2022年10月
革新軽水炉のシリーズ、今回はESBWRです。
しつこいようですが、「やかんをのせたら~~」
のフォーカスからは外れたシリーズです。
日本政府が新型原子炉の開発 ⇒ 原発回帰 を
唱えているのに、新型原子炉の問題指摘が国内
の反原発団体などからあまり聞こえてこない
ので、やむをえず 「革新軽水炉」 の事故
危険性に関する問題点を短く紹介している
わけですね。
本来なら 「やかんをのせたら~~」 では
proliferation risksなどの軍事関連リスクを
扱うのですが、「革新軽水炉」 は要するに
BWRやPWRの改良型なので、proliferation
risksについてはBWRやPWRと本質的に
変わらないのですね。
そんなわけで、このシリーズでは革新軽水炉
各種の事故リスクを短く紹介しています。
で、ESBWR
Economic Simplified Boiling Water Reactorの略で、
やはり、BWRの改良型です。
主な改良点は、次の2種類:
1) 核燃料のメルトダウンが発生した場合、それを
冷やすBiMACという独自のメカニズムがある。
2) 次の4系統のpassive safety システム
・ Automatic Depressurization System (ADS)
・ Gravity Driven Cooling System (GDCS)
・ Isolation Condenser System (ICS)
・ Passive Containment Cooling System (PCCS)
では、BiMACからごく短く紹介します。
もう少し詳しくは、
– Containment structures of U.S. nuclear power plants (ebrary.net)
をご覧くださいませ。
BiMAC、ごく短く (Basemat Internal and Arrest and
Coolability)
ESBWR. – Containment structures of U.S. nuclear power plants (ebrary.net)
のP3の説明を、私がごく短く要約してみます。
「ベースマット内部および溶融物捕捉・冷却」
という辞書訳になりますね。(訳が分からない
ですが)
つまり、原子炉の圧力容器のすぐ下に耐熱性
コンクリートの 「下敷き部分」 があって、その
中には冷却水用パイプも通っています。この
パイプ、上部にあるGDCSの水プールに
つながっています。炉心のメルトダウンが発生した
場合、熱電対という温度計が解け落ちた核燃料を
検知、上述のパイプの弁が開いて冷却水が
「溶融物」 を冷却する、という仕掛けです。
このBiMACは、EDBWR独特のメカニズムです。
で、これってやっぱり、「メルトダウンがあり得る」
ことを前提にしていますよね?
私はなにも、原発推進勢力のやることを何でも
かんでも馬鹿にするようなことはしません。
福島第一メルトダウンの後、デブリが大量に行方
不明になっている現状を考えるなら、コア
キャッチャーやBiMACのような工夫は、それ
なりに改善への努力であることは認めます。
でも、要はメルトダウンがあり得るという前提に
立った改善であり、メルトダウンそのものをなくした
わけではない以上、BiMACやコアキャッチャーを
導入したからといって、「安全な新型炉ですよ、
実用化しましょう」 と言えるのか???
次に、4系統のpassive safetyシステム
Automatic Depressurization System (ADS)
「自動減圧システム」 とでも言いましょうかね。
安全逃し弁が10か所にあり、パイプ内の蒸気を
圧力抑制プールへと排出します。さらに減圧弁も
8か所あって、「ドライウェル」 というスペースに
蒸気を放出します。
要するに高圧の蒸気を逃がして炉内の圧力を
下げようというメカニズムで、これは確かに改良
ですよね。原子炉内部は高圧で、緊急事態に
メルトダウンを防止するために炉内に水を入れ
ようとしても、圧力が高いため入らない場合が
よくあります。減圧は、冷却水を入れるために
必須なのですね。
Gravity Driven Cooling System (GDCS) 「重力
駆動冷却システム」
上のADSで減圧した後、このGDCSから
「自重で」 冷却水が炉内へと入ってきます。この
GDCSとADSが組み合わされることで、一種の
ECCSのような働きをします。
Isolation Condenser System (ICS) 「隔絶濃縮
システム」
独立した高圧ループ4つで構成され、いずれにも
熱交換機があります。それにより、チューブ内部で
蒸気を水にします。Station blackoutのような
原子炉のscramがあった後、原子炉の遅延熱
を冷ますためのメカニズム。
私もこれを改良の努力だとは認めますが、もし
そのチューブ自体が破損したら??
これも、station blackoutなどでのscramがあり
得ることを、前提にしていますよね。
Passive Containment Cooling System (PCCS)
「パッシヴ格納冷却システム」
LOCAが発生した場合に、強化コンクリート製の
格納容器を冷ますシステムです。やはり熱交換
器のあるループが4か所あり、格納容器外部の
冷却プールに配置されています。
改良の努力は、私は認めます。が、もし
冷却水の経路 (パイプとか) が破壊されたら??
これもやはり、LOCAが発生しうるという前提です
よね。
努力は認めますが、これで 「新型炉ですから、
安全ですよ」 といってよいものか ・・・??
実用化の状況
2022年10月現在、建設中のものは世界にないよう
です。
ですから、あまり日本でも 「新型炉」 の候補として
強力ではないと思うのですが、まあ、念のために
短く紹介しておきますね。「方針の豹変」 が大好き
であることを暴露してしまった現在の日本政府の
こと、今のところESBWRをあまり推していなくても、
ABWRやAP1000の問題点が日本社会に知られ
るようになった場合、今度は 「ESBWRなら安全
ですよ」 とか言い出さないとは、限りません
からね。
では、このシリーズ、次回はEPRを取り上げ
ます。すでに、世界数か所で実用化されている
“新型炉” です。日本ではあまり登場しないかも
しれませんが、似たようなものが 「新型炉」 と
いう御旗の下で登場する恐れはあるので、概略は
知っておいたほうが良いですね。
厳しいよ~~
私の20分クロッキー
なお、
LOCA (Loss Of Coolant Accident)
Station blackout
scram
といった用語については、説明しません。
その程度のことは、本ウェブサイトの読者の
皆様なら、すでにご存知と想定しておりますので。
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