al-1) (革新軽水炉) イントロとAP1000

(2022年9月4日)

実は、「やかんをのせたら~~」 のフォーカス外
「革新軽水炉」 各種については、短く

AP1000, ESBWR, EPR, ATMEA, APWR, ABWR といった
「革新軽水炉」 については、触れてきませんでした。
理由は単純で:
・ 「やかんをのせたら~~」 は、核発電の軍事リスクに
焦点を絞ったウェブサイトです
・ 「革新軽水炉」 各種は、いずれも従来のPWRやBWRに
safety by design つまり 「設計段階から、事故対策を考えた」
対策を講じたものです。
つまり、proliferation risksなどを特に考慮したものじゃ、初め
からないのです。
・ したがって、「やかんをのせたら~~」 で今まで 「革新
軽水炉」 を扱わなかったのは、当然の帰結です。
単純な三段論法ですね。

「新型軽水炉なら、安全 ・・・」

「新型軽水炉なら、安全 ・・・」

これに対し、「やかんをのせたら~~」 で取り上げてきた
「未来の原子炉」 各種、例えばIFRでは、開発者の方々の
論文など読んでみると、proliferation risksを大幅に軽減できる
という趣旨の主張が (現実にその通りか否かは、別にして)
はっきりと展開されています。(上の黒いメニューで if-3) 参照)
ですから、本ウェブサイトでそうした主張が本当かどうか、
論じてきました。

一方、「革新軽水炉」 各種では、軍事面のリスクが最初から
問題にされておらず、メルトダウンなどの事故への対策を考えた
設計になっているわけですね。ならば、本ウェブサイトでは
本来なら、取り上げないのが当然です。

ところが!

GXが求める日本の原子力政策の大転換 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)
などでも報道されているように、岸田政権は新型原子炉の
開発や導入を訴え始めています。
その新型原子炉のうち、本サイトで今までに取り上げたような
ものは、多くがまだ開発中です。
すでに実用化されているものは、ほとんどが 「革新軽水炉」 と
呼ばれるものです。
つまり、革新軽水炉は、近年中にも新設される恐れが日本でも
生じてしまった、というわけですね。

革新フィードだよ~~ 「大して変わってないよ!」

革新フィードだよ~~
「大して変わってないよ!」

なら、反原発団体などから、革新軽水炉の問題点を指摘する
声が上がってしかるべき ・・・
・・・ なのに、聞こえてきませんよね??
ああ~~
・ 11年前の事故の被害は今も消えたわけじゃないので、
それはそれで訴え続けるべきです。
・ でも同時に、こうした新たな展開にも対応を続けないと、一部の
原発擁護論者がすでに 「こそこそ」 と言っているように、
私たち反原発派は 「11年前の遺物」 になってしまうでしょう。
社会運動である以上、社会の動きに合わせて/それを
先読みして、前に進みましょうよ。

仕方がないので、「やかんをのせたら~~」のフォーカスから
外れた問題ですが、「付録」 として革新軽水炉とその
「事故危険性問題」 とを、短く紹介しておくことにしました。
原子炉工学の問題系なので、あくまで詳細は原子炉工学が
専門の方々にお尋ねくださいね。

では、その「革新軽水炉」 シリーズの最初は、Westinghouse社の
AP1000です。

なんかあったら、あのバケツが ・・・

なんかあったら、あのバケツが ・・・

**********************
Westinghouse社のAP1000、短い紹介

まず、私の予測が外れた件

2011年~12年ごろ、私はAP1000が 「新世代の、安全な
原子炉」 だというファンファーレのもとで、日本政府に
推されて登場する可能性を憂慮しておりました。
・ 日本政府は、福島第一の事故1つくらいじゃ、
原発推進をあきらめないだろう (上の黒いメニューで、
g-3), g-4) 参照) → この予測は、いかんせん2022年現在、
的中してしまいましたよね。まったくもう、事故の被害者の
立場など、けろっと忘れてしまえる政府なのですね!
・ そのため、「新型原子炉なら、安全ですよ」 と主張して、
近未来には革新軽水炉やSMRなどを、20年、30年先には
MSRやTWR、IFRフォロワーなどを導入しようという動きが
登場するだろう。 → この予測も、2022年現在、的中して
しまいました。(一例として、上の黒いメニューで s-0) 参照)
・ ただ、そうした 「革新軽水炉を導入しようぜ」 って動きは、
2015年前後には大きく出てくるだろうと、私は予測して
おりました。 → この予測は、外れました。実現には、さらに
6年ほどかかったわけですね。

この外れた予測で、私が想定していた革新軽水炉の代表格が、
Westinghouse社のAP1000だったのですね。これは、
・ 2011年当時、すでに中国でAP1000が実用化されつつあった。
・ 当時、まだ東芝がWestinghouseを買収して6年程度でした
ので、東芝はAP1000を売りたかっただろう。
という2つの要因によるものでした。

「うちの子会社の製品、買っとくれやす」

「うちの子会社の製品、買っとくれやす」

けれど

6年ほど遅れたものの、ご存じの通り今の日本政府は
「安全な新型原子炉の開発・導入」 を掲げていて、その
新型原子炉の中には、新型軽水炉の1種であるAP1000も
候補の1つとして含まれているようです。(上のリンク先参照。
ただしそこでは、AP1000は最終候補に残ってはおりませんが)

そんなわけで、この 「革新軽水炉のシリーズ」、まずはAP1000
から始めますね

AP1000の、どこが新しいの?

簡単に言えば、
1) passive safetyを取り入れた
2) メルトダウンに陥った場合に備え、コリウム受け皿を設けた

このうち、2) の方は誰にでもわかりますよね。メルトダウンで
炉心が溶融すると、その溶けたドロドロ (コリウム) がどこに
流れるか、分かったもんじゃありません。(現在の福島第一の
惨状を見ても、わかりますよね) だから、巨大な受け皿を設けた、と。

1) のpassive safetyとは?
一般論としてはpassive safetyとは、作業員による介入が
なくても、重力や流体の対流などの 「自然な」 作用で
危険を防止・軽減できる能力のことです。
AP1000の場合、要するに一種の 「巨大な水入りバケツ」 が
格納容器の上にあって、イザって場合には、ポンプなしでも
重力で水を落として原子炉を冷却してくれる、ということです。
ポンプで水を吸い上げて放水しなくても、72時間はこの
「バケツの水」 が原子炉を冷やしてくれる、というわけ。

passive水洗トイレだよ~~ ジョンジョロリ~~ン (お下劣なたとえ話、すいません! あくまで、ジョークですよ)

passive水洗トイレだよ~~ ジョンジョロリ~~ン
(お下劣なたとえ話、すいません! あくまで、ジョークですよ)

では、Westinghouseそのものによる特長説明を

紹介しましょう。
ただ、あくまでAP1000は結局のところPWRの一種だ、という
明白な事実を忘れないでくださいね。
要するに 「革新軽水炉」 とは、PWRまたはBWRの改良炉の
ことですからね。

まずは、開発者である Westinghouse 社自体による説明を、
AP1000 Nuclear Power Plant Safety | Westinghouse Nuclear
例によって、私の日本語化で。
< > 内は、私からの補足説明。

***************
AP1000 原子力発電所 ― passive
safetyシステム

従来型ないし既存の軽水炉 (LWR) と比べてpassive safety採用
原子炉の安全面での大きな利点の1つとして、オペレーターの対処や
原発構内・外部のAC電源に依存せずに、事故被害の緩和能力を
長期間にわたり保持できる。

PWRの一種であるAP1000では、 広範囲に解析と試験とを実施した
passive safetyシステムを採用、原発の安全性を高めている。
アメリカのNRC (原子力規制委員会) ならびにその原子炉安全
諮問委員会 (ACRS) ではそうしたシステムを徹底的に検査しました
が、その結果アメリカNRCの単一故障基準を満たしており、さらに
TMI事故で得られた教訓や一般的な安全関連基準にも合致している
との判断を得ている。

AP1000 原子炉のpassive safety システムでは、設計で想定して
いる事故の緩和には、オペレーターによる対応を必要としない。
Passive safety システムが安全機能を作動させる上では、
重力や自然な流体対流、圧縮ガスといった自然の力を利用している。
ポンプやファン、ディーゼル装置、冷却装置、その他の人為的に
作用する機械類を利用しない。例外として、passive safety
システムを自動的に設定・作動させるための少数のバルブが
あるが、これらもシンプルなものである。

安全のための装置が少なくて済むため、そうした装置を格納する
ための地震カテゴリー I  <アメリカNRCの用語で、原発立地地域
での考えられる最大の地震ストレスに耐えられるよう設計・建設
された建物やコンポーネントのこと> の建築物の容量が小さくて済む。
実際、安全のための装置の大半を格納容器の内部に収めることが
でき、格納容器を貫通する <パイプやケーブルなど> が減らせる。

AP1000原発のpassive safetyシステムの例:

  • パッシブ炉心冷却システム (PXS)
  • 格納容器の絶縁
  • パッシブ格納容器冷却システム (PCS)
  • メイン コントロール ルームに、緊急事態時に寝泊まり
    できるシステム
  • 炉心補給水タンク (CMT) による、安全のための高圧注水
  • 蓄積装置による、安全のための中圧注水
  • IRWSTからの低圧原子炉冷却注水
  • パッシブな残熱除去
  • 自動減圧システム

***************
以上が、上記ページでのWestinghouseの主張なのですが、どうも
これだけじゃ具体的にどんな利点があるのか分かりにくいですね。

要するに、どこが新しいねん?? はい、ポケットに入れなくても浮かんでついてくるんです! そんなアホな。

要するに、どこが新しいねん??
はい、ポケットに入れなくても浮かんでついてくるんです!
そんなアホな。

そこで、やや古いウェブページなのですが、
次のウェブページの冒頭にある図を紹介しますね。
その図の右側にある説明書きだけを。
やはり私の日本語化、< > 内は私からの補足説明です。

China will supply Westinghouse AP1000 components to Projects Worldwide | NextBigFuture.com

(2012/03/15、Brian Wang)
*****************

THE AP1000
世界に440基 <この図を作成した当時の数値> ある
原子炉のうち、およそ半数はWestinghouseの設計に
よるものです。50年間にわたる稼働から学んだ教訓が、

この新型のAP1000 (1,150MW) 原子炉のpassive safety
機能に活かされています。
AP1000は第3+世代 <下記の * 参照> 原子炉としては
最初の、アメリカ原子力規制委員会から最終設計認定を受けた
原子炉です。

エアーヴェント
格納容器の最上部にあるダクトが、外部から冷たい空気を
引き入れます。格納容器の壁面に沿ってその冷気が流れ、
蒸発熱による冷却を加速します。この壁面の温度は、100Cに
達する場合すらあります。そして、原子炉最上部にある
チャネルから熱を放出します。

水タンク
格納容器のすぐ上に、約310万リットルの水タンクを設置。
外部電力供給が途絶えた場合、このタンクから水が下に流れ、
格納容器壁面を冷却します。このシステムによる冷却は
72時間続き、その後は緊急用発電機によるポンプが給水を
行います。

対テロ防衛
2001年9月11日のアメリカでのテロ攻撃を受け、新設
原発には大型航空機の衝突に耐えられることが、NRCにより
要求されています。AP1000のシールド構造物は90©以上の
厚さがある強化コンクリートでできており、その両側に約1.9㎝
の鋼鉄の壁が配されています。

使用済み核燃料プール
これは既存の原発と同様ですが、使用済み核燃料などは
分厚いコンクリートの壁に守られたプールに保管されます。
AP1000の主な安全性の向上点としてはパッシブ配水
システムがあり、外部電源が途絶えると自動的に作動します。

原子炉収納部の水充満
メルトダウンを防ぐには、原子炉を水の中に沈めておく
ことが不可欠です。過酷事故が発生した場合、オペレーターが
操作をすれば、原子炉の収納部を水で満たすことができます。

コントロール ルーム
緊急事態の場合、AP1000のコントロール ルームには
最大で11名の操作員が3日間、安全に滞在できます。
高圧エアー ボトルによってコントロール ルームと
原子炉の間には圧力の差が保たれ、放射性の汚染物質や
蒸気はコントロール ルームに入りません。
**************

まあ、ざっと特徴を見ると、上記のとおりです。

事故でエアタンクが破裂 ・・「こないなったら、どないすんねん??」

事故でエアタンクが破裂 ・・「こないなったら、どないすんねん??」

賢明なる読者の皆様ならもうお気づきのとおり、

?????
エアーヴェント
「外部から冷たい空気を引き入れ」 る以上、外気との
接続部があるってことですよね? ということは、
原発内部の放射性物質が外気中に漏れ出す可能性も、
否定できません。

水タンク
「72時間続き、その後は緊急用発電機によるポンプが給水を」
するってことは、福島第一大災害の場合のよぅに、その緊急用
発電機が使えなくなった場合は?

対テロ防衛
外部からぶつかってくるものだけを考えていては ・・・
上の黒いメニューでページ g-5)、g-6)参照。

使用済み核燃料プール
上の 「お水を72時間ジョンジョロリン」 にしてもそうですが、
それなりに改善はみられると私は見ます。
私は間違いなく反原発・反核兵器派ですが、他人がやった
ことで改善や向上が認められれば、それは評価します。

原子炉収納部の水充満
これはオペレーター操作によるもので、passive以外の
安全策ですね。
必要時に、確実に作動することを願います。

コントロール ルーム
高圧エアーボトルが正常な場合には、コントロール ルームに
担当者さんたちが3日間滞在して、対応ができるわけですね。
では、エアーボトルが破損した場合には??
?????

「エアーヴェント」 から 「コントロール ルーム」 までを読むだけで、
上述のような問題指摘ができると思います。
その程度の理解や知識のある反核運動が、これからは
必要になるでしょう。

AP1000に関するの他は、日本語Wikipediaに英語版
記事からの翻訳があるようです
AP1000 – Wikipedia

では、次回のこのシリーズでは、ABWRを。

20-minute croquis Moms are great!
「世代」といえば・・・
このクロッキー会モデルさん、明らかにお母さんでした。
とても素敵なお母さんでしたよ
私の20分クロッキー

* 原子炉の 「世代」
簡単にだけ言っておきますと

第1世代 ・・ 最初期のもの
アメリカのShippingport (世界初の商用原発、1958年運転開始)、
英国のMagnox (1956年に稼働開始 ・・ 純然たる商用ではなかった、
上の黒いメニューでページ e) を参照)
その他

第2世代 ・・ 現在の世界で主に使用中のもの、BWR、PWR、
CANDU、東欧のVVERやRBMKなど

第3世代/第3+世代 ・・ ABWR (大間原発や柏崎刈羽)、
フランスのOranoのEPR、AP600 (AP1000 の前身、
したがってWestinghouseはAP1000を第3+ と + を
つけて呼んでいるわけですね) など

第4世代以降 ・・ 本ウェブサイトですでに取り上げた、
MSR、TWR、IFRフォロワーなど

まあ、ざっとこんな感じです。

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