2022年10月
しつこいですが、あえて再度お断り
この 「革新軽水炉」 のページ シリーズでは
シツコク、いちいち記しておりますが、本ページ
でもあえて断っておきます ~~
「やかんをのせたら~~」 のフォーカスは
あくまで核発電の軍事関連リスクにありまして、
「事故危険性」 は他のウェブサイトや書籍
などに任せております。
で、「革新軽水炉」 は現時点では要するに
PWRやBWRの改良型ですから、proliferation
risksなどはPWR、BWRと変わりません。
ですから、本来なら 「やかんをのせたら~~」
では「革新軽水炉」 を取り上げるつもりは
なかったのですが ・・・
ご存じの通り、日本政府は 「新型原子炉の
開発を進めて、原発回帰を」 と言い出して
います。これに反対する世論を高めるため、
国内の反原発団体などから新型炉への問題
指摘が盛大に上がることを私は期待しており
ました。
でも、2022年10月現在、そうした問題指摘が
聞こえていますか??
やれやれ~~ってことで、仕方なく・不承不承に、
本ウェブサイトで主な新型 (革新) 軽水炉の
事故危険性を短く取り上げております。
新型軽水炉の事故危険性についての詳細は、
原子炉技術者や研究者の皆様にお尋ねください
ませ。
で、今回はATMEA1
Atmeaそのものは、MHI(三菱重工) とフランス
EDFグループの合弁事業のことで、2006年
の設立でした。パリに本部を置き、ATMEA1 と
いう名称の革新 (新型) 軽水炉の開発や販売
などを事業としていました。どうも採算が取れなく
なったようで、2019年に廃止になりました。
ATMEA1 は、PWRの改良型です。
英語版Wikipediaの “Atmea” というページ
Atmea – Wikipedia
に記載があります。それをベースに、ATMEA1
に関する記載をしていきますね。
* 日本語版Wikipediaの アトメア – Wikipedia
にも説明がありますが、2019年で終了したこと
については、日本語ページには記載がありません。
このあたり、新型原子炉という分野では1言語だけ
に頼っていたのでは情報が不足してしまうことの
実例ですね。
本ウェブサイト 「やかんをのせたら~~」 でも、
軽水炉ではない新型炉 (proliferation risksに
変化あり) IFR、TWR、MSRなどなどの各ページ
では英語の文献を多数日本語化して紹介して
いますが、日本語だけに頼っていたら、これら
のページは作成不能でした。
日本政府が 「新型原子炉開発で、原発復帰を」
と唱えている現在、対応して私たち反核勢力も、
新型原子炉を扱う人たちは複数言語を使える
必要がございます。
(「反核勢力の全員または大半が」 では、あり
ませんよ。「新型原子炉を扱う」 人たちは、
ってことです)
シノペの失敗
2013年、トルコのエルドアン首相 (当時、現在
は大統領) と日本の安部首相 (当時) とが、
トルコの北部、黒海沿岸にあるシノペという地域
に原発を新設することで合意しました。この
新原発で建設する予定だったのが、ATMEA1
原子炉4基でした。
しかし、福島第一の大事故を受けて安全基準が
厳しくなって、建設費用などが膨れあがり、
この合弁事業は廃棄されました。
だったら、ATMEA1 なんて忘れてしまっても ~
~~と考えると、実際に断念された 「新型
軽水炉」 の実例をみすみす忘れてしまうことに
なります。
今のところ 「新型 (革新) 軽水炉」 各種は、
要するにPWRまたはBWRの改良型なので、
APWRだのATMEA1だのEPRだの各種
あっても類似点が多いのですね。名称は各種
あっても、類似点が多ければ、「新型軽水炉の
多くに共通の問題点」 を私たち反核勢力は
指摘できるわけです。そうした情報発信を
社会に行うために 「共通の問題点」 を学んで
おこう、ということです。
では、そのATMEA1の主な特徴をごく手短に
上述の英語版Wikipediaによって、ATMEA1の
主な特徴をごく短く紹介しておくと、
・ ATMEA1の原子炉システムは、すでにEPR
やAPWR用にAREVAまたMHI がすでに開発
していたもの。
・ アキュムレーター (下記) を採用。
・ 中性子反射体を採用。(中性子を反射する
物体を炉心に設けることで、核分裂の効率を
高める)
・ 緊急冷却装置も3つ。(上の黒いメニューで
al-4) にある、EPRに関する解説の後半を参照。
似てますよね)
・ メルトダウンしてしまった場合に備え、
「ドロドロ」 を受け止める設備 (コア
キャッチャーとか。これも、他の各種 「新型炉」
の多くに見られますよね。やはり、メルトダウンが
発生し得るという前提があります)
* アキュムレーター (蓄圧タンク)
圧力容器近くに配置した一種のタンクで、
中には
・ ホウ酸水 (水が炉心を冷却し、ホウ酸が中性子
を吸収するので核分裂を抑える)
・ 窒素 (反応しにくい気体、ホウ酸水に圧力を
かける)
が入っています。
炉心で事故 (メルトダウンなど) が発生すると、
炉心は圧力が通常より低下しているでしょう
から、窒素ガスの圧力がホウ酸水を
パイプ経由で炉心へと(passiveに)
送り込みます。
すると徐々に窒素ガスの体積が大きくなって、
圧力が低下しますよね。すると、ホウ酸水は
小流量で炉心へと送り込まれます。こうして、
長時間ホウ酸水が炉心に入り込み、崩壊熱など
を冷やします。
安全性の向上 | 日本原子力発電株式会社 (japc.co.jp)
を参照。
一見、「これで安全」 と思えるかもしれませんが、
ホウ酸水はパイプ経由で炉心に流入する
以上、溶接不良や地震などでパイプが破損
したら??はたまた、ポンプそのものに損傷が
発生して、窒素ガスの圧力が低下したら??
なお、MHIの新型軽水炉 SRZ-1200では、
高性能蓄圧タンクを採用しているそうです。
三菱重工 | 革新軽水炉「SRZ-1200」について (mhi.com)
を参照。
日本政府が方針を変えない限り ・・・
・・・ しばらく、「この新型原子炉なら、
安全です!」 を日本ではこれから聞かされる
ことでしょう。ヤレヤレ。
その際、新型炉の名称はまた、アレコレ新しい
名前が出てくるでしょうけど、「軽水炉の改良」
である限り、共通項が多いはずです。
ですから、名前だけ新しいのが登場しても、
軽水炉の基本構造を理解していれば、
名前がどうであれ、問題指摘ができるハズ。
私たち反核勢力としては、
・ その 「安全性主張」 の根拠に潜む問題点
・ その 「根拠」 に伴う工期遅延やコスト増大の
危険性
(EPRなんて、これだらけ。しかも、タイシャン
などで実際に放射性物質漏れも起こしました。
ページal-4) 参照)
を指摘できるようにしておきましょう。
では、これで 「新型 (革新) 軽水炉」 のページ
シリーズを終わります
今後、名称は各種アレコレ登場するでしょうけど、
要はPWRやBWRの改良である限り、この
ページ シリーズでたびたび紹介した 「共通項」
が見られることでしょう。
反核勢力としては、それを把握しておきましょう。
そんなわけで、新型軽水炉のページ シリーズは、
これで終わりますね。
え~~ まだあるの~~??
では、次回はHTGRを
「新型原子炉」 を喧伝している情報ソースを
見ると、日本で有望視されている新型原子炉の
1つに、HTGR (高温ガス炉) があります。
これは、ガス冷却ですから軽水炉ではありません。
したがって、HTGR専用のページを設けますね。
しばし、お待ちくださいませ。