yards-4) (カネ) 廃炉ファンドの悪用? II
2024年4月
では、yards-3) で前半を紹介したKevin
KampsさんのThe Nuclear Reactor Next
Door、後半を。
原文は
Press Release-THE NUCLEAR REACTOR NEXT DOOR: Why A Company With Zero Nuclear Reactor Operating Experience is Receiving Over $8 Billion to Restart Palisades – Beyond Nuclear
やはり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
******************************************
キャスクの例
今回のpodcast でKampsはさらに、
ミシガン州のシャルヴォワ(Charlevoix)
とペトスキー近郊のビッグ ロック
ポイント原発で大量の放射性物質漏出
が何度かあった事故についても説明して
いる。この原子炉は無論閉鎖され、鉄道
で運び出されたのだが、核ゴミの巨大な
管理キャスクは今も残っている。その
現場は、ミシガン湖畔の美しい観光地
なのだが。
かくして今までに3基の原発用原子炉
が閉鎖され、2基が廃棄された結果、
現在ミシガン州で稼働している原子炉
は3基だけだ。モンロー郡ではFermi 2
が、ブリッジマンではCook 1 と2が、
それぞれ稼働している。
こうした問題のため、核発電に対する
市民の不信が募っている。そうした
不安に加え、(事故当時はソヴィエト
連邦であったが)ウクライナにある
チョルノービ原発事故、さらに福島
第一での3基の原子炉のメルトダウン
があって、不信はなおさら高まって
いる。
そうした悲劇を受けて日本政府や
ドイツ政府は数十基の原子炉を閉鎖
した。そうした決断の重大な根拠の
一部として、こうした未曽有の大災害に
よる多数のがん罹患やその他疾患の例が
信頼性高く文書化されている。
「このゴミ、どこに持っていくねん?」 「それが、未定でして」~~ 「どないせえいうねん??」
Holtec 社が直面している業務上のもう
1つの大きな課題として、既存原子炉と
廃炉決定済みの原子炉との両方で一時
的に保管している使用済み核燃料ゴミ
を恒久的に保管できる場所を見つけねば
ならない。アメリカ全体での原発にある
使用済み核燃料すべてに含まれている
プルトニウム239の量は、アメリカに
あるすべての核兵器に含まれるプルト
ニウム239の総量を上回る。再処理を
行えば、この使用済み核燃料のプルト
ニウムの一部は、核兵器に使用できる。
そのため、商用原子炉からの照射済み
核燃料の再処理には、深刻な
proliferation risk(核兵器製造につな
がってしまうリスク)がつきまとうの
だ。
Holtecはニューメキシコ州に全米向け
の核ゴミ保管施設を解説しようとして
いるのだが、全米規模で使用済み
核燃料を輸送するネットワークが必要
となり、そのための準備が必須だ。
だがこれはあまりにもリスクが高い
提案であり、既に環境団体の連合が
反対訴訟を起こしている。その重要な
例として、テキサス州政府とニュー
メキシコ州政府、ならびに連邦下院
議員たちの連合がある。
パリサデスでは、そうした放射性の
使用済み核燃料の一部は輸送船で
ミシガン湖上を運ばれ、マスケゴン
というミシガン州の町へと到着する。
この輸送は2002年にアメリカの
エネルギー省が策定したもので、
今ではHoltecならびに政府の役人
たちが検討を続けている。これが
実施された場合、淡水の貯蔵庫と
しては世界最大である五大湖の
分水界が、将来、脅かされる
危険性がある。
水道源に核ゴミって~~!
その五大湖の豊富な淡水はアメリカ
8州ならびにカナダの2州、そして
多数の先住民居住区の4,000万人
以上の市民たちの飲料水となっている。
使用済み核燃料を収めたキャスクは
120から180トンほどあるのだが、その
うち1つでも輸送船から落ちてミシガン
湖に沈むなら、その引き上げは決死の
ミッションとなってしまう。
Kampsによれば、そうしたキャスク
から放射性物質が漏れ出せば、危険な
放射性物質でミシガン湖は汚染されて
しまう。さらに困ったことに、キャスク
に亀裂などが走りそこから水が浸入
すれば、使用済み核ゴミの中で意図
せざる臨界状態が発生してしまう
危険性すらある。
こうした核ゴミの中にはかなりの核分裂
性物質、例えばウラニウム235やプルト
ニウム239が含まれているため、そう
した核物質が臨界量に達した場合、
ミシガン湖の水がそこに入り込むと
中性子の減速剤として作用してしまい、
核ゴミの中で核分裂の連鎖反応が
始まる。<中性子の減速材については、
上の黒いメニュー(項目は基本的に
アルファベット順)にあるページ tw-1)
の中ほど、「高速中性子と「熱」(遅く
した)中性子」という段落を参照>
すいません、作ってるうちにコストが膨張しまして~~
上述のような諸問題に加え、Holtec と
原子力規制委員会とはパリサデスと
ビッグ ロック ポイントの両地点での
新規原子炉建設のペースを同時に加速
させようという計画なのだが、そこに
不都合なニュースが業界から飛び込ん
だ。<両地点とも小型モジュール式
原子炉つまりSMRを建設する計画
だったが> そのSMR(といっても、
実際には小さくもなければモジュール
式でもないのだが)としては初の
建設計画がアイダホ州であったのだが、
それがこの1月にキャンセルになった。
このキャンセルの原因となったのは、
コストが膨張しすぎて所有者の手に負え
なくなったことだ。億万長者のビル
ゲイツなどはSMRを推進していたのだ
が、このキャンセルに態度を変え、
全米でSMR推進のメディア広報を称賛
していたのだが、ゲイツはそうした
広報に自分の資金をつぎ込んでは
いない。
こうした各種の問題のため、1954年に
当時のアメリカ原子エネルギー委員会
(Atomic Energy Commission)の委員
長だったルイス ストロースが作り
上げた核エネルギー産業の神話が
崩れた。彼については先日の映画
Oppenheimerでも取り上げられている。
ストロースはサイエンス ライターの
グループに対し、核エネルギーは「測定
のしようもないほど、安価なエネルギー
になる」と約束していたのだ。
無料の電気が使えるようになりまっせ~~
それから70年を経て、The Nuclear
Reactor Next Door のPodcastで
Kampsが指摘しているように、
ストロースの未来予測のための水晶は
壊れていたようだ。原発依存率の高い
フランスなどの諸国のエネルギー料金
は、核エネルギー以外のエネルギー源に
頼っているコミュニティーの料金より
もずっと高額な場合が多いのだ。
その要因の一部として、建設コストや
稼働コストの高さ、核燃料の費用、
法規制に伴う支出、安全性やセキュ
リティ関連の問題、そして放射性
廃棄物の処分という課題がある。
しかも原発の歴史とはメルトダウンや
原発の放棄、建設のキャンセル、
何十億ドルというコスト超過などの
歴史に他ならず、そのため苦悶を
続けるアメリカの核発電産業はHoltec
のパリサデス原発再稼働を、核発電
よりも安全で信頼性が高くコストも
かからないエネルギー源との競争を
かわすための手段ととらえているのだ。
このHoltecの野望は不可能なものと
思えるのだが、それでも核エネルギー
業界の一部はそれを、政府からの
潤沢な補助金で廃炉のいったん
決まった原発を死者から蘇らせる方法
と捉えている。Holtecが原発を稼働
させようとするのは初めてのことなの
だが、稼働の遅れを恐れて2025年8月
にはパリサデスを再稼働するとして
慌てている。
この家、もう取り壊すだけやから~~
Kampsによれば「こうした大急ぎの
スケジュールでは、この原発で何十年も
未完になっているシステム修復や再装填、
交換、安全に欠かせないアップグレード
をすべてHoltecが完了できるはずが
ない。パリサデス原発の以前の所有者
だったEntergy社はこの原発を15年間
所有していたのだが、こうした修理や
アップグレードをまったく実施して
いない。実施せず、単純にHoltecに
売り飛ばしたのだ。パリサデス原発は
老朽化に伴う劣化が著しく、そのため
そうした修理やアップグレードの中
には経費がかかり過ぎるものや実行
不可能なものもある。その例として、
原子炉の圧力容器には亀裂が走って
いる。この10年間、アメリカでは
記録的な数の原子炉がシャット
ダウンされたのも、こうした課題が
あまりにも深刻であるためだ。
パリサデスも、廃炉にすべきだ」
そうした圧倒的な障壁があるにも
関わらず、この再稼働計画を原子力
規制委員会(NRC)のクリストファー
ハンソン委員長は歓迎している。
彼の出身は、パリサデスの隣にある
サウス ヘイヴンという町だ。
同委員長と委員たちの多数派、さらに
NRCのスタッフたちはHoltecの願い
に赤いカーペットの通路を設け、昨年
は大規模な会合を7回も開いている。
この前例なき再稼働を実現するための
法的な筋道を、ゼロから作り上げる
ためだ。
核社会の闇
Kampsが指摘するように、Holtecが
パリサデスで実施しようと目論んで
いるマスター プランは、そもそも
無理なものだ。現実問題として、
再生可能エネルギーや蓄電、
エネルギー効率の改善といった安全
でクリーン、放射線も出さない技術を
利用したほうが、ずっと短期間でコスト
効率も大幅に良く電力を供給できる。
原子炉に取りついて離れないセキュ
リティや安全性、放射性廃棄物の処分、
法規制などの問題がないからだ。
パリサデス原発とは違って、こうした
原発に代わる電力供給技術は
チョルノーヴィや福島第1、Fermi 1 と
いった大事故を起こさない。本来Holtec
はこの原発を廃炉するために買い取った
わけで、それを今まで原発稼働実績の
ない同社がはたして再稼働できるのか、
その能力をKamps は疑問視している。
この<Holtecによる買取からの一連の>
流れは一種のおとり商法、ないしは
詐欺行為なのだ。その証拠として、
2022年6月28日にパリサデス原発を
買い取ったのだが、その1週間後に
同社はエネルギー省に対し数十億ドル
の補助金を申請したのだ。
Kampsによると、このパリサデス原発
の再稼働用の補助金83億ドルを風力や
太陽エネルギー、その他の再生可能
エネルギーや蓄電、電力需要を減らす
ための技術につぎ込めば、ミシガン州
にある地元企業各社では、原発再稼働
よりも遥かに多くの雇用を創出できる。
風力というリソースでは、ミシガン州は
特に恵まれている。こうした各種
エネルギー源は効果が立証されており、
原発を新設するよりもはるかに短期間
で安全に電力を供給できる。しかも
消費者にかかる料金も原発の場合より
安価で、福島第一のようなメルト
ダウンと放射線災害の心配もない。
エネルギー省にとっても今回の
パリサデス再稼働計画は、タイミング
が最悪だ。この原発は過去に、多数の
セキュリティ規定違反や不祥事を
起こしてきた。現在ウクライナの
原子炉多数の周辺には戦闘地帯が
あって戦闘が行われており、安全と
セキュリティを脅かしている。この
事実からも、核発電というものに内在
するセキュリティ面でのリスクが
どれだけ深刻なものかが分かる。
2011年の福島第一の核災害を受け、
日本は原発を停止させた。そのうち
7基を再稼働しようという計画があった
のだが、2024年1月1日に原発所在地
の近辺を震源とする地震が発生、計画は
一時停止になっている。こうした社会的
なイメージの悪さを払しょくするため、
核発電業界はロビー活動やキャンペーン
に毎週100万ドルを費やしている。
核発電業界の特に重要なサポーターの
一人が、前ミシガン州知事の
ジェニファー グランホルムだ。2007年
彼女が知事であった州政府はパリサデス
原発の廃炉用信託ファンドから数億ドル
を原発電力企業へと純利益として転用
支出することを承認した。現在、
グランホルムはエネルギー長官を務めて
おり、核発電を熱心に推進している。
現在のミシガン州知事グレチェン
ホイットマーとともにパリサデス再稼働
の動きを指揮している。
税金→補助金→無茶な電気料金が分からなくなる
パリサデス原発からの電気は再生可能
エネルギーによる電気よりもはるかに
高額で、その差を埋めるには政府からの
補助金がさらに必要となる。パリサデス
の場合、その異常に高価な電気料金を
緩和するため、アメリカ農務省が
パリサデス電力の利用者に供与する
補助金が利用される。そうした補助金
の財源とは、ほかならぬアメリカの
納税者たちから集めた税金なのだ。
つまり原発の経済とは公金を魔法の
ように転用して成り立っているもので、
そのため電力会社や原発稼働業者など
による高額を投じたロビー活動や広報
キャンペーンが際限なく続き、加速
されていく。さらに原子力規制委員会
で利害の衝突が発生する恐れもある。
管轄下にある原子炉の稼働企業から
集める <査察などの> 料金が、この
委員会の主な財源となっている。
つまり、パリサデスを再稼働すれば、
この委員会としては財源が増えるのだ。
Kevin Kampsとその同僚たちはアメリカ
全土の原子炉をシャットダウンせよと
いうキャンペーンで重要な役割を演じた
ところで、パリサデスの再稼働計画を
やめさせようという運動も進捗を遂げて
いる。
「ゾンビ―原子炉を再稼働するという
前代未聞のHoltecの取り組みに、我々は
あらゆる機会を捉えて反対する。同時に、
SMR新設の計画にも反対する。税金から
の投入と電力利用者向けの補助金支出も
157億ドルに達しており、なお増大中で
ある。こうした補助金の類にも反対して
いく」と、Kampsは語る。
さらに「ミシガン州政府、エネルギー省、
原子力規制委員会、Holtecにパリサデス
原発の再稼働を止めさせるよう、我々は
意を決している。この再稼働には安全性、
セキュリティ、健康、環境の各面で極度
のリスクがある。五大湖の沿岸とは、
放射性物質のロシアン ルーレットを
やらかすには、世界でも最悪の場所の
1つだ。<核災害などが発生すれば>
我々は何もかも失う羽目になる」とも
述べている。 |