まず、「U-235の濃度を90%近くにまで濃縮
すると、何が問題なの??」 と真顔で
おっしゃる方がもし読者の中にいらっしゃ
れば、最初に上の黒いメニュー (項目は
基本的にアルファベット順) で、ページ
d-3)、f-4)、そして h-3) にある「「濃縮」U中
の235Uの比率」 という図を最初にお読み
くださいませ。下記の記事紹介は、その後で。
日本語メディアでも紹介されている通り、
イランのU濃縮が 「やっぱり??」 90%
近くに達していたと報じられています。
これについては、イラン政府寄りの報道と
西側報道とで主張が全く対立することは
明らかなので、その両方を紹介しますね。
いつもどおり、
私による抜粋・日本語化
< > 内は、私からの補足説明
です。
「存在している!」 「してない!」
“Argument II”
私の昔の作品
ではまず、イラン政府寄りの報道機関、
Tasnim News Agencyによるものを。
Iran Rules Out Uranium Enrichment above 60% – Nuclear news – Tasnim News Agency | Tasnim News Agency
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Iran Rules Out Uranium Enrichment
above 60%
(イラン、60%を超えるU濃縮は
あり得ない)
2023年3月1日
テヘラン発(Tasnim) ― イラン核エネルギー
機関のヘッド、モハンマド エスラーミが、
同国が84%のウラニウム濃縮を実施したの
ではないかとの嫌疑を否定した。
この水曜日 <3月1日> 、IAEAが機密の
四半期報告書で、1月22日に実施した
<イランにある> フォルドウ核施設の同
機関による査察において検出した粒子の
中に83.7%にまで濃縮されたウラニウムが
含まれていた、と述べていたことが判明した。
これを受け、エスラーミはその嫌疑を否定
した。
どっちがほんと??
私が、かなり昔にあるウェブサイト用に
描いたイラスト
「このほぼ84%濃縮の粒子についてだが、
処理過程で使うタップの側面から検出した
サンプルだとされているが、顕微鏡で見ても
可視化できない。問題とすべきは、濃縮後に
保管されているウラニウム含有物の量で
あるはずなのだが」 と、エスラーミは
述べている。
さらにエスラーミは、IAEAの査察官たちが
「処理過程でできた物質も観察したのだが、
そのU-235濃度が60%を超えていない
ことを計測している」 と述べたと、Press TV
は報じている。
「イランの濃縮限度は、60%だ。査察官たち
も自分たちの報告書に、イランの濃縮が60%
であると述べている」
さらにIAEAによる報告書にも、今回の
高濃度粒子がどこから出たものか、
IAEAとイランの間での 「話し合いはまだ
継続中である」 と記載がある。
エスラーミはまた、そうした話し合いの結論
として、イランの各プログラムに具体的な
規約違反は見当たらなかったとしている。
「この2週間、IAEA の代表者たちが
テヘランを訪問、<イランのウラニウム濃縮
施設で使われる> 遠心分離機の設計や
申告されている検出粒子に関する記載に
規約違反がないか査察を行った。そうした
専門家による査察と調査の結果 ・・・
具体的な違反は見当たらないと結論付けて
いる」 とエスラーミは述べた。
「消えてしまったのか??」
“Truth Gone I”
私のかなり昔の作品
イランの核担当チーフによれば、IAEAの
ラファエル グロッシ事務局長がテヘランを
訪問する予定で、アメリカが脱退した
2015年の核合意の再建交渉がとん挫し
かかっているが、その訪問がその打開に
つながる可能性もあるそうだ。
エスラーミはさらに、IAEAの事務局長代理
マッシーモ アパロとは既に交渉を行って
いる、とも述べた。グロッシはここ両日中に
テヘランに来る予定で、未解決の諸問題を
検討する予定であるとのことだ。
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以上、イラン側からの弁明でした。
消えてしまう??
私の、昔の下絵より
では、反対に西側の代表的報道機関の1つ、
CNNのウェブサイトより。
Iran: Near bomb-grade level uranium found in nuclear plant, says IAEA report | CNN
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Near bomb-grade level uranium found in
Iranian nuclear plant, says IAEA report
(原爆レベルに近い濃縮度のウラニウム、
イランの核施設で発見とIAEA報告)
CNNのAdam Pourahmadi記者
2023年3月1日
アブダビ発、CNN ― 原爆レベルに近い
濃縮ウラニウム粒子が、イランの核施設で
検出されたと、国連の各監視機関 <である
IAEA> が報じている。アメリカはすでに、
イランによる核兵器製造能力が加速して
いるとの警告を発している。
CNNでは、その限定閲覧の報告書を閲覧
したが、ウィーンに本拠を置くIAEAは濃度
83.7% にまで濃縮されたウラニウム粒子が
イランのフォルドウ核燃料濃縮施設
(Fordow Fuel Enrichment Plant、FFEP)
で検出されたと報じている。この地下核施設
は、クォムという都市 <テヘランから南南
西約130㎞ほどの地点にある、古都。
「ゴム」 とも表記> の北東約32㎞の
地点にある。83.7% というのは、核爆弾
の製造に必要な濃度90%に近い。
ああ、困った~~
私の20分クロッキーより
男性のモデルさんです
同報告によると、今年1月、IAEAは
フォルドウ核施設にて環境中のサンプルを
採取したのだが、その中には最大で濃度が
83.7%tの高濃縮ウラニウムが検出された。
これを受け、IAEA はイランに対しこうした
発見事項は 「イランが申告していた
フォルドウ核施設での濃縮レベルと合致
しておらず、イランに対しこうしたウラニウム
粒子がどこから出たものかを報告するよう」
求めた、智子の報告は述べている。
さらにイランは以前から60%まで濃縮した
ウラニウムの在庫量も、前回の四半期報告
の時点と比べ、25.2 kgから87.5 kgにまで
急増していたと、このIAEAによる機密報告
にある。
このIAEA報告によれば、この問題を解明
するためのイランとの話し合いを続けている
が、「こうした発見事項からは、イランにある
核施設の活動に変化があれば、それを
検知し報告する能力がIAEAにあることが
明らかだ」 とも述べている。
イランのホセイン アミール アブドラヒアン
外相は、この火曜日に行われたCNNの
クリスティアンヌ アマンプールとの独占
インタビューで、このウラニウム濃縮関連の
報告に関する質問には、直接的には答え
なかった。
アミール アブドラヒアン外相は、IAEAの
事務局長代理マッシーモ アパロが既に
先週までに2回イランを訪問したこと、
またIAEAのラファエル グロッシ事務局長
がイランを訪問するよう招待されていること
を述べた。
「実りある交渉」って・・・ ほんと??
私の20分クロッキー
「イランは、IAEAと協力していくロード
マップを設けている。 [ラファエル] グロッシ
氏の代理である [マッシーモ] アパロ氏が
すでに先週までの2-3週間にイランを
来訪、建設的で実りある交渉を行った。
さらにイランはグロッシ氏も近日中にイラン
に来られるよう、招待した」 と、アミール
アブドラヒアン外相はCNNに対し語った。
「だから、イランとIAEAとの関係は然る
べき正常な状態にある」
昨年、イランは以前IAEAが設置していた
監視・モニター活動用の機器類をすべて
撤去している。この機器類は、正式には
Joint Comprehensive Plan of Action
(JCPOA) という核合意のためのものだ。
この撤去のため、「イランの核プログラムが
平和利用のためのものかどうかを確認する
IAEAの能力にマイナスの影響が出た」 と、
IAEAの報告には記載がある。
やれやれ・・・
私の20分クロッキー
アメリカ国務省のスポークスマンが火曜日
に述べたところによれば、このIAEA報告
からは、「極めて深刻な進展」 が読み
取れる。
「アメリカは同盟諸国やヨーロッパならびに
中東地域パートナーたちとの密接に連絡を
取り合っており、この極めて深刻な展開で
あり得る事態に関するさらに詳細な情報を
IAEAから待機している」 とも、同スポークス
パーソンは語った。
国防政策担当次官のコリン カールが火曜
日に述べたところによれば、「2015年締結
の核合意からアメリカが2018年に脱退
して以来、イランの核開発の発展は目を
見張るほど急速だ」 とのことだ。しかも
2018年にアメリカがJCPOAから脱退
した時点では、「イランが原爆1発分の
核分裂性物質を製造するまでには、
12か月ほど要するだろう」 と見ていた
とも述べた。
「今となっては、12日ほどしかかから
ないだろう」
2015年の核合意を再建しようとする
アメリカとイランの間での交渉が行われたが
2022年9月に座礁した。両国間の緊張は、
イラン全土での抗議活動をイラン政府が
弾圧し、さらにウクライナ戦争でイラン政府
がロシアにドローンを供給した件で、
さらに悪化している。
火曜日にカールが述べたところでは、
核合意は 「凍結されてしまっている」
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凍り付いちゃってるよ!
“Argument III – To the Rescue”
私の、昔の作品
さて、IAEAとイランの代表者同士の会合
結果がどうなるか? それを待ちましょう。
その結果がどうであれ、ウラン濃縮を
行うと原爆製造とは 「単なる程度差」
だってことですね。
当面は、たとえばウラニウム濃縮という
行為はすべてIAEAが運営し、
それ以外の濃縮も施設も禁じるといった
ような世界的対策を講じないと、
各国で独自にU濃縮を行わせている
限りは、今回のような問題は必然的に
「いつか・どこかで」 発生してしまうもの
でしょう。
そしていずれは、核発電そのものを
核兵器と一緒に廃絶する、と。