t-1) (トリチウム) アメリカの商用原発でのトリチウム製造

t-1) (トリチウム) アメリカの商用原発でのトリチウム製造

まず、アメリカの商用原発での「意図的な」 3H(トリチウム)製造という事実

ページ t-0) で、アメリカのDOE(エネルギー省)がわざわざ新技術を開発して、商業用原発(軽水炉)でのトリチウム製造を始めたことを紹介しました。

それについて、同じくアメリカ原子力規制委員会による2005年6月付のTritium Productionという文書から、さらに抜粋・日本語化してみましょう。DOEが極めて意図的に商用原発でのトリチウム製造を始めたことを、しっかりとご理解いただけるはずです。

原文は以下に:
Fact Sheet: Tritium Production. (nrc.gov)

説明のための概略図ですよ

説明のための概略図ですよ

(私による日本語化)

商業用軽水炉原発での、トリチウム製造

このトリチウム プログラムの最初の段階では、アメリカの原子力規制委員会(NRC)がエネルギー省(DOE)からの(中性子線)照射テストの提案を評価した。トリチウム生産用可燃性吸収棒(tritium-producing burnable absorber rods、TPBAR)を含んだいくつかの各燃料集合体を、商業用原子炉の中で(中性子で)照射するというテストである。NRCはその結果をNUREG-1607というレビューの中に記しており、これは一般に公開されている。このテストあるいは実証実験では、1回の燃料サイクルの間に炉心に32本のリチウム棒を配置した。DOE はTVAと契約を結び、テネシー州スプリング シティー近郊にあるワッツ バー(Watts Bar)原発で、この1回だけの確認テストを実施した。1997年4月、TVAはワッツ バー原発の施設の変更を申請した。NRCは1997年9月にTVAに対して変更許可を出し、トリチウム製造棒の照射テストを承認した。

このリチウム棒を炉心に配置したのはワッツ バー原発が最初の燃料交換で停止していた期間のことで、配置の翌月には商社が始まった。32本のトリチウム製造棒を、1つの燃料使用サイクルの期間(約18か月)にわたり照射した。その後、1999年春の燃料交換のための原子炉停止時期に、製造棒を原子から取り出した。取り出した製造棒をDOEが原発敷地の外に運び出し、非破壊検査と照射終了後破壊検査とにかけた。こうした検査の目的は、TPBAR設計手法(の効果や性能など)を確認し、分析モデル作成とモデル作成の前提事項をテストするための情報を集めることにあった。こうした検査やテストの結果、TPBARが予想通りの働きをしたことを確認できた。製造棒は通常の可燃性「中性子毒」(原子炉内に存在し、中性子を吸収して核分裂反応を低下させる物質)として作用するので、原子炉の作動に対する影響は最小限度のものであった。

プログラムの第2の段階では、トリチウムの製造に焦点を定め、商用原発をトリチウム製造に使用することに伴う技術的ならびに許認可の問題の評価と解消については、NRCがDOEを支援した。トピカル レポート(話題報告)でDOEが提出した安全性評価をNRC が検討した。このNRCによる安全性検討は1999年5月にNUREG-1672という文書で公表されており、その検討の内容を記すとともに個々の原発に特有のインターフェイス関連の問題を明確化している。こうしたインターフェイス問題は、トリチウム製造許可を必要とする認可内容の変更要請の根拠として、対処せねばならないものだ。

2001年8月20日、TVAはワッツ バー原発の稼働許可内容を修正して各燃料使用サイクルで炉心に最大で2304本のTPBARを配置し照射できるよう、申請を出した。NRCは2002年9月23日にこの申請を承認しこの変更を許可した。さらにTVAはその後、ホウ素の濃度に関する要件を軽減してほしいとの申請を出した。ホウ素濃度によって、炉心に配置し照射できるTPBARの本数が変わる。2003年10月8日、NRCは認可内容の変更を認め、ワッツ バー原発炉心でのTPBAR本数を240本までと制限した。実生産用数量の初めてのリチウム棒が製造され、ワッツ バー炉心に挿入されたのは2003年秋の燃料交換のための原子炉停止期間中のことだった。このTPBARに1つの燃料使用サイクルの期間中、中性子線を放射し、2005年3月に終了した燃料交換サイクルの間に炉心から取り出した。この240 本のTPBARをまとめ、2005年夏にDOEへと輸送する計画であった。 さらに別の240 本のTPBARを、(2005年6月)現在の核燃料使用サイクルの間にワッツ バーの炉心に配置する計画だ。

やはり、きわめて概略化してますよ

やはり、きわめて概略化してますよ

ワッツ バーの場合と同様に、NRCは2003年12月1日付でもう1か所の許可内容変更を発し、セコイヤ原発(Sequoyah Nuclear Plant)の1号機と2号機でのTPBARの照射を認めている。原子炉事故の被害軽減のために保持するホウ素の濃度に応じて、実際に挿入できるTPBARの本数は変わる。だがDOEが必要としているトリチウムの量は限られているので、セコイヤでは現時点では炉心にTPBARを挿入する計画はない。
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これで、アメリカが商用原発(軽水炉)の一部を使用して、意図的に3H (トリチウム)を製造しているという事実をご理解いただけたと思います。

実はこれ、「核発電と核兵器の不可分性」が明白に表れている実例なのですが、その詳細はページ t-2) で。

実は、こんなに深刻な事実 ・・・

実は、こんなに深刻な事実 ・・・


次に、アメリカの対中国核物質と2H(デューテリウム)禁輸

実はこれについては、すでに本ウェブサイトのHomeのところ、10月8日の投稿で述べております。上の黒いメニューの左上、Homeという項目をクリックして、10月8日の記事までスクロールダウンしてください。

アメリカのNRC(原子力規制委員会)、中国广核集団(CGN)とその関係への放射性物質と重水素(2H、デューテリウム)の輸出を禁止

そのNRCによる指令本文は、下記にございます。
https://www.federalregister.gov/documents/2021/10/01/2021-21342/order-suspending-general-license-authority-to-export-radioactive-material-and-deuterium-to-china

このNRCによる輸出禁止の指令を10月8日にも紹介しましたが、あえてもう一度一部を日本語化して紹介しましょう。

(私による日本語化、もう一度)

Order Suspending General License Authority To Export Radioactive Material and Deuterium to China General Nuclear (CGN), CGN Subsidiaries, or Related Entities
(中国の中国广核集团(China General Nuclear、CGN)及びその系列各社、関連団体への放射性物質と重水素の一般的輸出許可権限を一時停止する指令)

アメリカ原子力規制委員会からの通知、2021年10月1日

発令機関:
Nuclear Regulatory Commission(アメリカ原子力規制委員会)

行動の種類:
指令、発令

要旨:
アメリカ原子力規制委員会は本指令を発令、NRC規制の下で、中国广核集团(China General Nuclear、CGN)及びその系列各社、関連団体への放射性物質と重水素の一般的輸出許可権限を一時停止する。

日付:
本指令は、直ちに発効する。

中略

・・・・ アメリカ行政府は、・・・ CGN及びその系列各社、関連団体への一般輸出権限を一時的に停止することがアメリカの国家安全保障を保ち、また1954年の原子力エネルギー法(改訂後)の趣旨に則り米国全体の防衛と安全保障とを強化するために、必要であると判断した。本決定は、2018年に行政府が定めたアメリカから中国への民生用放射性物質の輸出権限を認めるうえでの枠組みを拡大したものである。そのため行政府では、・・・(以下省略)

日付: 2021年9月27日

弾丸も、「強化」弾丸も、ダメ!!

弾丸も、「強化」弾丸も、ダメ!!

この禁輸決定について、日本語メディアの一部では「中国の電力不足を機会にした、アメリカの中国いじめか?」というような理解が流れていますが、だったら放射性物質の禁輸だけでよいのでは?今の主流は原発では235Uを主に燃料としていますが、235Uは確かに放射性物質ですからね。でも、重水素(2H)は??中国の商用原子炉は、2021年10月現在、ほとんどが軽水炉でして(中国の原子力発電所 – Wikipedia)、重水を使うものはわずかですから、なんで重水素を禁輸対象に??

さらに、上で紹介している指令そのものに「… アメリカの国家安全保障を保ち、また … 米国全体の防衛と安全保障とを強化」とあります。

アメリカが意図的に商用原発で3H(T、トリチウム)を製造している狙いも、中国CGN関連への2H(D、デューテリウム)輸出を禁止した理由も、核兵器と2H(D)そして3H(T)がどう関連するのかを理解すれば、すぐに「なるほど」となります。

その関連について、次ページ t-2) で説明しますね

 

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