f-9) (他にも) 2023年3月現在での世界

2023年3月

The Guardianのウェブサイトの記事より
Nuclear nightmare: reckless leaders are pushing the world back to the brink | Simon Tisdall | The Guardian

核視点で見た世界情勢は、
冷戦終了後しばらくの 「核?Take it easy!」
といったイージーな態度がまったく許容
されない情勢になってしまいました。
・ ウクライナ侵略関連で、核兵器使用を
ちらつかせるロシア
・ 中国の核兵器増強 (右 → の
「アーカイブ」 で2021年7月をクリック)
・ 今も睨み合いを続けるインド VS パキスタン
・ 北朝鮮
・ イスラエル
・ そして、イスラエルへの対抗でしょう、
イランの異常な高濃度のU濃縮

「多体問題?」 ・・ このまま増殖を続けると、解決不能になる恐れも

「多体問題?」 ・・ このまま増殖を続けると、解決不能になる恐れも

かつて、冷戦時代には 「核のにらみ合い」
といえば、アメリカと旧ソヴィエト連邦の2極
対立でした。しかし現在では上記のように、
少なくても米ロ中という3極になってしまって
おり、一種の 「多体問題」 という複雑怪奇な
危険が現実化してしまってますよね。

この現状認識が私だけの思い込みであって
ほしいのですが、どうもそうではないようです。
The GuardianのSimon Tisdallさんによる、
外交問題専門家としての視点を読んで
みましょう。

いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。

気を抜いていたら~~

気を抜いていたら~~

****************************
Nuclear nightmare:
reckless leaders are pushing
the world back to the brink
(核の悪夢:
ハチャメチャな指導者たちが、世界を瀬戸際
に押し戻す)
Simon Tisdall (外交問題を専門とする
コメンテーター、Guardianアメリカ版の編集者)

問題はプーティンだけでも、主要国
が軍縮を拒否していることだけでも
ない。イスラエルと北朝鮮の役に
立たない政権も、世界の核の緊張
を高めてしまっている。

2023年3月19日

不安定でありながら核兵器を有する諸国の
指導層がストレスを感じると、愚かで危険な
行動に出る。目算を誤り、他国を挑発し、
物事をやりすぎる。アメリカとロシア二国間の
関係が一種の発熱状態にある只中、先週
には黒海上空で、両国の軍用機の衝突が
あった。核兵器使用へのエスカレーションが
生じえるのでは、との不安が高まるのは
避けられない。この衝突により、ウクライナ
侵略という誤りによって自らの存在そのもの
を危機に追い込んでしまったヴラディミール
プーティンがいかに危険な人物かがはっきり
と浮かび上がるとともに、彼がいよいよ
やらかそうとしているリスクも明るみに出た。
だが、こうした指導者はプーティンだけでは
ない。

アイツもコイツも ・・・

アイツもコイツも ・・・

昨年にはたびたび見られたことだが、
プーティンはアメリカが自制するものと想定
して行動していた。アメリカ軍が、この衝突
でドローンに対し攻撃を仕掛けてきた
Su-27戦闘機を、そのクリミアにある基地
まで追跡しようと思えば、それは簡単なこと
であった。ロシア大統領は幾度も核兵器
使用をほのめかしたが、その都度それまで
は想像もできなかった核兵器使用という
暴挙が、徐々に暴挙と思えなくなって
いった。そして西側の指導者たちは神経の
強靭さを高めないといけなくなる。さらに
ロシア軍はザポリージャ原発を繰り返し砲撃
しているが、それもこうした不吉な断崖絶壁
への接近パターンに当てはまっている。

ロシア軍が配備済みの戦略核兵器の
弾頭数はおよそ1,600個にのぼり、保有
している核弾頭合計は約4,500に達する。
アメリカやその他の核保有諸国もそうだが、
ロシアも保有する核兵器の近代化に努め
新しいシステムを追加している。それと同時
に、旧ソヴィエト時代からある軍縮条約が
重要なセーフティーネットになっていたの
だが、それももうボロボロになりつつある。
先月にはプーティンがNew Start <という
新たな核兵器制限条約のための交渉> を
拒否したが、これは配備済み戦略核兵器の
上限を設ける条約である。ロシアがアメリカ
と交渉していたこの種の契約としては、
最新のものだ。

一触即発

一触即発

言い換えれば、ロシア政府が先例がない
ほどの強烈なプレッシャーを抱え、米ロ
関係が1962年のキューバ ミサイル危機
<このとき、キューバに旧ソヴィエトの
核ミサイルが配備され、世界は米 VS
ソヴィエト核戦争の一歩手前にまで至り
ました> 以来の緊張にある中、政治的
交渉のチャネルも合意によるメカニズム
も、そして核衝突を回避するための制約
の設定も、今までになく信頼性を失い、
頼りないものになってしまっている。確かに
偶発的な核兵器衝突の危険性は常に存在
しているのだが、プーティンのでたらめさの
ため、その危険性が限りなく高まって
いるのだ。

イスラエルも、極度のプレッシャーを受けて
いる核兵器保有国だ。これは主に、立場が
不安定な右翼政治家が首相をやっている
ためだ。ベンジャミン ナタニヤフは、司法
制度の独立性を破壊することで投獄を免れ
ようとしたことが知られている。それとともに、
イスラエルの民主制度も破壊しようとした
わけで、騒ぎの原因となっている。面白い
ことに、ナタニヤフの 「クーデター」 に対して
は、現役の軍人たちや以前の防衛大臣、
そして市民社会の多くが非難している。

例として、仮にこうした不安定性を招く国家
規模での動乱がパキスタンで発生したと
すれば、同国が隠し持っている核兵器の
安全な管理に関して、国際的な懸念の
表明が巻き起こるはずだ。それと比べ
イスラエルの国内が不安定でも、その
有する90前後の未申告の核弾頭の安全
な管理については国際社会からあまり
懸念が聞こえて来ないのが、気になる。
ナタニヤフとアメリカのジョー バイデン
大統領が奇妙な様子見をしあっている中、
イスラエルのイサーク ヘルツォグ大統領
は内戦ぼっ発を憂慮している。「手を伸ばせば
触れるところまで、崩壊が近づいている」 と、
同大統領は先週語っている。

やっちまえ~~!

やっちまえ~~!

プーティンもそうだが、自業自得で招いた
難局から逃れるため、ナタニヤフがどんな
手に打って出るか憂慮すべき理由が充分に
ある。以前にもナタニヤフはイランの核施設
を爆撃するとの脅迫をしていたのだが、
イスラエルのメディアによれば今や攻撃を
立案している可能性がある。今月になって
ナタニヤフは、イラン政府がウラニウム濃縮
プログラムを停止しない限り、「恐るべき核
戦争」 の可能性を警告している。ナタニヤフ
は、自らの立場を守るために中東での戦争を
始めるのだろうか?過去の事実を見る限り、
その可能性はある。<上の黒いメニューで、
c-1), c-2), 右の 「アーカイブ」 の2021年
2月15日の記事にあるStuxnetを参照>

アメリカと同盟諸国は、ウクライナに気を取ら
れていなければ、ナタニヤフの悪戯にもっと
注意を向けているはずだ。核兵器を保有して
いる北朝鮮で進行している危機についても、
同じようなことが言える。この国の庫内に
抱える脆弱性をさらに困難にしているのが、
忍び寄る飢饉だ。独裁者キム ジョンウンの
健康状態と後継者問題についても、新たな
疑念が生じている。極めて危険な指導者で
あるにも関わらず、中国とロシアが彼を
後押ししており、そのため危機はさらに攪拌
されてしまう。

明日なき暴走~~

明日なき暴走~~

先週キムは、核兵器搭載可能な弾道ミサイル
の発射という、明日なき暴走ともいうべき悪戯
に興じた。こんなことを続けていれば、実際に
もう明日はないのかもしれない。アナリスト
たちは、また地下核実験を彼が行うものと
予想している。キムはアメリカ、それに韓国
と日本への恫喝を繰り返している。これら
諸国は先週会合を開き、対応を検討した。
今月初め、キムは軍部に対し 「本当の戦争」
に備えよと命じた。果たしてキムの愚行は
合図なのか、それとも沈みゆく指導者なの
か?世界の気を引きたいのか、それとも
絶望を演じているだけなのか??西側は
北朝鮮を無視するという方針を暗黙に貫いて
いるが、それでは問題は悪化していく。

最近中国の終身大統領となったシー ジンピン
(Xi Jinping、習近平) は沈痛な面持ちをして
いることが多いのでわかりにくいのだが、彼も
過酷なプレッシャーに耐えている。彼が 「ゼロ
コロナ」 政策を進めたため停滞していた経済が
さらにダメージを受け、市民反乱に近い騒動が
発生した。抑圧的な外交政策・債務政策・
人権弾圧を続けており、世界的に中国への
反感を招いている。アメリカの後ろ盾を受けて
いる台湾を、何があっても必ず併合すると
宣言しており、ここでもシーは自らに苦境を
招いている。

CIAのウィリアム バーンズ長官は中国に
よる台湾侵略が2027年までに始まる
危険性を予想しているが、そうなると核
兵器の炸裂となってしまう可能性も高い。
特に、シーにとって不都合な情勢となった
場合には。推定では中国は使用できる核
弾頭がおよそ400個あり、2030年まで
には約1,000個にまで増大する恐れが
ある。太平洋西部では、アメリカ軍の核
兵器を搭載した軍用艦や潜水艦、爆撃
機が常時パトロールを行っている。

「潜った核物質」 ・・・

「潜った核物質」 ・・・

<そうした中国軍の動きを正当化する口実と
して> シーは、アメリカと英国が核兵器の
近代化に引き続き努めていること、さらに先週
報じられた原子力潜水艦をオーストラリアに
供給する契約を指摘することだろう。国連で
中国は、その供給契約は核分裂性物質と核
技術を非核保有国に譲渡する以上、核不拡散
条約への違反であると苦情を述べた。

これは思い高ぶった反論というべきだろうが、
アメリカはその供給契約によりむしろ核拡散
の努力が実際には強化されると主張して
いる。なぜそうなるのか、説明はしていない。
イランや一部諸国はこの主張を、ダブル
スタンダードだと記録するはずだ。

核の緊張が高まっている根本原因とは、主要
諸国が軍縮を長年拒否していることだ。だが
現在の政治的指導者たちは無責任で、この
危険を大いに悪化させてしまっている。
アメリカ海軍大学のブレント スティッカー
中佐は、「アメリカとその同盟諸国は、・・・
ある選択に直面している」 と記している。
核関連の世界秩序の変化を陰鬱にとらえた
著作でのことだ。つまり、「ロシアと中国も
含めた軍備制限のための交渉を再開するか、
それとも軍拡競争を再開してしまうか」 と
いう選択である。

またこんなことに?? どちらも滅びるしか、選択がない ・・・

またこんなことに??
どちらも滅びるしか、選択がない ・・・

現状では、この最初の選択肢はほぼありそう
にない。そのため、冷戦時代にあった無計画
な核兵器競争が進み、相互確証破壊
(MAD、核戦争となればどちらの陣営も確実
に破壊されてしまう、という理論> が世界に
戻ってしまうだろう。しかも、それが現在の、
新たに過剰なストレス下にある国家経営の
中で実現してしまう。だれも、最初に発射
ボタンを押すことはあるまい、という想定の
下で。
*************************

核兵器はこの惑星を滅ぼしかねない存在で、
その危険は再度高まりつつある、という
わけですね。
そして 「やかんをのせたら~~」 が何度も
説明してきた通り、核発電は本来、その
核兵器を作るための道具です。
ですから、「原発廃絶」 と 「核兵器廃絶」
の両勢力が分離しているというのは、実に
奇妙な片翼飛行なのです。
核の悪夢から解放された世界で、
平和に両手を伸ばし深呼吸をしたい
ものです。
「やかんをのせたら~~」 では、あくまで
両者の廃絶を祈り求めつつ、今後もこの
不可分性を、具体例をあげつつ説いて
まいります。

暗雲が立ち込めてるけど ・・・ それでも光を 私の昔の作品

暗雲が立ち込めてるけど ・・・ それでも光を
私の昔の作品

 

Comments are closed.