ガスや石油は制裁として買い控えて
きたのに、核燃料はそうなっていない謎
2023年3月
CNNのウェブサイトより
Why the West hasn’t gone after Russian nuclear energy | CNN Business
ウクライナ戦争 ⇒ 燃料価格が高騰
⇒ 電気料金高騰 ⇒ 原発再稼働しろ!
というかなり短絡した主張が、目下の
日本社会ではまかり通っていますよね。
しかし、そもそも核エネルギーには、
このCNNの報道にあるように、
「制裁を実施すべきなのにできなく
なってしまった」という実に困った
側面があることを見落としては
困ります。
なぜ、日本語メディアはこうした分析
を報じないのでしょうか??
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Why the West hasn’t gone after
Russian nuclear energy
(西側がロシアの核エネルギーを問題
にしていないのは、なぜか)
CNNのClare Sebastianによる分析
2023年3月6日
London発、CNN —
<2022年2月下旬に> ロシアが
ウクライナへの全面的侵略を開始して
以来、ロシアからのエネルギー輸出の
かなりの部分は、西側による経済制裁の
対象とされてきている。だが、注目すべき
例外エネルギーがある。核エネルギーだ。
ロシアの国営核エネルギー独占公社
Rosatomではウラニウムの輸出や濃縮、
原発の建設を世界規模で行っており、
約1年前にロシア軍がザポリージャ原発
を占拠して以来同原発の稼働管理も
行ってきている。同原発は、ヨーロッパ
最大の原発だ。
ウクライナ政府は、ロシアが同原発施設
を軍事基地に転用し、攻撃を仕掛ける
ための隠れ蓑にしていると非難してきた。
これは、ウクライナがこの 「基地」 に
対して反撃を加えようものなら、同原発の
いずれかの原子炉に被害を及ぼして
しまうリスクがあるためだ。さらに
ウクライナは、同原発で今まで発生して
いる爆発についても、ロシアを非難して
いる。そうした爆発は、昨年終わりにも
発生している。
ウクライナの核エネルギー公社
Energoatom の暫定社長Petro Kotin
は、ザポリージャ原発の基地化を憂慮する
だけでなく、現場での有能なスタッフの
人数が大幅に減少していることにも頭を
痛めている。同原発を担当しているロシア
の報道サービス機関がCNNに告げた
ところによれば、新規職員のリクルートを
進めているので、「安全な稼働を確保
できる」 とのことだ。
何か事故などがあっても、Energoatom は
「どのような事態であれ、どのような惨禍が
あろうと、直ちに対応して緩和に努めること
ができない」 とKotinは述べた。これは、
敷地内をロシア軍が管理しているためだ。
ザポリージャ原発で誤操作や安全のため
の規約違反が行われるリスクの増大を
Kotinは警告しており、さらにウクライナ
政府はRosatom に対する経済制裁を繰り
返し求めてきているのだが、同社はいまだに
ほぼ無傷のままだ。もっとも、英国は先月、
同社の最高経営人ならびに子会社数社を
制裁の対象にしており、またフィンランドは
昨年5月、Rosatomとの発電所の契約を
終了したのではあるが。
専門家たちによれば、Rosatomは世界の
核エネルギー業界で欠かせない役割を
演じており、他に代われる企業は容易には
見つからない。そうした現状のため、
Rosatomは守られてしまっている。
問題は 「ロシア人形のように複雑に絡み
合った依存関係があることだ」 と語るのは、
Nuclear Consulting Group <という核
問題のコンサルティング グループ> の
会長であるPaul Dorfman だ。彼は、
英国政府と核業界への顧問も務めている。
まず、Rosatomは核燃料の主要輸出企業
の1つだ。2021年、アメリカはその原子炉
の燃料のうち14%をロシアの同社からの
輸出に頼っていた。ヨーロッパの電力各社
も、その核燃料のほぼ1/5をRosatom
から購入。Dorfmanによれば、ロシアの核
産業への依存から離れようとしたのだが、
あまり成果を上げていない。
さらにRosatomではウラニウム濃縮
サービスも行っており、2021年にアメリカ
が必要とした濃縮の28%は同社が行っていた。
そしてRosatomは全世界に多数の原発を
建設しており、場合によってはその建設
費用も融通している。2021年末の時点で、
世界にある原発5か所のうち1か所は
ロシア国内にあるか、ロシアが建設した
ものであった。さらに現在、Rosatomは
ロシア国外で15か所の原発を建設中だ。
コロンビア大学のCenter on Global
Energy Policyによる数値である。
Norwegian Institute of International
Affairsで研究教授を務める Kacper
Szuleckiによれば、原発の建設には
膨大な費用が必要で、それほどの巨額
を拠出できるのは国家政府だけだ。だが、
一国の政府といえど、それほどの巨額を
捻出できない場合もある。そうした場合に
Rosatomが関与してくる場合がよくあり、
ロシア政府が保証する借入限度額を提示
する。場合によっては長期契約を締結、
核燃料の提供を行うだけでなく、原発の
稼働運営を引き受けることさえある。
Szuleckiは最近、ロシアの核産業に
関する論文を共著したのだが、その
Szulecki によるとそうした契約の中でも
特に極端な例として、建設・所有・稼働という
モデルすらある。そのモデルをRosatomが
最初に採用した実例がトルコのAkkuyu
原発で、目下Rosatomはこの原発を
建設中だ。その資金もRosatomがすべて
拠出しており、さらにこの原発の全寿命に
わたり同社が稼働を担当することに
なっている。
こうした依存がまかり通ると、その他の
検討事項が無視されてしまう場合がある。
例として、ハンガリーはEUの中にあり
ながらも、Rosatomへの制裁には最も
あからさまに反対してきた国だ。発電の
40%以上を核エネルギーに頼っている国
は、EU加盟国の中には数か国しかないが
ハンガリーはその1つでもある。Rosatom
と長期資金調達契約を締結しており、
原発を建設している。
専門家たちによれば、世界の核産業を
探しても、Rosatomに代わる相手を
見つけるには何年もかかる。
そのためであろう、Rosatomが
ザポリージャ原発を乗っ取った時期から
同社の国外からの収益も伸びている。
見込み顧客が離れていく、などということ
は起こらなかったのだ。Rosatomの
理事長Aleksey Likhachev が昨年
12月にロシアの新聞Izvestiya紙に
語ったところでは、同社の国外収益は
2021年から2022年にかけて約15%
増大する見込みだった。
Energoatom のKotin の方は、
Rosatomはザポリージャ原発の機器類を
まともにメインテナンスしておらず、ロシアに
よる占拠が続くうちに取り返しのつかない
損傷を招く恐れがあると主張している。
この占拠がもう1年続くなら、
「ザポリージャ原発は再稼働できなく
なろう」 とKotinは述べた。
同原発の管理をウクライナ側に戻すよう
求める外交努力もなされたが難航して
いると、ウクライナのエネルギー相
Herman Halushchenko はこの週末
<3月4日前後> に述べている。
ロシアは、ウクライナ自体が
ザポリージャ原発に砲撃を加えているとの
非難を繰り返し発表してきた。さらに
Rosatomのザポリージャ原発広報
サービス部門はCNN宛のEメールで、
同原発には重兵器は存在していないと
主張している。
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自業自得だったのね ・・・
私の昔の20分クロッキー
核発電からの核兵器拡散を防ぐため、
核燃料の製造や売買などには、国際的な
規制や監視体制を設けた (NPT体制)
⇒ 核燃料の輸出や濃縮、製造などが
できる国は限られている
⇒ ところが、そうした 「核輸出国」 の
一つが、隣国に軍事侵略を始めた
⇒ 各国はその 「核輸出国」 への制裁を
始めた
⇒ だが、核燃料だけは輸出できる企業が
極めて少数であるため、その侵略国から
輸入せざるを得ず、制裁ができない
・・・ ってことですよね。
NPT体制 (つまり、「核の平和利用」 を
掲げた世界体制) が破綻している実例の
1つですよね。核兵器をなくしたいのなら、
本来その製造技術に 「やかんをのせた」
ものである核発電も、現実にはなくす
しかない、ってことです。
「やかんをのせたら~~」 は、要するに
それを訴えるためのウェブサイトです。
ただ、これだけ大量のページがあるのは、
単に原理だけを説明するんじゃなくて、
実際に核発電と核兵器が不可分に結び
ついた実例を多数紹介しているわけ
ですね。