f-12) (他にも) イラン vs イスラエル 戦争の根底にU濃縮 (入門レベル)

f-12) (他にも) イラン vs イスラエル
戦争の根底にU濃縮
(入門レベルの内容ですよ)

2025年6月

2025年6月18日現在、この両国間
ではミサイルやドローンの応酬が
続いています。1日も1時間も早く、
戦闘をやめてくれることを祈って
います!
この対立の経緯などについて、
2010年前後までのことは上の黒い
メニュー(膨張しすぎて使いにくくて
スイマセン! 項目は基本、アルファ
ベット順です)にある d-4) や f-4)
でも説明しました。

本ページでは

本ページではまず、Associated
Pressのウェブページ Timeline
of tensions and hostilities between
Israel and Iran (Timeline of tensions and hostilities between Israel and Iran)
をベースに、今世紀に入ってからの
衝突や発生事態などを短くまとめて
みます。
その次に、入門レベルの読者のため、
U濃縮の基本の基本をあえて説明
します。本来、「やかんをのせたら
~~」では、そうした入門レベルの
解説は行わないのですが、
イラン vs イスラエル戦争の只中、
入門者にもわかる解説が必要だと
思いますので、例外処置として。
最後に、「原発再稼働して、電気代
下げろ!」という現在の日本社会で
よく聞こえる主張が、大きな視点で
見るといかに悪循環なのかを述べます。

このページのコンテンツ
例外的に、入門レベルの説明

U濃縮をめぐる、イスラエル vs
イランの対立
近年のタイムライン

2003年10月 イラン、U濃縮を
一旦停止

2006年2月  強硬派のアフマディ
ネジャド大統領(任期は2005-2013)
が当選、イランはU濃縮の再開を宣言。
英国、フランス、ドイツとの交渉も決裂

2010年    Stuxnetが見つかる。
イランのU濃縮施設の遠心分離機を
妨害ないしは破壊。アメリカとイスラ
エルの合作によるウィルスと思われる。

なんや、このウィルスは!?

2015年7月  アメリカや英独仏などと
イランとが長期的な核合意(JCPOA)
を締結。イランのU濃縮に制限を
設ける代わりに、イランに対する
経済制裁を解除する、というもの。

2018      イランが上述の合意を
締結する以前に核兵器開発プログラム
を隠ぺいしていたことを示すデータ数万
ページを、イスラエルのネタニエフ首相
が公表。そうしたデータはモサドの
エージェントが2018年に集めたもので
あることを、モサドのチーフが確認。
アメリカのトランプ大統領は上記の
核合意から一方的に脱退。

2020年7月   イランのナタンズ
U濃縮工場で謎の爆発、遠心分離設備
が崩壊

2020年11月  イランの軍事物理学者
ではトップクラスのモーゼン
ファクリザデ、暗殺される。

2021年4月   ナタンズにあるイラン
の地下核施設を標的とする攻撃

2021年4月  イラン、最高で60%
のU濃縮を開始

2023年10月  (イランのproxyで
ある)ハマスの武装勢力がガザから
イスラエル国内に侵入、1200名ほど
の死者が出る。これを機に、イランと
そのproxy VS イスラエルの戦争が
始まる
⇒ 現在に至る

対立の根底にある主要因の1つのが
イランによる核開発であることは、
明らかですよね。

平和利用だよ~~

イスラエルだけでなく、そもそもIAEA
も2025年6月にはイランがNPTの下
での義務を履行していないとの決議を
採択しています。
Atomic watchdog says Iran not complying with nuclear safeguards | UN News

一方、イランは以前から常に、自分
たちの核開発はすべて「平和利用」の
ためだと主張してきました:
Does have Iran have nuclear weapons? What to know about their nuclear program | CNN

ですが、U-235濃度が60%というの
は、どう考えても民生用用途がない
のです。
ウラニウムの濃縮レベルと用途に
関するチャートはたびたび再掲して
きましたが、読者の皆様の便益の
ためしつこくも再度紹介しておき
ますね。

くどいけど再掲
それだけ、重要なチャートです

このチャートで、核燃料として使える
のは20%までなのですね。
それを超えると、核兵器を目指して
いるとしか見なされないんです。
しかもイランは、上述のIAEAの決議
を受け、「新たなU濃縮工場を作る」
と述べていました。
Iran to replace first-generation centrifgues with sixth generations at Fordo nuclear site – Tehran Times

なお、そうした指摘をしていると~~
~~おまえは、イスラエル寄りで
イランを非難したいのか!?
といった誤解を招きかねませんね。
そうした誤解を防止するため、上の
黒いメニューでページ c-3) , c-4) も
お読みくださいな。イスラエルは
すでに以前から核兵器を保有している
ようですし、それを「やかんをのせ
たら~~」はとっくに紹介済みです。

こうした、「今 行われている戦争の
根底にある、U濃縮」なんて問題は、
この時期であれば日本の反原発諸団体
も盛んに情報発信すべき問題です。
それなのに。
皆様、そうした情報が国内の反原発
団体から聞こえてきていますか??
反原発団体のみなさま、もっと機会
をとらえて情報発信をしましょうよ!
核発電から切り離せないproliferation
risksが顕在化し、現に戦争になって
いるという現実を、2025年6月18日
現在、我々は見ているのですから!

ポーズ 2, 20分クロッキー
普段はやらないこと、やってるのね~
私の20分クロッキー

ただ、核問題への入門レベルの方々の
中には、
「60%になったら、戦争になるの~~?
どういうこと??」
と不思議がってらっしゃる方々も、
確かにいらっしゃいます。
「やかんをのせたら~~」は本来、
そうした入門レベルの読者を想定して
いないのですが、イラン vs イスラ
エル戦争という機会ですので、例外的
にこのページでは
「なんで、U濃縮をするの??」を
入門レベルで説明しますね。

「なんで、U濃縮をするの??」
(全く入門レベルの説明です。
「そんなこと、とっくに知って
らあ~」と仰る方々は、無視して
くださいな)

ウラニウム(ウラン)の種類

まず、同じUranium (U) といっても、
いくつも種類があります。
U-238とか、U-235とか、U-233とか。
化学的性質は同じなんだけど、核分裂や
放射線、半減期といった核物理的な性質
が異なるんです。
半減期って? 放射性物質は放射線を
出しながら「勝手に」他の元素に
変わっていくのですが、今ある量の
半分が他の元素に変わるまでの時間の
ことですね。

で、U-235やU-233などは「核分裂性」
つまり ↓ こんな感じの反応を起こし
やすいのですね:

核分裂とは? ごくごく大雑把に

大きな原子核が分裂して、小さな
原子核の別元素に「変身」するわけ
です。
U-238は、この分裂を起こしにくい
のですね。

で、核分裂の際には大量の放射線や
熱なども発生します。
そこで、核分裂を人為的に引き起こ
して大量の熱などを発生させる兵器
が、核分裂兵器(つまり、原爆)と
いうわけです。

U鉱石にハンマー ⇒ 爆発?? いえ、そんなことは起こりません

じゃあ、U鉱石を粉砕したり加熱し
たら、爆発するの?

しません。
なぜか?
自然状態では、U鉱石中には平均で
0.7%程度しかU-235は含まれて
おらず、残る99.3%のほとんどは
非分裂性のU-238であるためですね。

ということは・・・
ウラニウムの核兵器や核燃料を作る
には、何とかしてU-235の濃度を
高めないといけません。現在では多く
の場合、235と238というわずかな
重さの違いに着目して、遠心分離機で
これを行っています。ただ、鉱石の
ままでは遠心分離すら無理なので、
UF6つまり六フッ化ウラニウムという
気体にしやすい(沸点が56.5C) 化合
物に「転換」して、遠心分離器にかけ
ます。
目標とする濃度に到達したら、UF6を
Uに「還元」します。
現在の主流原子炉である軽水炉の場合、
核燃料のU-235濃度は3-5%程度です。
HTGR(高温ガス炉)のような新型
原子炉の一部では、上の図にある
HALEUという核燃料を使うものも
あります。

一方の核兵器用Uは235の濃度が
はるかに高く、90%以上が必要です。

スパークキャンディーの発砲粒
0.7%じゃ、全然泡が出ない
92%だと、人間が風船になる!

ですからU濃縮では、20%を超える
濃縮を誰かがやらかすと、
「何を作るつもりだ!?」と疑惑の
目を向けられるのですね。

「核兵器用」U濃縮と「平和利用つまり
核燃料用」U濃縮とは
基本的に同じ技術であり、同じ設備で
できるものですから。

そしてもともと、U濃縮は核兵器製造
のためにマンハッタン計画などで使用
された(テネシー州オークリッジ)
技術でして、後に核燃料に転用された
ものです。
たとえば、次を参照:
マンハッタン計画 (16-03-01-09) – ATOMICA –
それと、そもそも世界初の原子炉に
よる発電実験に成功したのはアメリカ
のアルゴンヌ国立研究所のEBR-I
原子炉で、1951年12月のことでした。
マンハッタン計画よりも数年後のこと
だったという事実にご注意くださいな。
History of nuclear power – Wikipedia

このU濃縮だけを見ても、核において
は「兵器と発電とは不可分」だという
事実が明らかですよね。

こんなんを、何百台も連結しまんねん

ついでに、
U濃縮では大量の遠心分離機を駆動
させるので、大量の電力を消費します。
発電用の核燃料の濃縮という作業だけ
で、相当な電力が必要です。
参照:
上の黒いメニューの下の方、付録 w-1)
この問題については、また後日のHOME
の記事で取り上げる予定です。

もひとつ ついでに
日本の反原発団体の多くからは現時点
(2025年6月19日)で、上述の
「核兵器と核発電の不可分性の実例と
してのU濃縮」という事実を指摘する
声が、あまり聞こえてきません。
なんで??この指摘を行う、絶好の
機会が来ていると、私は考えるの
ですが??

現に戦争やらかしとんねんで~
原因の1つを指摘せな

核 ⇒ 紛争・戦争 ⇒ エネルギー価格
高騰 ⇒ 「原発再稼働して、電気代
下げろ!」との声  という悪循環
(これも、全く入門レベルの内容
ですよ)

世界で現在進行中の紛争/緊張のうち、
主なものは次の4つだと思いますが、
いずれも「核がらみ」ですよね

・インド vs パキスタン (ともに
核兵器を保有)
・ロシア vs ウクライナ (ロシアが
”核使用の脅し” をすでに何度も)
・イスラエル vs イラン (上述の
通り)
・北朝鮮 vs 韓国 (北の核に対抗
して韓国も核武装すべきだ、との
論調が)

実際にこうした現状を解消していき
たいのなら、核兵器を廃絶する以外
に選択がないことには、ご同意いた
だけると思います。

で、核兵器を廃絶するのなら
もともとその製造技術である核発電
も廃絶しませんと ・・・ ここで、
「でも、電気代がこんなに高い
のに、どうするんだ!?」
「原発なしで、どうやってCO2を
削減するんだ??」
という反論が返ってくるのが、
2025年6月現在の日本社会ですよね。

よそから買わんでも、ウチにあるがな~~

まず、電気代についてもCO2削減に
ついても有効なのが再生可能エネル
ギーとその蓄電の拡大・普及である
ことは、明らかでしょう。エネルギー
源の殆どを輸入に依存している現状
では、世界情勢によるエネルギー
価格高騰に直撃されるのは当然です。
これに対し、太陽エネルギーも風も
地熱も国内にあるエネルギー源です。

次に電気代についてですが
・ まず、柏崎刈羽原発が再稼働した
と仮定して、東京での電気料金はどの
程度安くなるのでしょうか?すでに、
試算が公表されています。値下げ効果
は、きわめて僅かだそうです。
原発再稼働で電気料金はどうなるのか?―答え 多くはたいして変わらない― | 原子力資料情報室(CNIC)
さらにTEPCO自体は、再稼働による
値下げを否定しています
一部報道における「柏崎刈羽が再稼働した場合の電気料金の影響 」について

・ さらに、核兵器製造技術が地球上に
蔓延してしまえば ⇒ 紛争リスクが
増大 ⇒ 新たなエネルギー供給の危機、
という悪循環も考えられますよね。

そして、「既存原発を再稼働して、
電気料金を下げろ」という主張ですが:
・ 日本国内では現在、ウラニウム鉱石
を算出しておらず、Uは100%輸入
依存のエネルギー源です。⇒ つまり、
世界のどこかでの紛争などで、原発の
電気料金も変動する。
・ U価格も、需給関係などに応じて
変動します (すでに、上の黒い
メニューにあるページ s-0)で指摘済み)
特に、万一、韓国が北朝鮮に対抗して
核兵器開発を始めた場合、Uへの需要
が増大 ⇒ U価格が上昇 となる公算
が大きいですよね。
・ 「既存原発の再稼働」を前提と
した主張ですが、日本の既存原発の
多くはかなり老朽化しています。
つまり、再稼働を蔓延させて「国を
挙げて原発依存体質」になって
しまった場合、いずれ既存原発の
廃炉 ⇒ 新設 が必要になってしまい
ます。
ところが。今や原発の新設は膨大な
費用のプロジェクトになっています!
たとえば、上の黒いメニューの上部
にあるページ al-4) で指摘済み)
いずれそのとき、電気料金はまた
急上昇することでしょう。


ほんとかしら??
私の20分クロッキー

それと原発が本当にCO2を出さない
のか否かについては、「やかんを
のせたら~~」のフォーカスを
外れるので「付録」扱いなのですが、
上の黒いメニューの下部にある
付録 w-1)  付録 w-3)  付録 w-8)
付録 w-18)
などで短く説明しております。

この「核 ⇒ 紛争 ⇒ エネルギー
価格高騰 ⇒ 核発電を求める声」と
いう悪循環を見えにくくしてきた、
一部の反原発団体の責任

簡略化していえば、いまだに
「原発問題」といえば、
推進: 電力需要 + CO2削減
vs  反対: 原発事故 + 核廃棄物
というフィールドで論じられること
が多いですよね。

明らかに、視野狭窄です。もともと
核兵器製造技術に「やかんをのせて」
発電するのが核発電なので、原発事故
も重要問題ですが、それ以上の深刻な
問題としてproliferationつまり
「核兵器と核発電の不可分性」を
論じるのが当然なのですが。
日本語圏では、そのproliferationが
小さな扱いで済まされてきました。

こうした視野狭窄に陥ってきた
反原発団体が、日本では少なくあり
ません。実際に、私自身もいくつか
の反原発団体に協力してきましたが、
この視野狭窄に頻繁に悩まされて
きました。


Give him a listen —
私の人体デッサン

「やかんをのせたら~~」では頻繁
に紹介してきたアメリカのAl Gore
元副大統領のインタビューを、
まだの方は必ずお読みくださいませ。
ページ 付録 w-4) です。

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