2023年7月
・ 上の黒いメニューにある付録 w-2) と
w-10) で取り上げたように、原発は大量
に温水を排出するものです。大気中に
CO2さえ排出しなければ、海や川に温水
ならいくらでも排出して問題はないの
でしょうか??
・ 2023年7月現在、日本では「原発と
水」というと、福島第一からの汚染水
放出が話題となります。それ自体は
大問題で、私も反対します。しかし、
「事故が起きていない原発での、温水
排出」は軽視してよいのでしょうか??
・ 日本ではこの「温水排出」が今一つ
問題にされてこなかった原因の1つに、
日本の原発はすべて海岸にあり、「冷却
塔」がないという現実があります。川と
比べれば、海の水温の上昇は気づかれ
にくいものです。(さらに、海岸に原発
があるから、津波が襲った時にメルト
ダウンを起こしたのですが)
つまり、海岸立地 ⇒ 冷却塔がない
というのが
汚染水放出は問題になっていても、
平常時の温排水は日本ではあまり関心を
呼んでいない
ことの1つのシンボルになっている
ようです。
そんなわけで、日本語読者の中で「冷却
塔」とはどういうものかをご存じでない
方々を対象に、下記で短く説明をし
ますね。
そうした補足説明のページですから、
冷却塔とはどんなものか既にご存じの
方々は、本ページは無視してください
ませ。
本ウェブサイトのアホバカ漫画
で、私(ひで)はファインアート絵画の
訓練は受けてきておりますが、漫画の
訓練は受けておらず、漫画を描くのは
実に苦手です。
だから本来なら、自分の20分
クロッキー(速写画)や作品などから
本サイトに挿入したいのですが ・・・
・・・こういう絵は、どうにでも解釈
できて分かりにくい ・・・
私の20分クロッキーの例
そうした絵は、テキストの内容と分かり
やすい対応をしにくいのですね。
やはり、テキスト内容と分かりやすく
対応させるには、アホバカ漫画を描いて
使わざるを得ないのです。
そこでやむを得ず、ぎこちないアホバカ
漫画を描いて本サイトに掲載している
わけです。
で、その漫画では「冷却塔」を・・・
そのアホバカ漫画で原発を表す場合、
原発であることを分かりやすくする
ため、私は冷却塔を描いております。
で、日本語オンリー読者の方から
ご指摘をいただいたのですが、日本の
原発はいずれも海岸にあって冷却塔が
ないので、冷却塔の絵を見ても「これ、
なに??」という反応の読者が一部に
いらっしゃるようです。
「国外の関連文献を読めない方々なの
だから、仕方がない~~」
・・・今まで日本国内では、それで
済まされてきたようですね。
でも、「仕方がない」で済ませてしまう
と、少なくても次の2種類の「日本
らしい問題」に気が付きにくくなって
しまいます:
・ 海岸に原発があると、津波襲撃 ⇒
メルトダウンが起きえる、
という問題点に気づきにくい
・ 原発からの温排水という気候変動
関連の問題
にも気づきにくい
ですから、「日本以外の原発の多くには
冷却塔がある」という自明な事実を、
日本語しか読めない方々にも学んで
おいていただいた方が賢明なのですね。
それで、私はアホバカ漫画では、よく
冷却塔を描いております。
そこで、以下では
・ まず、冷却塔の構造と目的
・ なぜ、日本の原発にはないのか?
・ 冷却塔があっても、川水に温度
問題が生じた実例
・ 気体CO2さえ出さなきゃ、気候変動
対策になるのか??
という諸問題を考えてみます。
この「温排水問題」をわきまえて
おかないと、
「原発はCO2を出さないから、気候
変動対策に良い」
といった誤謬がまかり通ってしまいます
・・ というか、すでに一部ではまかり
通ってしまってますよね?
まず、冷却塔の構造と目的
川岸や湖畔に原発がある場合、原子炉の
冷却で生じる温排水(放射性物質を
ほとんど含まない状態で)を川や湖に
捨てると、川や湖水の水温が上がって
しまいますよね。
大洋に捨てる場合でも無論、同じ問題は
起きるのですが、その程度が緩慢なので
問題にされにくいのです。
川や湖の場合には、温排水を捨てる前に、
その排水を冷ますため、冷却塔が
あります。
その仕組みの概略を、次の漫画で。
本来、海に温排水を捨てる場合で
あっても、大量の温水が海に連続的に
流れ込むのですから、可能な限り
冷ましてから捨てるべきですが ・・・
冷却塔は高さが100mを超えるものも多い
巨大設備ですので、建築していると
かなりのコスト増になります。{原発の
電気は安いという誤った主張がまだ
日本ではまかり通ってますが、こうした
環境を犠牲にしたコスト カットが平然と
行われていることには言及がありません)
なお、この図からもお分かりの通り、
冷却塔は原発専用では決してありません。
火力発電所でも使う場合があります。
(太陽光や風力では温排水を出さない
ので、冷却塔は必要ありません)
* これに関連して、とんでも発言を
やらかした人物を某反原発団体で私は
見かけたことがあります。
これについては、ページ終わりの付記で。
なぜ、日本の原発にはないのか?
もうお分かりの通り、海に温排水を
捨てているからですね。川に捨てると
川の水温上昇は短期間で測定できるの
ですが、海洋に放出している場合には
測定結果に急には表れにくいので。
このため、日本語圏では「原発の温排水
問題」が話題になりにくいのです。
もっとも、常時大量の温排水を捨てて
いる事実に変わりはないのですが。
正直、日本語圏の反原発団体の一部と
話していて気が付いたのですが、この
温排水問題についてあまり学んでおらず
「地震 ⇒ メルトダウン ⇒ 放射能
怖い!」に集中していた方々が一部
にいらっしゃいました。実際には、
原発事故が全くなくても、「平常運転
時に」原発は大量の温排水を出すので、
気候変動に悪影響を及ぼしているの
ですが。
そうした反原発派の不勉強が、結局は
「原発はCO2を出さないから、気候
変動対策に良い」
といった誤謬がまかり通ってしまって
いる
現状を招いた、という側面は否定でき
ますまい。反原発派がしっかりと学んで
いたなら、メルトダウン以外の危険と
して温排水問題やproliferationも大声
で叫んでいたはずですから。
冷却塔があっても、川水に温度問題が
生じた実例
まあ、この「CO2出さないよ~」プロパ
ガンダはEUなどでも幅を利かせては
いるのですが、そのヨーロッパでは昨年
夏の猛暑で川水の上昇といった問題が
発生、環境保護団体などから原発稼働
停止の声があがりましたよね。その実例
紹介は、上の黒いメニュー(項目は、
基本的にアルファベット順)にある
付録 w-10) をクリック!(付録 w-10)
はなぜか付録 w-1) のすぐ次に表示
されてます。ソフトウェアのバグなので
ご了承願います)
しかも、排水による川水などの上昇問題
は何も2022年夏に限った話ではなく、
それ以前にも多数ありました。それらを
全部紹介しているとキリがないので、
同じくフランスでの2003年夏の実例を。
英語版WikipediaのCattenom Nuclear
Power Plantというページ
(Cattenom Nuclear Power Plant – Wikipedia)
より。なお、このCattenom原発は
フランスとベルギ―の国境近くにある
フランスの原発です。
いつもどおり、
私の日本語化
< >内は私からの補足説明
です。
******************************
・・・・・・・・・・・ (途中から
引用)
このCattenom原発では独立した冷却塔
4棟を使用しており、4基合計で<近くを
流れる>Moselle側の水を、毎年890,000,
000 m3 利用している。それ以外に原発
そばにMirgenbach湖という貯水池も設け
られている。この湖を建設したために、
マジノ防壁<という、有名な対ドイツ
軍事防衛壁>のうちのOuvrage
Kobenbuschという箇所の地下部分は
水下に沈むことになった。1985年には、
近隣のVosgesという場所にあるPierre-
Percee 谷にも、人工湖が設けられた。
2003年にはヨーロッパを熱波が襲い、
このCattenom原発では<原子炉の>
冷却に用いた温排水をMoselle川に直接
捨てることが許可された。その場合の
川水の温度上昇は摂氏1.5度までに
するよう、県の条例で定められている。
にもかかわらず、2.2度の水温上昇が
起きた事態もあった。
・・・・・・・・・・・ (以下略)
*******************************
また、この温排水問題について日本語
での論考をお読みになりたい方は、
たとえば
https://imidas.jp/jijikaitai/k-40-059-10-03-g112
をどうぞ。
気体CO2さえ出さなきゃ、気候変動
対策になるのか??
言うまでもありませんよね。川や海に
常時 温排水を「ジョンじょろり~~ン」
と大量に垂れ流しておいて、「CO2を
出してないから、気候変動対策には
原発を!」と主張するとは、笑止千万
です!明らかですよね。
下のアホバカ漫画からでも、すぐに
お分かりになるはずです。(お下劣
ゴメン!)
そして温排水以外に、
もっと深刻な問題であるproliferation
などの軍事関連リスク
(戦争での大規模火災や爆発などは、
とんでもない環境破壊でもあります)
いわゆる「核ゴミ」の地下保管中に
発生するCO2 (上の黒いメニューの
下のほうにある付録 w-8) 参照)
なんでそうした諸問題を情報発信
しない??
私自身はすでに2011年当時から、
こうした各種問題や新型原子炉の問題
指摘などもカヴァーした情報発信を
展開すべきだと考えていました。
ところが。私の周囲にいた「同志」の
はずの反原発派の一部から、反対された
のです。
なぜか?そうした一部の人たちは
「原発 ⇒ 地震 ⇒ メルトダウン」と
いうshort-circuitに陥っており、
「地震 ⇒ 原発事故 以外の問題に
フォーカスを移したりしたら、福島第一
の悲劇の風化につながってしまう」 のだ
そーです。
みなさん、人間の脳って、ただ昔あった
ことを繰り返し言い続ければ風化しない
ような優秀な代物でしょうか??事実は
逆で、脳って絶えず「なにかNEW」を
求めてますよね。
そんな「飽きっぽくて勝手な」代物が
我々の脳である以上、長期的な情報戦略
のありようとしては、2011年3月で時間
を止めようなどとするよりも、
温排水問題、proliferation risks、
その他軍事関連リスク、いわゆる核ゴミ
処理問題、そして福島第一事故の
その後の展開 、などなどを発信し、
つねに「新しいものを欲しがる脳」の
欲求に対応していったほうが、現実的
なのです。
実際、福島第一の悲惨事故は、あれだけ
「風化させるな!」という叫びが聞こえ
たにもかかわらず、2023年夏 現在の
世論ではとっくに風化しちゃってます
よね。(ヒドイ現実ですが、まずは
現実を見ましょう!) 残念ながら。
一部の「反原発団体」の組織体質
ついでに言っておくと、多数派が「地震
⇒ メルトダウン」ばかりを叫んでいた
一部集団では、私のように温排水や軍事
関連リスクも取り上げようという者は、
「和を乱すやつ」なのだそうです。
反原発団体の一部は、いつの間に
「仲良しグループ」になり下がったので
しょうかねえ??集会の顔ぶれを見ても、
同じ人たちが毎回そろっていましたし。
では最後に、ある反原発団体で2011年に
観察した事実を、短く紹介しておきます。
イカレタ主張: \’’ (;; > O<) /
「これは原発です!私の言うことが、
信じられないの!?!?」
上の「なぜ、日本の原発にはないのか?」
のすぐ上に記したように、冷却塔は何も
原発専用の施設じゃありません。火力でも
使用する場合があります。
この辺をわきまえずにイカレタ主張を
やらかした人物が、2011年当時、ある
反原発団体にいらっしゃいました。
まあ、一種の笑い話(事実ですが)と
して、以下に短く紹介しておきますね。
私のほうからその団体に志願して入り
込んだわけじゃなくて、その団体から
協力を求められたので協力していたの
ですが。その団体の中に「オカシナ」人が
いらっしゃって・・・
2011年のある時のことだったと覚えて
いますが、世界のどこに原発があるかを
一目で示す、世界原発マップなるものを
作ったのですね。で、そのオカシナ方が
その地図をご覧になって、「中国東北部に
XX原発が抜けてる!」
そのXXたるや、原発じゃなくて石炭火力
なのですけどね。ただ、冷却塔はあり
ました。もし石炭火力の地下で内緒の
原発をやらかしていたりしても、核分裂
生成物があれこれ出てくるので、
ばれますよ。そして、IAEAから
叩かれると。
ですから私も含めた地図作成者たちは
「XXが核発電所だという根拠は??」と
お尋ねしたのですが、そのオカシナ方の
返答は「私の言うことが、信じられないん
ですか!?」というものでした ・・・
みなさん、「やかんをのせたら~~」では
イチイチ論拠となる論文や報道記事などを
紹介しております。そのためにページが
長くなり、読むのが大変かも。
でもそれは、何も読者の皆様に苦労を
強いているわけじゃなくて、論拠のある
情報発信をしたいのですね。
そのため、少しhead-heavyに見受けられる
場合があるかも。でも、しっかりと根拠の
ある情報発信をすることは、反核運動には
不可欠です。
それと、反原発団体とか反核グループと
いうのは、この惑星の生死を左右する
深刻な問題を扱う、重大な使命を抱えた
組織のはずです。「仲良しグループ」など
では、断じてありません!
上述の、根拠もなく「私の言うことが、
信じられないんですか!?」とノタモー
ような人物が万一、紛れ込んでいた場合
には、必要なら追放する位の処置はできる
ようにしておかないと。そうした追放
規定も定めた会則を、入会者全員に最初に
渡して説明し、合意を得ておくといった
practiceも必要でしょう。
ある程度社会的影響力を持つ反核団体の
場合なら、「スパイ」が入り込んでくる
危険性もありますしね。
”Vapor” (蒸気)
私の20分クロッキー
それにしても・・・
本ページを書いていて思ったのですが、
核兵器使用や原発の大型テロリズムなどが
あると、それによる環境破壊は短期間で
すさまじいものになります。
それまで長年かけて積み上げてきた
環境保護努力が、一瞬にして踏みにじ
られる ・・・
そんな事態が心配な状況が、現時点で、
ウクライナと周辺で現実に発生して
おります。
しかも、ウクライナは世界的に有名な
穀倉地帯ですから、そこで大規模の
放射性物質汚染が起きれば、おそらく
世界で何百万人も餓死者が増えるで
しょう。
こうした問題に比べると、「原発で、
CO2排出を本当に減らせるのかどうか?」
とかいうのは、やや「のんきな」問題だと
思わざるを得ないです。
CO2問題を軽視しているわけじゃ、
全然ないですよ。
そうじゃなくて、「物事には、緊急度の
違いがある」ってことです。
反原発団体は、もっと「核軍事リスク」
にも目を向けませんと。