if-3) (IFRとフォロワー) Proliferation risks

2022年2月

今回は、専門家の皆様のテキストや発言からの抜粋 ⇒ 日本語化が、かなり長く
なります。正直、読んで疲れるページだろうと思います。心して、お読み
くださいませ。

IFRに関しては、proliferation riskはかなり詳細に論じないといけない問題点なの
ですね。推進派は、IFRではこのリスクが極めて小さいと主張していますし、
その根拠も一見「もっともらしい」。ですが、ちょっと常識的に考えて
みると~~~


もっともらしい異空間 ・・・
私の以前の作品用「スクラッチ」より~~
「スクラッチ」つまり、絵のアイデアを検討している段階ですよ!

まず、その「もっともらしい」根拠を見てまいりましょう

IFR FaD 7 – Q&A on Integral Fast Reactors – safe, abundant, non-polluting power – Brave New Climate
にあるIFR開発団体の原子炉物理学者Dr George S. Stanfordのインタビューを
見てまいります。
もとは2001年のインタビューで、それに2010年に編集を加えたものだそうです。

(私による抜粋・日本語化、< >内は私からの補足説明)
Dr George S. Stanford. とのインタビュー。Stanford博士は原子炉物理学者で、
IFRを開発したチームのチームに所属していた。現在では、<アメリカの>
Argonne国立研究所から引退している。

・・・・・・・(中略)・・・・・・・

<インタビュワー> しかし、IFRであっても炉内などにPuができ、さらに他の
核分裂性同位体も発生することに、違いはないですよね。私には、核兵器拡散を
試みる国や組織が、そうした物質を取り出して原爆を作る可能性があるように
思えるのですが。

<Stanford 博士> 確かに、そういう指摘をされる人たちもいますが、Livermore
国立研究所の爆弾設計の専門家たちによれば、間違いです。その専門家たちは
この問題を詳細に調べたのですが、IFRの核燃料サイクルのどこであれ、
取り出したPu含有物質は処理が難しく、Puを化学的に分離しない限りは、
これでは爆弾はできないという結論でした。処理が難しいというのは、そうした
物質は内部から強く発熱しているうえに、放射線も出ており、中性子線もいつ
出てくるか分からないためです。従来の原子炉グレードのPuで原爆を作るよりも、
はるかに困難です。
<ピンク文字の協調は、私。「化学的に分離」とは要するにPUREXのことで、
実は「PUREXを使うと、原爆を作れてしまう可能性はある」と暗にStanford博士も
認めているわけですね>

そうなのですね。でも、だったら化学的に分離すれば?

それをするには、まずPUREX型の処理工場が必要です。それが、IFR施設には
ないのです。
<ページif-1) の「IFR施設」という略図にある通り、PUREXという化学分離ではなく、電気分解のような方法で処理します。それと、IFR保有国がPUREX施設を
作らないという保証は、どこにもないですよね。「我が国が持っているのは、IFR
だよ」というのが、「隠れ蓑」になる可能性があります>

次に、このIFRから取り出せる物質は激烈な放射線を発するため、処理施設は現存のPUREX工場よりもかなり手の込んだものとならざるを得ない。そこでの作業は
すべて、分厚い防御壁のむこうからリモートで行うことになります。そうでないと、
作業員たちは作業を終える前に死亡してしまいます。これだけの施設の建設には
何億円ものコストを要し、隠ぺいすることは困難です。
<現実には、アメリカや旧ソヴィエトが「秘密都市」を築いて核兵器製造を
隠ぺいしていた時代もあったのは、よく知られていますよね>

三つ目に、<IAEAの>定期的な監視が行われるため、IFR施設に<核兵器製造に
つながりかねない>改変や高レベル放射性物質の転用があれば、すぐに
発見されます。

第4に、同位体組成に関わらずPuを得るためのすべての方法の中でも、この
<IFRから取り出そうとする方法は>おそらく歴史上もっとも困難なものですね。*********************

「一見もっともらしいタコ焼きやけど、タコが入ってへんがな~~」

「一見もっともらしいタコ焼きやけど、タコが入ってへんがな~~」

一見、もっともらしいですよね?
でも、ちょっと「常識的に」考えてみましょう。
要するにIFR推進勢力の主張では:

☆ IFRでは、従来と異なる「合金核燃料」を、
☆ 「長期間」核分裂させる(使用 ⇒ 再処理  ⇒ 再使用)ので、
核分裂生成物が従来より多い
☆ したがって、使用済み核燃料の発熱も放射線も多く、
そこから兵器用Puを分離するのが大変
☆ だから、そんな非効率なことは誰も試みず、兵器用Puを
製造したいなら  従来の原子炉 ⇒ PUREX分離法を使うだろう

言うまでもなく、すぐに分かる問題点は最後の☆でして、仮におっしゃる通り
IFRでは兵器用Pu製造をだれもやらないと仮定しても、従来の原子炉やPUREXを
減らしてくれるとは限らないですよね。国家権力か何かで従来の原子炉と
PUREXとを禁止、IFRを代わりに建設させる、というような考えにくい
事態でもない限り。

それに、「長期間、燃料を使用する<核分裂させる>から」という以上、
核兵器製造を狙う国家がIFR施設を持ち、故意に「短期間」使用をしたら??

さらに、IAEAの査察が入るから、改変や転用があっても発見される ・・・
って、じゃあ元はNPTにも加盟していた北朝鮮は? イランは、なぜ2021年
終わりまでにはおそらく60%を超える濃度のウラニウム濃縮をやっていたの?
インドやパキスタンのようなNPT非加盟国は?

平和なはずの技術が、殺人に転用されることもあり得る ・・・

平和なはずの技術が、殺人に転用されることもあり得る ・・・

そもそも、どうも科学技術系の人たちの一部は ・・・

・・・ 「この技術はこうだから、こうなる」という発想はお得意なのですが、
その技術を使う人間たちが「おかしな使い方をする」可能性という「人間の
邪悪さの現実」に対する認識が甘い場合がありますよね。
つまり、IFRのproliferation riskとの関係では、

IFR保有国/団体が兵器用Puの製造を考えている場合、
・ 短期間使用して(核燃料交換周期を短くして)、核燃料を取り出す
・ 電解精錬ではなく、PUREXで核燃料からPuを分離する
・ さらに、「ブランケット」で「高純度の」Pu239を製造する
(上の黒いメニューで、ページ tw-1) の「で、FBRには「ブランケット」が
あって ・・・」という段落を参照)

ということをやらかす危険性は常にあります。
以上は「常識的な」判断による問題指摘なので、次に核拡散や原子炉物理などに
詳しい専門家の意見を聞いてみましょう。ここから、抜粋・日本語化が長く
なります。

まず、Friends of the Earth Australia の公表している、Jim Greenさんの
Integral Fast Reactorsという文書

Integral Fast Reactors | Friends of the Earth Australia (foe.org.au) にあります。
公開年月が明記されていないのですが、内容から推察して2009年ごろだと
思います。IFRの開発は、1980年代には進んでいましたからね。

(私による抜粋・日本語化、< >内は私の補足説明)
・・・・・・・・・・
IFRと核兵器拡散

従来の原子炉と同様、IFRでも兵器用のプルトニウムを製造できる。

1) 中性子線を放射する期間を短くして、兵器グレードのPuを<IFR>の燃料中に作る。George Stanford が述べているように、核兵器製造を狙う組織は、<同じインタビュー
の別個所ですが、上記では引用しておりません。上のリンク先をご覧ください。
このページの終わりの方でも抜粋しております>「 [IFRででも] 、他の原子炉の
場合と同じようにPu製造ができる。燃料の使用と交換のサイクルを変更して
兵器用の好ましい品質の物質を得られるのだ」

今までのPUREX法による使用済み核燃料の再処理を使用して、中性子線を浴びた
燃料やターゲット、ブランケットからPuを分離できる。Blees<エネルギー システムの
コンサルタント> によれば、「IFRは決してProliferationの脅威をすべて取り除く
万能薬などではない。確かにIFRからPuを抽出するにはそれなりの技術が必要だが、
それは軽水炉の使用済み燃料から取り出す場合とて同様だ。要は、核分裂性物質には
必ず監視が必要、ということだ ・・・」

もう1つの <原爆製造での> 選択肢として、IFRの核燃料から原子炉グレードのPuを
抽出して、兵器グレードのPuではなく、その原子炉グレードPuを核兵器に使用する
こともできる。<上の黒いメニューでページ c-1) をクリック ⇒ 「その「オペラ」の
あらまし」の段落を参照>

 

「ブランケット」の概略

「ブランケット」の概略

2) <高速中性子炉の炉心周辺に設置できる>ブランケットなどのターゲットにUまたは
劣化U <U238> を配置して中性子線を放射することでも、兵器グレードのPuを
製造できる。そのPuは、PUREX法で分離できる。研究用原子炉とは異なり、発電用
原子炉は一般的にはブランケットやその他ターゲットの挿入や取り外しがしやすい
設計にはなっていない。だが、意思のある所には方法もあろう。<“ブランケット”に
ついては、上の黒いメニューでページtw-1) をクリック ⇒ 「で、FBRには「ブラン
ケット」があって ・・・」という段落を参照>

従来の原子炉の場合と同様、IFRでも核兵器用の核分裂性物質を大量に製造できる。
この事実は、エネルギー源の比較選択を理性的に検討する際には、必ず重視せねば
ならない。IFRが従来の原子炉と比べてproliferationの危険が大きいのか、少ないのか
という議論は付加的な問題に過ぎない。

IFR 推進論者たちは世界中の核分裂性物質の蓄積を減らすためにIFRを使おうと
主張しており、その出所が研究家、発電か、大量破壊兵器プログラムなのかは問題に
していない。それ自体は、実によいことだ。だが<実際に歴史の中で>使用済み
核燃料の再処理やMOX、増殖などが行われてきており、いずれもこの蓄積の削減を
謳っていた。しかし現実にはどれも、proliferation riskを軽減するどころか増大させて
しまったのだ。・・・中略・・・ その具体的な問題の実例を挙げる:

* 大量破壊兵器を求める組織なら、自ら保有する核分裂性物質の蓄積を減らすために
IFRを使用したりは、しない。ましてや、他国などの蓄積を減らすために使用する
ことなど、ありえない。逆に、核兵器用のPuを増大させるために使用するはずだ。

* <上の“世界中の核分裂性物質の蓄積を減らす”という> 提唱は、大量破壊兵器を
特に欲しがっている諸国こそ核分裂性物質の蓄積を削減しようなどとはしない
(逆に、大量破壊兵器を廃絶したがる諸国ほど、蓄積もなくしたがる)、という
よく知られた問題に直面することになる。

* この提唱は、現実的な制約にぶつかる可能性がある。保有する使用済み核燃料
(ならびに、その他の核燃料も)の蓄積を喜んで削減する国家や電気会社も、
多数あるだろう。だが、IFRの運営組織にとってみれば、他所から運び込まれた
放射性物質に中性子線放射を行い、核種変換させ、破壊するのは、どのような
理由から、そうするのか?そして、そのコストやリスクとは?おそらくは、
何か経済的利益を求めてのこととなろう。そうならば、その費用は誰が
支払うのか??

Brook<タスマニア大学の教授>は、「IFRを普及すれば、結局は全世界で
原爆用の材料の入手性が少なくなるだろう。核分裂による核種変換以外に、
既存の放射性物質の蓄積をなくす方法として、何があるのか?」 と問うている。
それに応えておこう。

* IFRを使用して、外部から持ち込まれた核分裂性物質を処理することは確かに可能だ。だが、新設IFRの初期燃料を除けば、そうした処理が必ず行われるという保証はない。

*外部からの核分裂性物質を処理できるということには、いろいろ利点があろう。だが、IFRそのものから兵器用の核分裂性物質を生み出すことも可能だ、という問題も天秤にかけねばならない。

* proliferationを憂うるあまり、<私の見解は> 悲観的に過ぎ、問題面を強調し
すぎているかもしれない。だが、<すでに過去の> 再処理やMOX、増殖から実際にproliferation riskが増大してしまったという事実を忘れないでいただきたい。こうした
技術は本来、核分裂性物質を減らすことで、proliferation riskを軽減しようという
目的のものであった。

* 核分裂性物質の製造をやめさせ、あるいは最小限に減らすことが最も重要な
ステップであることは、明らかだ。その蓄積については、いずれの選択肢にも
問題が多く、そうした問題点の一部を
<www.foe.org.au/anti-nuclear/issues/nfc/waste/waste/view> の第6章で
考察する。

* Puは使用済み核燃料の中にとどめておくべきだ。使用済み核燃料こそ、
Puの転用を防ぐための最善の防御策(熱と放射線)であるためだ。

IFRの意図は、IFRの中性子線放射を受けた核燃料からPuを分離することを
防止することにある。ただし、Puをその他廃棄物と一緒に扱う処理は、別とする。
(これは、従来のPUREX法での分離に適している) 確かに、他の放射性廃棄物の
中にPuを混ぜたままにしておけば、核兵器製造には不向きだ。だが、

* そうしたPuといえど、放射性廃棄物の中から分離して取り出すことは可能だ。
そして、さらに再処理を施すこともできる。(従来のPUREX法による再処理)

* そうしたPu + 放射性廃棄物という保管法は、「ダーティーボム」の製造には
適している。

ダーティ ボムとは?

ダーティ ボムとは?

Bleesによれば、「軽水炉の使用済み核燃料をPUREXで処理すれば、ほぼ純粋な
Puを抽出できる。ただ、そのPu同位体の組成は、核兵器に最適とは言えないの
だが」
LWRからのものであれ、IFRからであれ、原子炉グレードのPuは、たとえ
最適ではないものでも、核兵器に使用できる」
(詳細は、<www.foe.org.au/anti-nuclear/issues/nfc/power-weapons> を参照)***************

実際に世界の現代史の中で、発電が核兵器開発の隠れ蓑になってしまった実例は、
本ウェブサイトのページ シリーズ b-x), c-x), d-x), f-x) でいやになるほど紹介して
おります。

「隠れ蓑」を予期う観察すると~~

「隠れ蓑」をよーく観察すると~~

続いて、同じく Jim Greenさんのテキストで、WISEのウェブサイトに公開されて
いるものから

2014年6月6日のもので、
Can ‘reactor grade’ plutonium be used in nuclear weapons? | Wise International
にあります。

(私による抜粋・日本語化、< >内は私の補足説明)
・・・・・・・・・・・・・
アメリカ エネルギー省(1997)のある報告書は、次の見解を述べている:
「実際には、どのような同位体組成のPuであろうと、・・・ (中略) ・・・
核兵器の製造に使用できる ・・・
現実上核兵器には利用できないPuの同位体組成は、ほぼ純粋なPu238だけだ。
これは発熱量が多く、そんな兵器は不安定となってしまう ・・・
<核兵器製造技術の> 最も低レベルの場合、核兵器製造を狙う国家や国家内組織で
第1世代核兵器 <広島や長崎の原爆など> と同程度の技術と設計を採用するもので
あっても、原子炉グレードのPuで原爆を製造することが可能だ。そんな原爆でも
確実に、2-3キロトンの核威力を有する。(多くの場合、それ以上) ・・・・・
核兵器を持ちたがる国家で、中程度のレベルの設計を採用するものであれば、
単純な第1世代型の核兵器であっても、キロトンのレベルを超えた核威力のものを
製造可能だ。 ・・・・・
原子炉グレードのPuの不利な点とは、それでできる核兵器の破壊力の問題ではなく、
設計や製造、扱いが複雑になるという点にある。国家であれ、国家内の組織であれ、
兵器グレードのPuが十分に集まっていない場合には、原子炉グレードのPuで核兵器を
作る可能性は無視できない。要するに、原子炉グレードのPuも核兵器に利用可能で
あり、しかもそれができるのは高度な核兵器技術を保有する国家だけではなく、
未熟な技術しか持っていないが核兵器を持ちたがっている組織でも可能なのだ」

<スウェーデンの政治家> Hans Blixは以前IAEAの事務局長を務めていたが、
その当時にこう述べていた。「IAEAの加盟諸国ならびに安全保障措置実施に関する
常任諮問委員会 (Member States and by the Standing Advisory Group on Safeguards、SAGSI)からの助言に基づき、IAEAは消費度の高い<長期間使用された> 原子炉
グレードのPuならびに同位体組成を問わないすべてのPu全般が、核爆発装置に使用
可能であると考えている。例外は、Pu-238を80%以上含有する組成のもののみで
ある。IAEAの保障措置部門には、この問題に関して意見の相違はまったくない」
(Blix, 1990; Anon., 1990も参照)
***************

チョー古いけど、どうにか使えなくもない???

チョー古いけど、どうにか使えなくもない???

要するに、私がページ c-1) で説明したように、確かに原子炉グレードのPuは核兵器に
使うとアレコレやりにくさはあるのですが、あくまで使用可能だってことです。
それを、アメリカの環境省もIAEAも認めている、ということですね。

再びFriends of the Earthのサイトより、やはりJim Greenさんによる
2015年5月28日付のテキストより

The myth of the peaceful atom – debunking the misinformation peddled by the nuclear industry and its supporters | Friends of the Earth Australia (foe.org.au)
にあります。

(私による抜粋・日本語化、< >内は私の補足説明)
・・・・・・・・・・・・・・・・
18. 新型原子炉なら、proliferationしにくい?

新型原子炉にはいくつもタイプがあるが、そのいずれの推進者たちも、
その原子炉ならproliferationsを防止できる、あるいは防止しやすくすると
主張している。

その例としてトリウム サイクル <次回のページ シリーズで取り上げます> の
提唱者は「核兵器の製造には、全く役に立たない」と主張している。[73] だが
実際には、トリウム燃料サイクルに伴うproliferation risksは、従来のウラニウム燃料
核発電と比べて決して改善されてはおらず、むしろ悪化していることさえある。[74]

またIFR(integral fast reactor、統合高速炉)を推す人であれば、「核兵器グレード
の物質の製造には使用できない」[75] と主張するだろう。だが実は IFRは兵器用Puの
製造に使用可能なのだ。[76]  George Stanford博士はアメリカでIFRのR&Dプログラムの仕事に就いていた人物だが、核保有を目指す組織は「[IFRででも] 、他の原子炉の
場合と同じようにPu製造ができる。燃料の使用と交換のサイクルを変更して兵器用の
好ましい品質の物質を得られるのだ」と述べている。[77]

核発電の推進派が主張することは真実ではあるが誤解を招く、という場合も良くある。
たとえばトリウムそのものは確かに兵器拡散を招かない。だが、<トリウム燃料
サイクルで行うように> トリウムに中性子線を照射すると核種変換して生じるU233は
核兵器に使用できるし実際に使用されてきている。さらに厳密に言えば、IFRが
「兵器グレードの物質製造に役に立たない」というのは、確かに真実だ。なぜなら、
まだIFRは地球のどこにも存在していないのだから。それに、新旧を問わずいずれの
タイプの原子炉も、兵器グレードのPuや兵器に使用できるPuを作り出すことはない。
なぜなら厳格に言うならば、原子炉から取り出した物質を再処理してPuを分離して
取り出さない限り、核兵器に使うことができないからだ。

核融合の現実を見れば、核エネルギーの平和利用と軍事利用という身体の結びついた
双生児を切り離すのが、いかに困難かが分かる。核融合で発電した電力というものは、
まだ歴史上1ワットたりとも存在していないが、核兵器拡散という問題には、すでに
寄与してしまっている。1980年代にイラクの核兵器プログラムに関与していた
<上の黒いメニューでページ c-1) も参照> 上級核物理学者Khidhir Hamzaによれば、
「1980年代半ば、イラクはIAEAからの推奨をフルに活用、“平和目的の” 核融合研究の
ためのプラズマ物理プログラムを開始した。実は我々がもくろんでいたのは、
プラズマ焦点装置を購入すれば ・・・ 高速電子技術を購入・研究するための良い
隠れ蓑になるということだった。高速電子技術は、原爆の起爆装置として利用できる
わけである」[78]

既存のものも提唱中のものも、すべてのタイプの原子炉も核燃料サイクルも、proliferation riskを生み出す。英国王立協会によれば、「核拡散につながりえない
核燃料サイクルなどというものは、存在しない。民生用途であれ、軍事用であれ、
核物質と核技術には軍事と商用の両方に利用可能だという二重用途性を宿しており、
それはなくすことができない」 [79]

同様に、オーストラリアの安全保障措置と核非拡散オフィス (Australian Safeguards
and Non-Proliferation Office) で以前に長官を務めていたJohn Carlsonは「現時点で
知られている核燃料サイクルには、核拡散につながる恐れが完全にないサイクルは、
1つもない」と述べている。[80]
*****************

私からも何か言うべきなのかも。でも、特に私が何も言わずとも、Greenさんが
見事に問題を指摘してくださってますよね。

本来の意図や用途は、意外な形で現れることが~~

「もともと、ボクシングの練習用に作った技術でして~~」                本来の意図や用途は、意外な形で現れることが~~

 

では、冒頭に抜粋・日本語化したDr. Stanfordのインタビューから

別の箇所を抜粋・日本語化してみます。

(私による抜粋・日本語化、< >内は私の補足説明)
・・・・・・・・・・・・・・・・
<インタビュワー> しかし、どこかの国がPuの原爆を製造しようとしており、しかもそこにはIFRしかなかったとしたら?

<Stanford博士> その国のIFRが安全保障措置の対象になっていれば、すでに
申し上げたようにその処理の流れの中にそうした物質があるのは好ましくあり
ませんし、発見されずにその物質を兵器用に転用できる可能性は、極めて小さく
なります。でも措置の対象になっていなければ、他の原子炉の場合と同様、
やりたい放題できてしまいます。つまり、本来の燃料交換サイクルとは違う周期で
稼働し、兵器用物質を製造できてしまいますね。でもいずれの場合でも、最も確率が
大きいのは、<核保有国すべてが> やってきたことが行われてしまうことです。
つまり、PUREX工場も含めた特殊なPu製造用施設を建設してしまうわけですね。
ピンク文字による強調は、私
**************


疲れて寝ちゃってる~~
私の20分クロッキーより

かなりの量、抜粋・日本語化を読んでいただきました。もう、充分ですよね?

まあ、核エネルギーに限らず巨大技術との関連では、「使う国家や組織などの悪意」
という根本問題を、常に頭に入れておかないと、いけませんね。
技術や科学的な側面だけを考えていては、現実の人間社会や地球環境の安全を守る
ことは、できないですよね。

ではこれで、IFR関連のページ シリーズif-x) を終わります。
次回は、「新型原子炉」というよりも「新型核エネルギー サイクル」とでも
呼ぶべき「トリウム サイクル」を取り上げます。実は、すでに2011年、
インターネット上では、日本語でも「福島第一はメルトダウンしたけど、
トリウム サイクルなら原発は大丈夫!」といった趣旨の主張を私は見かけました。
ですから、核発電勢力は今後、トリウム サイクルを旗に掲げて「新型原子炉なら
安全!」と主張してくる可能性があります。反原発団体や反核兵器団体の皆様は、
トリウム サイクルの概略もぜひ知っておいてくださいな。

では、例によって、かなり調べないといけないので、日数をください

Comments are closed.