mo-1) (MOX) Pu利用にこだわっていると~~ I

「CO2削減が必須課題 ⇒ 原発がこれからのクリーンなエネルギー源だ ⇒ メルトダウンしないSMR 原発を、大いに新設すべきだ」という類の短絡した主張がかまびすしい2022年1月ですが、これが如何に短絡した見解かは、別にデータを調べなくてもチョット常識的に考えれば、すぐに分かりますよね。

ウラニウムも、トリウム原発 (後日、取り上げます) の燃料であるトリウムも、石油や石炭と同じく「地下資源」です。つまり、有限です。有限である以上、使い続ければ、いつかなくなります。

ですから、いずれ人類は、再生エネルギーでやっていくしか選択はないことになります。
その日のための準備は、今から進めておくべきでしょう。

「いや、核燃料を使用後に再処理すれば、Puを新たに燃料として使える!」という反論が、いまだに一部から聞こえてくるのが、不思議でなりません。
上の黒いメニューにある ページ tw-1) の「238U –> 239Pu という「核種変換」」という箇所にある図で示したように、U燃料の中身の大半は238U です。これに中性子線を照射すると、「核種変換」を起こして239Puという核分裂性のプルトニウムに変わるわけです。(したがって、地球にある238Uを使いつくしたとき、再処理も終わりになる)
そうしてできた分裂性Puを使用済み核燃料から「再処理」して取り出せば (たとえば、PUREX法という手法があります)、それを新たな燃料として使えるじゃないか、というわけですね。
そうしてPuを使った核燃料の代表格が、建設中の大間原発などで有名なMOX燃料というわけですね。このMOXの問題点について、本「やかんをのせたら~~」では今まで (2022年1月まで)取り上げてこなかったので、ここで短く取り上げますね。

3D combination of the three 2D croquis / その3枚の2Dクロッキーを3Dで組み合わせる実験
一皮めくると~~ 「増殖」って、魔法でもなんでもなかったのね私の20分クロッキーを重ね、上の1枚を切り開いたもの
もうすでに、重大な問題が~~

もうお分かりのとおり、「再処理」はPuを取り出す作業ですから、核爆弾の製造にまともにつながりえます。「Puの濃度が~~」と仰る方々もいらっしゃるでしょうが、PUREX法だと「兵器グレード」のPu分離も可能だそうです。
このproliferation risk (核発電が、核兵器につながってしまうリスク) だけでも、再処理を世界的に禁止する必要がありますよね。(実際、今のところ、再処理をおこなっている国は、全世界でも日本を含め数か国だけです)

そこまでしてMOXを作って、何になるのか??

日本は「例外的に」再処理を認められているので、そんなリスクを冒してまでMOXを製造、一部の原発で使用しているのですが~~
いったい、MOXには何の利点(もし、あれば)や欠点があるのでしょうか??

1) まず、本来PuとUとは反応のあり方が違うので、正論を言えばMOXにはMOX用の原子炉を使うべき。
この点については、反原発派の皆様なら「軽水炉でMOXを使うのは、ディーゼル車をガソリンで走らせるようなものだ」といった問題指摘を聞いてらっしゃるでしょう。その詳細については、YouTubeの「エナシフTV」さんが公開してらっしゃる「Jパワー】完成を望まれない原発がある」というヴィデオの 7:18 – 9:13 あたりに、短く説明したものがあります。日本語ヴィデオなので、お気軽にご覧ください。

【Jパワー】完成を望まれない原発がある – YouTube

こんなバカバカしいもの、作りたくないんだが~~

こんなバカバカしいもの、作りたくないんだが~~

 

2) 費用がかさむ

上のエナシフTVさんのヴィデオでも言及があるとおりです。

加えて、私自身の昔の経験からも、話をしておきましょう。

大間原発の建設が始まったのは1980年代半ばのことでした。実は1989年ごろ、私はあるクリエイティブ エージェンシーのクリエイティブ ディレクターをしていたのですが、大間原発に伴う地域振興のPR材料をデザイン・作成する仕事をエネ庁の関係から依頼され、当時の私はそれを受けることにしてしまいました。(「中立」というものを、私が誤解していたのですね。資金力に膨大な開きがある二陣営の間では、容易な「中立」など、ありえないのですが!)
で、大間町再開発案のパンフレットを私がデザインしたのですが、その時点では大間原発はATR (Advanced Thermal Reactor) という炉型の原子炉になるハズでした。これは減速材に重水を使うもので、重水で中性子を減速すれば、Puだの天然ウラニウムだのでも、核燃料として使えるのですね。(技術的な話なので、また後日に説明します。「減速材」とは何か、ご存じない方は上の黒いメニューにあるページ tw-1) で、「高速中性子と「熱」(遅くした)中性子」という箇所を)

なお、現在の原子炉の主流である「軽水炉」では、冷却剤にも減速材にも「軽水」つまり「フツーの水」を使います。

ところが、とんでもない高価な電気に

重水は大変高価なものなので、ATRで発電すると、とんでもなく高い電気になってしまうのです。

それで、予定されていたATRは1990年代半ばに「ヤメ」に決まり、ABWR(改良型沸騰水原子炉)を建設して、その中でMOXを使うことに変更しました。
要するに、
再処理 ⇒ Puを何とか使いたい  VS  Puなど発電に使うと、とんでもなく高い電気ができる
という板挟みが現れた実例が、大間のMOX原発なのですね。
そしてそれから27年近くがたちましたが、大間原発はいまだに建設中です。

こんな家、完成させたい人なんか、おるんかいな~~??

こんな家、完成させたい人なんか、おるんかいな~~??

実は、再処理 ⇒ MOX の問題点は、昔から指摘されていて ・・・

そうした問題を、WISE (World Information Service on Energy) さんの Nuclear Monitor #763、2013年6月13日号 “The Plutonium Problem: Reprocessing, MOX, and Fast Neutron Reactors” から見てまいりましょう。
The Plutonium Problem: Reprocessing, MOX, and Fast Neutron Reactors | Wise International

いつもどおり、私による抜粋・日本語化、< >内は私による説明です。

———-(冒頭部、省略)———-
商業再処理のほとんどを行っているのが、英国(セラフィールド)とフランス(ラ アーグ)である。それらより小型の再処理工場が、インド、ロシア、日本にある。さらに数か国には、民生用と軍事用を兼ねる軍用再処理工場がある。International Panel on Fissile Materials <核分裂性物質に関する国際パネル、17か国からの専門家が集まった独立系グループで、2006年に結成> は、9か国に全部で19の再処理工場があると列挙している。その9か国とは、中国、フランス、インド、イスラエル、北朝鮮、パキスタン、ロシア、英国、アメリカである。<日本にも茨城県に東海再処理工場があるのですが、2018年に廃止が正式に決まっています。この原文は2013年のものですが、東海は小規模なのでここでは割愛したのでしょうかね?東海の廃止作業の完了まで、70年ほど要するそうです。なお、これら9か国がいずれも核兵器保有国であることにご注意! まあ、イスラエルだけは、持ってるとも持ってないとも言っていませんが>

核燃料のサイクルの中で、再処理こそが最も危険で汚染を引き起こす工程だと見るべきだ。再処理から出続ける廃棄物は大量で、管理するための方法も見つかっていない。しかも再処理では、原爆に使用できるグレードのプルトニウムを使用済み核燃料から分離するのだ。

それで、何のために!?

それで、何のために!?

再処理をおこなう理由として、その推進勢力は以下の理由を挙げている。

  1. 高レベル放射性廃棄物の量を軽減し、その管理をしやすくする
    実際には、再処理を実施しても<核ゴミの>放射能が減るわけではなく、毒性が軽くなるわけでもない。低レベルや中レベルの廃棄物も含めた廃棄物総量は、再処理を行うと増大してしまう。World Nuclear Association <世界原子力協会、2001年設立の原子力業界団体> のSteve Kiddという人物は、2004年にこう述べている。「現在のPUREX再処理手法(セラフィールドとラ アーグで採用)が満足できるものでないことは、本当だ。環境を汚すし、低レベル放射性廃棄物をかなりの量、産み出してしまう」
  2. ウラニウムを「リサイクル」し、自然界にあるウラニウム鉱石への依存を軽減する
    実際には、21世紀中には、原子力発電が急激に拡大することがない限り、ウラニウム供給に支障が生じることはないだろう。そして、そんな急拡大はありそうにない。<発電だけ見ていれば、そうですよね。ただ、核兵器の増産競争が始まったら??> 再処理工場で使用済み核燃料から取り出したウラニウムのほとんどは使用されることなく、蓄積されるのだ。再処理で出来たウラニウムを使用しているのはフランスとロシアだけで、しかも全世界のウラニウム消費のわずか1%に過ぎない。[IAEA, 2006]  しかも再処理からのウラニウムには232U <強烈なγ線を出すため、これがある程度以上存在すると作業もしにくいし、機器の異常なども引き起こしやすくなります> のような同位体も含まれるため、原子炉の燃料として使用するのは難しい。
  3. プルトニウムを取り出して、核燃料として使用できる
    実際には、核燃料としてのプルトニウムに対する需要はほとんどない。原子炉燃料として使われる場合にはMOX (ウラニウムとプルトニウムの酸化物混合)として使用されるが、これは全世界の核燃料のうち2-5%を占めるに過ぎない。しかも、ごく少数しかない高速中性子炉で使用する。<本来の用途は、高速中性子炉なのです。減速中性子炉つまり軽水炉などで使うのは、本来少しおかしい>
  4. プルトニウムを燃料として使用することで、核兵器に使用されることを防ぐ
    実際には、プルトニウムを燃料として使用できる原子炉は、消費する以上のプルトニウムを製造してしまう(そのように設計されているか、部分的な修正によって)。<いわゆる「増殖」ってやつです。上の黒いメニューで、ページtw-1) の「238U –> 239Pu という「核種変換」」の箇所をご覧ください> さらに、原子炉燃料としてのプルトニウムに対する需要は極めて少ないので、取り出したプルトニウムの蓄積が増大を続け、今ではおよそ260トンになっている [Fissile Materials Working Group, 2013]  これだけのプルトニウムがあれば、約26,000発の核爆弾を製造できる。(「原子炉グレード」のプルトニウムが10㎏あれば、核爆弾を1つ製造できる)

    実は、恐ろしいじゃないか!

    実は、恐ろしいじゃないか!

再処理を行うことで、核兵器の拡散が軽減することはなく、むしろ悪化したのは明らかだ。抽出したプルトニウムの集積という問題に対処するのは、極めて簡単なことだ。再処理を減らし、停止し、やめればよい。それだけのことだ。

<それなのに、なお>再処理が続けられている主な理由とは、再処理工場が「現実上の」長期的な使用済み核燃料の保管施設になっていることだ <色文字は、私Heedayによる>。だが困ったことに、そこから生じる一連の対策の流れが、「ハエを飲み込んだお婆ちゃん」という歌を思い出させるものになってしまっている。<英語圏で有名な童謡で、1つの問題を解決しようとして、さらに困難を招いてしまうという内容です。 There Was An Old Lady Who Swallowed A Fly | Nursery Rhyme – YouTube>  つまり、1つの問題に対処しようと手を打つと、次のように、さらに大きな問題が発生してしまう:

1. 原発敷地内で使用済み核燃料の蓄積が増大を続けているので、何とかせねばならないという必要性は認識されている。(その小さからぬ理由として、原子炉を維持または稼働させる認可を得るために、使用済み核燃料の何らかの措置が求められる) それに加えて、恒久的な保管場所が存在していない。<このテキストが書かれた2013年の時点では、そうでした。2022年1月現在、フィンランドのOnkaloに地下処分場が出来ていますが、これ1つでは世界の需要に応えられるハズはありません> そのため核発電を営む企業は使用済み核燃料を商用再処理工場に送り込み、「現実上は」それが長期的な核廃棄物の保管場として機能しているのである。
2. <そうなると> いずれ使用済み核燃料は再処理することになる。そこから、深刻な核兵器拡散や公衆衛生、環境面でのリスクが生じる。
3. 再処理を行った結果、抽出したプルトニウムが大量に蓄積、しかも増大を続けている。これは回避できるproliferation risk(核兵器につながってしまうリスク)であり、容認できない。
4. 再処理を続けるには、ウラニウムとプルトニウムを混合した核燃料(MOX)を製造する、あるいは高速中性子炉を開発する「必要」が生じてしまう。
5. 上記のいずれにおいても、使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物、抽出したプルトニウム、MOXを地球規模で輸送するルートの設営が必要になる。これには、事故やテロ攻撃、核兵器製造のための盗難などのリスクが伴う。
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15-min with a ballpoint pen / ボールペンで15分
「要するに、捨て場がないだけじゃないの~~」
私の15分クロッキーより 紙に “筆記用” ボールペン

要するに、再処理とは使用済み核燃料からPuを取り出す作業に他ならないので、proliferation riskも深刻だし、決して「核リサイクル」を恒久的に続けられるわけでもないし(上述)、Puが増えてしまう以上「核ゴミ」の総量を減らせるわけでもない、ってわけですね。

だったら、一体全体なんのために再処理 ⇒ MOXなんてやってるのか??その本当の理由をこのNuclear Monitorは指摘していて、再処理が続けられている主な理由とは、再処理工場が「現実上の」長期的な使用済み核燃料の保管施設になっていることだ というワケです。そもそも「核発電」全般が核兵器製造の「隠れ蓑」にされやすいように、再処理やMOXは「ゴミ箱」がないことの「隠れ蓑」だというわけですね。

さらにproliferation riskも視野に入れた考察が、かなり最近 (2021年9月7日)の The history of nuclear power’s imagined future: Plutonium’s journey from asset to waste (核発電が夢見た未来の歴史: 資産だったはずのプルトニウムが、ごみに変わるまで) というテキストがあります。「終末時計」で有名なBulletin of the Atomic ScientistsのWilliam Walkerという方による文章です。スコットランドのセント アンドリュー大学で国際関係を教えておられる教授だそうです。

それからの抜粋を、次回のmo-2) (MOX) Puにこだわっていると~~ II で紹介しますね。

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