付録 w-4) CO2?? 健康被害?? 問題の本質はどこに??

2022年2月4日
( – へ-)> やれやれ~~

たびたび申してきたように、「やかんをのせたら~~」はあくまで
proliferation risksにフォーカスしており、カーボン排出問題は、
それを専門とするウェブサイトなどに任せているのですが ~~

現時点では「欧州委員会が原発をクリーン エナジー投資先として
条件付きで認定」という報道が喧しいので、この「付録」で短く
言及しておきますね。

20-min croquis, of the same male model / おねじ男性モデルさん、20分クロッキー

「はあ、それで?」
私の20分クロッキーより

Friends of the Earth Australiaの公表しているテキストの中に、
Jim Greenさんによる Integral Fast Reactors という文章があります。
Integral Fast Reactors | Friends of the Earth Australia (foe.org.au)
でお読みになれます。
問題は、公開日付が明記されていないのですが、内容から推察して
2009年あたりかと思います。つまり、少し古いのですが、実は
内容は2022年2月現在でもまったく有効な内容です。

あくまでIntegral Fast Reactors (IFR) を取り上げている文章でして、
カーボン排出は焦点ではありません。
ただ、新型原子炉の推進勢力は口癖のように「この新型原子炉なら
メルトダウンせず、原発はカーボン排出が極めて少ないので、
脱炭素化に貢献できる」と喧伝しています。
実はこの喧伝、2009年ごろにもすでに行われていたもので、
このGreenさんのテキストにも短い言及があります。

Clean Energy Optionsという箇所でして、そこから一部だけ
抜粋して紹介しますね。

・・・(前後を省略)・・・
Nuclear power could potentially be used for purposes other than electricity generation,
but currently it is used almost exclusively for electricity generation, which accounts
for just 16-30% of greenhouse emissions. This undermines the more strident claims
made by IFR advocates, e.g. Kirsch’s claim that IFR could be the “holy grail” in the
fight against climate change.

(私による日本語化、< >内は私による補充説明)
核エネルギーには発電以外に利用する潜在的可能性もあるが、今のところほぼ
発電だけに利用されている。発電が<世界の>温室効果ガス排出全体に占める比率は、
およそ16-30%だ。IFR推進勢力は<温室効果ガス削減での新型原子炉の貢献に
ついて> 喧しいが、この発電の排出におけるシェアを考えるなら、声高に喧伝し
すぎている。たとえばKirsch<というIFR推進者>は、IFRこそ気候変動との戦いに
おける「聖杯」<伝説で、十字架のキリストからの血を受けたとされている
杯で、奇跡を起こすとされた> なのだと主張してしまっている。<これなど、
明らかに喧伝の行き過ぎだ> <オレンジ色の文字による強調は、私

「この雨漏りさえ、なおしたら~~」 「そーゆー問題じゃ、ないだろ!」 全体を見ないで、一部だけ問題にしていても~~~

「この雨漏りさえ、なおしたら~~」
「そーゆー問題じゃ、ないだろ!」
全体を見ないで、一部だけ問題にしていても~~~

確かに、発電の一部だけを「メルトダウンしにくい新型原子炉」に変えても、
それで地球規模のカーボン削減にどこまで貢献できるのか??
そのためにワザワザ、いまだに処分場所がわずかにしか決まっていない
放射性ゴミを出し、proliferation riskをおかすのか??
常識的に考えれば、その異常性はすぐに分かりますよね。

なお、上のオレンジ文字個所の真実性については、たとえば
アメリカのEnvironmental Protection Agency(環境保護庁)の
ウェブページでも確認できます。
Global Greenhouse Gas Emissions Data | US EPA
の上から2番目のパイチャート(円グラフ)をご覧ください。
農林業や工業全般からの排出も何とかしないと、どうにも
ならないわけですね。

そして、proliferation

さらに同じGreenさんの別のテキストには、Al Goreアメリカ前副大統領の発言も引用されています。日本でも、An Inconvenient Truth(不都合な真実)で有名ですよね。
で、その前副大統領は、カーボン排出削減の手段として核発電に期待していたのか??

同じくFriends of the Earth Australiaの公表している、Jim GreenさんによるテキストNuclear Weapons and ‘Generation 4’ Reactorsという文章に、
Goreさんご自身の意見が引用されています。

こちらは公開日付が明記されており、2009年7月です。
Nuclear Weapons and ‘Generation 4’ Reactors | Friends of the Earth Australia (foe.org.au)
でお読みになれます。

・・・(前後を省略)・・・
Other “fourth generation” reactor typesという段落の終わりから、抜粋します。
Former US Vice President Al Gore has summed up the problem of heavy reliance
on nuclear power for climate change abatement: “For eight years in the White
House, every weapons-proliferation problem we dealt with was connected to a
civilian reactor program. And if we ever got to the point where we wanted to use
nuclear reactors to back out a lot of coal … then we’d have to put them in so many
places we’d run that proliferation risk right off the reasonability scale.”

(私による日本語化、< >内は私による補充説明)
アメリカのAl Gore元副大統領は、気候変動の軽減のために核発電に大きく
依存してしまうことの問題点を要約している。「<私は>ホワイトハウスに8年間
勤務したが、そこで対応した核兵器拡散問題は、どれを取っても民生用原子炉に
関連していた。もし、石炭に代わるものとして原子炉を採用するのであれば、
核兵器拡散リスクを充分無視できるだけの場所に多数分散せねばならないだろう」
文字色協調は、私

ついでながら、オレンジ色文字で強調した個所にもご注意くださいませ。
アメリカ副大統領と言えば、当然、核兵器拡散問題には必死に取り組んだはず。
それを8年間も続けた人物が、換言すれば「核兵器拡散問題で、核発電が
関与しなかったものなど、皆無だった」と断言してらっしゃるわけですね。

しっぽばっかり攻撃しても・・・ まず全体を見るべきですね

しっぽばっかり攻撃しても・・・
まず全体を見るべきですね

ですから、原発問題に取り組むなら、まずは proliferation risk を考えないと。
メルトダウンも確かに深刻な問題で対処すべきですが、G4原子炉
(第4世代原子炉)には、実験してみてもメルトダウンしにくい原子炉が
あります。その1例が EBR II –> IFR –> S-PRISMでして、前身である
EBR II で「故意に冷却材喪失を起こして、メルトダウンが発生するか否か」を
調べる実験が行われたのですが、核分裂が「勝手に」とまり、
メルトダウンはしなかったのです。これについては、近日中にアップロードする
予定の新固定ページで紹介します。

自慢話なんかじゃ、ないんです!

私のように1990年ごろから今まで核(発電も兵器も)に反対してきた
者は別にして、2011年ー12年ごろに盛り上がった反原発マーチに参加された
方々の多くにとっては、メルトダウンこそ最大の問題だったのでしょう。
その時点では、仕方がなかったのでしょう。

でも、proliferation riskこそ核発電の最大の危険性だと理解している者たち
(私自身も含めて)から見るなら、
★ 日本政府が核発電に固執してきている真意は、石破さんが明確に
述べてらっしゃるように、「潜在的核抑止」にある
⇔ それに対してメルトダウンを問題の中心とするマーチ(デモ)を
いくらやっても、問題の焦点がすれ違ってしまっていた。
★ 上述のEBR II の「メルトダウンさせようとしても、しなかった」実験は
既に1980年代に実施されたもの ⇒ おそらく、推進勢力は「新型原子炉
ならメルトダウンしないし、原発を普及させれば、脱炭素化を大きく前進
させられる」などと喧伝して、巻き返しを図るだろう(そして2022年2月現在、
現実にそうなっていますよね)

といった問題が丸見えでした。
特に2017年ごろ、North Koreaからのミサイル発射でJ-ALERTが発動したことが
ありましたよね。私は、このタイミングで反原発団体などが「核発電と核兵器の不可分性」を社会にアピールすれば、反原発の流れを再燃できるかも、と「同志たち」に
訴えたのですが、相手にしてもらえませんでした。日本の反原発運動には、
proliferation riskへの具体的な認識が欠けていたようですね。

「やかんをのせたら~~」の固定ページ b-x), c-x), f-x), g-x), t-x)  などでは
この「不可分性」の実例をシツコク紹介している理由も、これでお分かり
いただけるでしょう。

これでほんとに「平和利用」?

これでほんとに「平和利用」?


Al Goreさんのインタビューをさらに紹介

では、GoreさんのCBS Newsでのインタビューを、
さらに少し紹介してみましょう。

(私による日本語化、< >内は私の補足説明)
********************
CBS News
Al Gore: Energy Crisis Can Be Fixed – CBS News
(アル ゴア、エネルギー危機には解決策がある
– CBS News)

<2008年7月17日の>木曜日、元副大統領Al Gore氏
がグリーンの難題をアメリカに突きつけ、
全米での全電力を風力や太陽光などの再生可能
エネルギーで発電するべきだと訴えた。しかも、
10年以内に。ワシントンで CBS News の
アンカー、
Katie Couric が環境保護活動で
ノーベル賞を受賞したGore氏と1対1のインタビュー
を行った。

下記は、そのインタビュー全体を書き起こしたもの。
2008年7月17日

—————– <ここでは、一部だけ、抜粋して
あります>
Couric: 核発電については?核発電のことを
おたずねするのは、フランスのような国は
総電力の75から80%を核発電で賄っていますからね。

Gore: フランスは、例外的ですね。特殊な
ケースです。アメリカには、フランスを
上回る数の原発がありますが、・・・ 私は
反原発主義者では、ありません。では、
核発電が今よりも大きな役割を演じるように
なるかというと、私にはそうは
思えないのです。今後も核発電は、それなり
の役割を果たすだろうとは思います。
でも核発電には問題が多く、まず費用が
大変かかります。建設にも長期間を
要します。しかもどの原発も、エクストラ
ラージという同じサイズなのです。
<つまり、発電量が大変大きいものしか
ない、ということ。すると、「それ、SMR
以前の話だよな」という反応をなさる方も
いらっしゃるかも。でも、SMRは確かに
1基当たりの発電量は小さいのですが、
電力需要が増えれば、それに合わせて
増設することになります。結局、同じ
電力を得るのに多数のSMRができることに
なり、それだけ管理はややこしくなります>

しかも原発コストは上昇を続けており、
<建設期間である>15年間もの間、膨大な
資金をつぎ込むのは、電力会社としては
やりたくないでしょう。それに言うまでも
なく、核燃料にも問題があります。核燃料
が何らかの形で、信用ならない諸国に
渡ってしまうと、核兵器の拡散という問題
の悪化につながってしまうのです。

Couric: 原発がテロ攻撃の対象になりえる
という問題も、懸念してらっしゃいますか?

Gore: ええ、私自身は、テロ懸念のために
原発を避けるべきだ、ということ
にはならないと考えています。テロ攻撃の
対象となりえるものはほかにも多数
あるので、いずれも守っていかなくては。
問題の1つでは、確かにあります。
それに、核ゴミの保管も、また1つの問題です。
でも私が考えるには深刻な問題は経費、
建設期間の長さ、そして他の諸国が
核発電に真剣に取り組むと、核兵器拡散と
いう問題が悪化してしまう
ことですね。
文字色協調は、私
******************

雑菌さえ殺せば「クリーン」だっていうのであれば~~

雑菌さえ殺せば「クリーン」だっていうのであれば~~

結局、あるエネルギー源を「クリーン」と呼ぶ場合、「クリーンとは何なのか」
という定義をはっきりさせないと。
「カーボンさえあまり出さなければ、核ゴミのやり場に困っても、核兵器に
つながっても、クリーンなのだ」~~~そんな「クリーンさ」って、
何になるんでしょう??

そして、日本の元総理大臣5名の書簡

2022年2月現在、上述のEU Taxonomyでの核発電の扱いに抗議する、
日本の元総理大臣5名の方々からの書簡が日本語メディアでは話題に
なっています。
ですが、この書簡の全文をなかなか見つけられませんでした。
全文を読まずには、批判も擁護もするべきじゃないですからね。
やっと、英語の全文を見つけました!
202201_EU-Taxonomy_Genjiren_Statement_ENG.pdf (main.jp)
にありました! 原自連さんのウェブサイトで、この書簡に対する現在の
日本の環境大臣からの批判に対する公開質問状が掲載されていますので、
ぜひお読みになってくださいませ。
原自連公式サイト | 原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 (genjiren.com)

で、この5名の元首相の方々からの書簡に対する私の私見なのですが~~

まず、誤解のないように断っておきますが、私は
・ 一般的に放射線の健康被害が怖いものだと理解していますし、
防止しなきゃダメだと考えております
・ 福島第一メルトダウンを軽視しているわけじゃなくて、
実際に避難者の方々のお手伝いもしてきました
・ それでもなお、私がproliferation riskにフォーカスしているのは、
1) 日本の反原発運動の多くが、あまりproliferation riskを具体的には
取り上げてこなかった
2) 放射線による健康被害や福島第一の惨状を主に取り上げている
日本語ウェブサイトや出版物は、すでに他にある
3) 特に健康被害は、「因果関係」の証明でいつもヤヤコシクなる
(なお、私自身は甲状腺がんも含めて健康被害がないハズはないと
思うのですが、私は医療関係者ではなく医学専門知識がないので、
この問題に関しては放射線医学などの専門家の方々に任せているのですね。
もっとも、専門家の皆様の間でも見解の相違が多くて困るのですが …)
4) それに対し、proliferation riskが現実化した実例は、因果関係を
云々する必要がない。
(上の黒いメニューにあるページ b-x), c-x), d-x), f-x), t-x)などで
説明した通りです。さらに、上のAl Goreさんの発言にある、
For eight years in the White House, every weapons-proliferation problem we
dealt with was connected to a civilian reactor program.
という箇所もお忘れなく!)

そんなわけで、決して健康被害もメルトダウンも、軽視してるわけじゃありません!
誤解なきように願いますね。ただ、それら以上にproliferationは怖いと言っている
わけですね。広島・長崎での原爆投下の被害を思い起こせば、納得していただける
でしょ?

で、そうした私の視点から、5名の元総理大臣の方々による書簡の全文を読んだの
ですが~~
ああ、proliferationという言葉もweaponという言葉も、まったく登場していません!
特に “many children are suffering from thyroid cancer” (多数の子供たちが甲状腺
がんに苦しみ)という箇所が日本語メディアでは話題になっていますが、もし私が
著者であれば、因果関係でヤヤコシクなりやすい問題よりもproliferation riskの方に
強調を置きますね。(しつこいようですが、健康被害を軽んじているわけじゃ
ないですよ! 上に記したとおり、発電 ⇒ 兵器というproliferationは既に実例が
揃っており、因果関係を論じる必要もないからです)

「ああ、私だって疲れてしまう ・・・」 私のデッサン練習より、Croquis Cafe 366をベースに

「ああ、私だって疲れてしまう ・・・」
私のデッサン練習より、Croquis Cafe 366をベースに

それと比べて、上で引用したAl Gore元副大統領は、はっきりとproliferationを
問題にしてらっしゃいますよね。
For eight years in the White House, every weapons-proliferation problem we
dealt with was connected to a civilian reactor program.
(そこで対応した核兵器拡散問題は、どれを取っても民生用原子炉に
関連していた。)
さらに
also the problem that if other countries make a massive commitment to it, we
make the problem of nuclear weapons proliferation worse.
(そして他の諸国が核発電に真剣に取り組むと、核兵器拡散という問題が
悪化してしまう)

このあたり、日本の政治的リーダーとアメリカの指導者との質的な違いを
感じざるを得ません。なにも、「何でもかんでもアメリカの方が進んでる」
などと時代錯誤したことを言いたいんじゃありませんよ。
でも、
・ 核発電と核兵器という問題に関する限りは、もともとどちらもアメリカで
開発されたものでして、
・ しかも核兵器の拡散を恐れるようになった1950年代には、「核兵器を
あきらめて、アメリカ(IAEA)の監視を受け入れたら、核発電をやらせて
あげるよ」(Atoms for Peace)という手に打って出た
・ そして北朝鮮やイランの実例が示す通り、そのAtoms for Peaceがすでに
破綻している
というわけですから、アメリカの指導層の方が敏感になるのでしょう。

しかし、
日本の政治指導者の皆様も、もっと原爆の被害に遭われた方々の
声に傾聴して proliferation riskに敏感になっていただきたいと、
私は願っています。

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