「天然ガス価格高騰 + 脱炭素化が焦眉の急 → SMR増設だ!」という短絡
2021年11月
2021年10月、日本の自民党の甘利幹事長(当時)が「原発、小型炉で建て替えを」という主旨の発言をしたと、報じられています。たとえば、
自民・甘利幹事長「原発、小型炉で建て替えを」: 日本経済新聞 (nikkei.com)
などで、ご覧になられたことでしょう。
核発電の知識がおありの方々なら、すぐに「要は、SMRを導入しろと。それにしても、SMRなら安全だ、なんてのは ~~」 とすぐに反応されたことでしょう。
一方、たとえばRomania Insiderなどの報道(2021年11月2日、Romania will get US technology for brand new nuclear power plant | Romania Insider (romania-insider.com) )を見ますと、ルーマニアがアメリカのNuScale社のSMRを6基または12基(報道によって食い違いがありました)をこれから導入するという合意が成立したそうです。
でも、果たしてSMRは本当に、その推進者たちが主張するように、「SMRの原子炉で過熱など発生しても、ほっておけば収まる」ほどに(How Far Do You Have To Run After A Small Modular Nuclear Meltdown? (forbes.com) にあるJames Concaさんの主張など) 安全なのでしょうか??
そこで、固定ページの s-x) (SMR) シリーズでは、以下の内容を扱います。
s-0) (このページの残り) ― そもそも、「LNGや石油価格が高騰しているからSMRだ」、っていうのは ・・・ それと、ほんとに原子力はCO2を出さないの??
s-1) そもそも、SMRって??
s-2) SMRの安全性
s-3) SMRのproliferation risks
( ↑ 東京湾の人工砂浜ビーチ。一見、のんびりと「バチャバチャ」できそうですが、
よく見るとアカエイがいます。毒針があって、刺されると死ぬ場合さえあります。
一見安全そうなものが、本当に安全とは限りませんね。
私がかなり以前に描いた作品より)
ではまず、s-0) の残りを。
(;; >へ<)>エネルギー価格やCO2問題は、本ウェブサイトのフォーカスではないので <(>へ< ;;)
・・・・ ごくごく簡単に扱いますね。詳細な解説などは、それぞれを専門にしている他のウェブサイトや書物などを、ご覧くださいな。
ここではあくまで、「シロートでもすぐに思いつく疑問」を。
(:: – _-) まず、石油やLNG価格が高騰 → 原子力を、という短絡について
・ まず、SMR(次回のページで説明)という小型原子炉であったにせよ、原発というものは計画して翌年には工事開始、その翌年に竣工して ・・・ なんてわけには、まいりません。
立地候補地を選定し、立地自治体の賛同を得ないと、何も始められません。ようやく工事が始まっても、従来の原発は「1つ1つオーダーメイド」に近いものだったので、竣工までは長期間を要します。そうしてやっと工事が完了してからも、原子力規制委員会などの検査を受けることになります。
実際、日本で工事中の原発で有名なものといえば、青森県の大間原発ですが、その立地自治体である大間町の議会が誘致を決定したのは、1984年8月のことでした。(大間原子力発電所 – Wikipedia) で、2021年11月現在、同原発はまだ建設中です。その間に2011年3月の震災はありましたが、そのための工事中断は1年7か月ほどのことでした。つまり、その1年7か月を差っ引いても、誘致決議から36年以上たって、まだ建設中なのです。
2021年現在、すでに石油やLNG価格は高騰しているのですから、たとえSMRによる建て替えであっても、原発に頼ればエネルギー価格高騰に対応できるわけじゃありません。
だいいち、計画から発電開始までがわずか10年という短期間であったと仮定しても、その間にLEU(発電用燃料となる低濃縮ウラニウム)価格が高騰したら、どうするのか??
短期間でエネルギー価格高騰に対応するのなら、すでに国内にある石炭火力発電所をクリーンコールに改造したら?(私はこの点ではシロートなので、その技術的問題などについては存じないのですが。それでも、シロートの一般市民に「クリーンコールだと、何がいけないのか」を政府や政治家たちは説明すべきです) 急な対応ですから、すでにあるものを改良して使用するしか、ないですし。クリーンコールに改良すれば、今までよりはCO2排出も削減できるわけですし。そして、クリーンコールで急場をしのいでいる間に、再生可能エネルギーの安定化技術などを開発すると。
* なお、天然ガス発電などでは発電コストのかなりの部分を燃料費が占めるのに
対し、核発電では燃料費の割合が小さいことは、よく知られていますよね。
それでも、LEUの価格がひどく高騰したとしたら?? ・・・
・・・「馬鹿げた仮定を!」と呆れてらっしゃるかもしれませんが、
たとえば核兵器の大量増産を始める恐れがある某国がカザフスタン
(世界の天然ウラニウム輸出量の過半数を1国で占める)からのウラニウムを
買い占めたりしたら??
核発電の動向は、核武装の動向とも連動します。
** 「核兵器の大量増産を始める恐れがある某国がカザフスタン
・・・からのウラニウムを買い占めたりしたら??」と申しましたが、
実はこれ、まんざらジョークや仮定だけのことじゃ、ございません!
例として、英語のニュースを読める方は
With Kazatomprom Deal, China Secures Nuclear Fuel Supply and Enhances Ties With Kazakhstan – The Diplomat
をご覧くださいな。
「英語のニュースを読め、とか言われても ・・・」という方々のために、
次の s-1) ページの終わりで、抜粋・日本語化して一部紹介しますね。
(:: – _-) 原発がCO2を出さないっていう、マヤカシ
要は、世界的に「脱石炭」という動きが顕著で、日本政府や産業界もその圧力を感じているのでしょう。だから、「発電過程では、原子炉そのものからはCO2を出さない原発を」ってことですよね。
でも、この問題については、すでにいろいろなウェブサイトや書籍が「発電所のライフサイクル」での問題を指摘済みです。
本「やかんをのせたら」でも、付録 w-1) でごく簡単に紹介しております。上の黒いメニューの下の方をお探しくださいませ。
それと、地球気候の変動の主な原因が人間の活動なのか?それとも、地球気候そのものに何らかの原因があるのか?という点でも、私には疑問があります。たとえば、氷期の周期と気候変動│64号 氷河が教えてくれること:機関誌『水の文化』│ミツカン 水の文化センター (mizu.gr.jp) や じじぃの「気候変動・水月湖の年縞・1万年前の世界!人類と気候の10万年史」 – cool-hira’s diary (hatenablog.com) をご覧くださいませ。
もし、地球の気候そのものが急変するものであるのなら、単にCO2やメタンだけを問題にするんじゃなくて、定住型農耕文明そのものを考え直す必要が生じます。あわせて、「自発的・平和的・段階的な」人口削減も、検討する必要が生じるでしょう。(何も私は、「人間を間引きせよ」とか言ってるんじゃ、まったくありませんよ!誤解しないでくださいね。人口学の方では、「教育程度、特に女性のそれを高めれば、平和的に・自然に人口は減少を始める」 という傾向は、とっくに判明しているのですし)
しかし。上記のような問題については、あくまで専門家の方々のサイトや著作などをご覧くださいな。私の専門外なので、ここではあくまで「シロートの疑問」の提示に留めようと思います。
では、次回ページからは、「やかんをのせたら ~~」の「本業」に入ってまいります。
まずは、そもそもSMRって、何だ??