2023年12月
World Nuclear Industry Status Report
2023の抜粋紹介
IAEAも「しぶしぶながら」採択せざる
を得なかったWorld Nuclear Industry
Status Report 2023。「やかんをのせ
たら~~」では、フォーカスである
proliferationに関するページ、
pp. 385 – 388のSecurity and
Proliferationという箇所を抜粋・
日本語化して紹介しますね。Reportは
「核発電を隠れ蓑に、核兵器が拡散して
しまうリスクがあること、また世界の
原発業界が騒いでいる第4世代(新型)
原子炉の多くはproliferation risks
を増大させてしまう恐れがあること」
を、明確に指摘しています。
原文全体を見てみたい方は、次へ
どうぞ:
World Nuclear Industry Status Report 2023 (worldnuclearreport.org)
「核発電は平和利用、核兵器とは別物」
というプロパガンダにいまだに洗脳
されている方々は、このReport原文の
pp. 385 – 388をしっかりとご自分で
お読みになって、いいかげん目を
覚ましてくださいね!
では、いつもどおり
私の抜粋・日本語化
< > 内は、私からの補足説明
****************************
セキュリティと核の拡散
放射線。ならびに、核燃料チェーン
(およびそれに関係する知識や
スキル、設備、技術)と核兵器拡散の
可能性との間の不可分性。この2つが
原因となり、核エネルギーのプロセス
には他のエネルギー源にはない独自の
リスクが存在する。そのリスクに対応
するためのコストを核エネルギー産業
に課し燃料価格に反映させるのでは
なく、税金で賄っているため、核発電と
競合するエネルギー源各種は不利に
なってしまう。
・・・ 1676 – Victor Gilinsky, “Senate
extends ~~ などの典拠が記されて
いますが、ここでは省略します ・・・ .
World Nuclear Industry Status Report
2023 | P.386
核燃料チェーンからの核兵器関連物質の
転用というリスクに加え、民生用の
核エネルギー関連活動が潜在的な核拡散
に手を貸してしまう危険性もある。
核施設が増え、関連する職員も増大し
その訓練も進み、民生用にも核兵器用
にも利用できる危険性のある物質など
のサプライ チェーンが出来、核発電と
いう隠れ蓑の下に核兵器関連の活動を
隠ぺいできるようになるにつれ、ある
国が核兵器保有国になってしまうまで
の期間は短くなっていく。IEA
(International Energy Agency、国際
エネルギー機関) も、世界中に小型
原子炉を多数建設してしまえば、
核兵器拡散のリスクは増大してしまう
と認めている。
そうしたリスクの程度は、原子炉の設計
によって異なる。特に問題なのは、
核兵器に直接に利用できる物質の製造や
輸送、使用を招いたり容易にしてしまう
設計だ。そうした物質としては、抽出した
プルトニウムや高濃縮ウラニウムなどが
ある。そうした新型設計のうちの
いくつかをサポートするため高濃度
低濃縮ウラニウム(HALEU)の使用が
拡大するものと予想されており、大きな
懸念を招いている。「軽水炉で使用
される低濃縮ウラニウムと比べ、この
HALEUは核兵器に利用するうえで魅力
の多いものとなりえる」ためだ。
Union of Concerned Scientists (憂慮
する科学者同盟)では、新型の原子炉
技術各種について、それぞれの安全性
と核兵器拡散リスクについて評価を
行った。(下の表26を参照)
<World Nuclear Industry Status Report 2023 (worldnuclearreport.org)
のP. 387で、原著のTable 26をご覧
ください> その表を見れば分かる
ように、安全性ではこうした新型の
設計は従来より劣り、核兵器拡散や
テロ攻撃のリスクも概して悪化する。
HALEUの使用は、新型設計の多くで
見られる。
原発のセキュリティという点では、
こうした新型炉の設計ベースを見れば
原子炉で実施すべき中核的なセキュ
リティ関連リスクへの対処がなされ
てはいる。だが、そうしたパラ
メーターでは、現在見られている
原発への脅威を適切にとらえられて
いないことは明らかだ。(WNISR2022
にあるNuclear Power and Warという
項目を参照) ロシアによるウクライナ
侵略で、ロシア軍は原発を標的にして
いる。意図的な攻撃も含め、原発への
外部電源供給や冷却システムに影響を
及ぼす、安全のために欠かせない設備
への損害が深刻な問題となってきて
おり、今もそうである。
<WNISR2022にあるNuclear Power
and Warという項目は30+ページも
あるので、ここで紹介はできません。
後日、短くなんか初夏抜粋して
「やかんをのせたら~~」で日本語化
紹介する計画です>
・・・ 典拠が記されていますが、
ここでは省略します ・・・.
World Nuclear Industry Status Report
2023 | P. 387
表26 · 軽水炉以外の各種原子炉設計の
安全性、持続可能性、核兵器拡散リスク
の、軽水炉との比較
ここに表26がありますが、これは
テキストが短いので、原著の P. 387で
元のTableをご覧ください。
すでに2019年、サウディ アラビアに
ある石油施設がドローン攻撃でかなり
の損害を被った。
その同年、アメリカのNRC(原子力
規制委員会)は原発を含む主要核施設が
無人飛行物体に対する防御策を義務
付けることを拒否した。そしてその年の
9月、アメリカはアリゾナ州にあるパロ
ヴェルデ原発 (Palo Verde Nuclear
Power Plant)の立ち入り禁止区域周辺を
数機のドローンが飛行した。これは侵入
行為であるが、同原発の所有者たちは
それを阻止できなかった。このことが
知れ渡るようになったのは、Freedom
of Information Act <情報公開法> に
基づく要請があってのことだ。そのため
こうした事態がどの程度の頻度で発生
しているのかは、不明なのだ。
<なお、上の黒いメニューにある
ページ g-6) も参照!>
・・・ 典拠が記されていますが、
ここでは省略します ・・・
World Nuclear Industry Status Report
2023 | P. 388
あるいは、こうした<ドローンによる>
偵察がどれほど多くの施設で行われて
いるのかも、分からない。さらに
2019年9月に比べれば、ドローンの
能力もその非政府組織や政府組織への
普及も、今では格段に向上している。
原発周辺でのドローンの飛行という
報告は時折話題になっており、
2022年1月にはスウェーデンで類似
した事態があった。
核燃料サイクルに伴う特殊なセキュ
リティ上のリスクへの対応に要する
費用を数値化しようという動きは、
ごく少数しか見られない。これはことに
よると、支出を「いくつもの予算項目に
わたっているため、把握しにくい」ため
かもしれない。ある最近の推定によれば
アメリカの核発電業界全体で年間40億
ドルとされている。それに加え、
アメリカ政府による国際的な核発電関連
の事業に年間11億ドルが費やされて
いる。これらは、他の諸国が負担して
いる同様のコストは含まれていない。
・・・ 典拠が記されていますが、
ここでは省略します ・・・
************************
この、原発周辺をドローンが飛行と
いう問題あるいは事実は、大変な問題
です。ページ g-6) で指摘した通り、
ドローンが自爆式爆弾である場合、
グリッドから原発の冷却用に外部電力
を送り込む送電線を破壊することは
充分可能ですよね。原子炉自体は分厚い
鋼鉄で出来ていて、自爆ドローン程度
では大した被害にならないでしょうが、
要は
外部からの電源供給をする電線を自爆
ドローンで切ってしまえば ⇒ 原子炉内
さらに使用済み核燃料の冷却プールの
冷却が不能に ⇒ 最悪、メルトダウン
という大惨事に。
「いや、非常用ディーゼル発電装置が
あるじゃん」と呑気に済ませるわけには
まいりません。それらを制御する
コンピューターにウォームでも仕掛けて
いたら??
この危険性については、やはりページ
g-6) で指摘済みです。
つまり:
・ 原子炉の制御コンピューターに
ウォームを忍び込ませる
・ 自爆ドローンの編隊で原子炉冷却用
の外部電力の供給線を切断する
の2つを行えるテロ組織があれば、
原発を最悪メルトダウンさせることが
可能なわけですね。この2つを行うの
には優秀な人材と多少の資金があれば
充分でしょう。巨大な組織や膨大な
資金は、不要であるはず。
それと、日本の政府や財界は何かあると
「核発電はコストが安い~~」と主張
してきましたが、WNISRが上で指摘して
いるようなセキュリティ コストを
まともに算入したら・・・核発電は
あまりにも高価な電力ってことに。