付録の付録 ww-1) 特にキリスト教徒の読者の皆様へ ・・ 世界観と軍事

2022年3月20日

発電・核兵器と直接の関係はないのですが、でも実は結び
ついてくる問題の1つに「世界観」があります。この、我々が
経験している事象の総体を、どうとらえるか?
あくまで間接的な結びつきであって必然的なものではないので、
付録の付録」ってことにしますね。

特に、このww-1) ページは読者の中でもキリスト教徒の皆様や
スピリチュアリティに関心のある方々を対象にしています。
その辺の関心がない方々は、このページは無視なさってください
私自身はキリスト教徒なので、こうした世界観と軍事が結びつく
実例には、関心を持たないわけにいかないのですね。

Tulips / チューリップ
同じチューリップでも、1つ1つ違うから楽しい ・・・
私の昔の作品より

キリスト教徒の皆様なら ・・・

・・・ おそらく目下、報道が喧しいウクライナ危機との関連で、
以下の問題についてお聞きになってらっしゃり、不思議に思って
おられることでしょう:
・ なぜプーティンは、ここまで犠牲を払ってウクライナ侵略に
こだわっているのか?
・ ロシア正教会がこの侵略を正当化しているのは、なぜなのか??
(しかも、そのために東方正教会の少なからぬグループとの関係を
失ってしまったのにも、関わらず!)

まずは、こうした問題の裏には、ロシアやベラルーシ、ウクライナを
「キエフ大公国」に遡る1つの「ルーシ(ロシア)世界」だとみなす
世界認識がありますよね。
この問題に関して、アメリカのCNNのウェブサイトに2022年3月14日
付の記事がありました。
In Putin’s vision for the world, a medieval narrative resurfaces – CNN

これから一部抜粋・日本語化して紹介してみましょう。
< >内は、私からの補足説明ですよ。

忠誠を呼び戻すって ・・・

中世を呼び戻すって ・・・

プーティンの世界観に再浮上する中世のお話

Delia Gallagher記者、CNN

(CNN) ロシア大統領ヴラディミール プーティンはこれまでに、
ロシアのウクライナに対する戦争について、何種類かの説明をしてきた。
そのもっともらしさには、程度の差がある。その1例は、NATOが
ロシアの国境に近づいているので、ロシア人を「大量虐殺」から守る、
というものだ。さらに、ウクライナを「非ナチ化」するのだ、
という無根拠な主張もある。

一方、ロシア正教会 <ロシアに1000年以上根付いてきた、キリスト教の
教派。東方諸正教会の1つです> のトップに立つ司祭が今回の侵略を
正当化している理由は、それとはまったく異なるものだ。「ゲイ プライド」の
パレードなのである。

先週 <2022年3月6日に始まった週> <そのロシア正教会のトップである>
キリル総主教が述べたところでは、今回の紛争は大ロシア世界と西側の
リベラルな価値観との間での根本的な文化衝突が発展したものだそうだ。
その典型的な実例が、ゲイ プライドの各種の表れなのだという。
だが専門家たちによれば、このキリルの発言からは、ロシア帝国を回復
させようとするプーティンの基本的なスピリチュアル ヴィジョンに関する
重要な洞察が得られるという。このヴィジョンでは、ロシア正教会が中軸的な
役割を演じているそうだ。

このロシア正教会総主教の強硬なスタンスのため、フォロワーたちが
彼を離れている。この日曜日にアムステルダムのロシア正教会は、
同総主教との関係を絶縁すると発表した。今回のウクライナでの戦争を
受けてモスクワとの関係を遮断した司祭や教会はすでにいくつもあり、
アムステルダムはその最新例にすぎない。

 

ロシア世界

「プーティンはこの “ロシア世界“ というコンセプトを以前から押し出しているが、
このコンセプトはロシア正教に根差すものだ」とCNNに語るのは、<アメリカの
コネティカット州にある> ウェズレヤン大学で歴史学教授を務めるVictoria Smolkinだ。

Smolkinによれば、「ロシア世界とはロシア語を話す人たちがいる場所すべてであり、
ロシア教会がある場所すべてなのだとし、既存の政治的境界を認めない概念なのである」

プーティン流の「ロシア世界」をキリルも支持しており、ウクライナは歴史的にも
ロシアの不可欠な部分だと主張していると、カリフォルニア大学リヴァーサイドの
歴史学教授Georg Michels もCNNに語っている。

カリフォルニア大学リヴァーサイド ニュースのインタビューでMichelsは「今回の
戦争の発端でキリル総主教はある説教の中で、ウクライナとロシアの不可分性は
神の賜りしものだと強調していた」と述べていた。

「キリルは、この統一を破壊しようとする “悪の勢力“ を非難していたのだ」と、
Michelsは説明した。

先の日曜日、キリルはモスクワでの説教においてさらに一歩踏み込み、そうした
“悪の勢力” とゲイ プライドのイベントとを結び付けた。

この総主教によれば、ウクライナでの戦争で問題になっているのは「現代世界で
権勢を得ようとしている勢力、つまり西側の価値を根本的に拒否すること」で
あるそうだ。

… 中略 …

「俺たち仲間や」言うといて、「俺が一番偉い」って、どーゆーこっちゃ??

「俺たち仲間や」言うといて、「俺が一番偉い」って、どーゆーこっちゃ??

東方諸正教会のなかでの不調和

キリルがプーティンの戦争を支持しているのには、最近この総主教が
ウクライナ正教会に対する支配力を失ったことも関係しているようだ。

ウクライナ正教会には何世紀にもわたって、ロシア正教会と歴史的な
結びつきがあった。東方諸正教会では各地に独立した正教会がある。
ジョージア正教会、キプロス正教会、ギリシャ正教会、ルーマニア正教会、
その他だ。だが、ウクライナ正教会はロシア正教会と他に見られない特別な
関係を有していた。

2018年、すでにロシア軍はクリミア半島に侵攻していたのだが、ウクライナ
正教会はロシア正教会との関係を遮断した。これを受けて、ロシア正教の
総主教の激怒を招いた。

Michelsによれば「キリル総主教としてみれば、これは死活問題であった」

ウクライナでの戦争が始まって以来、諸正教会の間での不満はさらに深化・
拡大しつつある。

アムステルダムのロシア正教会が日曜日に発表したところでは、同教会は
今回の戦争に対する姿勢を理由にキリルならびにモスクワ総主教座との
関係を断つという。

「この決定は、関係者全員にとってあまりにも苦渋に満ち、困難なもの
だった」と、アムステルダムの「ミラの聖ニコラス教会」はその
ウェブサイトに記している。
<ミラの聖ニコラスは、3-4世紀に小アジア地域で主教を務めた聖人。
彼がよく貧者に施しをしたのが、サンタ クロース伝説に発展したようです。
ロシア正教会などと言っても、何もロシアにだけあるわけじゃなくて、
世界主要都市にはロシア系の方々もいらっしゃるのですから、対応して
正教会もあります。東京にも、文京区駒込にありますよね。私が知る限り、
日本にいらっしゃるロシア国籍の方々はプーティンを嫌っている人たちが
多いようなので、よけいな妨害行為などをしないでくださいね!
一方のウクライナ正教会も東京圏で活動してらっしゃり、月に一度か
二度ほど港区の日本聖公会 聖オルバン教会という英語の教会で、集まって
らっしゃるようです。  Православна Церква України в Японiї (stjude.jp)
日本語のメディアが取り上げた集会も、最近ありましたよね ―
東京で「ウクライナの平和のための祈り」 在日ウクライナ正教会が主催 : 教会 : クリスチャントゥデイ (christiantoday.co.jp)

正教会の司祭や執事たち300名ほど、しかもロシア国内に居住し勤務している
人たちも含めた聖職者たちが、指導者 <であるモスクワ主教> と祖国ロシア
への不服従というリスクを冒して、直ちに停戦を求める嘆願書に署名した。

ロシア正教会のAndrey Kordochkin神父はマドリードにある聖マリア
マグダレーナ大聖堂の首席司祭で、その嘆願書への署名者の一人だが、「
教会は共産党とは違って、リーダーの言葉だけが発表されるわけではない」と
語っている。

Kordochkinの指摘によれば、この嘆願書には「戦争」に当たる単語が4回
登場している。現時点でロシアのメディアでは、この単語を印刷することは
非合法とされている。

以下省略
**************************


どういう世界だ?
私の昔の作品より

上述のような「世界観」は、人によっては突拍子もない、理解できないものと
聞こえるかも。
でも、この世界をどう認識するのか ⇒ どうなっていくと見るのか
によって、政治・軍事的な事態が起きていくという現実を、我々は目に
見ているわけですね。
そこで、「西側のキリスト教」の一部は、今回のプーティンの動きを、
どう見ているのでしょうか??
その例を、ロサンジェルスに本拠を置くローマ カトリック系の報道団体、
ANGELUSのウェブサイトより抜粋・日本語化して紹介しますね。

Ecumenism as victim of war: Scholars condemn position of Moscow patriarch | Angelus News
より

キリスト教の普遍融和化(エキュメニズム)が、戦争の犠牲に ― 学者たち、
モスクワ総主教の立場を非難
Cindy Wooden | Catholic News Service

2022年3月15日

ロシアによるウクライナ侵略のため、都市が廃墟と化し、ロシア正教会と
そのエキュメニズムでのパートナーであったはずの東方諸正教会との間の
関係が崩れるリスクも生じている。

ロシア正教会のモスクワ総主教キリルは、ヴラディミール プーティン大統領と
そのウクライナ侵略を支持しており、多くの東方正教の学者たちにとって、
この指示は激怒に値するものだが、予想できたことだ。

「ロシア正教会が 、このような侵略のみならずプーティンのロシア地域に
関するヴィジョンを支持するという公式の姿勢と発言を採択したことは
不幸であり、沈黙して見過ごすわけにはいかない」 そう語るのは、
ギリシャにあるヴォロス神学アカデミーの理事長Pantelis Kalaitzidis だ。
彼はオーストリアのプロ オリエンテ財団で正教とカトリック間の対話推進
委員会のメンバーも務めている。

Kalaitzidisは「“ロシア世界”(Russkii mir)という教説に関する宣言」の
主な著者の一人でもある。これは数百名にのぼる正教会の神学者や学者たちが
署名した声明で、キリル総主教の唱えるロシアの権力や影響力のヴィジョンを
「異端」と弾劾している。学者たちによれば、この教説は宗教的な言語を
まとってはいるが、根本的に反キリスト的なものだ。

「この教説は、民族宗教的なナショナリズムをステロイド剤で強化したような
ものだ」とCatholic News Serviceに語ったのは、正教会の執事であり
イングランドのエクスター大学で神学を教授するBrandon Gallaherだ。
Gallaher は、英国の東方正教徒ローマ カトリック牧会相談(Eastern Orthodox
-Roman Catholic Pastoral Consultation)という組織のメンバーでもある。

同宣言によれば、この20年間プーティンとキリル総主教とは「神聖ロシア
(Holy Rus)という超国家的なロシア圏あるいはロシア流文明」を推し進めて
きており、これにはロシアだけでなく、ウクライナやベラルーシ、さらに場合に
よってはモルドヴァやカザフスタンまで含まれるという。しかも、全世界の
ロシア民族そしてロシア語を話す人々まで含まれる、という主張だ。

この教説によれば「“ロシア世界” には共通の政治的中心(モスクワ)、
共通のスピリチュアルな中心(「全ルースの母」なるキーフ)、共通の言語
(ロシア語)、共通の教会(ロシア正教会モスクワ主教座)、そして共通の
主教座(モスクワ主教座)があり、それらが「調和」のうちに協働し共通の
大統領/国家指導者(プーティン)を支えてこのロシア世界を統治すると
ともに、ロシア世界特有のスピリチュアリティ、道徳、文化を支持する」と
されていると、同宣言は述べている。

キリル総主教は、ウクライナ戦争はロシアが罪深い「西側」やその「ゲイ
プライド パレード」という脅威から自国を守ろうとしているだけのことだ
との主張を変えないが、これはまさしく彼流の「ロシア世界」を展開したものだ。

・・・中略・・・

「左がA国人教会、中央がB国人、右がC国人 ・・・」 「けったいやがな!」

「左がA国人教会、中央がB国人、右がC国人 ・・・」
「けったいやがな!」

 

だが1872年にコンスタンチノポリス <今のイスタンブール> で開かれた
東方正教会の公会議では、「民族・国家教会主義」を異端として排斥している。
これは教会と国家・国民の全面的な合体で、この合体教説が「ロシア世界」
という教説の中核にあり、ロシア正教会が東方諸正教会の中でも最重要の
教会と見なされるべきだと主張している本質でもある。

正教会の学者で以前にはジョージアからヴァティカン教皇庁への大使を
務めていたTamara GrdzelidzeがCNS (Catholic News Service) に述べた
ところでは、「キリルの主張は諸正教会間の関係や他教派との関係にも
複雑な問題を引き起こすはずだ。諸教会、指導者、神学者たちはすでに、
ロシア正教会の現在の立場に対する反対を示している」

・・・中略・・・

全世界の正教会、プロテスタント、カトリック各派の指導者たちが、
キリル総主教に対しその影響力を利用してプーティンに働きかけ、
この戦争をやめさせてほしいと、すでに公に表明している。

フランシス教皇や教皇庁の聖職者会議がそうした呼びかけをしてきたのか
否かは分かっていないが、ロシア総主教座との何らかのやり取りを密かに
可能にしてきたはずだと思われる。

世界教会協議会(WCC)の代表者からの嘆願に対し、キリル総主教は
「ロシア世界」という立場に固執し、「今回の戦争を始めたのはロシア人でも
ウクライナ人でもなく、西側とロシアの関係に原因があると確信している。
ロシア人とウクライナ人はキーフの洗礼盆という共通の起源に由来しており、
共通の信仰と聖人たちそして祈祷で結ばれている。そして、同じ歴史的命運を
有している」と述べた。

フィラデルフィアにあるウクライナ カトリック教会 <ローマ教皇の指導下に
あります> のBorys Gudziak 大司教がCNSに述べたところでは、ロシアが
ウクライナで行っているような戦争に関して「教会が共犯者扱いをされ、
あるいは弁解をせねばならないのは、悲涙の事態だ。これは残念ながらも
真実で、エキュメニズムの希望によっても覆い隠すことができない」

ティアテラ <小アジアにある都市。ヨハネ黙示録の2章18節に登場> と
英国の総大主教区に所属するBrandon Gallaher によれば、今回のウクライナ
戦争をロシア正教会が指示しているため、「もはやロシア正教会と一緒に
ダンスをすることはまったく不可能となってしまった」

カトリック同様、多数の正教会信徒がGallaherによると、ヴァティカンが
「モスクワ総主教座との関係を根本的に考え直してくれる」よう願っている。**********************


誤りは誤りだ!と宣告する天使
私の昔の作品より

私自身は、2022年3月現在、教派所属のないキリスト教徒でして、西側の肩を
持つつもりもなければ、東側のサイドに立つつもりもありません。ただ、
このウクライナ危機に関しては、プーティンの世界観の根本的誤りを見て
取らずにおられません。

η βασιλεια του θεου VS η βασιλεια των ανθρωπων 
(神の支配 VS 人の国)

福音書に見られる主キリストの宣教内容では、「神の支配が近い」と
されています。日本語の聖書翻訳では大抵、「神の国」と翻訳してますが。
「国」って、その起源からして、人間が作った体制ですよね。
それに対し「神の支配」は神が造り治められるもの、ですよね? 人が
作れる代物では、ありえない。
だったら、「国」なんて訳語より、「支配」の方がマシなはずですね。
特に、ヨハネ福音書18:36を見ると、ハッキリと
Η βασιλεια η εμη ουκ εστιν εκ του κοσμου τουτου
(私の支配は、この宇宙/時空/世界からのものではない)
とあります。

また黙示文学を見ると、「この時空」が終焉を迎え、新たな天地が訪れる
希望が独特の語法で描かれていますよね。たとえばヨハネ黙示録であれば、
21章の初めの部分など。

ということは・・・

・・・とりもなおさず、「神の支配」とは、
ローマ帝国による支配でもなく、
ロシア(あるいは、ルース キエフ)による支配でもなく、
かといってアメリカによる支配でも
ありません!
それらはいずれも、人間による支配でしかありませんよね。

なお、私はロシアばかりを非難したいわけじゃなくて、アメリカの
ファンダメンタリストの一部には辟易した経験があります。なにせ
レーガン時代でしたが、「悪の帝国ソヴィエトの世界支配を止めるため、
神の下の国アメリカは核武装を強化し、必要ならソヴィエトを叩くのが
使命だ」といった主旨の主張を、一部ファンダメンタリストは公然と
していたのですから。

「これが、神の正義の兵器なのか??」

「これが、神の正義の兵器なのか?? まさか!」

つまり、「国家」と「教会」とは ・・・

本質的に存在理由が「水と油」だ、ということですね。
国家は、人が作る体制で、人が人や自然界を支配しようというもの
ですよね。(したがって、環境破壊なども招きやすいことは、現実が
証明しております)
本来の意味での「教会」は、「神の支配」がキリストの復活によって
確約されており、いずれ実現するという究極の希望を、この時空に対して
知らせる集団です。

その意味で教会とは、国家という “越権行為” (人権弾圧、侵略、
環境破壊などなど)を犯しやすい権力制度に対して、「いずれ君は消えるよ、
神の支配が来るのでね」と “冷や水を浴びせかける” のが基本的な存在理由に
なります。
ロシアだけの問題じゃなくて、日本にもこの存在理由を見失ってしまった
教派が一部にあるようです ・・・実に残念です。

このへん、Wolfhart Pannenberg (1928 – 2014) という現代ドイツの世界的
神学者の著作 “Christian Spirituality” の後半に詳しい論考があったと思います。
キリスト教徒の皆様には、強くお勧めします。教文館から、日本語翻訳が
「現代キリスト教の霊性」というタイトルで出ていたと思います。

核兵器というものは、そうした「国家による越権行為」の最たるものの
1つでしょう。人類だけならともかく、他生物まで巻き添えにして滅ぼして
しまう大量破壊兵器なんて、人類には持つ資格のない代物のはずです。
そして、「核発電用」とされている原子炉も、もともとはその「越権兵器」の
製造装置であったわけです。
教会が教会でありたいのなら、これらに反対するのは、教会の存在理由から
考えて当然のことですよね。

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