RAND Corporationのウェブサイトより
How Kim Jong-un’s Fears Shape North Korea’s Nuclear Weapons Agenda | RAND
How Kim Jong-un’s Fears
Shape North Korea’s Nuclear
Weapons Agenda
(金正恩の不安が、北朝鮮の
核兵器のあり方を形成)
Bruce W. Bennettさんによる考察
2023年4月19日
北朝鮮の核開発の過去については、c-5) やe) で短く取り上げております。
北朝鮮による核兵器開発や実験については、
日本語メディアがしょっちゅう取り上げている
ので、本 「やかんをのせたら~~」 では
フォーカスしてきませんでした。日本語情報が
すでにたくさん流布している問題については、
ワザワザ本ウェブサイトで紹介する必要も
ないでしょうから。
でも、無視してるわけじゃありません。
日本国外のメディアによる考察などは、
適宜紹介してまいります。
今回は、アメリカの有名なシンクタンク、
RAND Corporationのウェブサイトにある
考察を取り上げます。
RAND Corporationはアメリカに本部を置く
独立系シンクタンクとして有名ですよね。
政策をメインに、幅広く諸分野を調査・研究
しています。
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
******************************
もっと作れ~~!
この1年間ほど、北朝鮮はミサイルの発射や
その他の挑発行為の頻度を高め、兵器の
規模も増大させている。韓国とアメリカに対する
攻撃可能性の脅迫を重ねつつ、核兵器の
増産に努めている。
その指導者金正恩は今や、新型の短距離
弾道ミサイルの製造を計画しており、その
一環として戦術核180個をも含むと語って
いる。さらに金は、核兵器数の「幾何級数的
増大」という計画も発表しており、どうも彼の
目指すところは軍事専門家たちが以前予想
していた数をはるかに上回る300個から
500個であるようだ。
この増産計画の一環として、北朝鮮の各種
ミサイルをはじめとする種核兵器の多様化
も行われる見込みで、たとえば新型の
液体燃料大陸間弾道ミサイル(ICBM)、
長距離巡航ミサイル、新型の潜水核
ドローンなどが挙げられている。
こうした現状から浮かび上がる疑問が
ある。いったい何のため、北朝鮮の指導者
金正恩は核兵器などの武装プログラムに
過剰な投資を行い、軍事力の誇示に固執
しているのか?しかも、アメリカにも韓国
にも、北朝鮮を侵略する意図など全くない
というのに。
金の動機を正確に探り当てることなど
不可能だが、手に入った根拠を見る限り、
金はどうも一種のパラノイアを患っている
ようで、自分の国のことよりも自分の生命
と権力が大切なようだ。宿敵とみなす
アメリカに対峙してやまないだけでなく、
北朝鮮の国民はCOVID19のもたらした
苦難にあえいでいるのだが。
サタンはどっちだよ??
脅迫の誇張
北朝鮮は偽りのナレーティヴ <お話> に
乗っかっている。アメリカと韓国が軍事
演習をしているから北朝鮮は兵器開発に
躍起なのだ、というお話だ。この軍事
演習は、北朝鮮への侵略のための準備だ、
と主張しているわけだ。この主張が
ナンセンスなのは、明らかだ。
その証拠の1つとして、韓国は陸軍の現役
兵数を560,000名から365,000名にまで
削減しており、それに対し北朝鮮陸軍は
110万名を擁している。陸上兵器を
最先端のものにしているとはいえ、この
人数では韓国陸軍は北に侵略し確保する
ことなど、できようはずもない。
確かに韓国の予備人員は潤沢だが、その
ほぼ全員が年間に受ける訓練はわずか
3日間だけだ。これでは侵略や安定化の
ために必要な組織化されたユニットは
出来るはずもない。
こうした人数からも明らかなとおり、
アメリカと韓国の合同演習は防衛の
ためのもので、それは定期的に発表
されている通りだ。
人は減っちゃう ・・・
こうした事実があるからと言って、
韓国軍が対策を怠ってきたわけではない。
およそ20年前、兵力を維持するうえで
人口動態の問題が発生していることに、
韓国政府の防衛省は気づいた。そこで
人員の減少をテクノロジーで補うという
プログラムを策定、これを国防改革計画
2020と呼んでいた。
そのためのテクノロジーのかなりの部分は
韓国の戦闘機に注ぎ込まれ、それで人力の
減少を補うつもりであった。
それを北朝鮮が見逃すはずもなく、金は
戦術核兵器を作れと発表した。最先端
軍用機が配備される韓国の少数の離着陸場
を無略化するのも、その目的の1つで
あった。
北朝鮮は実際に、韓国の離着陸場を効果的
に攻撃するため必要な弾道ミサイルも
核兵器も保有している。<このため>
韓国の地上軍は大打撃をこうむる恐れも
あり、南から北朝鮮に攻め込むことなど
考えにくい。
「あいつらが悪い」 ことにしよう ・・・
真の動機
金が北朝鮮の国民に対して求めている
ところによれば、国を守るためには国民
の犠牲が必要だ。それに、言うまでも
ないが金の軍事面以外での失政から国民
の関心をそらすためには、軍備システムを
次々と増強していくのも方法の1つなのだ。
この北朝鮮指導者は国民に充分な食料を
確保できておらず、電力も確保できて
おらず、健康やライフスタイルに関する
国民ニーズにも対応できていない。
さらにこれは未確認情報だが、飢える国民
のための食糧よりも弾道ミサイルに資金を
つぎ込んでいることに、国民からの反発も
あるそうだ。
だが金が本当に気にかけているのは、国民
のことなどではないようだ。確かなことは
分からないが、どうも金が気にしている
のは自分の生き残りと今後も北朝鮮を
支配し続けることのようだ。.
金はパラノイアを患っているとの報告も
あり、アメリカが脅威となる諸国の指導者
の抹殺にドローンを使っていることに気を
病んでいるらしい。最近もISISの指導層
をドローンで処分している。次は我が身
か、と金は肝を冷やしているようだ。
2022年終わりに <アメリカは> Reaper
というドローンを日本に配備した。
<鹿児島にある、海上自衛隊の鹿屋
(かのや) 航空基地に配備しました>
この配備は西側メディアではあまり取り
上げられなかったが、どうも金は気に
留めたようだ。彼にとっての脅威となり
えるためだ。加えてアメリカ軍は最近、
朝鮮半島の上空にB-52を飛行させること
が多く、これは空中から巡航ミサイルを
発射できる。これも、金にとっては憂慮
事項のようだ。
かくして金は、指導者個人を狙った攻撃を
仕掛けるなら深刻な結果を招くということ
をアメリカと韓国に納得させようと、
あらゆる手を講じているようだ。
昨年9月、北朝鮮は新法を成立させた。
北朝鮮の政権が脅かされた場合には、防衛
用か先制攻撃かを問わず核攻撃を開始する
よう求める法律だ。その新法成立以来、
北朝鮮は各種多様な核弾頭輸送システムや
配備能力を実証している。その意図は
明らかで、北朝鮮の政権に脅威を感じ
させるなら韓国やアメリカの政府が認識
しているよりもはるかに深刻な結果を
招くぞ、と示したいのだ。
やりたいときに、核戦争を始めちゃえるじゃないか!!
適切な解決策?
金正恩の動機が上述のようなものである
以上、重大な問題の1つとして、北朝鮮が
示した核兵力のうち、どこまでが現実の
能力なのか?確かなことはわからない
までも、最近行われた示威行為の一部は、
実際にあるのか疑わしいものだ。
一例として先日、金は北朝鮮の指導層を
ある部屋に連れて行った。そこにある
物体を北の国営メディアは戦術核兵器
10個だと主張していたが、本当に
そうなら北の核兵力の大幅増強を示す
ものとなる。
だが、実はそこにあった物体は核兵器
ではなく、模型であった公算が強い。
実際にこの部屋に強力な爆薬や核物質が
あったのなら、事故や破壊活動があれば
この政府高官の集団の中の誰かが死ぬ
ことになるが、そんな場所にはたして
金と高官たちが入っていくだろうか?
北朝鮮の潜水核ドローンについても、疑問
が渦巻いている。同国の国営メディアの
主張では、このドローンは海軍の攻撃船体
を破壊しうるということになっているが、
そのドローンの速度がおよそ8ノットしか
ないのだ。 <時速15㎞程度> たいてい
の海軍の艦隊と比べ、これでは追いつく
ことすらできない。
核のない世界を~~
私の、かなり昔の15分クロッキー
一方で、北朝鮮はHwasong-17という
ICBMの第7回テスト、もしくはフル
レンジのテストをまだ実施していないの
だが、その理由もはっきりしていない。
このICBMがまだ、その段階まで達して
いないという可能性もある。あるいは、
アメリカが秘かに金に対し、この種の
テストを実施するなら金自身に深刻な
結果が訪れるぞと合図を出した恐れも
ある。さらにまた、国内の不安定性が
さらに深刻なレベルに達した時点で
この種のテストを実施し、国民の目を
テストへとそらさせるため、金は意図的
に実施を遅らせているのかもしれない。
だがアメリカと韓国は強化した合同演習
のスケジュールを変えることはなく、金は
おそらく国内からのプレッシャーをさらに
実感することになりそうだ。なんとか、
成功者であり権力者であるという自分の
国内イメージを保持せねばならなくなる。
国内で課題があると、対応としてアメリカ
を悪者扱いし挑発行為に打って出るという
性癖が金にはある。今後そうした動きが
見られるなら、実は国内の不安定性を気に
病む彼の姿なのかもしれない。
Bruce W. Bennett は、独立系非営利団体
RAND Corporationで国際問題や防衛問題
の上級研究員を務めている。
***************************
イカレタ独裁者にとって「抑止」って・・・
核抑止を主張するよく見られる見解によると、
核兵器による大量破壊を恐れるので、
核保有国に対して本格的な攻撃を始める軍隊
はありえない。よって、核兵器が軍事侵略を
防いでくれる。
ということでした。
しかし、この主張の前提として、
軍の指揮官や政治トップが ”まとも” である、
つまり侵攻の招きえる被害を計算に
入れられる、
という想定がありますよね。
なら、独裁者が上のBennettさんの指摘の
ようにparanoiaであったら??
核抑止の前提が実際に崩れている実例を、
日本列島に暮らす我々も実際に今、経験
しているわけですね。それもここ何年も。
こうした 「イカレタ独裁者に核兵器」 という
のが、今すでに世界の問題になっています。
それと、公正な選挙で指導者の首を替え
られるというのは、近隣諸国の安全のため
にも必要なことなのですね。独裁が長年
続いてしまうと、その独裁者がparanoiaに
陥った場合に近隣諸国にとっても ・・・
みなさん、選挙というものの重要性を
考えて、投票に行こうじゃないですか。