s-3) (SMR) メルトダウン以上に恐ろしいリスク

 

(この固定ページ、かなり長いです! 何回かに分けてお読みくだされば。)

SMR推進勢力は、SMRならproliferation riskも削減できると主張しています。核発電を悪用して核兵器の開発や製造につながってしまうリスクも減る、という主張ですね。

その代表的な理由として、

SMRなら工場で量産し、原発現地に輸送して設置する → そのSMRの寿命に達したら、メーカーが回収できる → 核兵器に関連した活動への転用がしにくい

という主張が、よく聞こえてきます

( ? _?) そのSMRの寿命内に、当該のメーカーが倒産や解散したら、だれが回収するの??
2021年11月現在まで、SMRはほとんど売れていないそうだし ~~
という疑問は、誰もがすぐに感じることでしょう。

「あの壊れたビル、はよ何とかしなはれ!」 「所有者の会社が倒産して、皆さん夜逃げしてしまいまして~~」

「あの壊れたビル、はよ何とかしなはれ!」
「所有者の会社が倒産して、皆さん夜逃げしてしまいまして~~」


そもそもproliferation riskを日本語でなんと ~~

でもここで気づいていただきたいのですが、

英語圏では「核発電」というと、原発メーカーや推進側も上記のようにproliferation riskの軽減を訴えるほど、「核兵器への転用」が意識されています。上の黒いメニューの上部にある固定ページ b-1) その他で実例を取り上げたように、原子炉とは本来、原爆を製造するための装置の一部だったわけですから、当然と言えば当然です。

ところが。

日本では「原子力」と「核兵器」という使い分け(という言葉のマヤカシ)が浸透してしまっている現状からも分かるように、核発電は「電力 ⇔ 事故と環境」という文脈でばかり論じられ、本来の姿である核兵器がぼやけてしまっています。上の黒いメニューの固定ページ g-3) で紹介したように、とっくに自民党の石破さんが「正直な」論点指摘をしてくれたハズなのですが。

固定ページのe) で取り上げたように、「“平和利用”という社会的洗脳」にまんまと騙されてしまったのか?

そんなわけで、proliferation riskを日本語で言おうとすると、「核発電が核兵器関連に転用されるリスク」といった長いフレーズになってしまうので、英語のまま使う場合が多いのですね。ご了解願います。

日本語圏内ですら、翻訳不能フレーズが存在します

日本語圏内ですら、翻訳不能フレーズが存在します

では、SMRは本当に proliferation riskを軽減するのか??

まず、すぐにわかる問題点として:

SMRは従来の原子炉よりずっと小型で、地下に設置するものもある

これを推進側はSMRの利点として売り出しているのですが ・・・
同時にこれが、proliferation riskという点では、恐ろしい問題につながりえることは、容易に想像できますよね。
つまり、

小型の原子炉を地下に設置されたら、衛星などからは検知できない!!

という問題です。

従来の原子炉なら、衛星などから様子をうかがうことが出来ました。たとえば、Renewed activity at N. Korea nuclear reactor ‘deeply troubling’, IAEA says | Reuters
(北朝鮮の原子炉で活動再開か、深刻な懸念とIAEA)
などをご覧ください。「やかんをのせたら~~」でも、2021年9月4日に紹介しております。右端の「アーカイブ」で、2021年9月をクリックして、ページ終わりの左端にある ← Older posts をクリックしてくださいな。

従来の商用原子炉は巨大で、とても地下に建設できるようなものじゃありません。それは、福島第一の事故現場の写真などでご覧になってらっしゃるでしょう。

ところが。
どこかの独裁国家なり、「領土」を有するテロ組織なりが、以下の手に打って出ないという保証はありません。
1) 「領土」内にある人里離れた地域を「軍用」とかいった理由で「人払い」する。
2) そこにある山で「普通の」トンネル工事を始める。
3) シートで覆うなどして隠したSMRを、そのトンネル内に運び込んで設置。
4) さらに、使用済み燃料の再処理工場を地下に作る。
トンネル内で行うので、衛星からの監視不可能な場所で、Puなど製造できることになります

無論、Puだけで原爆ができるわけじゃなくて、PUREX法によってPuを兵器グレードに濃縮したり、原爆内で濃縮Puを爆発させるための implosionという技術を習得する必要はあります。原爆の威力を強化するためのトリチウムも必要です。(上の黒いメニューで、固定ページのシリーズ t-x) をご覧ください)

しかし、北朝鮮は実際に原爆を開発・製造して既に配備しています。
またSMR自体は、単に小型モジュール式ということなので、アメリカのメーカーなどから買わずとも、独裁国やテロ組織が独自に製造することは可能です。核関連の技術なら「闇のネットワーク」から購入できるわけですし。(上の黒いメニューで、固定ページ f-3) にある「・・・ カーンの「闇のネットワーク」です。」を参照)
ですから、Pu製造施設を、衛星からなどでは検知できない地下に建設できてしまう ・・・ それが、SMRの大変怖いリスクなのです。

SMRに限らず、トリウム原子炉(後日、機会あれば説明します)なども含めた「小型」原子炉には、付きまとう問題ですね。

あくまで、説明のための略図です

あくまで、説明のための略図です

WISEからの問題指摘

このSMRのproliferation riskについては、アムステルダムに本拠を置くWISEという国際団体が、優れた文書を発表してくださっています。1978年の設立で、世界の反核運動に最新の情報を提供することを目的としているそうです。
World Information Service on Energyというのがフルネームですね。

そのWISEがNuclear Monitorという雑誌のようなものを発行してらっしゃり、その4780号(2019年3月7日)で、Jim Greenという方がSmall modular reactors and nuclear weapons proliferation(SMRと核兵器拡散)という「そのものズバリ」の記事を発表してらっしゃいます。Greenさんは、Nuclear Monitor誌のエディターでいらっしゃるそうです。

Small modular reactors and nuclear weapons proliferation | Wise International

にあるその記事を、ぜひすべてお読みいただきたいのですが、例によって原文は英語です。
やむなく、私が抜粋・日本語化して紹介しますね。

抜粋といっても、かなり重要な内容なので、長い紹介になります。覚悟してお読みくださいな。ご多忙な方は、何回かに分けてお読みくだされば

まず、この記事の冒頭では「核発電と核兵器の不可分性」一般について説明しています。ありがたい! 私が「やかんをのせたら~~」で説明してきたことを裏付けしてくれるような内容です。SMRに限定したproliferationの話に入る前に、「不可分性」全般について見てみましょう。

「さて、ながくなりそうね」 私の20分クロッキーより

「さて、ながくなりそうね」
私の20分クロッキーより

核発電と核兵器の不可分性、全般

(私による日本語化 )
最初に、(表面的には)平和目的の核(原子力)プログラムと核兵器の拡散とが交じり合う場合には、概略的にどのようなパターンがあるのか、それを復習しておこう … そうした交差点にこそ、SMR業界がこれから誕生する恐れがあるのだ。それを昨年(2018年)、見事に要約してくれたのがEnvironmental Progressという団体のMichael Shellenberger という人物だ。このEnvironmental Progress は(Heedayより: 一見すると環境保護団体のような名称だが、実は)核発電推進のロビー団体だ。(2016年の設立だそうです。About Us — Environmental Progress  をご覧ください) Shellenberger は誤った情報を広めることで悪名高く。しかも核兵器の拡散を推進しているので、愚かで危険だ。だが民間か軍事かを問わず核拡散問題を分析させると、Shellenbergerは適切な分析をする。(ついでに彼の第4世代原子炉(Heedayより:超高温原子炉、融塩原子炉、ガス冷却高速中性子炉などの、現時点では研究開発中の各種原子炉)に対する批判も、適切だ)

核発電と核兵器への欲望が結びつくパターンは、核発電の60年ほどの歴史全体を貫いて見られる。Shellenberger が強調している点として、「自国で核兵器を製造するという選択肢を実現しようという意図を少なくても部分的に持って、核発電(原子力)を求めた国々は、最低でも20か国にのぼる」。

「平和的なとされている核エネルギーを求めているのだが、実はその最重要な真意は国家安全保障つまり核兵器を保有する能力があるよという選択肢を得ることだ、という場合が頻繁にある」とShellenberger は記している。Environmental Progressで分析を行った結果、 原発を現在建設中、あるいは建設しようとしている26か国のうち、23か国は現在核兵器を保有しているか、以前保有していたか、核兵器入手に関心を示したことがある。「そうした23か国には確かに国家安全保障以外にも核エネルギー利用を求める動機を有してはいるのだが、潜在的核武装能力を求めるか否かとなると、国によって異なるようだ」と、Shellenbergerは述べている。

Shellenberger はFuhrmann と Tkachによる研究を指摘しているが、その研究によると(Heedayより:その研究の時点で)ウラニウム濃縮あるいは(Heedayより:使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する)再処理(いずれも、核兵器製造に直結)を行う能力を有する諸国は31か国にのぼり、そのうち71%が潜在的核保有能力を手に入れている。(Heedayより:「潜在的核抑止」については、上の黒いメニューの g-3)、g-4) で取り上げました)
******************

「やかんをのせたら~~」をお読みいただいている皆様にとっては、復習と補強のような内容ですよね。でも、「核兵器と核発電の不可分性」については、まだまだ日本社会では認識が薄いので、今後もこうした内容は時折紹介していきますね。

「話の焦点を絞ってよ~~」 私の点描実験より

「話の焦点を絞ってよ~~」
私の点描実験より

では、ことに小型原子炉に特定したproliferation問題を。かなり長くなりますよ。

(私による日本語化)
SMRプログラムの出自は、軍事に

Kennedy Maize という人物が、2015年のPOWER という雑誌に、以下の通り記している。

「小型原子炉というものは核産業にとっては馴染みの製品であり、これは核産業がそもそも小型原子炉から始まり、そこから原子炉を大型化してきたためだ。もはやレジェンドとなった、世界初の商用発電だけを目的とした原発であるShippingport原発はアメリカのペンシルヴァニア州西部にあるが、稼働開始は1957年のことで、出力は60MW だった。アメリカ軍と当時のソヴィエトとは1950年代から60年代にかけて巨額を投じ、小型で輸送できるリモート式原子炉と船舶の推進力を生みだすための原子炉との設計に努めていた。

現在のSMR計画の多くは、そのルーツを海軍用原子炉技術に持つ。Shippingportの原子炉も、同様だった。その技術の基本にあったのはWestinghouse社(Heedayより:近年、東芝が巨大赤字を発表したときに、話題になりましたよね)の原子炉で、アメリカの最初期の原子力潜水艦の推進力として使用されていたものだ。またアルゼンチンはCAREM 25という名称のSMRを設計しているが、これも同国海軍に出自を有する。同国がこのSMRの設計を最初に公表したのは、1984年のIAEAの会議でのことだった。その後、このCAREM開発はいったん放棄されたが、2006年に再開された。アルゼンチンへの輸入天然ガス供給が限られ、価格が高騰したことを受けての再開だった。同国には、自国内のエネルギー資源として容易に利用できるものが、少数しかないのだ。

ロシアは船舶に積んだ移動原発 (Heedayより: ロスアトムの世界初の船舶型原子力発電所が完成。北極海へ航行開始 | 電気新聞ウェブサイト (denkishimbun.com) を参照) を有しているが、これは海運用技術によるものだ。その昔、ソヴィエト連邦時代に原子力砕氷船の艦隊を構築し、成功を収めたのだが、その際に開発した原子炉を活かしたものだ。ソヴィエト連邦の最初の原子力砕氷船はNS Leninという名前で、1957年に出港した。これは、Shippingport原発が商用運転を開始したのと同じ年だ。

アメリカでは、SMR業界の開発企業大手のうちの2社、Babcock & Wilcox と Westinghouseとは、ともに海軍用原子炉で長年の実績を有している」

「平和ラーメン」 「実は、軍隊からも出資してもろてますねん」

「平和ラーメン」
「実は、軍隊からも出資してもろてますねん」

小型原子炉と核兵器拡散

小型の発電用原子炉はすでに、核兵器用の核分裂性物質を製造するために使用されてきている。その例の一部として、次のようなものがある。

  • 英国のMagnox 原子炉。発電と、核兵器用Puの製造の両方を用途としていた。(Heedayより:上の黒いメニューで、固定ページ e) を参照)
  • 北朝鮮はPu核兵器の実験を実施したが、そのPuは同国の「実験用発電原子炉」なるもので製造したものだ。これは、Magnoxをそのまま真似たクローンである。
  • インドは多数の発電用原子炉を有しているが、それら(それには、小型炉であるPHWR原子炉(Heedayより:加圧重水型原子炉、軽水炉よりもPuを多く製造しやすい)の一部も含まれる)を核兵器への転用を防止するための防御措置の下に置くことを拒否している。そうした原子炉は、核兵器の製造のために既に使用しているか、これから使用する計画とみられる。

こうした歴史の現実を踏まえるなら、SMRが普及するなら核兵器の拡散を伴いうる危険性を憂慮すべきだという理由はそろっている。核兵器を開発する、あるいは潜在的な核兵器保有能力を得ることに食指を伸ばしている諸国の方が、そうした欲望のない諸国(上述のShellenbergerも、「潜在的核兵器保有に関心のない諸国は、原発建設も断念することが多い」と述べている)よりも、SMRに関心を示すだろうと予想できる。

サウディ アラビアは、韓国設計のSMARTというSMR原子炉の導入に関心を示しているのだが、典型的なケーススタディの材料になるかもしれない。また韓国は、SMRの潜在的可能性を実現するためのモデルを見出した可能性がある。つまり、抑圧的な中東の国で核兵器製造能力を身に着けることに食指を伸ばしている国と協働し、広範な技術移転を行うというモデルだ。

Holtec International 社の子会社のうち1社は積極的にSMRの軍事的役割を追求しており、アメリカの国家核安全保障庁(National Nuclear Security Administration) に対し、トリチウムの製造にSMRを使用することを提案している。トリチウムは、アメリカの配備核兵器の破壊力を強化するために使用するものだ。(Heedayより:上の黒いメニューで、固定ページ t-x) シリーズで説明)

他方、アメリカのまた1つのSMRメーカーであるNuScale Power社は、倫理的基準を高く設けていると主張している。2013年、NuScale社の最高商業責任者(chief commercial officer)は、政情不安定な諸国に同社の原子炉を販売するつもりはないと述べた。だが2019初頭、NuScale 社はあるホワイトハウスでの会合に参加したのだが、そこで討議された議題の1つとして、サウディ アラビアに核発電を販売する可能性を討議していたのだ。中東という政情不安の地域において、核兵器を欲しがる国の1つだ。

アルゼンチンではCAREM というSMR 採用原発の建設が進んでいるが、これは本来海軍のプロジェクトで、原子力潜水艦や船舶の建造をもともとは目指したものだった。2010年にはその野望が再浮上した。世界原子力協会(World Nuclear Association)の報告には、こうある。「アルゼンチンの国防省は、海軍船舶の一部の推進力として原子炉を利用することを検討していると述べた。・・・ そうした要件に見合う原子炉を供給できるサプライヤー企業の一例として、核技術企業のInvapが考えられている。この企業は研究用原子炉数基を輸出してきており、CAREM原発の設計をした企業でもある」
*****************

見えにくくされていても、不可分です

見えにくくされていても、不可分です

大変長い抜粋になっており申し訳ないのですが、これからSMR推進の主張に対抗していくためには、この程度のことは学んでおかないと。

では、いくらか中略しながら、抜粋紹介を続けます。

SMRは、核拡散をたくらむ者たちにとっては、好都合

・・・(中略)・・・ 核兵器を拡散しようとしている者たちにとって、(大型の)発電用原子炉と研究用原子炉(小型)の、どちらが好都合なのかという議論が長年続いてきている。研究用原子炉は比較的安価(平均的には、数億円)なのだが、Puの産出量も小さいものが多い。発電用原子炉は高価だがPuを大量に生産できる。(さらに、照射サイクルを短縮して稼働すれば、兵器グレードのPuを大量に算出できる)

SMRは核兵器の拡散に努める連中には、好都合な技術となりえる。ギガワット単位の原発ほどには費用が掛からず、しかもそれなりの量のPuを算出できるのだ。1990年代初め、トルコ原子力機関(Turkish Atomic Energy Authority)のディレクターが述べたところによれば、アルゼンチンの発電量25 MWのCAREM SMR原子炉は設計を見ると「発電に使うには小型すぎ、研究や訓練には大型すぎる。だが、Pu製造には大変適切だ」

ちょうどいい!

ちょうどいい!


各種設計のSMRに伴う核兵器拡散リスク

IAEAの推定によれば、SMRの設計としては50種類ほどがあるという。それらはまだ紙の上での設計にすぎないので、ここでは各設計の実用化においては5種類の実用形態があると仮定しよう。(たとえば、高速中性子を照射するのか、それとも減速材を使って減速した中性子を使うのか、燃料の違い、核燃料を一度使用したら地下などに廃棄するのか、それとも再処理して再使用するのか、などなど)すると、全部250種類ほどの実用形態があることになるので、その250種類それぞれについて、核兵器拡散リスクを検討していこう ・・・ いや、そんなことは、やってられない。全般的に言える問題をいくつか挙げるに、留めておこう。

傑出して重要な、指摘せねばならない問題点として、いずれの設計のSMRのどのような形態であっても、必ず核兵器拡散リスクを伴う。英国の王立協会(Royal Society)によれば、「(Heedayより:使い捨てであれ、再処理であれ) 核燃料サイクルで核兵器拡散リスクを伴わないものなど、存在しない。核物質と技術とは、発電など民生と核兵器の両方に使用できるものだ。その二重性をなくすことは、不可能なのだ」

Ramana と Mianという著者たちは、2014年のある記事の中で、以下の通り述べている。

「核兵器拡散リスクは ・・・ 技術的要因とそれ以外の要因の両方に応じて変動する。日技術的な要因は多くの場合、原子炉のタイプの選択とは関係しない。それに対しSMRとその本質的な特徴とは、核兵器拡散リスクの技術的側面と核実に結びついている。iPWR [統合加圧水型原子炉というSMRの1種] と高速中性子原子炉の場合、既存の軽水炉よりも核兵器拡散リスクは増大する。これは基本的に、発電量単位当たりの産出Pu量が大きくなるためだ。HTR(高温ガス冷却原子炉)の場合も、拡散リスクは増大する。これは、このタイプのSMRで使用する核燃料は、Uの濃縮度が高いからだ。ただし、使用済み燃料が再処理しにくい形態になるので、その面では拡散リスクは軽減される.」

発電単位当たりのPu産出量が ・・・

発電単位当たりのPu産出量が ・・・

Glaser, Hopkins, Ramana という3名は、従来の標準的軽水炉、提唱されている統合型加圧水原子炉のSMR(iPWR)、そして提唱されている長寿命炉心のSMR(LLC)の核兵器拡散リスクを比較検討した。LLCは一度核燃料を装填すると、二十年以上燃料交換の必要がなくなる。(LLCは通常、高速中性子を照射する原子炉で、冷却剤としてはヘリウムやナトリウム、あるいは鉛や鉛ビスマスのような溶けた金属の共晶混合物を用いる)

この3名は、さらに次のように記している。

「iPWR原子炉では、ギガワット規模の大型原子炉と比べ、ウラン鉱石にも濃縮作業にもより厳しい条件が求められそうだ。その原因は、iPWRでは核燃料の「燃焼率」(正確には、核燃料のうちどこまでが実際に核分裂して発熱するか、という割合)が小さいことにある。SMRでは炉心のサイズが小さいことと、炉心を丸ごと入れ替えるという管理方式であるため、この「燃焼率」の低さという問題は改善しにくい。こうした特性のため、核兵器拡散につながるリスクはさらに増大する。そのリスクを抑制するには、原子炉と拡散防止設計での技術革新と、核燃料サイクルに関する制度的革新とが必要になる」

「LLC(上述の長寿命炉心)を採用した高速中性子型SMR原子炉の場合なら、ウラニウムもウラニウム濃縮での要件も軽減される。だがこの場合には、使用済み核燃料の中の分裂性物質の量が多くなるため、再処理をしようという誘惑が強くなってしまう。さらにその使用済み燃料中の分裂性物質の多さのため、各種の核兵器拡散シナリオの中で、実際に核兵器が拡散してしまう可能性も高くなってしまう ・・・」

英国議会科学技術部(UK Parliamentary Office of Science & Technology)による報告書は、一般論として下記のように述べている。

「SMRの採用が広まった場合、核兵器拡散リスクが増大するのか、軽減するのか、その程度については不確定性が見られる。一部のSMRでは従来の原子炉よりも核燃料の交換頻度が減り、拡散リスクの高い時期が減少することになる。だが、統合化の進んだ設計(integral)では検査が困難になり、さらに一部のSMR設計では従来の原子炉よりも濃縮度の高いウラニウムを使用する。これらはどちらも、核兵器拡散リスクを増大する」(Heedayより:2018年7月の ”Small Modular Nuclear Reactors” という報告書です。 POST-PN-0580.pdf (parliament.uk) でご覧になれます)
*********************

地下のSMRに到達するだけで、目が回る~~

地下のSMRに到達するだけで、目が回る~~

では、少し飛んでウラニウム濃縮との関連を。

(私による日本語化)

ウラニウム濃縮

(Heedayより:少し上の「各種設計のSMRに伴う核兵器拡散リスク」という箇所で引用した)Ramana と Mianは、1つの種類の核兵器拡散リスクを削減しようとする努力のため、他の種類の拡散リスクが増大してしまう危険性を指摘している。

「核兵器拡散リスクの軽減という課題からも各種の要件が発生するが、その個別の要件と要件が対立しあう場合もある。原子炉の中にある核燃料を核兵器用に悪用してしまうリスクを軽減するための方法の1つとして、燃料交換の頻度を下げるというものがある。燃料交換の際に、使用済み燃料が原子炉から取り出され、悪用される危険性が増える。そのため、SMR設計を行っている各社の中には、一度装填した燃料の使用期間を長くしようとしている企業が多い。だが、原子炉の中にある核燃料の使用期間を延ばすためには、そもそもその核燃料のウラニウム濃縮度を高めるか、プルトニウムを混ぜるかする必要があるのだ。

ウラニウム235の濃度が20%を超えるような濃縮を要求するSMR設計さえ、あるのだ。この20%というのは、IAEAがウラニウム関連物質を、核兵器製造のために「直接に使用可能」と区分する際の閾値としている数値だ  ・・・(中略)・・・」
*****************

こんなことになりませんように・・・

こんなことになりませんように・・・

JCPOAの再建交渉などで、イランが20%をはるかに超える濃度のウラニウム濃縮を行っていることが世界的には大問題とされました(日本語メディアの扱いは小さかった)が、それがなぜなのか、お判りになりますよね。

では、本文に戻ります。アメリカ国内情勢の話の箇所にまで飛びます。

(私による日本語化)
アメリカで愛国を装う軍拡強硬論者たちは、アメリカ国内でのウラニウム濃縮能力を再建せよと、怒りに満ちたロビー活動を展開している。(そして、明らかに成果を上げている) これはアメリカ海軍が(潜水艦や空母などの)原子炉の燃料交換の間隔を長くしたがっているため、使用する濃縮ウラニウム濃度をさらに高く したいという長年の「必要性」があり、それに応えるため、また核兵器に必要なトリチウムを製造するため、(商用)原子炉で使う低濃縮ウラニウムも国内で生産できるようにすべきだという「必要性」にも応じるためだ。
***************

トリチウムの核兵器での必要性については、上の黒いメニューで固定ページのシリーズ t-x) で説明しております。

次にこのWISEによる記事も、The Union of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟)のEdwin Lymanさんの論考を紹介しています。「やかんをのせたら~~」でも、上の黒いメニューの固定ページs-2) で取り上げましたが、そのLymanさんによる報告書は20ページもあるものだったので、私は下記の箇所は紹介しなかったと思います。

(私による日本語化)
プルトニウム使用原子炉

…(中略)・・・

「憂慮する科学者同盟」(Union of Concerned Scientists) のEdwin Lyman氏が、こう記している。「名称だけでは分かりにくいかもしれないが、こうした施設そのものは高速中性子炉の実験炉であり、核兵器にも使用できるPuを燃料として用いる。従来の軽水炉と比べ、高速中性子原子炉は安全性に劣り、費用が掛かり、稼働や修理も難しい。だが高速炉という技術の最大の問題は、Puなど兵器にも使用できる物質を必要とするものが多い、ということだ。当然、核テロリズムにつながるリスクが増大する」
*******************

以前の固定ページでも述べましたが、SMRというのは単に「小型モジュール式原子炉」ってことでして、決して原子炉の方式とは関係しておりません。たとえば、PWR(加圧水型軽水炉)もあれば、MSR(融塩原子炉、後日機会あれば説明)、はたまた高速中性子炉(いわゆる高速炉)もありえるわけですね。

( -_-)"">

( -_-)””>

(私による日本語化)
危険防止と安全策

・・・(中略)・・・
(WISEによる本文では、「やかんをのせたら~~」固定ページ s-2) でも一部紹介した、憂慮する科学者同盟が公表しているSMRの問題指摘、”Small Isn’t Always Beautiful” からの引用を続けて、締めくくっています。)

「アメリカ原子力規制委員会(NRC)のメンバーたちは、各種SMRの設計上の特性も考慮に入れ、SMR原子炉の(テロなどの)攻撃に対する脆弱性を軽減するための新たな手法提案に対して、心を開いているようだ。mPower社をはじめとするSMRメーカー各社が、安全保障面での規制を免れようとして訴える基本的な特性として、地下への設置がある。地下に設置すれば、ある種の攻撃シナリオに対する保護は強化できるが、すべてのシナリオというわけではない。原子炉の格納設備に対する航空機の直接衝突なら、地下設置の原子炉では考えにくいであろう。だが、そうした衝突のため火災が発生し、爆発が起きたら、危機的状況となる。(Heedayより:原子炉そのものを地下に設置しても)蒸気タービンや(蒸気の)復水装置、電気の配電装置、冷却塔といった一部システムは地上に設ける必要がある。したがって、攻撃を受けやすい。原発では、通常の作業人員も緊急時の人員も適切に出入りできる進入路と退出路とが必要だ。換気用のシャフトや機材の搬入出に使う機材出入口なども、侵入者にとっては忍び込む経路となりえる。さらに、SMRメーカー各社が主張しているようにSMR設置現場では必要面積が従来よりも小さくて済むというのであれば、敷地の境界は従来よりも原子炉に近い位置にあることになり、侵入が発生した場合に警告を出せる時間が短くなる。各種の予備システムや安全システムの間の間隔も不充分となってしまう可能性がある。

要するに、原発内部の様子をよく知り決意を固めた攻撃者であれば、地下への原子炉設置などの安全手法を迂回できる侵入攻撃シナリオを考案する公算が大きい。侵入者が人質を手に入れたというようなシナリオの場合、緊急対応人員や原発敷地外からやって来る警察官に対しては、原子炉が地下に設置されていることが妨害要因となり、侵入したテロリストにとって有利に働く可能性もある。このように、原子炉設計にどのような本質的安全策を講じたとしても、頑強で柔軟性にも優れた稼働時安全対応策が必須なのである」
*****************

なお、原子炉構内への侵入については、日本語メディアでも今年は頻繁に報道がありましたよね。特に、TEPCOの柏崎刈羽原発のずさんなテロ対策ですね。

それと、日本の電力会社や政府機関では、「侵入したテロリストが、原発の建物内部に人質を取って立てこもる …」なんてシナリオは、想定しているのでしょうかねえ??日本語では、その種の問題指摘を私は聞いたことがないのですが。。

「ああ、つかれた~~」
私の点描練習より

なお、
( ・_・) SMRのproliferation riskは分かったけど、日本に限ってはそれを原爆製造に利用するとは、思えないけど?

といった反論があろうかと思います。しかし、SMRの導入実績が増えれば、当然メーカー各社はSMRをもっと売ろうとしますよね。なにしろ、「量産型」の原子炉ですから。たくさん売らないと、充分な利益が出ない。そうして世界でのSMR販売が軌道に乗ってしまうと、上述のようなproliferation riskも一緒に増大してしまいます。

proliferation riskというものは、「自国だけ、そのリスクを減らせばよい」なんてもんじゃなくて、この惑星に存在しては困るのです。実際、北朝鮮の核兵器は現在の日本にも、不安を引き起こしているじゃないですか。

  • それと、実際にテロリスト組織が核兵器を保有してしまった場合を想像してください。(考えたくもありませんが)

テロリズムという行為の目的・性格からいって、その組織が保有する核兵器は、きわめて小型のもの1つだけで、事足りるのです。

なとえば、
ニューヨーク中心部で超小型核爆弾による自爆テロ (これ1回だけ)

その組織が、「次は東京だ」と声明発表
(実際には、もう核爆弾を持ってはいないのですが、それは世界には知られていない)

日本政府は、どう対応できるのでしょう???
おそらく、東京から脱出するしか方法はない。
でも、1,000万人を超える住民が、どこに逃げられるのか??

日本全体がパニックに陥りそうですよね。
こうしたリスクを軽減するためにも、核発電と核兵器の不可分性を社会全体で認識する必要がございます。

「LNGが高騰している、脱炭素化も焦眉の急だ ⇒ SMR普及を」といった発想を、私が「短絡」と呼ぶのには、こうした深刻な認識もございます。

ではこれで、SMRの各種危険性に関する固定ページのシリーズを終わります。
でももし将来、また取り上げる必要が発生したら、固定ページ s-4) を作成しないといけなくなるかも。

***********************
2022年1月追記

SMRに限らず、原発のセキュリティ警備費用は、「原発の費用」に
必ずしも算入されていない!

エネルギー問題の専門的ストラテジストの方が、SMRの新設に伴うセキュリティ警備
の費用に関する問題を指摘してらっしゃるテキストを、見つけました!
Small Modular Nuclear Reactors Are Mostly Bad Policy – CleanTechnica
にあるMichael Barnardという方による、
Small Modular Nuclear Reactors Are Mostly Bad Policy
というものです。
全文の日本語翻訳が
小型モジュール式原子炉は、たいていが悪策だ | 連載コラム | 自然エネルギー財団 (renewable-ei.org)
にございます。

「SMRは小型なので導入しやすく、大量の発電を行うには同じモジュールを
増設していけばよい」ことが、SMRの「大きな利点」として喧伝されている
現状ですが、これはとりもなおさず
「発電容量を増やすほど、原発の警備がややこしくなる」ってことですよね。

そして、こうした警備の費用は、「原発の必要経費」に必ずしも算入されて
おらず、その自治体や国家政府などの負担とされているのです。

この問題を、Barnardさんも指摘してらっしゃいます。
原文から引用します。

ええ~~ 原文で読めっていうの??
はい、そうです。
私の昔の作品より

Third, both remote communities and brownfield coal generation plants have major security exposures. As nuclear technologies and fuels are highly
proscribed and limited due to nuclear non-proliferation strategic goals, and as concentrated radioactive material is highly desirable for terrorists for dirty bombs,
the entire supply, operational and waste chain requires significant overlapping
circles of defense.

These requirements don’t go away because the nuclear reactors are smaller.

Per reactor allocation of all security costs

And these security costs are big, and mostly hidden in federal, state, and municipal subsidies. Remote areas still require these additional security costs, and
they will likely be higher simply due to the additional challenges of securing
remote areas with high transportation costs. Brownfield coal generation sites
don’t become more economically viable with massive security upgrades
and unproven technologies.

日本語訳は、上述の日本語サイトをご覧くださいな。

原子炉を多数導入するってことは、とりもなおさず
テロリストがダーティボムなどの裁量を入手できる場所を増やす
ということに他なりません。
ですから、厳重な警備は不可欠です。

ついでに言っておくと、放射性廃棄物を何百年も保管する
地下処分施設もいずれ必ず必要になりますが(現在は、Onkalo
のみ)、それも同じ理由から厳重な警備が必要になります。
さて、その警備費用も、市民の税金で賄うのでしょうかねえ??

なお、例としてアメリカでの原発の警備がどれほど大掛かりなのかは、
上の黒いメニューでページ g-5) に短く紹介しております。

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