s-5) (SMR) Prof. Ramanaによる専門家見解

Prof. Ramanaによる専門家見解 ・・・
SMRなら、安全で気候変動対策にもなるってほんと??

2023年4月

* このページは、大変長いですよ!

Beyond Nuclear Bulletin Apr. 6, 2023で
紹介されているSMRの問題点を専門家が
指摘するヴィデオを紹介します。
お話をなさっているのはカナダのブリティッシュ
コロンビア大学教授M. V. Ramana氏です。
同氏は以前にはプリンストン大学のNuclear
Futures LaboratoryやProgram on Science
and Global Securityでも研究に当たられ、
核関連の各種国際団体にも名を連ねて
らっしゃいます。詳しくは、
M. V. Ramana – Wikipedia
をお読みください。

なお、Beyond Nuclear Bulletinに
subscribeしたい方は、
Beyond Nuclear : Sign Up to Stay in Touch (constantcontact.com)
をどうぞ!

長いヴィデオを見ていると ・・・

長いヴィデオを見ていると ・・・

で、そのヴィデオは
Small Modular Nuclear Reactors: More Problematic Than Large Reactors – YouTube
にありますが、約1時間45分という
長いもので、全部を日本語化するには
適切な人材が私以外に3人程度は
欲しいです
しかし今のところ 「やかんをのせたら~~」
は私 (ひで) 一人ですべてやるしかない
ので、
ヴィデオの一部を抜粋して
音声から要約した日本語化に
しますね。(詳細な単語などは、かなり
削っています
ところどころ画面も日本語化します。
一人だと、それで精一杯です。
それでも、このページは大変長くなります!
でも、長いテキストを読むだけの価値は
あります!世界的な各発電専門家が、
SMRの問題点をほぼ網羅してくれて
ます

本論は、タイムスタンプで 4:10 あたりから
始まっています。

いつもどおり、
私の抜粋・日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
文字色による強調は、すべて私 (ひで)

なお、「そもそも、SMRって何よ??」
といった質問は、上の黒いメニューに
ある固定ページ s-0) – s-4) をまずは
お読みください。メニュー内の項目は、
基本的にアルファベット順です。

では、長いので覚悟して ~~

では、長いので覚悟して ~~

****************************
Small Modular Reactors: More Problematic
Than Large Reactors
(小型モジュール原子炉、大型炉よりも
問題が多い)

4:29
とにかく、お招きいただき ありがとう
ございます。
Nuclear Information Service <この
レクチャーの主催団体> でお話しさせて
いただけるのは、大変な名誉です。
カナダは西部のヴァンクーバーから、同僚の
皆さんと共にご挨拶を申し上げます。私が
いるのは、主に???の若い人たちが
多い地区です。
最初に、この講演のタイトルを予定から
変更したことをお断りしておきます。
最初に講演の原稿を送った時点では、
まだ内容を煮詰めておらず、
もっと詳しく説明したほうが良いと考えました。
そこで、今日のお話では何事も包み隠さずに
申し上げます。
SMRなら電力不足を解消し、気候変動を
軽減できるとの主張がありますが、実際
そうではありません
そうした勢力の主張では、現在、イリノイ州で
SMRを導入しようという動きがあってメディア
も騒いでいますが、驚くには値しません。
核発電に関心がある諸国はみんなSMRを
話題に挙げていますが、みなさん現在形で
話をしてしまっています。すぐに出来る
原子炉だと。
でも実際には、すぐに説明しますが、
ほとんどはまだ実現していないのです。

そこで、Small Modular Reactorとは
そもそも何なのか、短く話をいたします。
次に、なぜ話題になっているのかを
説明しましょう。その文脈として、
核発電の現状
<SMRを売るための> 「営業トーク」
実際はどうか、というチェック
そして、時間があれば、なぜ <SMRなら
安全だというような> 主張が登場したのか?
についてお話いたします。

まだできてないけど、売り込みはやっとこう 新型クッキー

まだできてないけど、売り込みはやっとこう
新型クッキー

Small Modular Reactorとはそもそも
何なのか

現時点では、SMRとは、まだほとんど設計
段階の原子炉です。
2基だけ稼働中のものがあり、1基は中国に
もう1基はロシアにあります。
でも大半は、まだ理論段階なんです。
Small Modular Reactorという名称が示す
ように、2つの言葉がありますよね。
SmallでModularというわけです。
Smallとは単に設計上の出力が小さい、
実際には300MW以下ということです。
300MW前後から700MW までは、よく
中型と呼ばれます。「小型」 といっても、
実際に原子炉が物理的に大変小さいと
誤解しないでください。
工場で構築したモジュールを、組み合わせた
原子炉です。
各モジュールは、そのまま完成した原子炉の
一部になるわけです。
で、一部のモジュールは確かに小さいのです
が、中にはかなり大型のモジュールもあるの
ですよ。それを、忘れないでくださいね。
次に名称にある単語、Modularですけど、
恒常性のモジュールを組み合わせて原子炉
を作るということです。奇妙に聞こえるかも
しれませんが、<現代の> 製造業では
大抵、そういうやり方をしていますよね。
たとえば、今時の家を建てるとき、木材を
現場に運んで大工さんたちを集め、木材を
組み立ててドアをつけ、窓を作って壁を塗装し
・・・ というやり方をする人は、極めて少ない
ですよね。現実には、工場で何もかも製造して
いますね。工場でできたものを現場に集め、
組み立てるのが主流です。それと同じやり方
を、SMRでもやるわけです。それが、Modular
という言葉の主な意味です。それが実際に
どのような結果を招くかは、後でお話しします。

斜陽産業 ・・・

斜陽産業 ・・・

 

なぜSMRが話題なのか?
核エネルギーの現状

SMRの利点と欠点とを話す前に、そもそも
なんでSMRが話題なのかを考えましょう。
簡単に言ってしまえば、原発の建設はもう
かなり以前から、不調続きなのです。原発の
建設業界の儲かっていた時代は、もう何十年
も昔のことだったのです。原発の建設ブーム
があったのは、アメリカでは1970年代のこと
それ以外の諸国では西ヨーロッパも含め、
主に1980年代のことでした。1986年に
チョルノービ原発の大事故がありましたが、
大まかにその頃から原発の新設は低迷して
います。さらに近年、新設よりも原発のシャット
ダウンのほうが多いです。そして原発からの
発電量も、ここ何十年か一定化しており
<増加はしていません>。
さらに90年代以降、送電グリッドには他の
発電源が接続されるようになり、増大している
のですね。その結果、全世界の発電量の中で
核発電が占める割合は、1990年代半ば以来
減少を続けています。1996年には約17.4%
程度だったものが、2021年には9.8%にまで
10%を切るところまで低下しました。この統計
は、2021年までをカヴァーしております。
この画面のグラフを見れば、原発のシェアが
いかに減少しているか、分かりますよね。
対し、世界的に見て再生可能エネルギーの
シェアが増大を続けています。
ですから、世界は化石燃料をやめようとして
いるわけでも、核発電を増やそうとしている
わけでもなく、再生可能エネルギーを増やして
いるのです。

ライフサイクルで見ると、とんでもないコスト

ライフサイクルで見ると、とんでもないコスト

核発電業界は、基本的にこうした世界の現状
の中でもがいているわけですね。
ではなぜ、原発の新設があまり行われて
いない現状に至ったのか?その主な理由は、
核発電には経済的な競争力がないという
ことです。原子炉の建設には、コストがかかり
すぎるのです。 ・・・・
各種のテクノロジーによる発電所のコストを
比較したグラフが、画面にあります。アメリカ
での実情ですね。 ・・・・
御覧のとおり、風力や太陽光のコストは大幅に
低下しているのに対して、核発電のコストは
むしろ上昇しています。アメリカで発電所を
新設した場合の発電コストを見ますと、原発
では平均で120から160/MWhにのぼるの
に対し、風力や太陽光なら30-40で済み
ます。原発は、コストが3-4倍かかるの
ですね。その他のエネルギー源も、核と
比べれば低コストです。ですから、電力会社
も原子炉の建設なんて、したくないわけですね。
その問題への対抗として、原発業界では原発
の建設コストは確かに膨大だが、いったん
稼働を始めたらランニング コストは低いと
訴えてきました。これはこのところ、燃料で
あるウラニウムの価格が安いからですね。
でも、これすら最近は様変わりしてきました。

上の黒いメニューにある s-0) もお読みくださいな。 (メニュー内の項目は、基本的にアルファベット順)

上の黒いメニューにある s-0) もお読みくださいな。
(メニュー内の項目は、基本的にアルファベット順)

<新設は避けたいので> 電力各社では
既存原発の稼働免許の延長を国の管轄機関
に申請しているのですが、それにもコストが
かかるので、電力会社も既存原発を廃止して
しまおうという選択をしているのです。その
最近の実例がアイオワ州のDuane Arnold
という原発で、その運営事業者が結局廃炉に
することを決定しました。その理由としては、
廃炉決定により電気利用者の方々からの
支払金額を、合計で3億ドルほど削減できる
とのことです。次の10年間ほど、この発電所
は稼働できる認可を得ていたのですが、
エネルギー源を核エネルギーから風力に変更
すれば、これだけのコストを削れるというわけ
です。これなど、よい実例ですよね。既存の
原発が廃炉に向かわない主な理由としては、
州政府からの補助金がありますね。たとえば
イリノイ州の補助金が有名ですが、他の州
でも同じような現象が見られます。
ニューヨーク州、コネティカット州、その他
・・・ さらに最近の例では、カリフォルニア州の
ディアブロ キャニオン原発を延命させた実例
がありますよね。所有企業であるPG&Eは
もともと、同原発を段階的に廃炉にする計画
で交渉を進めていたのですが。原発が残って
いる原因とは、かなりの部分、こうした補助金
なんです。

国からカネが落ちてこないと、動けない~~

国からカネが落ちてこないと、動けない~~

こうした情勢ですから、原発を新設しようと
する企業は大変少ないのですね。現在
<アメリカで> 建設中の新規原発といえば、
ジョージア州のヴォートル (Vogtle) 原発
だけです。その建設コストたるや、建設開始
当時の見積もりだった140億ドルから、
今では約350億ドルに跳ね上がっており
ます。しかも工期も、大幅に延長されてい
ます。まあ、このところこうした数字は大きく
膨れ上がっていますね。・・・ 原発建設
プロジェクト80件を調べてみると、そのうち
97%では予算超過に陥り、平均では13億
ドルもオーバーしています。予想を上回る
超過ですね。しかも過半数では、予想より
工期も長くなっています。Vogtle原発は、
こうした歴史的な潮流が極端に具体化した
実例ですね。例外的なものじゃ、決して
ないのです。

<SMRを売るための> 「営業トーク」

そうした情勢の只中で原発業界は、「いや
いや、そうした問題は従来型の大型原子炉
での問題だよ。ちゃんと、ソリューションは
あります。SMRっていうソリューションが」
と言い出したわけですね。SMRを紙の上や
PowerPointで見ている限りは、確かに
良さげに見えます。SMR開発企業の多くは、
SMRがいかに優秀かという宣伝をしており、
そうした “Happy Talk” をNRC (原子力
規制委員会) にしているわけです。まあ、
SMR販売業者としては当然、そうした
Happy Talkをするでしょうけど、私たちには
信じられない営業トークですね。でも、メディア
ではそうした営業トークばかりが登場してます。
では、その主張の一部を短く見てまいり
ましょう。

小さいから、安全ですよ~~

小さいから、安全ですよ~~

まず、大型原子炉は複雑だけど、SMRなら
シンプルですよと、彼らは言い出します。
だから福島第一みたいな事故は、弊社の
原子炉なら起きませんよ、というわけですね。
さらに、proliferation riskもありませんよ、
と言い出します。<“核兵器拡散につながる
リスク” のことで、「やかんをのせたら~~」
のフォーカスです。← “ ” 内のような説明
ぽい日本語になってしまう点にご注意くだ
さい。日本で 「脱原発」 とか論じる場合、
proliferation riskがあまり論じられてこな
かったツケの1つが、この 「すっきりした
日本語の欠落」 なのですね。対して
アメリカなどで各発電を論じる場合、この
Ramana博士のお話からも分かるように、
proliferationを論じるは当然のことに
なっています>
さらに、今までの原子炉はかなり敷地の
ある場所で都市近郊などにしか建てられ
なかったけど、SMRなら鉱山や遠隔地など
にも建てられます、と主張してきます。・・・
原理的には、船舶や潜水艦に搭載することも
できると言っています。だから、かなり遠隔地
に立てて電力をその地に供給できますよ、
というわけです。そして最重要事項として、
コストも低くて済みます、と。SMR業者たち
からは、そんなお話を聞かされます。さらに
もう1つ、放射性のごみという問題ですが、
これもなんやら魔法のように解消したことに
されています。

もともと、このためのもの・・・

もともと、このためのもの・・・

実際はどうか、というチェック

そうした主張が出てくる事情については、
いちいち説明しません。アレコレ事情があり
ますからね。むしろ、ほんとにそうした主張を
実現できるのか? それを、短く取り上げます。
それを理解するうえで、大きくまとめれば、
主な問題が4つあります。
その1つが、すでにお話ししたコストです。
その他の問題として、SMRといえど
チョルノービや福島第一のような深刻な事故
を起こす危険はあります。3番目に、放射性
廃棄物が出ます。何十万年もの間、危険な
ゴミですよね。それを処理するための、実証
済みの手法というものは、まだありません。
最後に、核兵器とのつながりがあります。
そもそも世界に核発電が登場したのは、
核兵器開発からでしたよね。
で、私の以前の、プリンストン大学での同僚
にザーミヤンという人物がいたのですが、
二人で各種の設計を調べてみました。上述の
4種類の問題への対処を調べたのですね。

たとえば ・・・ 使用済み核燃料を減らしたい ⇒ 再処理工場 ⇒ proliferation

たとえば ・・・
使用済み核燃料を減らしたい ⇒ 再処理工場 ⇒ proliferation

そして分かったこととして、その1種類に
対応して設計を変更すると、どれか他の問題
を悪化させてしまうのです。安全性を向上させ
れば、コストは増えてしまいます。核廃棄物を
減らそうとすると、実はかえってproliferation
risksが増大してしまいます。つまり、全部を
同時に解消することは無理なのです。安全性
あるいは各廃棄物削減を実現すれば、他の
問題は悪化してしまうわけですね。
特にSMRの場合、小型なので同じ発電量
当たりのコストは大きくなってしまいます。
産業界全般での伝統的な経験則ですが、
大きなユニットを作るほど、たとえば原子炉
なら5倍の容量のものを作るとすると、5倍
にしたからといってセメントが5倍必要なわけ
じゃありませんし、作業員の人数も5倍になる
わけじゃありません。容量を大きくした方が、
発電量当たりのコストは小さくなるわけです
ね。ですからアメリカでも他の諸国でも、
<1950年代などに> 初めて原発を導入した
時点では比較的小型だったのですが、
60年代、70年代と大型化していきました。
いわゆるeconomy of scaleというもので、
これによってコストを抑えようとしたのですね。
ところが。Smallな原子炉に戻ってしまうと、
このeconomy of scaleはなくなってしまい
ます。SMRにすると、1期当たりのコストは
増大してしまうのですね。その実例を、最近
私たちは実際に目にしております。アイダホ
州で行われた ・・・、NuScale社によるSMR
の建設計画があったのですね。ユタ州公営
共同電力事業体 (UAMPS) からの発注です。
小型原子炉のもう1つの問題として、発電量
当たりでできる核廃棄物量も増大してしまい
ます。プルトニウムやウラニウムの発生が
増えてしまうのですね。 <この問題、次回
アップロードの固定ページs-6)  で、この
問題は詳しく取り上げます> 同じ発電量の
電気を起こすのに、SMRのほうが廃棄物量が
大きくなってしまうのです。

ちっちゃいほうが、トイレがでかい ・・・

ちっちゃいほうが、トイレがでかい ・・ お下劣ゴメン!

SMR業界からのこうした問題に対する回答と
しては、「いやいや、こうした問題はすべて
認識していますが、economy of scaleの問題
については、SMRは工場で製造するので
対応できますよ。モジュール式ですからね。
最初の少数だけは高価かもしれませんけど、
工場が製造を続けるようになれば、時が
たつほど安価になっていきますよiPhoneも、
そうだったでしょ」 などと言うわけです。
でも、これには2種類の問題があります。
まず今までの実績を見ると、原発というものは
時代とともにより高価になってきました。安価
にはなってこなかったのです。画面の右上の
グラフですが、世界でも特に原発発電容量の
大きな2国、アメリカとフランスでのコストの
変化実績を示しています。いずれの国に
おいても、コストは大変上がっていますよね。
決して、下がってはいません。ですから今まで
の実績を見る限り、SMRだからといって今
までとは異なりコストが下がっていくと考える
根拠はないのですね。
次に、SMRをいくつか建設すれば何らかの
学習効果があって <コストを削減できると>
楽観視している向きもあるようですが、大型
原子炉に対抗するためには、そうした学習用
SMRを多数建設し稼働する必要があります。
そうでないと、小型原子炉がコスト面で大型と
張り合えるようには、ならないのですね。
先ほど申しましたように、既存の大型原子炉
でさえ、太陽光や風力と比べると発電コストが
4-5倍になっています。ですからSMRが
再生可能エネルギーと張り合うには、いえ、
張り合えるようには ならないでしょう。

♪ 別れさせようにも、別れられるはずもない ~~♪

♪ 別れさせようにも、別れられるはずもない ~~♪

さらにあと1つ、各発電に憑き物の暗黒面が
あります。
小型原子炉といえど、proliferationのリスク
は大きいのです。

<23:52 の画面も、ここで日本語化して
おきます>
核発電には、濃縮UとPuとの使用と製造が
伴う。

小型原子炉であっても、「大きな」 課題が
ある

200 Mweの小型原子炉 ⇒ 1年間で、HEU
ベース (広島型) 原爆およそ8個分に匹敵
する濃縮容量、あるいはPu型 (長崎型)
原爆およそ10個分のPu算出

SMRにともなう必要リソースとproliferation
risks
Alexander Glaser, Laura Berzak Hokins,
M. V. Ramana
“Nuclear Technology” 紙 Vol. 184
2013年10月号

小さくても、悪魔は悪魔

小さくても、悪魔は悪魔

<音声に戻ります>
SMRであっても、広島方原爆でも長崎型原爆
でも、毎年何個も製造できるだけの廃棄物を
生み出します。ですから、たとえ小型原子炉で
あっても、ある国に1つでも原子炉があれば、
かなりの核兵器を製造できる能力があること
になります。

忘れてほしくないのですが、気候変動は
あくまで、物事が相互作用して発生する地球
規模での危機の連鎖の、1つの断面に
すぎません。
核エネルギーでも、proliferationや核による
絶滅といった深刻な諸問題が、重なり合って
発生しています。
核発電やSMRが広まってしまうと、上記の
2種類の危機が最悪化してしまう恐れさえ
あります。
SMRでは気候変動問題の解決には
つながらず、しかもproliferation risksは
増長してしまうのですね。

やめてくれ~~ "Weeping Face", 私の昔の作品、製作途中のl状態

やめてくれ~~
“Weeping Face”, 私の昔の作品、製作途中のl状態

SMRって、安全なの?

SMRのセールス トークで聞かされるのは、
SMRなら安全ですよ、という主張ですよね。
さて、本当はどうなのでしょうか?
答えは ・・・
原子炉は複雑な装置で、異常を起こしえる
ものが多数あります。その構造そのものから
言って、原子炉とはきわめて複雑なお湯
沸かし装置なんです。しかも、そのお湯を
沸かすための熱を生み出すのに、きわめて
危険なプロセスを採用しています。ですから、
どんな原子炉であっても、何か事故を
起こして原子炉から放射性物質が逃げ出して
環境中に拡散してしまう危険性はあります。
ご存じの通り、そうした危険性に関連して
アレコレ技術的な詳細問題が絡みます。
それらをすべて論じている時間は、あり
ません。
しかし、<SMRの安全性について>
アーダコーダ主張がありますが、そうした
セールス トーク主張の多くは、根拠がない
ものです。信頼できない判断であったり、
各種団体間の利害衝突が絡んでいたり。
それに、原発メーカーが弊社の原子炉なら
安全ですよと主張している場合、おそらく
何らかのリスク評価などを見せてきますよね。
事故発生の可能性は、1億年に1回だとか
100億年に一度だとか。でも、そんな数値
には意味はないのです。だって、どうやって
証明できるのですか??最低限、これだけ
は知っておくべきですが、実際には原発の
事故発生確率なんてものは現実的に算出
されたためしはないのです。ですから、そうした
確率は不確実な数値であり、しかも必ず0
よりも大きな数値です。つまり、「安全な原発」
なんてものは、存在しません。「安全」という
のが、事故を起こさないという意味である
限り。少なくても、放射線に関して。

小さいながらも、カネくい虫!

小さいながらも、カネくい虫!

今までの実績: 結局、昔あったのと同じ
ことが ・・・

今までにも実は小型原子炉は建設されてい
ました。ですから、実績は分かっているの
です。この画面に出ているリストにある原発は
いずれも、アメリカで実際に建設したものです。
いずれも300MW未満で、小型ですね。
ほとんどは1950年代終わりから1960年代
に建設されたものです。そしてどれも、
1970年代には閉鎖されています。
Nuclear Information Service <この
レクチャーの主催団体> の皆様にとって最も
近くにあるのが、この <画面に出ている>
Elk River原発ですね。稼働したのは、1964
年から68年のことでした。実際の建設コスト
は、当初の推定のほぼ250%にのぼりました。
原子炉を閉鎖した際に電力会社が言ったことを
要約すると、小型すぎて経済的に採算が合わ
ない、とのことでした。そのため、最初の主要
機器交換のタイミングで廃炉を決めたの
ですね。
同じようにコロラド州のFort St. Vrain原発
でも、これは高温ガス炉 <HTGR、上の
黒いメニューでh-0) – h-3) を参照。メニュー
内の項目は、基本的にアルファベット順>
でして、販売側は大変安全だと主張している
のですが、現実には頻繁にトラブルを起こして
停止となり、稼働しているはずの期間の
14-15%ほどしか動いていなかったのです。
当時のThe New York Timesもこの原発の
シャットダウン問題を取り上げ、その
ヘッドラインは Safest Reactor Is Closing
Because It Rarely Runs” という笑えるもの
でした。<「最高の安全性を誇る原子炉、
廃炉へ ・・・ そりゃ、動いてないんやから、
安全に決まっとるがな!」> つまり、書類
では安全に見えるものでも、実際にはうまく
いかないものなのですね。

で、結局どうなの?? 私の15分クロッキー

で、結局どうなの??
私の15分クロッキー

では、最後のまとめとして、今回の中心となる
疑問を取り上げましょう。
はたして、気候変動の解決のため、核発電を
拡大すべきなのか??
もうすでに、いくつも理由をあげましたよね。
核発電の拡大が可能であったとしても、
すべきではありません。
まず、核発電を拡大してしまうと、核事故発生
の可能性も拡大します。確かに、核事故は
毎日発生するわけじゃ、ありません。たまに
起きることです。でも、原子炉が増えれば、
それだけ事故発生確率も高まります。これは
否定しようがない問題ですよね。
同じように、原子炉が増えれば、核兵器の
proliferation <核兵器拡散> のリスクも増え
ます。原子炉を保有する国が増えれば、今の
うちは平和利用だと言っていても、将来、
核兵器開発に踏み切る恐れがあります。
原子炉があれば、そうした諸国にとっては
核兵器開発がしやすいのです。
最後に、原子炉はどれも放射性廃棄物を
出します。その廃棄物をどう処理できるのか、
それはまだ未解明です。
そんなわけで、あまり時間を取りたくはないの
ですが、こうした問題はすべてSMRにも該当
します。SMRなら こうした問題がないという
わけでは、まったくありません。

水分補給は大切です ・・・ 水があるんなら、今は火事を消せ!

水分補給は大切です ・・・
水があるんなら、今は火事を消せ!

さらに重要な問題として、気候変動の緩和の
ためにSMRがどう現実に役立つのか?2つ、
覚えておいていただきたい ことがあります。
1つは、原発建設のコスト。かなり時間を
割いて説明しましたが、世界のどこを見ても
原発は非経済です。大型原子炉であれSMR
であれ、原発に投資してしまうと、その金銭は
他の気候変動対策には使われていないわけ
です。大がかりな、機会喪失です。
でもさらに重大な問題として、ここ何週間かの
新聞の見出しを見てください。最新のIPCC
報告書が取り上げられてましたよね。IPCCの
主張を基本的に要約するなら、気温の上昇を
1.5Cまでに抑えたければ、温室効果ガスの
排出を大幅に短期間で削減しないといけない
ということですよね。IPCCの唱える数値を
見ると、地球規模での温室効果ガス排出量を
2030年までにほぼ半分にせねばならない
ということです。この主張を公正という視点で
考えるなら、比較的経済的に裕福な諸国、
アメリカや西ヨーロッパ諸国は、それほど
豊かではない諸国よりも、いち早くこの排出
削減を実施する責任があります。それが、
公正というものですよね。ですから、短期間
でこの削減を実現するための方法の、優先
順位を決めることになります。その点で、
核発電は役には立ちません。というのも、
原発を建設するプロセスは長期間にわたり、
平均でも10年を要します。さらに、実際に
地面を掘って3コンクリートを入れる作業の
前に、もう10年ほどの準備期間が必要です。
環境への影響評価や立地選定、そして最
重要問題として何百億ドルもの資金を調達
しないと、原発は立てられませんからね。
長い期間ですよね。

ずさんなスケッチ、ご容赦ください。なにせ、1989年に行った時のものをもとに想像を膨らませたので。 で、この大間原発は、2023年4月現在、まだ工事中です!

ずさんなスケッチ、ご容赦ください。なにせ、1989年に行った時のものをもとに想像を膨らませたので。
で、この大間原発は、2023年4月現在、まだ工事中です!

そんなわけで、私が暮らすカナダの
ブリティッシュ コロンビア州には今のところ
原発はありませんが、仮に首相がここに
原発を新設すると決定した場合、最初の
ユニットが発電を始めるまでに15-20
年はかかります。決して、短期間で実現
できるプロセスでは、ありません。それに
世界を見渡せば、それ以上に工事期間
などがかかった原発も多数あります。
南インドにあるマドラス原発など、
建設開始は2004年だったのですが、
現在のところまだ竣工に至りません。いつ
できるのか、疑問です。やめてくれれば、
私としてはうれしいですがね。

リンさん、ご質問ですか?

リンさん:
ええ、
原発には即効性がないということですね?

Dr. Ramana:
そうです。

リンさん:
2024年以前に、この原発計画はやめて解体
に向かったほうが良いかもしれませんね。
だって、もう間に合わないことが ・・・

Dr. Ramana:
そのとおり。
核発電には、短期間で発電を行う能力が
ありません。2つの意味で。
1つは、建設して発電するまでに長期間を
要すること。
さらに、実際の出力の点でも。

まあ、1時間ほどしたら救急車が来るでしょ~ 1時間もかかるんじゃ、間に合わねえ!!

まあ、1時間ほどしたら救急車が来るでしょ~
1時間もかかるんじゃ、間に合わねえ!!

では、あと少しだけです、そしたら私からの
お話は終わって、皆様とのディスカッションに
移れます。
で、原発の建設には本当に長い期間が必要
で、SMRでも大して変わらないのです。書類
の上では、SMRの多くは短期間の工事で
建設できます。数年前のことでしたが
Westinghouse社、AP1000という原子炉を
作っている企業ですよね、それがジョージア州
でその原発の建設をしていたのですが、その
ころには見栄えの良いコンピューター アニメ
のヴィデオを流していたんです。建設の経過を
紹介するヴィデオで、このAP1000原子炉の
コンポーネントが次々と現れて、それが組み
合わされていくんですね。画面の上では、
わずか36のステップでこの原子炉は完成し
ちゃうんです。でも。実際には、この原発の
工事は2013年に始まって、今もまだ未完です。
そんな調子で、コンピューター上の世界でうまく
いっても、現実にはそうはいかないのですね。
SMRも例外ではなく、その具体例を画面で
紹介しています。それに、単に政府などの
上の方だけでの話じゃ、ありません。政府が
核発電を優先させて進めたとしますよ。各国
政府は核発電のため、かなりのリソースを充当
してきました。

こんなもんに、「回帰」 せんでええわい!

こんなもんに、「回帰」 せんでええわい!

その例が、ブッシュ政権時代
<2001年はじめから2009年はじめ> に
アメリカで見られた 「核ルネッサンス」
<Nuclear Renaissance> ですね。それに
2005年のエネルギー政策。アメリカ政府は、
いろいろなローンなども含めて各種の方策で
核発電の推進に努めたのです。そうして、
2021年までには新設の大型原子炉15基を
稼働させようとしたのですね。でも、その中で
企画段階を経て工事が始まったのは、4基
だけです。他の2基は、90億ドルを投資
した後に白紙撤回となりました。・・・・ 残りは
Vogtle原発です。先程、紹介しましたよね。
英国でも似たような様子で、トニー ブレアー
政権、ゴードン ブラウン政権時代には2020
年までにかなりの原発で発電を始める計画
だったのですが、今までのところ、何も現実化
してはいません。

そんなわけで、基本的な事項ですが、気候
変動を緩和したいのであれば、炭素の出どころ
も見ないといけません。そして、ライフサイクル
での炭素排出ですね。これについても、後で
話し合いがあるでしょう。炭素排出の少ない
エネルギー源を求めるのは、当然のことです。
でもそれと同時に、そうしたエネルギー源の
コストと必要になる時間についても考えないと。
そう見ていくと、大型か小型かには関わらず
核発電で気候変動対策の目標を達成しよう
というのは、無理な試みです。

では、ここで私の話を終わりにして、
皆様からのご質問を承ります。
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小さいほうがゴミが多いのは、どうして?

小さいほうがゴミが多いのは、どうして?

ヴィデオのタイムスタンプで、36:30までに
しておきますね。
全部を日本語化すると、長すぎて皆様も読んで
られないでしょ?
上の文字色強調した箇所にもあるとおり、
諸外国の専門家たちによる論文や講演などを
見ていると、「核発電 = 核兵器拡散に
つながるリスク」 というのはもう、当たり前な
「その討議の大前提にある問題の1つ」 と
なっています。
この必要不可欠な認識を日本社会でも
定着させたいというのが、「やかんをのせたら
~~」 の狙いですね。

では、次回の固定ページアップロードは
s-6) で、「小型原子炉だと、むしろ発電量
あたりの放射性廃棄物発生量が増えてしまう
⇒ proliferation risksが増大してしまう」
という問題を扱います。
SMRのproliferation risksについては
すでに s-3) で取り上げたので、この
問題も述べたつもりでした。が、読み
直してみると、書き落としてましたので。
スイマセン ・・・

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