです。
ウラニウムが希少な鉱物とされ高額だった時代には、これに目を付け、高速原子炉を
何とか実用化しようという努力が目立ちました。実に、史上初の高速増殖実験炉はClementineという名称で、アメリカのロス アラモスで1946年から53年にかけて
稼働したものでした。
最近では、使用済み核燃料を減らすための技術として、高速原子炉は扱われている
ようです。

* なお、近年ではウラニウム価格は1950年ごろと比べかなり安くなっていますが、
大国が核武装増強のために大量のウラニウムを買い占めたりした場合、どうなるか??(上の黒いメニューにある固定ページ s-0) の「人力発電所」の漫画の下、
それにページ s-1) の終わりでも論じました)

で、FBRには「ブランケット」があって ・・・

そのブランケットに238Uなどを配置するわけですね。すると、炉心から漏れてきた
高速中性子線がぶつかって、238Uが239Puに変身するわけです。

これが「高速増殖炉では、使用する以上に核燃料が増える」と言われている
種明かしですね。なにも、魔法のように虚空からPuが現れるわけじゃ、
ありません! 「核種変換」でPuを生成しているわけです。

問題は、冷却材 ・・・ 水だと、中性子を減速してしまう

ですから、水以外の冷却材を使わないと。「冷却材」というのは、炉心で発生する熱を蒸気発生器に運び、そこで蒸気を発生させる物質のことですね。そしてその蒸気を蒸気タービン発電機に送る ⇒ 発電、というメカニズムです。

この意味での冷却材としては、何らかの物質が原発では必ず必要になります。
そうでないと、タービンを回せないので、発電ができません。
逆に言うと、原子炉なのに発電タービンとそれに至る冷却システムがないものが
あれば、「純然たるPu製造装置」ではないかと疑う必要があります。
(たとえば、上の黒いメニューにある固定ページ b-3) や d-1) をご覧ください)

FBRの構造、プールに浸す場合の例

FBRの構造、プールに浸す場合の例

上の図にあるように、典型的なFBRの場合、原子炉の熱を運び去るのは
液体ナトリウムという溶けた金属で、熱交換器でその熱で水を沸騰させて
蒸気を発生させます。

このナトリウムが曲者で ・・・

空気と接触すれば ・・・
041105化学・融けて液体になったナトリウムは空気中の水と反応し燃える – YouTube

水と接触すれば ・・・
【高校化学】ナトリウムと水の反応 Reaction of sodium and water – YouTube
といった具合です。

もう一度上の概略図をご覧ください。ナトリウムの熱で水蒸気を発生させる装置の中では、当然のことながら、水とナトリウムが隣接しております。このパイプに
亀裂など入ったら?大変なことになりますよね。これが、ナトリウム冷却式原子炉に
共通の致命的な問題点だと、すぐにわかりますよね。

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技術的なお話は、嫌い ・・・
私の20分クロッキーより

話は、ようやくTWRに

で、上述のFBRでは炉心の隣に「ブランケット」という場所を設け、そこで
238U –> 239Puなどの核変換を起こしていましたよね。
話を分かりやすくするため大変乱暴に言ってしまえば、
この核変換をブランケットではなく炉内で起こし、
核燃料(として使っている物質)中の238Uなどを239Puなどに変換
⇒ その239Puなども、核分裂させ燃料として使う
⇒ 結果、炉内に残る放射性物質(使用済み核燃料)を減らす
というのが、TWRです

その炉心での反応の進行をかなり概略化した模式図で示します。

TWR炉心の燃料棒集合体、かなり簡略化した説明のための模式図

TWR炉心の燃料棒集合体、かなり簡略化した説明のための模式図

炉内核燃料棒集合体の、ある程度反応が進行した状態:
1 – 中央: 核分裂生成物と、使用済みの核燃料
2 – そのまわり: 核反応で出来た239Puなどが核分裂
3 – さらにその周囲: 中性子照射で、239Puなどが生成
4 – 外側:  238Uなどの「燃料」がまだ未反応で残っている(これから反応)

中央部に限っては従来からのウラニウム核燃料があって、それを核分裂
⇒ 中性子線が発生、周辺の238Uなどを反応させる
⇒ 発生した239Puが核分裂 ⇒ さらに、周辺(外側)の238Uなどが239Puに
⇒ 反応が進むよう、燃料棒をロボットで繰り返しシャッフルしながら、
核分裂反応は徐々に外側に広がっていく
という仕組みです。

炉内の核反応に特徴があることがお分かりですよね。これがTWRの「新しさ」で、
これにより
・ 放射性物質内にある潜在的エネルギーを、軽水炉などよりも効率的に利用できる
(ウラニウム燃料が少なくて済む)
・ それは同時に放射性物質の使用比率が高いということなので、「放射性の残り物」(使用済み核燃料)が少なくなる
・ 従来の軽水炉のように定期的に核燃料を交換する必要がない
(一度燃料を充填すれば、廃炉まで燃料交換不要、という主張も)
⇒ 燃料交換はproliferation riskの発生する問題タイミングだが、それをなくせる
・ 上述の2つの理由から、使用済み燃料の再処理をおこなわず、
そこからのproliferation riskも減らせる
といった利点が挙げられています。

まあ、そうはいってもTWRはまだこれから実証炉建設していこうという段階で、実用化されているTWRは2021年11月現在、世界に存在しないのですが

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先生、もう疲れました~~
私の20分クロッキーより

そして問題は、冷却材

とにかく、上の主張されている利点だけを見ると、反対する理由がない原子炉のように見えるかも~~
でも、本当にそうなのか?

ある見方をすれば、

FBRでは炉心の隣のブランケットで核種変換を行っていたのを、炉内で行うようにしたのがTWR
と言えなくもないでしょ?
そして問題は、冷却材。ワイオミング州にビル ゲーツさん出資のTerraPower社が
これから作る実証炉も、やはりナトリウムを冷却材に使うそうです ・・・

20-min croquis + bkgrnd added later / 20分クロッキーに、後で背景を咥えました
技術のお話ばっかりで、イヤになった~~
私の20分クロッキーより

ただし、今回のTerraPower社の実証炉では、溶融円の熱貯蔵システムも

これはTWRに固有のメカニズムじゃありませんが、TerraPower社は現在報道されて
いる新型炉では、溶融塩 (塩 [下記に説明] を高温で融解させたもの、ただ具体的に
どの塩を使うのか、報道が見つかりません) で熱を蓄積する装置も採用するようです。これにより、夏の昼下がりのように電力需要が増大するときには、原子炉からの
熱による発電に加えこの蓄積システムの熱も用いて発電量を増やし、逆に
夜間など電力需要が縮小する時間には熱蓄積システムに熱を蓄える、
とのことです。

風力や太陽光発電の発電力には変動がつきものなので、この熱蓄積システムで
TWR発電所からの出力を調整、再生可能エネルギーの状況に合わせた発電を行う
ようですね。私は確かに、核兵器と核発電の両方に反対しておりますが、
たとえ原発メーカーのやることであっても、改善がみられる点があれば、
その努力は評価します。
ワイオミング州はアメリカでも風力発電が盛んな場所でして、世界的には
原発メーカーも再生可能エネルギーへの補填を前提に発想するようになっている
ことが分かりますよね。そうした発想ができていないのは、日本の一部政治家たちか

* 化学用語で塩とは
酸性物質の陰イオンと塩基性物質の陽イオンとがイオン結合した化合物のことです。
たとえば:
HCl (塩酸) + NaOH (水酸化ナトリウム) à NaCl (塩化ナトリウム) + H2O (水)
という中和反応では、NaCl という「塩」ができます。

長い説明をここまでお読みくださり、ありがとうございます!
次回の固定ページ tw-2) ではTWRの事故と廃棄物に関する安全面での問題点を、
その次の tw-3) ではproliferation riskを、
それぞれ考察しますね。

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