e-5) (運動のあり方) メルトダウンさせようとしても、しなかった原発

・・・ はて、「事故があったから
原発反対」という方々は、そんな
原発にはどういう根拠で反対されるの
でしょうか?

2023年5月

このページは、ページ シリーズ if-x)
と内容が重複します。それと、
技術的な話を含むので、かなり長い
ページになりました。ご了承願います

軍事リスクなんかより、メルトダウンのほうがピンときやすい ・・・

軍事リスクなんかより、メルトダウンのほうがピンときやすい ・・・

\(;; >O<) / 「やかんをのせたら~~」
じゃproliferationばっかり問題に
してるけど、そんなことを知らなきゃ、
原発に反対しちゃいけないの!?

「いけない」などとは、私(ひで)は
申したことはございません!それどころ
か、上の黒いメニューにあるadd-4) や
a-4) で申し上げた通り、

・ これだけ多様な問題系が絡んでいるのです
から、誰も一人で全体をカバーなど
できません。
・ したがって必然的に、各自が自分の
 「専門」 を適切に選ぶことが重要
・ そのうえで、各問題系の間で協力や連携を
していく必要

などと申しております。
proliferation に関心がない方、軍事や
核技術の話を聞いてもわからない、
理系は嫌いだ、…そういう方々は、反核
のための多種多様な問題系の中でも
ご自分のお好きな/親しみやすい問題系
に進まれればよい、それだけのことです。

いろんなリスクがあるけど、どれが最も危険かをわきまえないと~~

いろんなリスクがあるけど、どれが最も危険かをわきまえないと~~

ただし、日本でのここ12年間の失敗
は反省しないと

ここからは、私(ひで)は、少しエラ
そーな口を叩きますよ。
2011年ー12年ごろにはストリートでの
反原発プロテスト活動、主にマーチ
(デモ)を多数見かけましたが、私は
しつこく乞われない限り参加しません
でした。

マーチの主催者や参加者の方々と少し
話してみて、次の予想を立てたから
ですね:
当時の実情 ー マーチ関係者の多くは、
核発電の本質 = 核兵器 という事実を
充分には理解していない

予想1 ー 2011年3月が「歴史」に
なっていく(我々が時間というものの
中で蠢いている限り、避けられない)
につれて、マーチなどのプロテスト
活動を見かけなくなっていくだろう。
予想2 ー 日本政府は「潜在的核兵器
保有」という方針を捨てない限り、
核技術や核物質の保持のための核発電を
やめるハズはない。

そこで核推進派は、市民多数派を納得
させるため、次の2種類のアピールを
してくるだろう:
予想3 ー 電力不足に近い状態を起こす
だろう(あるカラクリがあるのですが、
ヴィデオ
原発60年超稼働・新増設の暴挙をあばく【山岡淳一郎のニッポンの崖っぷち】230106 – YouTube
を御覧ください)
予想4 ー 「新型原子炉なら安全ですよ」
と喧伝する

残念ながら、4つとも2023年5月現在、
的中しちゃってます。正直、外れて
ほしかったです。
言い換えると、ここ12年程の日本での
反核運動は、要するに失敗だったと認め
ましょうよ。現実を認めることからしか
建設的な次の動きは生まれませんから。

一部の反原発の方々からは、”エラそーなことを!」と無視されました

一部の反原発の方々からは、”エラそーなことを!」と無視されました

ただ、そんなことを言うと ~~

\(;; >O<) / エラそーなことばかり、
ぬかしやがって!何様のつもり!?

てな反応もありますよね。
で、本ページでは
想定:
・ メルトダウン怖い (それ自体は
本当ですが)
・ 核ゴミの捨て場がない
の2点だけで核発電に反対し、
・ proliferation risksを軽視または無視
している
場合、「ある種の」原子炉に反対する
理由がありますか??
という実例を紹介します。読みながら、
考えてみてくださいね。

で、その原子炉とは ・・・ IFRです!

IFRとはどんな原子炉なのかは、ページ
シリーズ if-x) で紹介済みです。そちら
をお読みくださいな。

このIFRだと、
1) メルトダウンしにくい (下記の、
過去の実際の実験結果より)
2) 再処理工場を併設するので、
核ゴミも減らせる
ということなのです。
すると、上記の想定のプロテストだと、
反対する理由が虚弱になっちゃいます
よね?
でも、特に1)に関して、

\(;; >O<) / あんた、原子炉関係の文献
とか読みすぎて、推進派のウソに洗脳
されちゃってるんじゃないの??

といった ”発作的な”反応を浴びる
ことがあります。言葉を選んだうえで、
”発作的”と言わせてもらいます。
撤回しません!

はっきり言います、こういう「発作的な」反原発の人、実際に少人数見かけたことがあります

はっきり言います、こういう「発作的な」反原発の人、実際に少人数見かけたことがあります

だって、実際に「故意にメルトダウン
させようとした実験」 を2種類行ったら
いずれの実験でもIFRの先駆原子炉で
あったEBR-IIという原子炉は勝手に
シャットダウンし、核燃料などへの
損傷は発生しなかったのですから。

この点について、本ページで下に紹介
する文書以外に、私はアメリカから取り
寄せたIFR関連の技術書などもアレコレ
読んでおります。納得できる内容でした。
なにも「私は、それほど学んできたぞ~」
とか言いたいんじゃなくて、公正に
推進勢力の主張や論文も読んだうえで、
ものを言いたいのですね。そのうえで
「反核」を主張しております。そして、
そうした姿勢の人間から見ると、「推進派
の言うことなんか、全部ウソに決まっ
てる!」というような人格攻撃的な
決めつけは、「発作的」と見えるの
ですね。確かに推進勢力の主張には
ウソも多いですけど、「全部がウソ」
ってわけじゃ ・・・  このEBR-IIの
故意メルトダウン実験については多数の
文献に記されており、虚偽指摘が
見当たりません

実際にどんな実験だったのかを、まずは知らないと

まあ、これはジョークですけど、実際にどんな実験だったのかを、まずは知らないと

では、その「故意にメルトダウンさせ
ようとした実験」について、2種類の
文書から抜粋・日本語化して紹介
しますね。
いつもどおり、
< > 内は私からの補足説明です。

まず、英語版WikipediaのExperimental
Breeder Reactor II というページより。
このExperimental Breeder Reactor IIの
略称がEBR-IIです。
最終更新は、2023年3月16日だそうです。
Experimental Breeder Reactor II – Wikipedia

(冒頭省略)・・・
Experimental Breeder Reactor-II (EBR-II)
とは、ナトリウム冷却の高速中性子原子炉
で、アルゴンヌ国立研究所(Argonne
National Laboratory
)が設計し、アイダホ
州にある国立原子炉試験施設(National
Reactor Testing Station)に建設し稼働
していた。1994年にシャットダウン
された。2005年にアイダホ国立研究所
Idaho National Laboratory)が設立
された時点で、この原子炉の管理責任は
同研究所に移った。

EBR-IIの最初の稼働は1964年7月に
始まり、翌年には臨界に達した。それまで
の総費用は、3,200万ドルを超えていた。
(2021年の貨幣価値では、2億7,500万ドル
相当) EBR-IIの設計と稼働に関する当初
の力点は、再処理工場を併設してすべての
要素を備えた増殖炉の建設・稼働を実証
することにあった。その再処理工場では、
固体金属の核燃料を再処理する。<これが
要するにIFRです。固体金属製核燃料と
いうのも、特徴の1つです。温度上昇と
ともに膨張するため、核分裂をしにくく
なるという負のフィードバック特性が
あります。以下、文字色の変更による
強調は、私> その核燃料は、約67%に
まで濃縮したウラニウム235を鋼鉄製の
チューブに密閉したもので、濃度が約
65%にまで低下すると、取り出した。
<核分裂によってU-235が徐々に減って
いきますので> 取り出したチューブを
開封し、再処理を施して中性子毒を取り
除く。中性子毒を除去した使用済み核燃料
に新しいU-235を混入、濃度を上げる。
そして、原子炉に戻す。<中性子毒に
ついては、上の黒いメニューでmr-2) を
クリック ⇒ 3つ目の図(235U の場合で
図解しました)を参照してくださいな>

mr-2) の説明図を再掲。 235U の場合で図解しましたが、一般に物質が核分裂すると、何らかの核分裂生成物が出ます。その一部は気体で、燃料が液体なら期待は出ていきますよね。それと、生成物の一部は核反応を邪魔します。

mr-2) の説明図を再掲。
235U の場合で図解しましたが、一般に物質が核分裂すると、何らかの核分裂生成物が出ます。その一部は気体で、燃料が液体なら期待は出ていきますよね。それと、生成物の一部は核反応を邪魔します。

本来の増殖サイクルのテストは、1969年
まで実施された。それ以降この原子炉では
IFRのコンセプトのテストが行われた。
このテストの一環として、EBR-IIの炉心の
高エネルギー中性子 <高速中性子>
環境において、将来の大型液体金属燃料
原子炉のための核燃料や物質の試験も
行われた。そうした実験の一環として
1986年には、冷却剤ポンプが完全に停止
してしまった場合のシミュレーション
テストをEBR-II で実施した。その結果、
シャットダウンした後の崩壊熱 <発電を
停止しても、放射性物質からは自然に
放射線とともに大量の熱が出ます。これを
崩壊熱と呼んでいます> が出ている時点
でも、ナトリウム冷却材の自然な <ポンプ
によらず、温度差による> 循環で勝手に
核燃料を冷却できるというEBR-IIの能力
が実証された。IFRを進めるべき根拠と
して、またさらに数々の実験の場として
EBR-IIは利用され、最後は1994年9月に
廃炉が始まった。1969年9月には
EBR-IIはフル能力での稼働を実施したが、
およそ 62.5 MWの熱、20MWの電力を
生み出した。EBR-IIの蒸気タービン
システムは従来型の3ループで、冷却塔
も強制式空冷が3基であった。全期間の
合計では20億キロワット時の電力を発電、
アルゴンヌ国立研究所ー西(Argonne
National Laboratory-West)という施設に
電力と熱の大半を供給していた。

・・・(中略)・・・

ほっといたら消火しますがな ・・・ passive safetyって言いまんねん

ほっといたら消火しますがな ・・・
passive safetyって言いまんねん

Passive safety <パッシブ セーフティ、
自然な物理法則に従って停止する
仕組み>

EBR-IIは <冷却材のプールの中に
原子炉を配置する> プール型原子炉で
passive safetyを実現していた。炉心、
核燃料操作装置、その他原子炉の機器類
の多くは溶けたナトリウムの中に沈め
られていた。液体ナトリウムは核燃料の
熱をすぐに冷却材へと運び、比較的低い
温度で機能する。緊急事態が発生して
温度が上昇した場合には、EBR-II では
冷却材や核燃料、構造物の <温度上昇
に伴う> 膨張を、最大限に活用して
いた。異常事態が発生して核燃料や
構造物が膨張すると、人間の操作員が
介入せずとも 原子炉システムが勝手に
停止する仕組みになっているのだ。
1986年4月、EBR-IIで2つの特殊な
テストを実施した。まず、原子炉をフル
稼働 (熱量で62.5MW)させている
状態で、一次冷却系の冷却剤ポンプを
すべてオフにした。しかも通常のシャット
ダウン システムを作動させなかったの
だが、それでも約300秒で原子炉からの
出力はほぼゼロにまで低下した。核燃料
にも原子炉にも、損傷は全く見当たら
なかった。同日、別の重要な実証テスト
も行われた。やはり原子炉をフル稼働
させている状態で、二次冷却システムの
冷却材の流れを停止させた。これにより
原子炉の熱は行き場を失った。当然、
温度は上昇する。一次(原子炉)冷却
システムの温度が上がり、核燃料も
冷却材ナトリウムも、構造材も膨張
した。このテスト結果から、たとえ
一次冷却システムの熱の行き場がなく
なっても、熱による膨張などの自然な
特性によって原子炉はシャットダウン
することが確認できた

EBR-II は今では、核燃料も抜き取り
済みだ。EBR-II の廃炉作業の一環と
して、EBR-IIに隣接している核燃料
調製施設 (Fuel Conditioning Facility)
で電気冶金方式による取り出し使用済み
核燃料の処理も行っている。

EBR-IIのクリーンアップ プロセスの一環
として、冷却材ナトリウムの取り出しと
処理、ナトリウム システムのクリーン
アップ、その他有害化学物質の取り出し
と無害化、そして無害化したコンポー
ネントや構造物の安全な状態での保管
などもある。

・・・(以下略)

*************************

当事者団体による発表も、聞いておきましょう

当事者団体による発表も、聞いておきましょう

では、当のArgonne自体による解説も
見てみましょう。
もともと、2002年冬の出版物に掲載
されたリリースだそうです。
Passively safe reactors rely on nature to keep them cool (anl.gov)
長くなりますが、本文全体を日本語化
します。重要な技術問題ですので。
**************************

Passive safetyの原子炉は、自然法則
で冷却される

非常に安全性が高く、最悪の緊急事態が
発生しても炉心に損傷はなく、放射性
物質も漏出しないような原子炉を想像
していただきたい。しかも、それが何か
特別製の緊急システムに依存しておらず、
原子炉の材料や設計に備わっている反応
特性や自然な特徴によるものだと
したら?そうした安全性目標のことを
核発電業界ではpassive safetyと呼んで
おり、何種類かの原子炉のコンセプト
ではこのpassive safetyを追求して
いる。中には、実現したと主張している
コンセプトもある。

elegantならざる停止 と elegantな停止

elegantならざる停止 と
elegantな停止

アルゴンヌの高度高速原子炉
(advanced fast reactor、AFR)では、
実際に発電しているプロトタイプ原子炉
でこの passive safety を充分に実証
した。「1986年、私たちは小型のAFR
プロトタイプ原子炉で、故意にメルト
ダウンを引き起こそうとしました。
2回です。いずれも、AFRは礼儀正しく
シャットダウンしたのですよ」 そう
語るのは、1986年のそのテストを指揮
したアルゴンヌの核エンジニア、Pete
Planchonだ。

彼は面白おかしく話してくれているが、
ジョークではない。

この原子炉は Experimental Breeder
Reactor-II
 (EBR-II) という名称で、
アイダホ州のArgonne-Westという場所
にあった。EBR-II は小型の実験用施設で
発電出力が20MW のAFRプロトタイプ
だ。Planchonの指揮下、EBR-IIで一連
の実験を実施した。最初はほぼ出力ゼロ
の状態から始めたが、最後は歴史に残る
2回のテストを行った。その2回はフル
パワーで実施、AFRコンセプトの
passive safetyという利点を充分に
実証してくれた。

Planchonによれば、「液体金属燃料の
原子炉で最も深刻な事故原因2種類、
つまり炉心を冷やす冷却材のポンプ停止
と、一次冷却システムの熱の冷却喪失と
を故意に引き起こしました。いずれの
テストも原子炉からの出力をフルにした
状態で実施、しかも自動シャットダウン
用の装置を故意に作動不能にして
いました」

さらに彼によれば、「そのテストに
先立ち、必要ならいつでも原子炉を
停止させられる念のための停止システム
を取り付けておいたのですが、必要は
なかったですね。なにしろ、原子炉は
私たちが予想した通り、勝手に止まって
くれましたので」

で、具体的にどんな実験をやったんや??

で、具体的にどんな実験をやったんや??

その1回目のテストでは、通常の安全
システムを故意に作動できなくして
おき、しかも原子炉はフル パワーで稼働
させていた。Planchonのチームは、炉心
を通過する冷却材を動かすポンプへの
電力をすべて遮断した。炉心とは、
核分裂の連鎖反応が起きる中央部のこと
だ。2回目のテストでは、二次冷却
システムのポンプすべてへの電力供給を
切った。一次冷却システムの熱の行き場
がなくなったわけだ。

Planchonは続ける。「いずれのテスト
でも、温度が短時間上昇しましたが、
passive safetyのメカニズムが機能して
自然に冷却されていったのです。10分
以内に温度は通常の稼働レベルにまで
下がり、原子炉は勝手に停止しました
操作員や緊急安全システムからの介入は
ありませんでした

「ほんまかいな~~?」 「いや、”勝手に停止”したのはほんととして、 メルトダウン以外に大問題が ・・・」

「ほんまかいな~~?」
「いや、”勝手に停止”したのはほんととして、
メルトダウン以外に大問題が ・・・」

この原子炉での研究課題はすべて完了、
同原子炉は1994年に廃炉作業が
始まった。だがこの原子炉は30年間に
わたって安全かつ高信頼性で稼働を続け、
アルゴンヌ ウェストの必要とした電力
すべてを賄っていた。このウェストという
施設は900エーカー <約3.64平方キロ>
の敷地で、アイダホ州のアイダホ
フォールズという町の近郊にある。
アルゴンヌが運用している。この原子炉
はAFRのプロトタイプで、そのpassive
safety技術の有効性を決定的に実証した。

原子炉を安全に保つのは基本的に何の
ためかといえば、一般市民ならびに原発の
従業員たちを有害な放射線被ばくから
守るためだ。

アルゴンヌで原子炉の安全性を専門的に
担当するWalt Deitrichは、最新型の各種
原子炉の設計では、その安全性という
課題にどのように取り組んでいるのかを
語っている。「最新式の安全性設計の
目標として、この防御を人が作った
システムではなくて、自然法則によって
実現しようとしています。人工システム
だと作動させるのに電力が必要になり
ますし、適切に作動するには装置も要り
ますし、適切な操作を操作員が行う必要
もありますし、それはストレスの強い
非常事態においてです。この自然法則を
活用するアプローチを、passive safety
と呼んでいるんです」

Deitrichは続ける。「passive safetyを
実現するには、安全に関わる3種類の
基本機能を活かしてpassiveな機能を
実現できるように整えておく必要が
あります。熱の発生と熱の除去との間
のバランスを適切に保つことが肝心
です。また崩壊熱の除去を行い、
放射性物質を隔離保管することも必須
です。主なものとして、核燃料と核分裂
生成物ですね」 崩壊熱は、炉心に
残る放射性物質から発生する。原子炉が
停止している間でも、崩壊熱は発生する。

冷却材の巨大プールの中に原子炉を設置

冷却材の巨大プールの中に原子炉を設置しても、こんな場合には・・

AFRの passive safety の基本にあるの
は、その扱う材料と設計に関する3種類
の主要側面だ。液化ナトリウム冷却材、
プール型冷却システム、合金製核燃料だ。

ナトリウムのプールでの冷却

ナトリウム冷却材は熱伝導率が高い
極めて効率的な物質で、しかも通常の
圧力下で機能するという優れた特性も
ある。<現在の> 典型的な商用原子炉
<つまり軽水炉> では、冷却材である
水を自然な状態の100倍から150倍の
圧力に保たねば、沸騰して蒸発して
しまう。だがナトリウムであれば通常の
圧力下で炉心を冷却できる。沸点が
炉心の稼働中の温度よりも摂氏で
300-400度も高いためだ。

Deitrichによれば、「基本的には,
ナトリウムのプールがあることで、
事故が発生しても冷却材が蒸発して
失われ、炉心が冷却材なしでむき出し
になってしまうという危険性をなくす
ことができます。<現在主流の> 
軽水炉では、この危険性があるのです。
炉心を何万リットルもの液体ナトリウム
に沈めることで、巨大なヒート シンク
<熱を逃す場所> を設けることになり、
安全性が大きく向上する。原子炉の
オーバーヒートが発生しても、この
プールが膨大な熱量を吸収、決して
沸点に達することはないのです」

従来のポンプ式冷却 ⇒ ポンプが止まると、LOCA プールの中にあれば、ポンプなしでも自然な対流で冷却

従来のポンプ式冷却 ⇒ ポンプが止まると、LOCA
プールの中にあれば、ポンプなしでも自然な対流で冷却

さらにDeitrichによると、通常の崩壊熱
除去システムが故障しても、このプール
の設計によってpassiveに崩壊熱を除去
できる。原子炉が停止しても、「発熱は
続きます。炉心には放射性物質が大量に
残っており、それが崩壊を続けながら
エネルギーを放出する <つまり、熱を
発する。これが、崩壊熱> のですね。
でも私どものAFRコンセプトでは、
プール内の液体ナトリウムが自然に対流
するので、崩壊熱を下流のシステムへと
伝えるのです。こうした熱の移動は
すべてpassiveに行われ、アクティブに
作動するシステムもコンポーネントも
不要です」

ただし、Naを水や空気と接触させないこと!

ただし、Naを水や空気と接触させないこと!


ナトリウム冷却材の、その他の利点

さらにナトリウムを使用することで、
各種コンポーネントの信頼性や寿命も
向上できる。その理由の1つとして、
ナトリウムはステンレスなどよくある
構造材を腐食しない。「すでにEBR-II
は廃炉作業を進めていますが、その
実体験から、炉心部の材料やコンポー
ネントは液体ナトリウムの中では深刻な
損傷や腐食なしで機能できることが判明
しています。廃炉決定から30年経過し、
ナトリウムのプールからコンポーネント
を取り出したのですが、設置した当日と
変わらぬほど光っていたのです。溶接や
その他の職人さんたちが30年前の建設
時に刻んだ刻印が、明確に読めました」
と語るのは、アルゴンヌのアルゴンヌ
ウェストで実験室準ディレクター代理を
務めるJohn Sackettだ。

その他にもナトリウムには、原子炉の
安全性や信頼性の向上につながる特性が
ある。例として、ナトリウムは金属製
核燃料と化学特性が類似している。その
ため、クラッドつまり核燃料の容器と
なっているステンレス製チューブに
小さな損傷が発生しても、損傷が悪化
しにくい。さらにナトリウムは放射性の
核分裂生成物のうち重要な物質数種類と
化学的に結合しやすく、核燃料に損傷が
あっても放射性物質の漏出が少なくなる。
空気や水とナトリウムが直接接触すると
危険だが、適切な対策を施せばほぼ
理想的な冷却材となる。「EBR-IIで
30年間私たちがしていたように適切に
扱えば、冷却材としてのナトリウムには
水に大きく勝る特長があります」と、
Deitrichは述べている。

金属製核燃料の利点

AFRの安全性の第3要素が、その金属製
核燃料だ。ウラニウムなどの金属の合金で
できているのだ。金属製核燃料には
本質的に 「反応性のフィードバック」
という特性が備わっており、そのため
炉心の温度が変わると原子炉の出力も変化
する。<要するに、炉心温度が上がると
核分裂反応が勝手に少なくなって
いきます>

この、金属製核燃料の温度に伴うフィード
バックという特性の主な原因として、炉心
周辺の鋼鉄やナトリウム、核燃料が温度
上昇に合わせて膨張するという事実が
ある。単純化していえば、炉心温度が
上昇すれば、炉心の鋼鉄製コンポーネント
やナトリウム、そして核燃料自体も
すべて膨張する。これにつれて、原子炉
は停止に近づいていくのだ。

Deitrichは説明を続ける。「核燃料が
膨張すると、核分裂性物質の原子核と
原子核の間の距離が伸びていきます。
そのため、核連鎖反応がスローダウンする
のですね。原子核に中性子が衝突しないと
核分裂は起きないのですが、その原子核と
原子核の間のスペースが膨張によって
大きくなり、中性子が衝突しにくくなる
ためです」

説明図 熱膨張 ⇒ 中性子が衝突しにくい

説明図 熱膨張 ⇒ 中性子が衝突しにくい

さらに炉心の直径も膨張するので、原子炉
の出力は制限される。Deitrichによれば
「通常の状態では、炉心周辺の鋼鉄と
ナトリウムとは炉心から出てきた中性子
を炉心へと跳ね返し、連鎖反応を維持
しやすくさせる。ところがナトリウムと
鋼鉄とが膨張すると、炉心から飛び出して
しまう中性子が増え、核分裂反応を
起こすのには役に立たなくなる

AFRの安全性を高める特性として最低
でも言えることとして、上述のような
自然法則によるフィードバックの
メカニズムのため、冷却材の温度は
多くの場合、通常の稼働時温度である
摂氏500度近くに保たれる。ナトリウム
の沸点である900度よりもかなり低い。
原子炉の人為的に作った冷却システムが
作動しなくなった場合ですら、そう
なのだ。AFRがオーバーヒートを始めた
場合、その設計と材料とに自然に
備わっている 特性によって、勝手に
原子炉は停止する。操作員による介入や
人為的に作った安全システムによる
介入がなくても、停止するのだ。

Deitrichは結論として、こう語る。
「こうした事項すべてをまとめると、
高度なpassive safetyを実現して
いましたね。それも、実際に稼働させて
いた原子炉で、こうした効果をすべて
実証したのです。どの1種類の効果も
予測可能で、各種効果の組み合わせの
ありようも予測できます。そうした
各種効果が組み合わさることで、自然
法則による信頼性の高い安全性を保つ
反応を実現するのです。高度高速原子炉
のコンセプトでは、そうした効果を
もたらす特性を本来的に <自然に
備わっているものとして> 取り入れて
いるのです」

Dave Baurac記
**********************************

Combined 3D / 組み合わせた3D
裏に何かないか~?
私の20分クロッキーの組み合わせ

無批判に受け入れてるわけじゃ、
ありません!

なお、私は何もこのAFRコンセプトを
アルゴンヌの主張通りに受け入れている
わけじゃ、ありません。
たとえば、
液体ナトリウムのプール内での自然な
対流によって崩壊熱が除去される
という上述の主張ですが、プールが
ナトリウムを保っている限りでは、
確かに対流が生じるはずです。
でも、大地震とか軍事攻撃などによって
プールそのものが破壊され、液体
ナトリウムが流出してしまったら??

あるいは、
大雨やダム決壊、堤防決壊などで水が
侵入、Naと接触したら?
Naと水が接触すると、爆発的な反応を
起こします。
たとえば、でんじろうのTHE実験 超巨大ナトリウムを池に!? – YouTube
の9:10 あたりから後をご覧ください。
軍事紛争の中で堤防決壊 ⇒ 水がAFR
コンセプトの原子炉のあるNaプールに
入り込んだ ⇒ 大爆発 ⇒ プールが損壊
⇒ Na流出 ⇒ メルトダウン
という危険性は、ありえないとは言え
ませんよね。

こうした反省なら、私は行っております。

上述のような主張を無反省に受け入れて
しまう  ことと、
無反省に全部ウソだと決めつけてしまう
こととは、
どちらも「無反省」 だという共通項が
ありますよね。

そうした視点で見ても、このEBR-IIの
「故意にメルトダウン実験」の結果
そのものについては、ネットを探しても
欺瞞性の指摘などが見当たりません。
業界ではよく知られた実験なのですが。
実際に「勝手に停止」 したと考えて
よいはずです。

実際、IAEAも2000年代にこの実験
データを集めての分析評価などを行った
のですが、「ウソだ、EBR-IIは勝手に
停止などしていない」 といった意見は
見当たりません。(Preparation and Submission of a Manuscript for the Proceedings (iaea.org) )


なんでもいいから、イヤなものはイヤ!
・・・こうなると、もはや対話も何もあったもんじゃ ・・・
私の、昔の20分クロッキー

それでもなお、
\(;; >O<) / 「メルトダウンを故意に
起こそうとしてもメルトダウンし
なかったなんて、信じられるわけない
じゃない!推進派のウソに決まってる!」
とかおっしゃる方は、「やかんをのせたら
~~」の対象読者に想定しておりません
どこか、ほかのウェブサイトなどで、
発作的に騒いでいてください。
技術問題も可能な限り学び、推進派とも
冷静に対話していこうという方々を
「やかんをのせたら~~」 では想定
読者としておりますのでね。

で、本題に戻ると~~

proliferation risksを軽視してメルト
ダウンと核ゴミ問題ばかりを前面に
出してこられた皆さん、さて、この
EBR-IIを先駆者とするIFRには、
どういう根拠から反対なさいますか??
それとも、「IFR以外の原発反対」と
いう路線に転換なさいますか??

ところが。Proliferation risksに
フォーカスすれば ・・・
・・・ 反対すべき理由は明らかに
なります

ページ d-1) の説明図を再掲

ページ d-1) の説明図を再掲

まず、U-235の濃縮率
上でお読みいただいた通り、IFRでは67%
といった高い濃縮度のU-235を使用
します。ここまで達すると、兵器
グレードである90%にまで濃縮するのが
かなり容易になってしまいます。上の黒い
メニューでは、基本的に項目をアルファ
ベット順に配列しておりますが、h-3) を
見つけてクリック ⇒ 上から3番目の図
「濃縮U中の235Uの比率」を御覧
下さいませ。
イランがフォルドウのU濃縮工場で60%
ほどへのU濃縮をしているとの非難を
浴びており、IAEAが現在、大問題にして
いますよね。そうした現実も、忘れない
でくださいね。

ページ if-3) の説明zぅ、再掲 「ブランケット」の概略

ページ if-3) の説明図、再掲
「ブランケット」の概略

次に、再処理を必ず行うこと
原子炉そのものはFBRなので、「ブラン
ケット」を設置すれば ・・・
・・・ Pu-239を製造できてしまいます
よね。
「なに、それ??」という方は、上の
黒いメニューでif-3) をクリックして
お読みくださいな。

そして日本政府がFBRをあきらめない
真意 ・・・

ついでに、EBR-IIもFBRの一種ですが、
今までFBRは商用で成功したためしが
ないですよね。スーパーフェニックス
しかり、商用以前の段階であったはずの
「もんじゅ」しかり。そんな代物に、
なぜ日本政府はあきらめず固執して
いるのか??
ページ シリーズg-x) で述べたような
経緯と、上述のproliferation risksと
を考え合わせると、恐るべき推察が
できますよね?
そういえば、本日(2023年5月24日)、
FBR実験炉「常陽」の再稼働許可が
くだりましたよね。「もんじゅ」を
断念したものの、FBRを諦められない
日本政府の姿勢が ・・・

でもここでは、本題のIFRの軍事的
リスクに話を戻しましょう。

あくまで、説明のための略図です SMRは地下に建造しえるので ・・・ s-3) の3枚目の図、再掲

あくまで、説明のための略図です
SMRは地下に建造しえるので ・・・
s-3) の3枚目の図、再掲

最悪の ”IFR利用”

以下は、s-3) でも似たような危険性を
述べたので、内容が重なることは
ご了承願います。
要するに、
IFRをSMR化 ⇒ 地下に、小型のIFR、
再処理工場、ウラニウム濃縮工場を
作っちゃったら ・・・
という恐るべきシナリオですね。現実、
すでにイランのフォルドウには、地下の
U濃縮工場があって、とっくに稼働して
いますし。

こうした地下の秘密IFRの場合、
あるいはそこまででなくても 「普段は
発電用(または実験用)FBRで~す」
にIAEAなどの監視をかいくぐって
ブランケットを設けられたら、秘かに
その国はPu核兵器を開発できてしまい
ますよね。(あるいは、IAEAを脱退して
ブランケットを設けられたら??
現実、北朝鮮は核兵器開発のため
脱退しましたよね)

これで、お分かりいただけましたね?

「メルトダウンこわい、核ゴミの
捨て場がない」
という今までの日本の反原発派の
「主な反対理由」だけだと、
IFRには反対する理由が希薄になって
しまいます。

でも、軍事面特にproliferation risks
を軸にして物事を見れば、
「絶対反対!!」と断言できる根拠が
複数ありましたよね。
アメリカ政府が1990年代半ばにIFR
開発の予算を廃止したのも、こうした
軍事面でのリスクを考えれば、合点が
いきますよね。


Rinsing away — 新しく始めたい ・・・
私の、昔の20分クロッキーより

さらに、一般化して ・・・

事故を起こしにくい原発であるほど、
「原子炉の本来の用途」つまり「核
兵器用Puの製造」を秘かに行う勢力に
とっても、使いやすい原発になって
しまいますよね。

ですから、反核勢力としては、
原発の「事故危険性」ばかりを問題に
していては、片翼飛行に陥ってしまい
ます。核発電と核兵器両方の廃絶を
求めるのが、あるべき姿です

たびたび引用しますが、上の黒い
メニューにある付録 w-4) で「そして
proliferation」という段落に紹介した
Al Gore 元副大統領の次の発言は、
ホワイトハウスでの実務体験に基づく
ものであることを、忘れないで
ください:
For eight years in the White House,
every weapons-proliferation problem
we dealt with was connected to a
civilian reactor program.

大事故 ⇒ 原発反対
という従来の流れを超えて、
核兵器と核発電は不可分 ⇒ どちらも
廃絶を! そのために必要な国家や社会
のあり方の変革も!
という動きを始めたいのですね。
メリーランドに本部を置くBeyond
Nuclearという団体などは、まさしく
そんな団体なのです。

日本にも、そんな団体はないので
しょうか??
もしご存じなら、私 (ひで) まで、
ぜひお知らせくださいませ!
yadokari_ermite[at]yahoo.co.jp

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