Emerging Europe(というニュース
ウェブサイト)
Hot and cold: The risks posed by mines at Zaporizhzhia nuclear power plant (emerging-europe.com)
ザポリージャ原発の機雷についての報道
です。ロシア軍が、冷却水プールに機雷を
敷設するという「イカレ暴挙」に出たと
の報があります。
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明
です。
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ホット シャットダウンとコールド
シャットダウン ー ザポリージャ原発の
機雷が招く危機
2023年6月24日
Yulia Valova記者
ウクライナの対諜報機関が今週 <6月
24日の週> 発表したところによれば、
ザポリージャ原発を占拠しているロシア軍
はテロ攻撃の準備をしている恐れがある。
Emerging Europeでは、そうしたテロ攻撃
の結果として生じえる危機について、同
原発の前職員に尋ねた。
ウクライナ南部にあるザポリージャ原発を
ロシア軍が占拠して、1年以上経過して
いる。Energodar市という町の近郊、
カフォヴカ貯水池湖岸を囲む草原地帯に
ある同原発は、ヨーロッパ最大の原発で
世界でも第6位だ。
ウクライナの主要諜報局のヘッドKyrylo
Budanovが先週述べた発言は、世界の
憂慮を招いた。ザポリージャ原発の6基
の原子炉を冷却する冷却水貯水プールに
ロシア軍が機雷を設置した、との発言だ。
6月 22日、ヴォロディミール ゼレン
スキー大統領も.諜報報告を引用、ロシア
軍がザポリージャ原発でテロ攻撃を実施
するための「あらゆる準備をしている」と
述べた。ウクライナ外務省によれば、
そうしたテロ攻撃が実行されれば、
「全世界に悪影響が出る」
だがIAEAの発表によれば、同機関の
Rafael Grossi事務局長が6月16日に
同原発を訪問した際には、機雷は観察
されなかったそうだ。
ホット シャットダウンとコールド
シャットダウン
ロシア軍がザポリージャ原発を占拠
する以前、<同原発で当時職員で
あった> Timur Valieievは、第6号
基の原子炉制御ヘッド エンジニアを
務めていた。2023年初頭、ロシア軍
は同原発のスペシャリストたちに対し
ロシアの核エネルギー公社である
Rosatom社と契約して勤務するよう、
またロシアのパスポートを取得する
よう、強制を始めた。その際に
Valieievはドイツへと出国、それ以来
ハンブルグにあるDeutsches
Elektronen-Synchrotron DESYという
研究所に勤務している。
Valieievによれば、ザポリージャ原発
の各発電ユニットは昨年9月以来
現在までシャットダウンされており、
今のところは発電を行っていない。
「全6基の原子炉の発電量は今のところ
ゼロで、第5号基もそうなのだが、この
5号基が目下、世界的な懸念対象に
なっている」 と、Valieievは語る。
5号基は業界でいう「ホット シャット
ダウン」状態にあり、<発電はしないが>
水蒸気を算出している。この水蒸気は、
排水の処理のため必要であり、また
コントロール ルームの空調のため
にも必要なものだ。この空調は、
核の安全のために重要である。他の
5つの原子炉は、「コールド シャット
ダウン」状態にある。
5号基とそれ以外の違いとして、
原子炉の一次冷却系統の温度が異なる。
コールド シャットダウンでは、一次
冷却系の温度は摂氏70度未満なのだが、
ホット シャットダウンでは摂氏260度
を超える。
Valieievの説明によれば「コールド
シャットダウン状態の原子炉は安全で、
低圧であり、冷却水の温度も低い。稼働
状態と、核燃料過剰搭載の中間的な状態
だ。外部電源の供給があり、冷却が可能
である限りは、この状態を続けること
が可能だ」
だが「ホット シャットダウンとは最低
出力での稼働とコールド シャットダウン
の中間状態だ。この場合には、適切な
冷却つまりエネルギーのはけ口がなけ
れば、コールド シャットダウンの事故
が発生しやすい」
このホット シャットダウン状態の場合
一次冷却系の温度を適切に保つには
1次系と2次系の最低2台の冷却水
ポンプを稼働させ、冷却系にある熱
交換器により適度な冷却を行う必要が
ある。
原子炉は発電稼働をしていない時でも、
常時スケジュールに従って冷却系に
つながっている。核燃料は受動的に
核分裂を起こすことはないのだが、
静的なエネルギーを放出している。
使用済み核燃料も冷却プールに移送し、
そこで5年間徐々に冷やす。そののち、
冷めた使用済み核燃料を乾燥させ、
特殊な陽気に保管する。
「ロシアによるデマ」
Valieiev は、上述のロシア軍が原子炉
冷却水プールに機雷を設置したとの
報告を信じていない。「また、ロシア
がデマを流したのだろう」と、彼は
言っている。
Valieiev によると、ザポリージャ原発
には上記以外にも原子炉冷却のメカ
ニズムが存在している可能性もある。
そうしたメカニズムは、ロシア軍が
冷却水プールを稼働停止させたと
しても、使用可能だ。.
「ザポリージャ原発は、熱の冷却を
数種類の方法で行えるような設計に
なっている」 とValieiev は語っている。
「ロシア軍が原子炉の冷却を停止させる
つもりであったとしても、つまり複数の
冷却水プールを停止させ、さらに代替用
の冷却材源を自動的に作動させる安全
システムを複数停止させた場合であっ
ても、原子炉の冷却停止は容易ではない」
さらにValieiev によれば、緊急時には
原発の職員が使えるバックアップ対応策
が数種類あるそうで、心強い。
「2011年に日本で福島第一の大事故が
あったが、それを受けザポリージャには
可搬式のポンプ ユニットを設置、これ
には消防車のような長いホースがあるの
だが、その長さが2kmもある。そのため
ドニエプル川河岸にこのユニットを配置
すれば、川から冷却水プールへとポンプ
でくみ上げ、原子炉の冷却が可能だ」
「ロシア軍が冷却水プールを壊し原発から
撤退したとしても、ウクライナの技術者
たちはなお、原子炉を冷却するにはどう
すればよいか分かっているのだ」
さらにVasiliev によれば、発電ユニット
のタービンがあるエンジン ルームにも
機雷が配置されてはいいるが、その危険性
は誇張されているそうだ。
「原子炉そのものと原子炉を冷却する一次
冷却系 <← 英語原文に混乱がみられる
のですが、現実の原発の構造から判断して
こういう真意だと思います> とは原子炉
格納部の中に収められている他の各部
からは離れた個所にあって、頑丈な壁の
中に納まっている。仮にどれか1つの
原子炉のエンジン ルームが爆破されたと
しても、大火事にはなるが、それだけだ」
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日本語読者の方々は、「2011年に日本で
福島第一の大事故があったが、それを受け
ザポリージャには可搬式のポンプ
ユニットを設置、これには消防車のような
長いホースがあるのだが、その長さが2km
もある」という箇所にご注意くださいな。
さすがにLevel 7の大事故で、それに反応
しての「事故防止」対策は、ウクライナに
まで及んでいたのですね。
原子炉の深刻事故発生 ⇒ 原子炉事故
防止対策の発展
という対応は、世界的に広まったわけです。
しかし。
今回のロシア軍侵略に伴う軍事関連リスク
への対応ができなかったことは明らかで、
だからこそ上の記事も存在しているわけ
ですね。
さらに、proliferation risksも考えに入れる
と、TMI ⇒ チョルノービ ⇒ 福島第一
と大事故があった歴史を経ても、軍事関連
リスクに対しては充分な対応はなされて
こなかったのは明らかです。原子炉の冷却
水プールの機雷がそれほど問題にならない
場合でも、たとえば使用済み核燃料の保管
冷却プールが軍に破壊されたら??
軍事リスクへの対応まで行うと、相当な
費用がかさむのは間違いありません。
そうなると、
事故防止 + いわゆる核ゴミ処分 +
軍事リスク対策 ⇔ 得られるのは、
要するに電力
という不等式が出来上がります。
(核発電勢力はこの問題に対応しようと
原発での海水の淡水化や燃料用水素
製造などを唱えていますが、それらは
核発電以外の手法でも実現可能です)
この不等式を現実的に少し考えてくだ
されば、
事故防止 + いわゆる核ゴミ処分 +
軍事リスク対策 >>>>> 得られる
のは、要するに電力
となるのは明らかですよね。
なら、軍事関連リスクは反核運動が
掲げるメッセージの中心にあるべきでし
たが、この12年間ほど、日本語の反核
メッセージの中心はメルトダウンでした。
正直、私は見ていて不思議に思いました。
社会的メッセージというものは新たな
事態や社会の動きに応じて発展させて
いかないと、同じことだけ繰り返して
いると「風化」してしまうものです。
実際、2023年7月現在の日本社会では、
このあっては困る「風化」が、とっく
に起きてしまっていますよね。