d-6) (発電原理) 各種の軍事的リスク

2022年9月終わり

核発電の軍事関連リスク各種を、短くまとめ
ましょう。
もっとも、それを (発電原理) のシリーズに
入れるべきか??奇妙なのですが、まあ、
軍事リスクの話が続くシリーズなので、
そのまとめとして。

同じ「たこ焼き」でも、大阪と東京で違う ・・・

同じ「たこ焼き」でも、大阪と東京で違う ・・・

2022年9月終わり現在、ロシアが 「詐欺的な」
住民投票でザポリージャ州を勝手に併合しようと
しており、ザポリージャ原発の今後が実に心配
です。

たとえ同じタイプの原発 (VVER) であっても、
施設ごとに具体的な特性や運用方法が異なります。
そのため、

ロシアがザポリージャ原発を奪取 ⇒ 技術的に
よく分からないまま、送電対象を変更して稼働
⇒ 不適切な稼働によりメルトダウンなどの事故

という危険があるのですね。むろん、そんな
事態にならないことを祈っておりますが。

およそ、発電所なんてものは施設ごとの特性が
あって、それに慣れた人たちでないと適切には
動かせないものです。

それを無視したどこかの国が (ロシアに
限りません) 他国に侵略し、そこの原発を
稼働させると ・・・

「原発ドロボー」の襲来

「原発ドロボー」の襲来

第5の軍事的リスク??

今までに本 「やかんをのせたら~~」 では、
次の4種類の 「軍事リスク」 を訴えてきました:

1) Proliferation risks (核兵器拡散につながる
リスク) ・・・ もともと原子炉とは長崎型原爆用の
Pu 製造装置です。(上の黒いメニューで d-1) –
d-5) 参照。実際に世界で核兵器につながって
しまった実例は、b-1) – b-3) や c-1) – c-7)、
f-1) – f-8) などなどを参照)

2) 敵の軍事基地にされてしまうリスク ・・・ 現在、
ザポリージャで実際に起きていますよね。その他、
ページ g-5), g-6) を参照。これをいったんやられる
と、その原発などの本来の所有国は、その「基地」
を攻撃したくても、下手に手を出せない ・・・

3) 巨大ダーティ ボム化リスク ・・・ 現在、
ザポリージャ原発や南ウクライナ原発が実際に
そうされてしまわないか、世界が心配しています。

4) 言いがかりリスク ・・・ 現在のウクライナ侵略
でも、開始当初にプーティンは 「ウクライナが
原発などの核施設で、核兵器を開発」 という主旨の
言いがかりをつけてましたよね。
2003年に英米がイラクに攻撃を始めた際にも、
核兵器開発という言いがかりがありました。

原発ドロボーたちが、事故を起こしやがった!

原発ドロボーたちが、事故を起こしやがった!

そして、ことによると、次の第5のリスクも
発生するのか??

A国がB国に侵略 ⇒ B国の既存原発などが
ある地域を無断で 「併合」 ⇒ その核施設の
特性をよく理解できないまま、送電方向を
A国に切り替えて発電稼働 ⇒ 操作の誤りなど
⇒ 原発事故

というリスクですね。2022年9月終わり現在、
ウクライナのザポリージャ原発で、このリスクも
現実化してしまう危険性が浮上しております。
現実化しないことを願いますが、その他4種類の
リスクはすべて現実化あるいはそれが危惧されて
いる事実を考えると ・・・

このリスク、なんと名付けましょうか??私自身は
良い名称を思いつかないので、とりあえず
5) 「原発ドロボーが事故起こしやがった」 リスク
という名前にしておきます。

もうちょっと、マシな名前はないの?? 私の、かなり昔の20分クロッキー

もうちょっと、マシな名前はないの??
私の、かなり昔の20分クロッキー

ここで、コスト面なども考えてみて ・・・

上記のリスク 2), 3), 5) は防止するのに武装
防衛隊が必要です。実際、アメリカの原発では
すでにテロ対策で武装ガードが警備にあたって
いますが (ページ g-5) にある 「もう1つの
「ド派手な」攻撃方法」 の a) を参照)、
小銃や小型ミサイル程度では、敵国の正規軍が
原発を占拠しようと攻めてきた場合には、対応
できるはずもありません。
当然、軍用チョッパーも戦車や装甲車も必要に
なります。

すると、その警備コストは膨大なものに。
その巨大な警備費用は、だれが負担するので
しょうか??原発を運営している電力会社など
民間企業がこうした武装警備隊を持つわけには
いかない以上、日本なら自衛隊が原発に張り付く
ことになるでしょう。

訳が分からない試算 ・・・ 私のかなり昔の15分クロッキー

訳が分からない試算 ・・・
私のかなり昔の15分クロッキー

すると、

警備コストは 「国 (税金) 負担」 ・・・ 「発電コスト」
には含まれない計算になってしまいそうです。
そんな 「発電コスト試算」 に、どんな現実的意味が
あるのでしょうか??

現状の世界では、こうした原発の社会的コストは、
巨大化する一方ですね。

建設中の大間原発などを除き、またもう現実上
稼働できない福島県内の原発ものぞいて考えても、
現時点で 「自衛隊による警備」が必要な原発は
10数か所あります。(稼働中でなくても、使用済み
核燃料などはあるのですから)
それだけの原発を重装備で警備するための費用は、
毎年少なくても数百億円には達するでしょう。
軍事費用に詳しい方、もし正確な推定金額を
ご存じなら、
お知らせください!
yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp

の 私(ひで) まで!

それを無視した 「発電コスト試算」 を発表し、
「どうだ、原発は安いだろう!」 と訴える
人たちって ・・・・

★ 2022年11月24日追記

あって欲しくないんですけど、どうも
「第6のリスク」があるようです ~~

A国と交戦中のB国が、自分の同盟国Cにある
原発をテロ攻撃 ⇒ そのテロはA国によるものだ
と主張 ⇒ CのBに対する戦争協力を得ようとする

というものです。
A国にとっては 「ふざけんじゃない!!」 なのは
無論、その他Cの周辺国は原発からの放射性物質を
浴びかねないですね。ほんと、人迷惑な!

ウクライナに侵略して苦戦しているロシアが、
ベラルーシの原発へのテロ攻撃を計画していると、
ウクライナの諜報機関は主張しています。

詳しくは、右の 「アーカイブ」で2022年11月を
クリック ⇒ 11月23日の投稿をクリック
で、具体例をご覧いただけます。

この第6は、なんと名付けておきましょうか?
とりあえず、
「他国の原発をぶっ壊しといて、“あいつが
やった”」リスク
にしておきますね。

"Argument V -- Logophobia"
「もうちと、マシなネーミングをしろ!」
私の昔の作品 “Argument V – Logophobia”

★  2022年12月終わりの追記

「原発があると、戦闘ができない」 という
オカシナ主張について

「原発があると、戦闘が不能になる」 という
オカシナ主張が、一部にあるようです。

まず、「やかんをのせたら~~」 では、
そんな奇妙な主張は、一度もしておりません。
ソモソモ、現在のロシア軍によるウクライナ
侵略にしても、両国とも原発を多数擁している
国ですが、その1つがもう一方に攻め込み、
戦闘がもう10か月以上続いているわけです。
で、上記の軍事リスクの2) – 6) にしても、
原発のあるところで戦闘が行われているから
こそ、実現してしまった、あるいは実現が
危惧されているわけですね。

大体、もし本当に 「原発があると、戦闘が
不能になる」 のであれば、
世界のすべての国に原発を ⇒ どの国でも、
戦闘が不能になる ⇒ 全世界の不戦が実現
っていう結論になっちゃうじゃないですか!
私には、そんな結論が現実に成り立つとは、
とても思えません

この 「原発があると、戦闘が不能になる」 と
いう奇妙な主張をしているのがいわゆる原発
推進派なのか、それとも反核勢力なのか、私は
存じません。
でも、それはどうでもいいです。どちらが言って
いることであれ、しっかりと現実を見て、ものを
言おうじゃないですか

しっかり見ましょ 私がかなり昔に描いた、20分のボールペン クロッキー

しっかり見ましょ
私がかなり昔に描いた、20分のボールペン クロッキー

今回のロシア軍のザポリージャ原発占拠に
ついて — 以下は、私の推論ですよ

ザポリージャ原発での2022年のロシア軍
の動きを振り返ると、私には以下の推論が
あります。ただ、あくまで一市民の推論に
過ぎないので、読者の皆様は専門家諸氏の
推論を求めてくださいね

侵略開始時には、上記のリスク 4) を利用

原発を砲撃 (上記のリスク 3))を、砲撃で
狙った)
原発の建物はかなり強固なので、それでは
3) を引き起こせなかった。
なお、いうまでもなくロシア側はこの原発への
砲撃は、すべてウクライナ軍によるものだと
主張 (プーティン氏のやりそうなことですね)

そこで占拠、内部からstation blackoutに
よる 3) の実現を狙った
(ジュネーブ条約の規定では、原発の占拠は
禁じられている原発への軍事的攻撃には
当たらないそうです。違法スレスレをやらかす
というのが、プーティン氏らしいですよね)

ウクライナ側の原発職員の皆様の必死の
努力により、非常用発電機などでLOCAを
回避

ザポリージャ州をロシアが不当に併合宣言
したことを受け、この原発からロシアに送電
させようとした
(原発ドロボー、上記のリスク 5))

さらには、ベラルーシの原発でリスク 6) の
闇計画??
(右の 「アーカイブ」で2022年11月を
クリック ⇒ 11月23日の投稿をクリック)

以上の推察が部分的にでも正しければ、
核発電が 「戦闘をできなくする」 どころか、
いかに戦闘に利用されてしまうかという実例を
私たちは同時進行で観察していることに
なります。

さらにヒドイ話が続きます~~

さらにヒドイ話が続きます~~

2023年4月4日 追記
ロシアのウクライナ侵略の場合、
4) はどこまで??

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ
侵略の場合、確かにプーティンは侵略開始当時、
「ウクライナが核兵器開発を・・・」と
ノタモーテいたので、上の4)がある程度
該当することは確かです。

ただ、どこまで??
一部では
「ウクライナには原発があるので、そこにある
使用済み核燃料から核兵器を製造することを
防ぐため、ロシア軍はまずウクライナの原発を
占拠した」 との主張が見られます。

私 (ひで) としては、そこまで言い切るのには
疑問があって、
・ だったら、チョルノービとザポリージャ
以外の原発も何とかして占拠しないと、
意味がないじゃないか。
・ 使用済み核燃料があるだけでは核兵器は
作れず、その再処理施設が必要です。
あるいは、U 濃縮施設が。
原発を占拠するより、そうした施設を占拠する
ほうが、核兵器製造の防止という目的なら、
的確です。

そんなわけで、私としては「使用済み核燃料
から核兵器を製造することを防ぐため」 とまで
は、断言しないのですね。

ただ、少なくても 4)の「言いがかり」 は該当
してます。侵略開始の直前、2021年12月の
Reutersの記事も、ご覧くださいな。
Ukraine aims to produce enough uranium for nuclear energy needs | Reuters

この記事の文脈から判断して、U濃縮施設のよう
ですね。原発を押さえても、U 濃縮施設を
押さえないと、核兵器製造を防止する結果には
なりません。

ただ、たとえウクライナには核兵器製造の計画
など皆無であったとしても、少なくても
ウクライナのこうした動きをとらえての
ロシアからの「言いがかり」だったとは言えます
よね。

そして日本の現実もみましょう。ロシアは、
日本の隣国です。しかも、領土問題が
日本とロシアの間に未解決で残っております。
そんなロシアが、日本の原発に 「言いがかり」
をつけてこないっていう保証が、どこに
あるのでしょうか??

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