2020年10月
今迄に紹介したように、ウラニウム濃縮とは簡単に言ってしまえば:
天然のウラン鉱石中に …
U238 (核分裂しない)-約99.3% 発電用 核兵器用
U235(核分裂する)-約0.7% → そこでU235の濃度を高めたい → 3-5% > 90%
ということでしたよね。
つまり、濃縮工程からは大量のU238が「余り物」として出てくるわけで、
それをDepleted Uraniumつまり DU と呼んでいます。日本語では、
「劣化ウラン」。
今後、本ウェブサイトでは DU という英語圏でよく使う略称を用います。
DUの特徴
★ まず放射能が気になるところでしょうが、U238は半減期が大変長く、
およそ45億年もあります! つまり、それだけゆっくりと崩壊していく
ので、発する放射線は少ないです。しかし崩壊をする以上、放射線を
出すことに違いはありません。当然、保管が極めて厄介な仕事に
なりますが、アメリカでは例えばテネシー州オークリッジの施設などに
保管していました。(英語Wikipediaの”Depleted uranium”
https://en.wikipedia.org/wiki/Depleted_uranium )
しかし ・・・
★ 密度が大変高い(重い)物質なのです。そのため、例えば次のような
用途に使われています:
・ 戦車などの装甲(鉛よりも比重の大きいU238を配した装甲は、
鉛などの弾丸ではなかなか貫通できない)
・ 核分裂を使う核爆弾(原爆)内部の、中性子反射板に
・ 最も多い用途として、弾丸や砲弾に(劣化ウラン弾)。鉛などよりも
重い弾丸ができるので、風などに流されにくく、貫通力も強い。(ただし
現在では、この特徴に関しては、タングステンがU238にとって代わり
つつあるそうです)
さらにU238弾丸や砲弾が装甲を貫通すると、その戦車内部などで発火
するため、戦車などを破壊する効果がさらに強い。
しかし、DUのような物質を兵器に使うことに関しては ・・・
当然、国際司法裁判所や国連などで問題にされ、使用中止の請願なども
検討されてきました。それはもちろん、下記のように健康被害が報じられて
いるためですね。
健康被害
劣化ウラン弾を使うとは、要するに(235などよりは弱いとはいえ)
放射性物質をばらまくことに、ほかなりません。
ですから、おそらくUD弾が初めて実戦で使用された戦争であった
1991年の湾岸戦争でも、米軍の兵士たちから健康問題の報告がありました。
(湾岸戦争シンドローム)
2003年のイラク戦争になると、ファルージャなどの一般住民の間で、
白血病やがん、出生時の問題などが発生した比率が高くなったことが報告されています。
しかし。例によって「放射線と健康被害の因果関係」を立証するのは
大変困難(環境中の他の要因などのせいにされてしまいやすい)ですので、
DU弾の使用禁止といった決定にまでは、まだ到達できていないようです。
International Coalition to Ban Uranium Weapons (ICBUW) などの動きも
あるのですがね。(英語版Wikipediaの、”International Coalition to Ban
Uranium Weapons” https://en.wikipedia.org/wiki/International_Coalition_to_Ban_Uranium_Weapons#:~:text=The%20International%20Coalition%20to%20Ban,depleted%20uranium%20(DU)%20weapons)
沖縄でも
「遠い中東の話ばっかり・・・」とおっしゃる方もいらっしゃるかも
しれませんね。でも、他人事じゃありません。日本でも、沖縄で米軍が
DU弾を発射した事件がありましたよね。
英語版Wikipediaの “Depleted uranium” というページのOkinawaという個所を
ご覧ください。(https://en.wikipedia.org/wiki/Depleted_uranium )
Between 1995 and 1996, U.S. Marine AV-8H Harrier jets accidentally fired more than
1500 DU rounds at the Tori Shima gunnery range but the military did not notify
the Japanese government until January 1997.
(1995から96年にかけて、米国海兵隊のAV-8Hハリアー ジェット機が、
誤って1,500発以上のDU弾を沖縄は鳥島(沖縄本島から西に150kmほど)に
ある射撃演習場で発射した。しかも海兵隊はその事故を、1997年1月まで
日本政府に通知しなかった)
ファルージャなどでの具体的な被害は、この書物を
嘉指信雄・森瀧春子・豊田直巳 編「終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す」
勉誠出版
2013年3月の本ですが、取り上げている問題は今だにまったく解消されて
いません。
同書に記されている核廃絶を求めるアピールも、
「核兵器反対派」と「核発電反対派」とが力を合わせるよう求める呼びかけも、
今も変わらず有効です。
まとめて言えば ・・・
原子炉=プルトニウム239製造機 →長崎型原爆の「爆薬」
ウラン濃縮=ウラニウム235を3-5%に濃縮 →さらに続ければ、兵器グレード
…………………………………………………………………..(>90%)も
…………………………………………………………………+ DUも大量に発生→劣化ウラン弾
つまり、事故が皆無でも(まったく正常な稼働でも)、核発電とは
危険なものなのです、核兵器との関連で。
「核兵器反対陣営」と「核発電反対陣営」とが力を合わせて、
原発事故などがなくても平素から訴え続けるべき問題だと思うのですが ・・・