u-5) (ウクライナ) ザポリージャ危機を受けての
Beyond Nuclearのプレス リリース
2023年7月
Beyond Nuclear Bulletinより
2023 July 6
英語原文を読める方は、下のリンクを
クリック!
Press release_ZaporizhziaRisks_July_6_2023 (beyondnuclear.org)
* なお、漫画はすべて私(ひで)の創作で、
Beyond Nuclearのリリース原文のものでは
ありません。
「やかんをのせたら~~」では既に、
核発電の軍事的リスク各種を取り上げて
きております。
その中でも、ロシア軍によるウクライナ
侵略が始まって以降、proliferation以外
にも、原発が敵軍の軍事侵攻に利用され
てしまうリスクについても既に昨年、
論じております。上の黒いメニュー
(項目は基本的にアルファベット順)の
d-6)、d-8)、u-1) – u-4) などをご覧
ください。
ロシア軍がザポリージャ原発に爆薬を
しかけたのか?? という報道で全世界が
緊迫するなか、もはやこうした「軍事進攻
を受けた場合の、原発のリスク」の存在に
ついては、疑いをはさむ人はいらっしゃ
らないでしょう。個別的にザポリージャ
に爆薬が仕掛けられているか否かは
未確認(2023年7月8日JST現在)
ですが、そうしたリスクが存在し、
しかも現実化すれば深刻なものである
ことは、疑いをはさみません。
放射性物質がウクライナやロシアの穀倉
地帯に拡散してしまったら、
世界的な食料インフレがさらに悪化 ⇒
日本の家計も圧迫
はもちろんですが、
途上諸国では餓死者の増加
という事態も考えられます。(つーか、
多分起きてしまうでしょう)
アメリカの反核団体Beyond Nuclearでは
今回のザポリージャ原発機器などを受け、
下のpress releaseを発表されました。
著者のLindaさんから直々に日本語化・
掲載するご許可をいただいたので、
下にそのreleaseを私の日本語化で
紹介します。
< > 内は私からの補足説明です。
なお、
日本には「せいぜい1ページくらいの
英語なら読めるけど、
press release全体となると ~~ 英語
を要約してくれないかなあ」とか
おっしゃる方々もいらっしゃいます。
でも、当のLindaさんから
— can you translate it in full though rather
than a summary? It’s important for the flow
of the points we make.
というご指示を受けておりますので、
・英語原文全体を読める方は、上のリンク
から原文全体を
・そうでない方は、下の私の日本語化
全体を、それぞれお読みくださいな。
********************************
緊急リリース
お問い合わせ:Linda Pentz Gunter
(Beyond Nuclearのメディア
ディレクター)
ザポリージャ原発の危機を機会に、
核発電の廃絶を
再生可能エネルギーであったなら、
懸念を呼んでいるような死に至る
シナリオは発生しえない
アメリカ・メリーランド州、タコマ
パーク発: 2023年7月6日(現地時刻)
— ウクライナ南東部にあるザポリー
ジャ原発に爆薬が仕掛けられている、
あるいは現在行われている戦闘の中で
意図的な攻撃を受ける恐れがあると、
ウクライナとロシアはお互いへの非難の
応酬を続けている。ここで、疑いようも
ない事実が明らかになっている。
原発はその存在そのものが危険だ、
という事実だ。
多くの諸国を国家規模の危機が襲い、
自然災害も増大し、気候変動による
危機的事態も悪化の一途をたどって
いるただ中、核発電が資産ではなく
債務であることは実証されつつある。
いずれの原子炉にも、その炉心と使用
済み核燃料プールとに死を招くほど
大量の放射性物質がある。核燃料プール
には中性子線を浴びた核燃料が積み
下ろされ、時の経過とともにプール内
には使用済み核燃料がぎっしりと詰め
込まれていく。このプールからは
さらに放射性廃棄物が運び出され、
キャスクという容器に 詰め込まれる。
ザポリージャはヨーロッパ最大の原発
で、その原子炉と使用済み核燃料
プールとには、高レベルの放射廃棄物
が少なくても 2,204トン収められ
ている。
今後起きる事態の深刻度によっては、
それだけの放射性廃棄物のいずれか、
あるいはすべてが発火してしまう
恐れがある。
「戦争という闇」の中で事態は予断を
許さないが、下記のように未解決の
問題が多数残っており、そのため
各種の噂や思惑を呼んでいる。
ザポリージャ原発に爆薬が仕掛けられて
いるのは、本当か?また、この原発を
爆破することで、誰が利益を得るのか?
この原発の下流にあるカホヴカ ダムが
破壊され、破局的な洪水が発生した。
このダムはザポリージャ原発の原子炉
と核燃料プールの冷却水も供給して
おり、それが不足して洪水に劣らず
破局的な事態が発生しうるのだろうか?
今まで送電グリッドとザポリージャ
原発の接続が失われるたびに、停止
させてはならない冷却系を作動させ
るため、バックアップ用ディーゼル
発電機を作動させたことが頻繁に
あった。このディーゼル発電機は、
今後の接続喪失の場合でも持ち
こたえられるのだろうか?そのため
にはディーゼル燃料を補充せねば
ならないが、戦闘が行われている中、
補充ができなくなる事態も考えられる。
仮にザポリージャが風力や大規模
太陽光発電所であったなら、上記の
ような憂慮がニュースの見出しに踊る
ような事態は起こらなかったはずだ。
また同じ理由から、現在の危機の深刻さ
を軽く見せたがる報道を多数見かける
現状も、説明できるのかもしれない。
ザポリージャに大掛かりな攻撃が加え
られても「チョルノービ原発事故程の
惨事にはならない」といった主張や、
放射性物質の漏出は最小限に抑えられ
敷地外にまで漏れていく量はきわめて
少量だろう、といった予想が、報道に
目立つ。
そうした報道は現実の危険を無視して
おり、無責任な報道である。
チョルノービ原発は黒鉛を減速材と
して使用していたので、その大爆発の
直後にはその原子炉の黒鉛も発火して
火災が拡大、煙が放射性物質をさらに
遠距離、さらに広範囲にまき散らした。
そのため、ザポリージャで大がかりな
火災や爆発があっても、ザポリージャは
チョルノービとは異なる設計<一種の
PWRです>なので、チョルノービほど
の大災害にはならないだろうとの推定が
なされている。
だがザポリージャの原子炉や使用済み
核燃料プールにあるウラニウム燃料が
過熱して発火した場合、ウラニウム燃料
を収めているジルコニウム合金
<のチューブ>も発火して激しく
燃える恐れがある。この場合、
水では消化できないほどの高温で
燃える危険性もある。その結果として
生じる化学反応からはさらに、爆発を
招く状態が発生しうる。 そうした発火
や爆発のために<圧力容器や格納容器
などの>コンクリート製構造物が破壊
される可能性はある。そうなると、
放射性ガスなどの放射性物質が環境中に
放出され、風などにのって広く移動
してしまう。
そうして放射性物質が拡散してしまえば
農業生産に欠かせない土地が汚染される
危険もある。しかも、悪くすればその
汚染は広域に広がり、災害発生時の
風向きが主に東向きであれば、ロシアの
領土をも含むだろう。
ヨーロッパでは食品中の放射性
セシウムの許容量として食品1kgあたり
600ベクレルを定めているが、これは
既に高すぎて危険だ。世界にはこれ
よりもさらに甘い基準の諸国もあり、
600ベクレルを超えるウクライナ産の
放射性汚染物質がそうした諸国に輸出
されてしまう危険がある。そうした
諸国の1つがアメリカ合衆国で、
アメリカのこの種の基準は1200
Bq/kgという容認しがたいものだ。
だが、こうした汚染食品を消費しても、
この種の核災害の被害者としてカウント
されるのだろうか?
チョルノービ原発事故で実際にどれ
だけの人たちが被害を受けたのか?
それは、永遠に知られることはある
まい。それは、事故の影響を
こうむった前ソヴィエト諸国での
制度的な抑圧や数値の改変、記録
そのものの不在のためだ。そうである
以上、ザポリージャで大規模な事故が
発生したと想定して、それが
「チョルノービほどではない」とか
「それよりひどい」などと推定するのは
具体的な被害を視野に入れておらず、
あまりにも漠然としており、思弁的
すぎる。
そうした具体的な被害は、福島第一で
発生したような水素爆発が起きるのか
否か、爆撃やミサイル攻撃で火災が
発生するのか、などによって変わる。
爆撃やミサイル攻撃の場合、放射性
物質の拡散はひどくなる。さらに、
ザポリージャの原子炉6基すべてで
破局的な事故が起きるのか、使用済み
核燃料プールの水がなくなり火災が
発生してしまうのか、核物質保管用
キャスクからの漏出もあるのかどうか、
なども変動要因だ。.
さらに風向きによっても被害は変わる。
また、放射性物質を運ぶ空気の塊が雨で
流されたのかどうか、もしそうならいつ・
どこで流されたのか?チョルノービから
放射性物質が漏れ出た時にも、こうした
要因すべてが影響したのだ。
ザポリージャ原発に被害が出れば、
ウクライナとロシアはいずれもそれを
相手のせいにするだろう。だが最終的に
だれの責任かというなら、人類にこれ
ほどの被害をもたらす恐れのある技術を
使い続けた、人類全員の責任である。
このような技術の使用を拒否する責任が
我々にはある。
今のところ、ザポリージャ原発は毎日の
ようにニュースに登場している。ことに
よると、心配を煽るようなプロパガンダ
を意図的に流しているのかもしれない。
そうであったとしても、その心配の根拠
は明らかに現実に存在しているものだ。
そうでなければ、そもそもニュースの
ヘッドラインになってはいない。
その原因は、単純明快である。核発電
とは、水を沸騰させる各種方法の中で、
最も危険なものだ。必要性はなく、
高価で、再生可能エネルギーの発展を
妨害する。しかも、核兵器への欲求や
製造と、本質的に不可分だ。核兵器が
使用されれば、現在のウクライナでの
戦争にさらなる悲劇的な結末を招き
かねない。.
正気を取り戻そう。ザポリージャ原発
周辺に非武装地帯を設けるだけでは、
充分ではない。核発電の全廃を求め
ねば、ならないのだ。
********************************
英語の読み書きができなくても、
短い日⇔英のやりとりなら私が
やりますよ
Lindaさん、あるいはBeyond Nuclear
に対してご質問やご意見がおありの
方で、「でも英語を書くのが~~」と
お悩みの方は、
私(ひで)にまでご連絡ください
ませ。
yadokari_ermite@yahoo.co.jp
です。
私が英語化して、Takoma Parkに
伝えますので。
私の善意からの英語化・日本語化です
ので、短いテキストなら無料です。
ただ、私の英語化・日本語化は
「翻訳」というより「ローカライズ」
つまり社会的・文化的要素も含めての
言語変換になることは、予めご了承
願います。
私の作成した英語・日本語テキストが
お気に召さない場合、ご自分でテキスト
を作成になり、Beyond Nuclearにお送り
くださいな。
その場合、私は一切の責任を負いません。