2022年6月
「原発はCO2 を出さない」という主張が聞こえてくる場合、
その大半は発電稼働中のことを言ってますよね。
でも原発からほぼ必然的に出てくる使用済み核燃料など
「放射性ゴミ」 を、例えば10万年間も保管しないといけませんよね。
地下深くに保管するとしても、気体の放射性物質が地表にまで
出てこないという保証が、どこにあるのでしょうか??
それを、C-14 という気体ならびにその化合物であるC(14)O2
(C-14の二酸化炭素) の場合で見てまいりましょう。
炭素の同位体の1つで、年代測定によく使われることで有名ですよね。
この問題を日本語で指摘している記事や文献を、私はまだ見たことが
ないのですね。でも現実の問題ですから、日本語で見つからないなら、
英語の文献から紹介しておきます。
それにしても、1つの言語だけで情報を探していると、重要な視点に
気が付かない危険がある ・・・ という事実の一例ですね。
“Truth Gone II”
違う情報源も見ておかないと ・・・
私のかなり昔の作品
いつもどおり、私の抜粋・日本語化で。
< > 内は、私からの補足説明です。
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Carbon-14 – Wikipedia
まずは、Wikipedia英語版より。(日本語版には、
下記の記載がありません ・・・ 2022年6月21日10:33am JST 現在)
核実験での <C-14の> 発生
1955年から1980年にかけて一部諸国では、地表での核実験が
行われた。そのため大気中のC-14 の量が劇的に増大、
その結果バイオスフィア (生物圏) での量も、こうした実験が
行われなくなってから調べると大きく増大していた。この種の
核実験が行われなくなると、このC-14 同位体の大気中での
濃度は減少を始めた。これは、放射性CO2 <C-14が酸素と
化合した二酸化炭素> が植物や動物の組織中に固定化され、
あるいは海洋中に混ざっていったからだ。
・・・ (中略) ・・・
2019年の Scientific American 誌の報道によれば、核実験に
由来するC-14 が、地球上でも特に人里離れた地域の1つである、
太平洋にあるマリアナ海溝に暮らす水生動物の体内で検出されている。
原発からの放出
C-14 は、沸騰水型原子炉 (BWR) と加圧水型原子炉 (PWR) の
冷却剤 <水> の中に発生する。たいていの場合、BWRなら
二酸化炭素 <CO2> という形で、PWRならメタン <CH4、CO2 の
80倍ほどの温暖化効果があると言われています> という形で、
それぞれ大気中に放出される。原発稼働事業者が C-14 を管理する
うえでのベスト プラクティスの1つとしては、夜間に放出するという
ものがある。夜間なら、植物が光合成を行っていないためだ。
<つまり、夜間なら植物が放射性炭素を吸収しない> さらにC-14 は
核燃料内部でも発生し (一部は酸化ウラニウム内での酸素の核種
変換によるが、最も大きな要因は不純物であるN-14 <窒素14> の
核種変換によるものだ)、さらに使用済み核燃料をたとえばPUREXで
<ページ if-3) 参照> 再処理した場合には CO2 という形で C-14 が
排出されてしまう。<文字色は、私による強調>
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Wikipediaだけだと、記載内容の信ぴょう性に問題がありますよね。
そこで、科学者の集団が公表している文献より。
Bird on the Plain
破れの中から ・・・
私のかなり昔の作品
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ucs-rpt-AR-3.21-web_Mayrev.pdf (ucsusa.org)
The Union of Concerned Scientists (憂慮する科学者同盟)
Edwin Lyman
“Advanced” Isn’t Always Better
p. 82より
* HTGRという開発中の新型原子炉での廃棄物という文脈です。
・・・(前略)・・・ 2015年に欧州委員会が発表した
報告の結論としては、 「(HTGRからの) 使用済み核燃料を
処理せずに廃棄保管することは、HTGR原子炉が多数ある場合
には、許容できない恐れがある。保管するごみの量が大量で、
それを格納する鋼鉄の量も膨大なものになるためだ」(Knol et al. 2015)
さらに、こうした核ゴミの中には放射線を浴びた炭素も大量に
存在しており、そのなかにはC-14 という半減期の長い放射性
同位体も含まれる。<炭素14 の半減期は、およそ5,700 ― 5,800年>
そのため、その核ゴミ保管施設からは環境へと無視できない量の
放射性物質が漏出してしまう危険がある。その保管施設が
<アメリカのネヴァダ州にある、核ゴミを地中に埋めるための
施設の候補とされてきた> ユッカ マウンテンのように地下水面の
上に保管施設がある場合には、特に問題となる。C-14が
二酸化炭素という形で環境に放出される危険があり、そうなれば
広範囲に広がってしまうためだ。<C-14の化合物であれ、通常の
C-12の化合したものであれ、CO2 は常温で気体です>
上述のような諸問題やそれらに関連する問題により、HTGRからの
使用済み核燃料を地下の保管施設に捨ててよいものか、現実的なの
かは、まったく不明確だ。適切ではない場合には、廃棄する前に
使用済み核燃料から炭素を含む諸物質を分離し、その量を減らす
手法を開発せねばならない。(Li, Ma, and Wang 2014) だが
そうした新手法の実現性とコストは、未知である。しかもその
手法が機械的なものであれ化学的なものであれ、炭素を含む
残余物質も放射性となる。もっとも、低レベル核ゴミに分類され、
放射線を浴びたTRISO <という材料の核燃料> ほどには堅牢な
保管庫に収める必要はないであろうが。
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笑える・・・
私の20分クロッキーより 2017 / 11 / 21
要するに、「原発はCO2を出さない」と主張したいなら、
発電期間中のことだけじゃなくて、例えば10万年という
核ゴミ保管期間のことも充分に検討に入れないといけない、
ってことですよね。
日本では、「来年の話などすると、鬼が笑う」 などと
言いますよね。
なら、「10万年間漏出がないようにしっかり保管します」
などというと、「鬼が笑い転げて、死んでしまう」 かも ・・・