nw-1) (nuclear war) 「核の冬」 の恐怖

2023年4月初め

Beyond Nuclear Bulletin, March 30, 2023
より

Beyond NuclearのBulletin、3月30日号
が来ました。
この号で私が特に重要だと思ったのは、
核戦争に関するレクチャーの紹介です。
コロラド大学ブールダー校で気候海洋学を
研究してらっしゃるBrian Toon氏による
講演です。4月7日開催予定だそうで、
ちょっと私はライブでは聞けそうに
ありません。

明日の地球??こんなことに、なりませぬよう!

明日の地球??こんなことに、なりませぬよう!

でも、
過去の講演へのリンクもあって、
Brian Toon: I’ve studied nuclear war for 35 years – you should be worried | Brian Toon | TEDxMileHigh | TED Talk
でご覧になれます。いつのレクチャーだった
のか、このウェブページに記載が見当たり
ません。
核戦争があった場合に訪れる 「核の冬」 が
世界的に飢餓や過酷な気候変動をもたらす、
という警告です。「核の冬」 の詳細について
は、最近の他の研究者からは異論もあります
が、何であれ地球規模の大危機が訪れること
には間違いないですよね。

Proliferation risksを検討に入れるなら、核発電は最悪の気候変動を招きうる

Proliferation risksを検討に入れるなら、核発電は最悪の気候変動を招きうる

ここで、核発電との関連も考慮に入れて
ほしいのですね、
核発電推進勢力は、
核発電 ⇒ CO2をほとんど出さない ⇒
気候変動を軽減できる
という主張ですよね。

でもこの主張は、
核発電 ⇒ 核兵器の拡散(proliferation)
というリスクを無視しています。(私見じゃ
ありません。上の黒いメニューにある 付録
w-4) で (メニュー内の項目は、基本的に
アルファベット順)、後半にある 「Al Gore
さんのインタビューを紹介」 という個所を
ご覧くださいな)

核発電 ⇒ 核兵器の拡散 ⇒ 核戦争
という破滅のシークエンスが実現してしまっ
たら、その際の気候変動は実に壊滅的なもの
で、CO2による気候変動の比ではありません

「原発と気候変動」 を考えるのであれば、
proliferation risksを計算に入れませんと!
それを考えるため、このToon氏の
レクチャーをお勧めします!

"Argument I -- Louder, Louder"
「それじゃ、わからねーだろ!」
“Argument I”
私の昔の作品

(;; > O<) / 英語のレクチャーなんか聞いて
もわからない私に、英語の勉強でもまず
始めよと言いたいのか!?!?
とおっしゃる方々のために、上のリンク先
にあるレクチャーの、音声からの日本語
化を下に紹介します

いつもどおり、
私による日本語化
< > 内は、私からの補足説明
です。
*****************************
(拍手)
6,600万年前、山のように巨大な隕石が
狙撃用ライフルの銃弾の10倍ほどの速度
で、現在のメキシコにあるユカタン半島の
浅い海に衝突しました。その衝撃は膨大な
エネルギーを発散、岩石を北はカナダあたり
にまでまき散らしたのです。さらにその
エネルギーで、その隕石そのもの、メキシコ
の一部、その浅い海の一部は蒸発して
しまいます。この 「火の玉」 のため、岩石も
水も蒸発してしまったのです。その蒸気は
地球の体験をはるかに超えて、全地球に
拡散しました。それが冷えてくると、砂粒
ほどの大きさの岩石の溶けたものが固形
化し、膨大な量の流れ星の粒の集団が
できます。その流れ星が地球の大気圏に
再突入、そのため大気は華氏で数千度に
まで <摂氏だと、およそ500度から
3000度あたり> 上昇しました。
地面に立っていた恐竜たちは、青かった
はずの大空が真っ赤に燃える溶岩になって
いくのを目の当たりにしたことでしょう。
サイエンス画家のDavid Hardyは、
<今画面に出ている> この絵で、恐竜
たちの運命を想像しました。燃え盛る空の
下で、彼らは焼き鳥にされたのです。

焼き鳥  焼き人間  マネしちゃ、だめよ!

焼き鳥  焼き人間 
マネしちゃ、だめよ!

この空にあったエネルギーが、電気式
オーブンの発熱棒のような働きをしたわけ
ですね。ですから、恐竜たちが死滅して
いった時の感触を体験してみたい方々は、
電気式オーブンをオンにして、その中に
入り込んでみてください。 (笑い)
燃える大空の下、あらゆるものが燃えて
いきます。すると、大量の煙が上空に上って
いきますよね。それが太陽光を遮り、太陽光
はまったく地面に届かなくなります。次第に
地面は、冷たい暗黒の地になっていきます。
光合成も、行われなくなります。植物も動物
も、陸上か海洋の中かを問わず、餓死するか
投資していきました。恐竜たちは滅びていった
のですが、彼ら自身は何も間違ったことをした
わけじゃ、ありません。隕石が地球と衝突した
ことが原因ですから、単に運命とでも呼ぶべき
ですね。そして、我々の知る地球上の生物種
のうち、70%が滅びました。
困ったことですが、私たち人類も、この恐竜たち
と同じ末路をたどる恐れがあります。でも
それは、また隕石が衝突するという話じゃ、
ありません。そうではなく、核戦争です。
核戦争が起きれば、恐竜たちが体験した
のと同じ問題の多くが発生します。ただ、
そうなった場合、これは明らかに私たち
人類の責任です。

自業自得だったか ・・・

自業自得だったか ・・・

幸い、そうなるのを防止できるよう、
私たちにはできることがあります。軍事基地
のある都市にお住まいなら、今この瞬間に、
あなたを標的しているミサイルが存在して
います。重要な産業がある年にお暮し
でしたら、あるいは主要大学や大型空港、
石油精製所や備蓄施設のある都市に
いらっしゃるのでしたら、あなたを標的に
している水爆が、今この瞬間に存在している
のです。危険極まりない時代に、私たちは
生きているのです。
15,000発もの核兵器が、地球上に存在して
います。核兵器保有国が9か国あり、相互に
対立緊張関係にあるのです。アメリカと
北朝鮮、NATO対ロシア、そしてインドと
パキスタン。誤解や誤り、あるいは一人の
異常な政治家がいれば、核兵器を用いた
紛争が発生しうるのです。
第二次大戦では、1つの都市の空爆に何百機
あるいは1,000機の軍用機による編隊を使用
していました。ところが原爆が開発されたため、
飛行機1機に原爆1個で都市を破壊できる
ようになってしまったのです。「エノラ ゲイ」
は、原爆1個を運んでいました。その原爆の
破壊力は、TNT火薬換算で15,000トン
相当でした。この原爆を日本の広島に投下
したのですが、10万人もの人たちが殺された
のです。時がたち、さらに強力な爆弾が出来て
しまいます。水爆です。この画像の爆撃機は
1960年代のものですが、水爆5個を搭載
していました。画像の、赤と白の物体ですね。
この水爆の破壊力は、広島原爆の約500個
分でした。

トライデント ミサイルの例

トライデント ミサイルの例

そしていうまでもありませんが、アメリカも
ロシアも <核兵器の使用に> 使っていた
のは軍用機だけではなく、水爆を搭載した
大陸間弾道弾も保有していますし、核
ミサイル搭載の原子力潜水艦もあります。
<アメリカの> トライデント ミサイル搭載
潜水艦は、1機だけで水爆100個を運べ
ます。1個当たりの破壊力は、広島原爆
1,000個に相当します。
これだけの破壊力の兵器を主要都市を標的
に泳がせているのですから、もし使用される
ことになれば、どれだけの破壊と殺戮を
もたらすか、ご理解になれますよね。
例として、少し想像してみましょう。アメリカが
北朝鮮の首都ピョンヤンを、トライデント
ミサイル搭載の潜水艦から、もっとも小型の
核弾頭で攻撃したと仮定しましょう。その
場合、約50万人が死亡します。アメリカの
都市でいえば、<カリフォルニア州の>
サクラメントや <メリーランド州の>
バルティモア程度の規模ですね。
核兵器が人殺すのは、4つの作用があります。
この画像のオレンジ色の地帯では、ショック
ウェーブが襲います。大変強烈な衝撃波で、
コンクリート製の建物が倒壊し、その中にいる
人たちはすべて死亡します。
赤い円の内部では放射線が降り注ぎ、これは
核分裂の際に発生するものです。この放射線
のため、爆発から2-3週間以内に、この内部
の人口のおよそ50%から90%が死亡します。
こちらの緑の地域の中では、ショック ウェーブ
が引き続き威力を発揮、一般住宅が倒壊して
いきます。

Nuclear hell

Nuclear hell

そしてこの黄色の円は直径が約10㎞で、
強烈な閃光が走り、皮膚が焼けただれます。
三度のやけどになり、これは死に至る火傷
です。木の葉や新聞紙、身に着けてらっしゃる
衣類など、燃えやすいものはすぐに発火します。
さらに、もしアメリカが核攻撃をするなら、
北朝鮮も反撃してくるでしょう。相手もこちらと
同じ大きさの核兵器を使用すると仮定し
ましょう。すでに、この程度の核兵器の実験
を、北朝鮮は実施済みです。そうなれば、
<コロラド州の> デンバーの場合で、この
10kmほどの円の内部にいるおよそ15万人
が死亡します。
背筋の凍るようなシナリオを紹介しましたが、
このシナリオでは両国はそれぞれ、1個ずつ
しか核兵器を使用しておりません。ところが
ロシアとアメリカはそれぞれ、戦略核兵器
<という大型核兵器> を4,000発ほど保有
しています。つまり、各国にある人口が
10万人を超える都市すべてを、10発ずつ
の核兵器で攻撃可能なのです。そのような
核戦争が起きてしまうと、おそらくは地球上
で4億人ほどが死亡することになりましょう。
中国でもヨーロッパでも、ロシアでもアメリカ
でも。
でも、ちょっとお待ちください。それだけじゃ、
ないんです。

End of our planet?

End of our planet?

ここまでお話したのは、爆心地周辺だけの
被害です。軍部が戦争の立案で検討に入れる
のは、爆心地周辺だけなんです。それ以外
にも、付随する作用があります。恐竜絶滅の
際には、森林火災が広がり、それで地球に
住む我々の知る生物種のうち3/4が死滅
しました。核戦争の後でも、似たような事態が。
都市で火災が発生、燃え広がります。この
損害を、軍部は検討に入れてもいません。
偶発的な損害とみなされるのですが、これが
人類の文明を壊滅させる恐れもあるのです。
核保有国の中では最も保有数量が小さい
インドとパキスタンですが、広島原爆
2-300個程度の核兵器しか保有しており
ません。この2国の間での戦争であっても、
意図されざる被害のために私たちは死亡
する危険があるのです。それについて、
インドの将軍たちもパキスタンの将軍たちも、
我々に情報を伝えておりません。
私の同僚、Luke OmanとAlan Robockは、
インド対パキスタンの核戦争の後で立ち
上る煙がどこまで広がるのか、計算し
ました。わずか2週間でこの煙は、全地球
を覆います。そして地表から30-80㎞
程度の高さに達します。この高度では、
雨はありません。ですから、この煙は
何年もそこに滞留することになります。この
画像は、アメリカでしょうか、ヨーロッパで
しょうか、農業を営む方ですね。いずれに
せよ、パキスタンやインドからは、何千キロも
離れた場所にいます。煙の垂れこめた空を
眺め、それから自分の畑の作物を見て
いますね。作物は、枯れてしまっています。
日が差さず、低温のせいで。推定では、
インド対パキスタンの核戦争が起きると、
トウモロコシや小麦、コメの収穫量の10
から40%が失われてしまいます。それが、
何年も続くのです。核による気候変動のため
ですね。現在の世界にある食糧備蓄は、
農業生産が止まった場合、全人類を60日間
養えるだけの量しかありません。ノーベル
平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議
(International Physicians for the
Prevention of Nuclear War: IPPNW) という
団体があり、そのメンバーにIra Helhandと
いう方がいらっしゃいます。その方の推定
では、10-20億人ほどがインド対
パキスタンの核戦争の後で餓死すること
になる、とのことです。

The last sunset

The last sunset

全面核戦争が起きれば、その後で気温は
氷河期程度にまで低下します。核の冬に
突入するわけですね。作物は、実りません。
推定では、全人類のおよそ90%が餓死
します。文明は崩壊しますね。そこでは、安全
でいられる人などいません。非核保有諸国の
人たちも、危険に晒されます。その戦争には
参加しなかった諸国の皆さんも。核爆発が
起きてしまえば、地球の反対側にいる人たち
でさえ安全ではないのです。安全でいられる
人など、一人としていません。今日のお話を
お聞きになっても、心が温まったり、スカッと
することはないですよね? (笑い)
でも、週末めがけて重い足取りで歩んでいく、
なんて必要はどこにもありません。核戦争を
防止し、餓死を回避し、人類の文明の終焉を
食い止めるために、何かできるのです。
1980年代、政治家たちは核戦争の危険性を
認識しました。そして、何らかの手を打ったの
です。でも現在の政治家たちは、どうも核戦争
の恐ろしさを理解できていないようですね。
おまけに若い人たちも、核問題を考えも
しません。私たちベビーブーマーは <アメリカ
では、1946年から1964年生まれの世代と
されることが多い> 核戦争の恐ろしさという
ものを叩き込まれていました。小中学校など
で、しゃがんで頭を覆え、机の下に隠れろ、
といった訓練をやらされましたよね。まあ、
そんなものは、実際に核爆発があれば何の
役にも立たないのですが。(笑い)

Radiation monster

Radiation monster

中等教育の年頃の時、お母さんから 「もう
ミルクは飲んじゃ駄目よ。500回も核実験が
あって、地上が放射性物質で汚染され
ちゃったから」 とか言われましたよね。そして
ポップ カルチャーでは、放射線を浴びて突然
変異した化け物が頻出してました。たとえば、
ゴジラですね。これは、長崎屋広島の体験
から生まれた、日本産の悪夢です。
1980年代、私はRichard Turco <アメリカ
の気候学者> やCarl Sagan <著名な天文
学者ですよね>、ロシアの科学者、その他の
人たちと一緒に仕事をしてました。何の仕事
か?ミハイル ゴルバチョフ <1980年代
後半から1991年まで、旧ソヴィエト連邦の
書記長> とロナルド レーガン <1981年
から1989年まで、アメリカ大統領> に
対し、核戦争がどれだけ危険なものかを
伝える、という仕事です。核戦争が起きれば、
核の冬を招く。それは、我々の知るような文明
というものを終焉させてしまう、ということを
伝えました。すると、レーガンもゴルバチョフ
も、耳を傾けてくれたのです。(拍手喝采)
ロナルド レーガンは言いました。「実に多数
の尊敬すべき科学者たちが、核戦争には
勝利者などいない、それは我々が今知る
ような地球というものをなくしてしまうからだ、
と教えてくれている」 と。
さらにミハイル ゴルバチョフが言うには、
「ロシアとアメリカの科学者たちが作成した
モデルによれば、核戦争が起きれば核の冬を
招く。それは、地球上のすべての生命に
とって、あまりにも破壊的なものだ。それを
知ったことが、道徳と誉を知る我々にとって
大きな刺激となり、そうした状況を回避すべく
行動することとなった」

「禁煙しますよ」という約束は・・・

「禁煙しますよ」という約束は・・・

2017年9月、国連は核兵器を禁ずる決議を
採択しました。地雷や化学兵器、生物兵器を
禁じたのと同様に。困ったことに、核兵器保有
諸国はその禁止を無視しようとしています。
今までもそうでしたが、抵抗を示しているの
ですね。そうした保有国の目を覚まさせるの
は、私たちの仕事です。そうしないと、そうした
諸国は夢遊病のように核の大惨事へと突き
進んでしまうでしょう。この問題に、私たちは
何ができるのでしょうか?
皆さんの選挙区の政治家たちに、話して
ください。防衛省には核兵器が起きると何を
招くのか発表してほしいと、伝えてください。
1980年代には、そうしたのです。アメリカが
北朝鮮に核攻撃を仕掛けた場合、犠牲者が
どれだけ出そうなのか?ロシアでは?中国
では?韓国では?日本では?北朝鮮周辺の
諸国ですね。戦争には今までも憑き物の現象
ですが、計画通りにはその <アメリカ VS
北朝鮮の> 戦争が進まず、北朝鮮を超えて
広がってしまったら?さらに政治家たちに、
launch on warning (警告があれば、核兵器
を発射する) という規定を廃止するよう求め
ましょう。launch on warning という規定では、
アメリカ大統領はしかるべき警告が出れば、
誰とも相談なしに核のボタンを押して核兵器
を発射できるのです。このボタンを、大統領が
どこに行くときにも軍部の将校が付き添って
運んでいるのです。
1968年にはアメリカとその他190の諸国が
核兵器不拡散条約に署名しました。その
条約では、可能になり次第アメリカが核兵器を
ゼロにすることを約束しているんです。約束
したのですから、それを果たさないと。私たち
すべての生死は、それにかかっているのかも
しれませんよ。(拍手喝采)
どうも。
*************************
15-min with a ballpoint pen / ボールペンで15分
Blinded — 問題があるのに、見ていない
私の15分クロッキー

核兵器に反対される方々は、実に多数
いらっしゃいます。
問題は、日本では特に、
核発電 ⇒ 核兵器の拡散(proliferation)
というリスク
があまり認識されていません。(2011年~
12年ごろに 「原発反対」 と叫んで
らっしゃった方々と話していて、特にこの
認識欠如を発見しました)
そもそも、proliferation riskにすっきりと
該当する日本語が、まだありません。
「核兵器拡散につながるリスク」 という
ような説明臭い日本語になってしまいます。

市民の多くがそうした認識ですと、政府が昔
から 「潜在的核保有能力」 に固執していても
それをやめさせることなんて、できませんよね。
そこで、日本語で 「核発電と核兵器の
不可分性」 を情報発信していこうというのが、
本 「やかんをのせたら~~」 です

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