Th-2) トリウム サイクルの proliferation risk

念のため、もう一度断っておきますが ・・・

・・・ トリウム サイクルに関しては「事故危険性」(← 奇妙な
日本語ですが) は取り上げません。
上の黒いメニューにあるページ Th-1) ですでにお断りしたとおりです。

・ 1つには、トリウム サイクルはMSR (Molten Salt Reactor、
しつこいようですがSMRとは別物) と大変相性が良いとされており、
もし実用化されるならMSRでの使用になりそうです。ですから、
次回アップロード予定のMSR関連のページ シリーズをお読みくだされば、
トリウム サイクルの事故危険性についても実質的にはお分かりいただけるか
と思います。
・ これもやはりページ Th-1) で述べましたが、トリウム サイクルの
推進勢力が最もアピールしているトリウム サイクルの利点は、
「事故を起こしにくい」の類ではなく、「proliferation riskが軽水炉など
より小さい」というものです。

ここで気づいてほしいのですが ・・・

そもそもIAEAという国際機関の存在そのものが物語っているように、
日本以外では「核発電のリスク」といえば、まずはproliferationなのですね。
そして2022年4月現在、ウクライナ情勢を見ても明らかなとおり、
proliferation以外にも「原発が巨大ダーティ ボムになってしまうリスク」、
「敵国が侵入してくる際の“言いがかり”となるリスク」なども
現実化しています。

原発を核兵器や軍事から切り離し、「電力とCO2 VS 事故の危険」という
2項対立に矮小化してしまうと、もはや現実の世界へのrelevanceのかなりの
部分を失ってしまいかねません。

Wanna Get Nuked?
“Wanna get nuked?”
私の昔の作品より

従来の日本市民の多数派は ・・・

どうも、1950-60年代に「平和利用」というマインド コントロールに
騙されてしまったのでは?これについては、ページ e) でも述べました。
この呪縛を解いて、核兵器~核発電を「不可分複合体」として捉え、
その廃絶を目指す動きが始まることを、心から私は願っております!

で、トリウム サイクルの話に戻って

Proliferation riskが小さいという主張の根拠は、すでにページ Th-1) の
「★3  proliferation riskが小さいと主張されている」という段落で
述べた通りです。

つまり、
U232は68.9年という比較的短い半減期で自然に崩壊し、
Rn (ラドン) 224 ——-> Bi (ビスマス) 212  –>  Tl (タリウム) 208
などへと核種変換。このRn 224やBi 212、Tl 208などが強烈なγ線を発する。

そのため、U 233で原爆を作っても、必ず内部でU 232が発生、さらに
それがTl 208など
へと変身していき、強烈なγ線を発してしまう。そのため
・ 原爆の電子機器が壊れる
・ 敵国やテロ組織に発見されやすい
・ 製造作業が作業員にとって危険なものとなるので、リモート
コントロールでの作業が必要
ということになる。だから、トリウム サイクルは原発に転用しにくい
~~ と、推進論者たちは主張しているわけです。

「放火に使いようがない」という触れ込みの「安全ライター」 * 架空の商品ですよ

「放火に使いようがない」という触れ込みの「安全ライター」
* 架空の商品ですよ

「意志のあるところ、方法あり」⇒「悪意あるところ、悪の方法あり」 技術への過信は禁物ですね

「意志のあるところ、方法あり」⇒「悪意あるところ、悪の方法あり」
技術への過信は禁物ですね

実際には、とっくに兵器化されてるよ~~

ですが、もしその通りであれば、U233の原爆はまだできていない
ハズですよね。
ところが、現実にはアメリカ軍その他がとっくに製造し、
爆発実験にも成功しています
たとえば、英語版Wikipediaの
Uranium-233 – Wikipedia
にある記載を私が日本語化して紹介してみましょう。
いつもどおり、< > 内は私からの補足説明です。

1994年、アメリカ政府はそれまで機密扱いとされていた1966年のある
覚書を公開した。それによれば、ウラニウム233は核兵器の爆薬として
充分に使用できるものであることが証明されたとしている。ただし、
プルトニウムに勝る爆薬となる場合は稀だ、とされていたが。仮に
既存の核兵器がPu 239 ではなく U 233をベースにしていたとしても、
<カリフォルニア州バークレーにある連邦研究機関である>
リヴァーモア研究所としては、プルトニウムに切り替えようとは
考えないであろうと記されている。

<ウラニウム233にはどうしても>ウラニウム232 が混在するため、
兵器製造には面倒が伴うのだが、上述のリヴァーモアのメモによれば、
この面倒は回避できそうだという。

各種の詮索は別にしても、ウラニウム233を核兵器の核分裂物質として
使用できることは上述のとおり確かだが、このウラニウム同位体が
実際に核兵器に使用されたことに関しては、公に入手できる情報が
わずかだが存在する。

  • アメリカは1955年の「ティーポット作戦」で、METと呼ばれた
    実験用原爆コア部の爆発に成功している。このコアはプルトニウム
    とU233 を混用したものであった。その設計は「マーク7型核爆弾」の
    設計プロトタイプとして使用されたTX-7Eというプルトニウムと
    U235の混用爆心部を元にしていた。このマーク7は1951年に行われた
    「バスター ジャングル作戦」での「イージー」というテストで、
    使用されたものだ。<マーク7は、初の戦術核兵器でした>
    METの爆発は「フィゾル」と呼ぶほどではなかったのだ
    <核爆発との関連で「フィゾル」とは、充分な爆発が得られない
    ことを指します> が、METは実際には22キロトンに相当する
    爆発しか起こせず、予想されていた33キロトンには及ばなかった。
    そのため、この実験で得られた情報は、あまり価値のないものと
    された。
  • 同じく1955年、旧ソヴィエト連邦は同国初の水爆を爆破させ、
    これはRDS-37と呼ばれていたが、その分裂コアはU235とU233を
    併用していた。
  • 1998年にはインドが「ポクラン – II」という実験の一環として、
    小型爆破威力(2キロトン)の実験U233爆弾を爆発させている。
    これは、「シャクティ V」と呼ばれた。

U233の製造には、ハンフォード サイトのB原子炉など
<上の黒いメニューにあるページ b-1) を参照> 兵器グレードの核物質
製造のために最適化されていた原子炉を使用していた。

今までにアメリカはU233を合計で2トン製造してきたものと見られて
おり、その純度はさまざまである。その中には、U232の含有率が
わずか6 ppmと大変少ないものもあった。

その他、
Thorium bred Uranium-233 can be used to make atomic bombs, despite what proponents may claim. | Exposing the truth about Thorium Nuclear propaganda (wordpress.com)
(<トリウム サイクルの> 推進勢力による主張に反し、
トリウム由来のU233は原爆製造に利用可能。― トリウム核発電推進
プロパガンダのウソを暴く)
などもご覧ください。

ガン タイプとインプロージョン タイプ

ガン タイプとインプロージョン タイプ

ですから当然、トリウム サイクルのproliferation riskを指摘する声が
すでに世界で上がっています
ではさらに、このproliferation riskを扱ったFoE Australia発表の
テキストから、例によって私の抜粋・日本語化で紹介してまいります。
いつもどおり、< >内は私からの補足説明です。

Thorium and WMD proliferation risks – Nuclear-Free Campaign (foe.org.au)
(トリウムとWMD拡散リスク ― 核廃絶キャンペーン)

Thorium ‒ a better fuel for nuclear technology?
(トリウム ―― 核技術の燃料として従来のものよりも優秀?)

Dr. Rainer Moormann, ‘Thorium ‒ a better fuel for nuclear technology?’, Nuclear Monitor #858, 1 March 2018 より抜粋

・・・・ (途中から紹介します) ・・・・

それに対して <原爆の起爆方法として2種類あり、implosion型はPuの
起爆に使われ、設計や製造が面倒です。それに対して「ガン タイプ」は
ウラニウム原爆に用いられ、単純です>、ガン タイプの設計は信頼性が
高く、製造も比較的しやすい。さらにIAEAも、大規模なテロ組織で
あれば、適切な核分裂性物質さえ充分に入手できれば、ガンタイプの
設計による核分裂を利用した核爆弾を製造できると、認めている。
考えられる核爆弾は、最大で広島型原爆 (TNT火薬13キロトン相当) の
2倍から2.5倍の破壊力を有するとされる。そのためアメリカとロシアは
この数十年間、それぞれが全世界に配布してしまった高濃縮ウラニウム
(HEU) の回収に集中的に努めてきている。

<本来なら> 核兵器用のU233技術を発電だけに使用する場合、最大で
250 ppmのU232(半減期や約70年)を不純物として含有しているという
問題がある。これだけの不純物があっても核爆発能力がなくなることは
ないのだが、ウラニウム232はトリウム系列の崩壊をするため、・・・
タリウム208を産出する。これが、大変強烈な貫通力のある放射線を
発する。放射線が強烈な爆弾というものは、軍事的には望ましくない。
扱いにくいし、爆弾の電子回路を妨害してしまうからだ。アメリカでは
U232の含有率を50 ppmまでとする制限があり、それを超えるとU 233は
核兵器に適切とはみなされない。

同じ図をもう一度使いますが、ガン タイプのシンプルさにご着目下さい

同じ図をもう一度使いますが、ガン タイプのシンプルさにご着目下さい

そうはいっても、U 232によってU 233に係る核兵器拡散問題がすべて
消え去るわけではない。まず、単純なガン タイプの設計であれば、
電子回路を必要としない。さらに、核爆弾の製造過程で放射線を浴びて
しまうといっても、自爆テロリストを要するテロリスト組織にとっては、
問題にならない。それ以外にも、タリウム 208が出来るのはU 232の
崩壊系列のかなり後の方なのだ。製造したての、あるいは精製した
U-233/U-232であれば、何週間かはあまり放射線を出さず、扱いが
容易になる。さらに、U 232の生成を大幅に抑制する手法もある。
U 233を産出する際に、エネルギーが0.5 MeVを超える高速中性子を
フィルターで遮断する (たとえば、原子炉内のトリウムを減速材
レイヤーの背後に配置する、など) というものだ。そして、トリウムを
取り出す鉱石としてはできるだけ含有ウラニウムの少ないものとすればよい。

純度が大変高いU 233を手に入れる優れた方法としては、再処理設備も
統合化した溶融塩原子炉 (MSR) がある。トリウムからU 233を
産出する際に、その中間生成物としてプロトアクティニウム 233
(Pa 233)が出来る。その半減期はおよそ1か月だ。この中間生成物を
分離し、原子炉の外で崩壊するようにすれば、純粋なU 233が得られ、
これは核兵器には最適なのだ。一部の溶融塩原子炉(MSR) では、
この分離を行う設計になっている。

軍事利用でのPu 239との比較におけるU 233の利点の1つとして、
原子炉内でU 233を産出する際に、中性子線を浴びることになるが、
そこで核爆発を起こす能力にマイナスの影響を及ぼす核種の出来る量が
はるかに少ないのだ。U 235と同様、U 233 もU 238を添加すると
核兵器での使用に適さなくなる。<U 238が多い> 劣化ウラニウムを
原子炉に入れる際に既にトリウムも混合してあれば、その各核種混合物は
核兵器には適さない。だが、再処理設備を統合化してあるMSRの場合、
これだけでは充分な核兵器使用の予防にはならない。
プロトアクティニウム 233の分離を防止する必要があるのだ。
*******************

要するに、
・ Th 232 + n (吸収される)  –>    Th 233   –> (β崩壊)    Pa 233
–> (β崩壊)   U 233
半減期 ⇒            約22 min              約27 d
という核反応で出来るU 233を原子炉内で核分裂させるのがトリウム
燃料の原子炉なのだが、
・ このU 233はある種の中性子のやり取りがあると、U 232に「変身」
する。つまり現実には、
トリウム サイクルの原子炉では、必然的にU 232も発生する。
このU 232が曲者で、68.9年という比較的短い半減期で自然に崩壊し、
Rn (ラドン) 224 ——-> Bi (ビスマス) 212  –>  Tl (タリウム)
208 などへと核種変換する。このRn 224やBi 212、Tl 208などが
強烈なγ線を発する
・ そのため、トリウム サイクルなら、核兵器の「爆薬」ができにくい
というのが、トリウム サイクル推進派の主張なのですね。

ところが実際には、上の引用テキストにあるとおり、Pa 233の分離など
によって、実は核爆弾の材料に出来てしまう
ということですね。
「ウランを使わない原発」などと “もっともらしい” ことを言っても、
しょせん原子炉とは「悪魔の大量破壊兵器」を作るための機械として
開発されたもので、その「悪魔性」はトリウムを利用したところで
拭い去れないわけですね。

さがしてみたら、砲火のケースもぎょーさんあるがな!

さがしてみたら、放火のケースもぎょーさんあるがな!

上記で充分にご理解いただけたと思うのですが、念のため他の
関連テキストも紹介しておきましょう。

The Nuclear Threat Initiative (NTI、大量破壊兵器による破局の
防止を掲げる、アメリカのNPO)
Does a Thorium-based Nuclear Fuel Cycle Offer a Proliferation-Resistant Future? Not Necessarily. – The Nuclear Threat Initiative (nti.org)
(トリウム ベースの核燃料サイクルで、将来の核兵器拡散を防止
できるのか? その保証はない)

2020年10月5日

やはり、私が抜粋・日本語化して紹介しますね。例によって、< > 内は
私からの補足説明。
まず、このテキストの冒頭部。

環境に悪影響を及ぼす炭素ベースのエネルギー源から世界を卒業させ、
サステナビリティに優れ環境にやさしいエネルギー源に向かううえで、
核エネルギーは重要な役割を果たしえる。だが核エネルギーの平和利用と
いっても、ウラニウムをベースにしていたのでは、深刻な核兵器拡散
リスクを引き起こす。これは、濃縮ウラニウムは核兵器の製造にも
利用でき、しかも <核発電での> 使用済み核燃料は大変長期間、
放射性であるためだ。
****************

これでお分かりのとおり、NTIは大量破壊兵器を問題にした団体で、
必ずしも核発電に反対しているわけでは、ないようです。
そうした団体であっても、下記の抜粋個所のように、トリウム サイクルの
proliferation riskは認めざるを得ない、ってことですね。
ついでながら、必ずしも核発電には反対していない団体であっても、
proliferation riskは問題にせざるを得ない、という実例ですね。

天然トリウムに中性子線を照射してU 233 を産出すると、必然的に
有害な不純物も発生し、それらは危険なレベルのγ線が出てくる。
トリウム サイクルの推進論者たちは、こうした不純物があるから
こそ、トリウム燃料原子炉からの核ゴミは扱いに危険が伴い、
そのため本質的にproliferationしにくいのだ、と主張している。
だが、U 233の産出過程である処理をすれば、そうした不純物を
比較的少なく抑えることが可能なのだ。

核兵器用物質を製造する意図がない場合でも、トリウム燃料の
メーカーは可能な限り不純物の少ないU 233を作るよう努めるだろう。
これは、不純物が多いと、トリウム燃料の扱いに危険を伴うからだ。
アメリカは既に1960年代に、連続した核実験シリーズ用にU 233の
同位体純度の高いものを製造することに成功している。そのため、
核兵器の拡散に努める何者かが今後、21世紀の技術を悪用して同じく
高純度のU 233を製造しうることは、想像に難くない。したがって、
トリウム 燃料サイクルなら本質的にproliferationしにくいという
主張は、誇大広告だと言ってよかろう。
********************

黒いメニューにある 付録 w-4) の後半(「そして、proliferation」
以下)に紹介した、Al Goreさんのインタビューもご覧ください。
“For eight years in the White House, every weapons-proliferation
problem we dealt with was connected to a civilian reactor program. “ と
明言してらっしゃいますよね。
ご本人がおっしゃっているように、Goreさん自身は必ずしも核発電に
反対してはいないのですが、それでもproliferationは大問題だと
憂慮してらっしゃるわけですね。
これが、「世界標準」です。

日本に限っては、「反原発」と「反核兵器」が今までは分離してきたと
いうのは ・・・ おそらく1950-60年代に、日本の多数派市民が
どれだけ「平和利用」というマヤカシに騙されてしまっていたのか、
その現れ
なのでしょうね。

さがしてみたら、ぎょーさんあるがな!(トリウム⇒核兵器の問題指摘)

さがしてみたら、ぎょーさんあるがな!(トリウム⇒核兵器の問題指摘)

続いて、PHYS ORGというオンラインの科学技術関連ニュース
サービスより。英国に本拠があるそうです。

Thorium: Proliferation warnings on nuclear ‘wonder-fuel’ (phys.org)
(トリウム: 「魔法の核燃料」との声があるが、proliferationの危険性が)

Open University (英国の公立大学) によるテキスト
2012年12月5日のもの ・・・ つまりもう今から10年ほど前には、
科学技術界ではトリウム サイクルが実はproliferation-resistantでは
ないという問題指摘が行われていたことの、証拠ですね。
これは私が日本語で要約して紹介しますね。
やはり、< > 内は私からの補足説明。

新世代原子炉の理想的燃料としてトリウムがもてはやされているが、
今週号のNatureに掲載された記事で、研究者たちが実はトリウムは
それほど無垢なものではないのではと、疑問を呈している。

そのNatureでの問題指摘を投稿したのは、英国の4つの大学に務める
核エネルギーの専門家たちで、トリウム燃料は決して本質的に
proliferationしにくいわけではないと指摘している。特に強調している
のは、少量のU 233をトリウムからひそかに産出できるという点だ。
産出過程で化学的手法により、Pa 233を分離すればよいのだ。

その化学的分離手法は、平均的なラボの設備で実施できる。したがって
秘密裏に実施可能で、IAEAなどの監視を免れてしまう。

今までに行ったPa 233の分離実験からは、金属トリウムがわずか1.6トン
あれば8㎏のU 233を製造できる。これは、核兵器を作るための最小限の
量だ。しかも、それに要する期間は1年に満たないという。

ケンブリッジ大学工学部のSteve Ashley博士によれば、「トリウムには
確かに利点もあるが、今までのところトリウム燃料のproliferation
resistanceに関する社会的な議論においては、 核兵器につながらないと
いう主張ばかりが目立ってきた」
*****************

ウクライナ危機から明らかなとおり、核兵器の存在が「一人の独裁者の
乱心」に国際社会が手をこまねいてしまう大きな原因になってますよね。
やはり、核兵器は廃絶しないと。
そのためには現実上、もともと核兵器の製造設備であった原子炉での発電も、
いずれ廃絶することが必要になります。

「安全ライター」 放火不能!(ポスター) 誇大広告やろが!

「安全ライター」 放火不能!(ポスター)
誇大広告やろが!

最後に、Canadian Coalition for Nuclear Responsibilityという、
グリーンピースやシエラ クラブなど300以上の団体による
反核連合体のGordon Edwardsという方によるテキストを。
2021年12月26日付なので、かなり最近のものですね。
Edwardsさんは、その連合体を1975年に設立された方々の一人で、
科学者・核関連コンサルタントだそうです。

これも、私の抜粋と日本語化で。やはり、< >内は私の補足説明。

thorium_hype_2021.pdf (ccnr.org)

The Hype About Thorium Reactors
(トリウム原子炉関連の誇大広告)

・・・ (冒頭部割愛) ・・・

トリウムと核兵器
特に無責任な発表の1つが、トリウムなら核兵器と何の関係もない、
というものだ。実は事実はその逆で、もともとトリウムを原子炉で
最初に使用した動機とは、核兵器製造だったのだ。

・・・ (中略) ・・・

1998年、インドは核爆発の試験を幾度か実施したが、その一環として
U 233を使用した核兵器の執権も行った。その4年前、アメリカ政府は
それまで機密扱いにされていた1966年の覚書を公開したが、それに
よればU 233は核兵器の材料として十分満足できるものであると
されている。

・・・ (中略) ・・・

U 232 ― きれいな絵画中の汚点
さらに、ウラニウムの人工同位体U 232からも、面倒が生じる。
トリウム燃料原子炉ではU 233が出来るのだが、それには微量の
U 232も含まれる。このU-232 (と、その崩壊生成物)が実に強力な
γ線を放出するため、原爆の製造が困難になるのだ。U 232とその
崩壊生成物の強烈な放射線が作業員にとって危険であり、しかも
高熱を伴うためだ。だが原子炉の稼働方法を適切に調整すれば、
こうした困難を克服、あるいはまったく回避することが可能なのだ。
あまり詳細はここでは述べないが、Th 232原子が中性子を吸収すると、
Pa 232へと核種変換する。さらにこれが自然に、U 233へと変化する
のだ。だがこの2種類の原子の何れかが核種変換が完了しないうちに、
さらに中性子を吸収するとU 232原子が生成される。これが、
招かれざる不純物なのである。 だが炉心からプロトアクティニウム
原子を取り出せば、余計な中性子との衝突を回避でき、自然に起きる
核種変換が完了すればほぼ100%純粋なU 233を生成できる。
****************

もう充分ですよね? 「ウランを使わない原発」といったマヤカシに
騙されないよう、私も含めた反核勢力は学んでおくことが必須ですし、
広く一般社会がそれに騙されないよう情報発信を続けることも必要です。
その際、核発電に伴う主なリスクを「事故危険性」に限定してしまった
認識でいると、もっと深刻な軍事関連リスクを見落とした情報発信に
陥ります。

Actually, 5 minutes of sleepy hands' work / 眠る手による、5分の作業
ああ、なんという現状 ・・・
私の5分クロッキーより

ご存じのとおり、既存の核兵器保有国では、
ロシアは核兵器使用をちらつかせながら、ウクライナに侵略中
アメリカは、核配備が薄い地域への再配備を進め、また核兵器の
威力強化のため商用原発でトリチウム製造中(ページ t-1) 参照)
中国はジランタイ、ユーメン、ハミなどにICBMサイロを増設した模様
北朝鮮のミサイルについては、日本語メディアでも頻繁に報道されて
います

未保有と思われていた諸国では、
イランとのJCPOA再建交渉は、まだ合意締結に達せず
アフガニスタンのタリバン政権が核兵器に食指を伸ばす危険性は、
昨年以来指摘されている
ISISなど大型テロ組織が核兵器を保有する危険性も、以前から指摘

といった情勢でして、世界は再び核兵器が使用される危険に直面して
いるようです。
「核の平和利用としての核発電」というマヤカシに騙されている余裕は、
もはやございますまい。

では、次回のページ シリーズではMSRつまりMolten Salt Reactor
(溶融塩原子炉) を取り上げます。トリウム燃料サイクルは今のところ、
MSRで使うのが有望とされているようですので。上のThorium ‒ a better
fuel for nuclear technologyでも、MSRの危険性への言及がありましたよね。
SMRのうち、特にトリウム燃料を用いるものをLiquid Fluoride Thorium
Reactor (LFTR) と呼んだりしています。
それと、MSR以外でトリウム燃料が有望視されている原子炉タイプとして、
Accelerator Driven Subcritical Reactor (ADS、加速器駆動未臨界炉) なる
ものもありますが、これはまだ基礎研究段階のようです。2022年4月時点で
論じるのは尚早過ぎるようなので、今は取り上げません。将来、動きが
あれば取り上げますね。

なお、しつこいようですが、新型原子炉という話題に慣れてらっしゃらない
読者の方々は、MSRとSMR (Small Modular Reactor) とを混同しないよう
ご注意くださいね。SMRについては既に、上の黒いメニューにあるページ
シリーズ s-x) で扱っております。

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