誰が言い出した?? 「原発廃止 → ブラックアウト → 病院で停電」というトンデモ飛躍

本サイトのフォーカスから離れた問題ですが~~

本ウェブサイト「やかんをのせたら~~」のフォーカスは proliferation risks
(核発電を経由しての、核兵器の拡散リスク)にあります。
だから、「原発廃止しても、停電しないのですか?」という、社会的マインド
コントロールによる不安については、本ウェブサイトでは基本的には
対応しておりません。
他の反原発活動の皆様が、この問題には充分な情報発信を行ってらっしゃる
ので、私がいまさら取り上げるまでもない。ということです。。

私自身が1980年代後半にエネ庁関連で原発推進広報の仕事に関わっていたので、
こうした「停電不安」を煽る社会的プロパガンダが行われていた事実は、
実体験から知っております。でも結局は、日本国の原発推進の裏には
「潜在的核抑止」という問題があることを知ったので、反核兵器・反核発電に
定位し、1991年にその広報の仕事を辞めたのでした。

ただ、いまだに(2021年10月になっても)、
「原発廃止 → 停電 → 病院などで救命機器が停止」という不安を訴える
方々が社会の一部にいらっしゃるようなので、
ごく短くコメントしておきますね。
詳しくは、他の反原発団体ウェブサイトなどをお探しくださいな。
(本サイトのフォーカスからは、離れた問題なので)

☆ まず、病院などには非常用の自家発電装置が備わっています。
緊急時を考えた装備をしておくのは、病院などの施設では当然のことでしょう。

Floating towards the light

もっと大事な問題があるでしょ~ 私のソフトパステル デッサンから

 

もっと本質的な問題として、原発は大都市から離れた田園地域に
あり、送電グリッドで長距離送電をしています
たとえば、柏崎刈羽原発(2021年10月現在、停止中ですが)から
東京新宿までなら、直線距離で大まかに300㎞ほどあります。
その距離を、送電線で送電しないといけないわけですね。
発電所がまったく問題なくフル稼働していても、300㎞を
結ぶ送電グリッドのどこかで落雷や地震などあれば、
その発電所からの電気は新宿には来ないわけです。

だから、ほんとに電力供給を安定化させたければ、
発電の分散化が必要
たとえば新宿の電力供給をさらに安定化させるなら、やはり新宿近辺に
発電装置を設けるのが賢明です。原発がこれには不向きなのは、
言うまでもありませんよね。
建物の屋上などに太陽光パネルを設けるのは、環境への負荷も少なくて、
適切だと考えます。山林を伐採してメガソーラーを建設 ・・ なんていうのは、
私は賛成できませんが、すでに建っている建築物の屋上に自家消費用の
パネルを設置するなら、環境への影響も少なくて済むはずです。

それと、そうした屋上・屋根パネルが普及すると、好ましい副作用
あります。その地域の気温が下がるわけですね。
これ、真夏の熱中症防止には好ましい副作用ですよね。
今年の8月もそうでしたが、くらくらする危険な暑さの中で道を歩いていて、
ご高齢の方が日陰で立ちすくんでおられて、「大丈夫ですか?」と
声をかけたことが何度かありました。(今年の夏だけでも)
いつも、「暑くて、日陰にいないと倒れそうで~~」という趣旨のお返事でした。

あんまりな暑さは、実に危険なのです。
熱中症による救急搬送、1,805人に減少…今後も注意必要 | リセマム (resemom.jp)
などにも、具体的な人数の報道があります。
地域としての夏の気温を下げる取り組みが必要です。

まあ、上記のような問題は、詳しくは他の反原発サイトをお調べくだされば、
書いてあることなので、これくらいにしておきますね。

早く戻りましょ ・・・

早く戻りましょ ・・・           私の20分クロッキーから

 

私が問題にしたいのは、むしろ、「原発廃止 → 停電」という「思考のショート
サーキット」がなぜ蔓延してしまったのか? という社会的マインド コントロール
です。昔々、原発推進広報の仕事に携わっていた私としては、やはり「原発推進
プロパガンダ」が広範に浸透したという問題を指摘したく思うのです。

・ 「平和利用」というマヤカシ   もそうですし、
・ 「核発電」といわず、「原子力発電」という名称が普及してしまった
ことも、そうしたプロパガンダの効果でしょう。

軍事が関わると、国家は社会的プロパガンダに打って出るものです。
ナチスもそうでしたし、
イラクに侵攻したときのアメリカもそうでしたよね。

では、本サイトのフォーカスを外れた問題なので、ここまでに。
次回は、Guarding Indiaによる記事に戻ります。

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中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 2

中国のICBM用サイロ増設に対するインドの反応実例、
Guarding India, 2021年8月26日の記事の紹介を続けます。

Why China is building more missile silos – Guarding India
(中国、ミサイル用サイロを増設する狙いは?)

(私による日本語化)

中国がミサイル用サイロを増設しているのは、なぜか?

この理由としては、次の3種類が考えられる。

1つ目。  中国の政治科学を研究している人たちの一部によれば、今回のサイロ増設によって中国は「警告即発射」(launch-on-warning、LOW)という姿勢に乗り換えようとしているそうだ。LOWでは、敵国からのミサイルを発見次第、それが自国内の標的に到達しないうちに、その敵国へとミサイルを発射する。

LOWつまりLaunch On Warningの概略

LOWつまりLaunch On Warningの概略

中国の核武装戦略は今までは、1964年からあまり変わらずにいた。同年、中国初の核兵器爆発に成功したのだ。 それ以来最近まで、中国の戦略の基本は、核兵器を始めて爆発させた時点からあまり変わっていない。確実な報復をできるようにすることで、核抑止を実現するというものだ。そのために欠かせない要件として、敵からの先制攻撃を受けても、中国の有している核兵器が機能を続けられるように保つことが必要だ。敵からの先制攻撃が通常兵器であっても、核兵器であっても違いはない。このLOWという防衛策へと移行するためには、中国はいくつかの核弾頭をミサイルに装備して、それらをいつでも発射できる状態に保ち、迅速な報復ができるようにしておかねばならない。今のところ中国では、弾頭とミサイルとを警戒オフの状態で保管しており、この両者は指揮系統が異なる。

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

2013 年に中国の人民解放軍の軍事分所であるScience of Military Strategy (軍事戦戦略科学)が発表したある文書によれば、中国がLOW方針を実施することは「あり得る」そうだ。 さらに2015年発表の2015年防衛白書には、「迅速な対応」という言及がある。アメリカの戦略軍(US Strategic Command (Stratcom) )のCharles A Richard 司令官は、2021年4月のアメリカ上院での証言で、「中国軍の一部は、すでにLOW方針に切り替えている」と述べた。

だが、サイロだけでは、特に現時点のように建設初期段階では、中国軍がLOWに切り替えようとしていることの断定的な証拠とはならない。

2つ目  サイロ増設により中国は、核弾頭備蓄の増大という目標を実現できる。

もっと作れ!

もっと作れ!

現在、中国が保有している核弾頭はおよそ350個である。非営利団体であるFAS(アメリカ科学者連盟)の核情報プロジェクトを担当しているHans M Kristensen と Matt Kordaの推定によれば、その350個の核弾頭のうち272個は作戦部隊に割り当てられており、残る78個は新設の固形燃料型ICBMであるDF-41に向けて生産された。

地上配備のミサイルは中国には約150基あり、それらで運べる核弾頭数は180から190にのぼり、アメリカの一部を攻撃できる。今回新設中のサイロすべてに単一核弾頭のミサイルを配備すれば、子の核弾頭総数は410から440にまで急増してしまう。完成したサイロすべてにDF-41を配備した場合には、DF-41には1基当たり2から3個の核弾頭を配備できるので、この総数はさらに増大し930から940に達する。

そうするためには、中国は兵器在庫にあるDF-41を増やし、特に核弾頭総数を3倍ほどに増やさねばならない。これは、近未来中には実現できそうでない。だが、サイロ増設の様子からは、中国の核弾頭数増大やDF-41進展の匂いはしていない。
*******************
まだまだ、次回に続きます。

日本語化していて思うのですが、やはりインドはずっと中国とは対立してきただけ
あって、中国の軍備増強などには敏感ですね。日本語メディアの多くが「中国軍 →
尖閣列島、台湾海峡」といった側面ばかりを取り上げ、ニュースの受け手の一部も
「嫌中」といった短絡した反応に走りやすいのに対して、このGuarding Indiaの記事は
中国の動きの裏にある意図を探ろうとしているのが、よくお分かりになると思います。

アジアに限らず、核発電に伴う動きは核武装の動きと連動している場合が少なからずあり、そうした実例も今後とも本ウェブサイト「やかんをのせたら~~」では、
紹介してまいります。

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中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋

中国が新たなICBMサイロ場を建設中だというニュースを聞いて、当然アメリカの反応も気になりますが、世界情勢の基本をわきまえてらっしゃる方々であれば、もう1つの大国の反応も心配になったはずです。そう、インドですね。

以前から、中国とは対立してきたこの国、しかも核兵器も保有しているこの国の反応は??
それを知りたくて、Guarding Indiaというウェブサイトの記事を見つけました。

8月終わりの記事なので、もっと早く紹介したかったのですが、他に
北朝鮮のミサイル発射の件やパキスタンの核兵器がアフガニスタンに
入る危険性といった深刻な問題が発生したため、ようやく今
(2021年10月2日)になって紹介できます。

これもかなり長いので、何回かに分けて紹介しますね。

Guarding India, 2021年8月26日

Why China is building more missile silos – Guarding India
(中国、ミサイル用サイロを増設する狙いは?)

(私による日本語化)

衛星画像から、中国が少なくても3か所で新たなICBM用サイロ場を建設中であることが判明している。ガンスー(甘粛)省のユーメン(玉門)近郊、ジンジアン(新疆ウイグル)のハミ近郊、そして内モンゴルのオルドス市のハンギン旗の3か所だ。

きわめて概略的な地図ですよ

きわめて概略的な地図ですよ

中国が建設中とみられるミサイル用サイロは、ユーメンでは約120基、ハミでは約110基、ハンギンでは29基とされる。今年これまでに人民共和国陸軍ロケット部隊(PLARF)のジランタイ トレーニング場で16 基のミサイル用サイロが検出されている。このトレーニング場も、内モンゴルにある。

ユーメンのトレーニング場の発見につながったのは商用人工衛星の画像で、カリフォルニアのジェームズ マーティン不拡散研究センター(James Martin Center for Nonproliferation Studies)の研究者たちが発見した。ハミのトレーニング場を特定したのは米国科学者連盟(FAS)の核問題の専門家たちで、Planet Labs の衛星画像を利用した。ハンギンのトレーニング場は、ワシントンDCの中国航空研究所(China Aerospace Studies Institute)の研究者たちが発見した。

ユーメンとハミのトレーニング場は同一的で、サイロは完ぺきなグリッドのパターンで配列されている。サイロとサイロの間隔は、ほぼ3㎞だ。一部のサイロには、ドーム状のシャッターが設けられている。この2つの施設をサポートしているのは、近隣にあるPLARFの各種施設だ。

今年(2021年)に上記のサイロ軍が発見されたのだが、それに先立つ数十年間は中国はわずか20基のミサイル用サイロしか運用しておらず、そこにはDF-5という液体燃料型の大陸間弾道弾(ICBM)が配備されていた。現在行われている建設工事が完了すれば、中国が保有するミサイル用サイロの数は250から270に達し、ここ数十年間に同国が保持 していた数の10倍以上に増大する。
**********
長いので、ここで切ります。残りは、次回以降に。

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パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘 2

そのタリバンが核兵器を入手する危険性を指摘するBolton氏の主張、後半を紹介しますね。

The Washington Post, 2021年8月23日
John R. Boltonによる主張
元の記事は、以下のリンク先に。

Opinion | John Bolton: Kabul’s fall poses a risk that Pakistani extremists will increase their influence in Islamabad – The Washington Post

(私による日本語化)
そうした危険を考えるなら、アフガニスタンにはアメリカ軍とNATO軍の駐在を続けるべきであったという理由として、充分だ。駐在を続けていれば、この国での新たなテロリストの発生する危険を監視するだけでなく、パキスタンとイランの国境の動向の監視も続けることができたはずだ。トランプとバイデン両政権は遺憾にも、撤退方針を採用したため、そうした保険となる施策をやめにしてしまったのだ。

消防隊の中に混じって~~

消防隊の中に混じって~~

冷戦時代のソヴィエト軍との争いから、アメリカ2001年の9/11テロ以来の行動に至るまで、パキスタンとアメリカの強力は不可欠だった。それがあれば、アメリカ政府はパキスタン政府の核政策やテロリスト支援政策に対し、激しい批判を投げかけることもできたはずだ。今ではアフガニスタンはタリバンの手に落ち、アメリカは今まで程にはパキスタン政府の善意やロジスティクス支援を必要としない。もちろん予想不可能な要因が膨大にあるが、パキスタンの各能力を考えるなら、パキスタン政府が今後もタリバンその他のテロ集団の支援を続けるようであれば、アメリカはパキスタンに対して強く当たらねばならない。放火魔と消防隊員の両方で構成されている政府は、世界でもパキスタンだけだと言われてきている。消防隊員たちは活動を強化しないといけない。パキスタン市民たちに、近年の同国政府によるテロリスト支援政策によってパキスタンの安全保障が劣化したのであって、強化されたのではないことを説得せねばならない。

パキスタンがタリバンへの支援をやめたという明確な証拠が見当たらない現在、アメリカもパキスタン政府に対する援助を中止すべきだ。また、パキスタンを「NATO以外の同盟国」のリストから外すべきだ。テロに対抗するための制裁を強化するなど、やるべきことはまだある。また、インドにさらに接近するべきである。

彼らが作って、誰かが買っていった

彼らが作って、誰かが買っていった

最重要課題として、パキスタンが保有している核兵器や兵器製造施設に最大限の視線を注ぐべきだ。将来、パキスタンにテロリスト政権が誕生した場合(あるいは、現存の政権であっても、もしくは似たような姿勢の後継政権が登場したとしても)、テロリストに核開発能力を手渡そうとする気配が見られたなら、それを防止する手を打たねばならない。これは大変な苦渋に満ちた選択ではあるが、核兵器がテロリストの手にわたるなら、結果はもっと悲惨なものとなる。中国は長年パキスタンの核兵器開発活動に強大な支援を行ってきており、同国の核兵器が悪用された場合には、中国も責任を問われる。アメリカの意図と真剣さとを、中国に知らしめねばならない。

バイデン大統領は、そうした必要な手を打つだけの覚悟を決めているのだろうか?おそらく、そうではあるまい。George Packerが最近発表したRichard Holbrookeという、アメリカ政府の外交官でアフガニスタンとパキスタンに対する特命代表を務めた人物の伝記を見ると、オバマ政権時代にアフガニスタン問題に関してホワイトハウスの危機管理室で開かれたミーティングにおいてHolbrookeが記したノートからの引用が見つかる。Packerの著作によれば、そうしたノートにはHolbrookeによる個人の感想が挿入されている。たとえば、こうだ。「ジョー バイデン副大統領によれば、パキスタンの利害はいずれも、アメリカの利害ででもあったそうだ  ・・・ はあ!?」  この発言の時点ですでに、このバイデンの発言は誤りであったし、今ではもはや、危険な誤りだ。Holbrookeは的確で、短い言葉ながらも多くを語っていた。バイデンが認識を変えたことを願おう。

********************
NATO軍の駐在を続けるべきだった、といったBolton氏の主張については、読者の皆様もご意見が分かれると思います。(あくまで彼の主張の紹介であって、私フランシスがそれをすべて肯定しているわけじゃないことには、ご注意くださいね)

ただ、パキスタンの核兵器が同国やアフガニスタンの武装勢力の手に渡ってしまう危険性をBolton氏のような専門家が指摘しているという点で、軽視できない主張ですよね。

さらに、たとえばISIS(日本のメディアは「イスラム国」と呼んでますが、パキスタンのISIと混同しないでね) は、少なくても2014年までには日本にも上陸していたようですし。
イスラム国、大学生が参加を計画 「勤務地:シリア」アキバの古書店に怪しげな求人 | ハフポスト (huffingtonpost.jp)

 

 

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パキスタンの核兵器がアフガニスタンに入り込む危険性、他の論者の指摘

では、そのタリバンが核兵器を入手する危険性を指摘する見解の実例を、さらに紹介しますね。
The Washington Post, 2021年8月23日
John R. Boltonによる主張

元の記事は、以下のリンク先に。
Opinion | John Bolton: Kabul’s fall poses a risk that Pakistani extremists will increase their influence in Islamabad – The Washington Post
(主張: ジョン ボルトン氏 ー カブール陥落で、パキスタンの過激派がパキスタン政府への影響力を強める恐れ)

(私による日本語化)

John R. Bolton(以下、「ボルトン氏」)はアメリカのトランプ政権で国家安全保障問題担当顧問を務め、「The Room Where It Happened: A White House Memoir」(このタイトルを翻訳しておくと、この部屋でそれは起きた ― ホワイトハウス回顧録)というトランプ政権の回顧録を著している。

・・・(ポッドキャストに関する告知が、英語の元記事にはあります。ここでは省略) ・・・

闇の中で政府から ・・・

闇の中で政府から ・・・

(本文)

アメリカがアフガニスタンから「脱出」したが、これが及ぼす深刻な波紋は多数あって、いずれに着目すべきかに頭を悩ませるほどだ。特に重大な課題の中でも、最も突出しているのがパキスタンの今後だ。この数十年間、パキスタン政府は無謀なまでに核兵器保有に躍起で、しかもイスラム主義テロ勢力を支援してきている。その脅威をアメリカの政策担当者たちは今まで一貫して過小評価してきたか、対処を誤ってきた。カブールがタリバンに陥落した今、無視や言葉濁しができる時代は終わったのだ。

すぐ隣のアフガニスタンをタリバンが掌握した以上、パキスタンの政府に対する影響力が既に強大な過激派がその影響力をさらに増大させ、いずれは全権を掌握してしまう脅威を無視できない。

18から19世紀にかけて今のドイツの主要勢力であったプロシアという王国では、他の諸国が軍を有しているのに対し、プロシア軍が王国を有しているといった表現がよくなされた。この言葉は、パキスタンにも良く当てはまる。「鋼鉄の殿堂」とも呼ばれるイスラマバードの軍部は、確かに国家安全保障に関しては実質上の政府であり、軍部以外の政府部門はベニア板の構造物のようだ。同国の諜報機関であるInter-Services Intelligence(ISL、インターサービス インテリジェンス)は以前から過激派の温床となっており、しかも過激派は軍部全体にも入り込んでいてより高いランクへと歩を進めている。現在の首相イムラン カーンも今までの選挙で選ばれた指導者たちの多くと同様、「表向きの顔」を務めているに過ぎない。

アフガンへの旧ソヴィエトの侵攻と敗退の略述

アフガンへの旧ソヴィエトの侵攻と敗退の略述(画像をクリックすれば、拡大します)

旧ソヴィエト軍がアフガニスタンに侵攻し戦闘を展開していた頃(主に1980年代)、ISIはアフガニスタンのムジャヒディンという反ソヴィエト軍の勢力を広範に支援していた。これには宗教的な理由と、国家安全保障上の理由とがあった。アメリカ政府も、「ムジャ」にパキスタン経由で支援を送るという誤りを犯した。パキスタン経由だったため、実際にどのような政治家や軍人が援助を受けていたのかが、分からなかったのだ。さらにパキスタンはテロリスト組織がカシミールでインドを攻撃目標とすることも可能にした。インドとパキスタンが別々に英国から独立した1947年以来、インドとパキスタンは敵対を続けており、その一触即発の対立地域がカシミールなのだ。

カシミールの現状

カシミールの現状

旧ソヴィエト軍は1989年にアフガニスタンから撤退したが、ISIは当然のようにタリバンなどの勢力を支援、そうした勢力がアフガニスタンを1996年に掌中に収めた。パキスタン軍部の基本認識として、カブールの政府が親パキスタンであれば、インドに対抗するうえで「戦略的深さ」が得られる。パキスタンの指導層は、それをタリバンが実現してくれたと考えているのだ。2001年にアメリカ軍と反タリバン勢力などの連合軍がタリバン政権を打倒した際、ISIはパキスタン国内にタリバンの避難地を設け、武器や必要物を支給した。もっとも、パキスタン政府はそれを以前から否定しているが。

そして今、タリバンがアフガニスタンの政権を再度握った。パキスタン国内のタリバン勢力やその他の過激派に対して、アフガンのタリバンが避難地へのお礼をする可能性がある。パキスタンのタリバンとは、アフガニスタンのタリバンと同盟している過激派だ。世界にテロリスト政権がもう1つ増えて欲しくはないのは、明らかだ。だがパキスタンの抱えているリスクは、他の多くの国とは規模がまったく異なる。アフガニスタンではISIS(イスラム国)も基盤を獲得しつつあるが、それやアルカイーダと比べても、タリバンの危険性は見劣りしない。

イランは今も核兵器を手に入れようと躍起だが、パキスタンは既に数十基の核兵器、おそらくは150以上をすでに保有している。この数値は、公に発表されている情報源によるものだ。そうした核兵器が過激派の手にわたるなら、インドにとってのパキスタンの脅威は強大なものとなり、南アジア地域の緊張は歴史上前例のないレベルに達するだろう。特に、パキスタンの核兵器プログラムや弾道ミサイル プログラムでは、中国が中心的な位置を占めているという事実を考えるならば。さらに、パキスタンの核兵器がテロ集団の手にわたり、世界のどこかで爆発するという危険性を考えるなら、新たな9/11的テロ事件が発生する恐れもある。その被害は、2001年のものを上回ることになろう。
*************

この記事も長いので、後半は次回に。

なお、あくまでBolton氏の主張の紹介であり、私(フランシス)個人の主張では
ないことは、忘れないでくださいね。
私は「アフガニスタンの何れかの武装勢力が、パキスタンの核兵器を入手する危険性」を
心配しているのですが、Bolton氏のような安全保障の専門家もその危険を指摘している、
ということです。Bolton氏の主張を何もかも、私が肯定しているわけでは、
ございません。

それと、Kemp氏やBolton氏に限らず、同様の危険性を憂慮する声は、
英語の報道には他にも見当たります。

 

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英国軍の元司令官が、パキスタンの核兵器のコントロールをタリバンが掌握する可能性を憂慮 2

The Times of Indiaによるケンプ元司令官の問題指摘の紹介、後半です。

(私による日本語化)

この元英軍司令官はさらにイランや中国、ロシアをも非難した。タリバンを支援しているというのだ。こうした状況ではこの南アジア地域は開発からも取り残されかねないが、その中で建設的な役割を演じることができるのはインドであると、この元司令官は述べた。

ケンプ氏の主張では、「イランもタリバンへの資金や資材提供で重要な役割を演じてきている。今回のタリバンの勝利にも、直接に貢献している。イランは聖戦勢力に資金や武器を与えて支援し、特にアフガニスタン駐在のアメリカと英国の軍人たちを殺害する軍事活動を支援した」

さらにケンプ氏によると、中国もタリバンに資金を拠出して反タリバン勢力の指導者たちを殺害させ、今後はアフガニスタンにある資源を「強奪する」とみられる。

カネやるよ、地下資源くれ

カネやるよ、地下資源くれ

この英軍の元司令官によると、「おそらくインドはこの地域で唯一、アフガニスタンで建設的な活動ができる国だ。だがパキスタンと中国が、インドを排除しようとするだろう」とのことだ。

「ロシアと中国はアフガニスタンを、西側に対する一種の武器として利用するだろう。特にアメリカに対して」とも、ケンプ氏は述べた。

「今回の米軍の無条件撤退のため、こうなることは確実で、予想できた」と語るこの元司令官によれば、ジョー バイデン大統領の政権が米軍の撤退を加速させたため、今回の現状はさらに迅速に訪れた。

その米軍撤退という決定のため、それまでのアフガニスタン政府は意気消沈してしまった。その前政府軍には以前から忠誠心に関する問題があり、そこに汚職や兵士への給料支払いの不定期性といった問題がさらに輪をかけたのだ、とこの大佐は述べている。

この元司令官はさらに、こうした展開のため難民問題が発生するという懸念も指摘した。アフガニスタンからの難民は、結局はヨーロッパに到来するだろう。そしてアフガニスタンは、「以前と変わらぬ暴虐で乱暴な暗黒の支配に戻ってしまう。今回のタリバン政権も、2001年ごろのものと何も変わらないからだ」という考えを述べ、それに疑いをはさむ余地もないとした。

さらに彼の主張では、アフガニスタンの支配をタリバンが再度手に入れたことで全世界の聖戦勢力が活気づき、アフガニスタンはそうした勢力にとっての安住の場となろう。

隠れ家と地下道があると ・・・

隠れ家と地下道があると ・・・

この元司令官は、アメリカのバイデン大統領による今回米軍をアフガニスタンから撤退した主な理由の1つとして、中国とロシアへの対抗に注力することがあるという主張を非難、「実際には逆効果だ」とした。

彼によれば、聖戦勢力はアメリカの力が衰えたものと認識、西側、特にアメリカに対する敵対を強化することだろう。さらに、我々西側諸国が西側に味方するものと期待していた国々も、西側の安定性に疑問を抱くようになるだろう。

「そうなると、アメリカの優越性が損なわれる」というのは、彼の結論である。

Yossi Kuperwasser氏はイスラエルの准将(予備軍)で、諜報と安全保障の専門家である。以前、イスラエル軍の軍事諜報部門の調査部のヘッドを務め、イスラエルの戦略問題省の長官も歴任した。そのKuperwasser氏も、上述と同様の意見だ。彼が強調している点として、今回のアフガニスタンでの展開のため、イスラエルも含む中東のアメリカの同盟諸国はワシントンの約束を信頼できないものとみなし、脅威に対しては自国で対抗する能力を強化することを主眼とすべきだという重大な教訓を学ぶことになろう、としている。*************

以上、英陸軍の元司令官としてアフガニスタンやイラクの戦場で指揮をとられたケンプ氏による主張を紹介した記事でした。
しかし、それほどの司令官といっても、一人だけの憂慮なら、「考えすぎだよ」と笑い飛ばす読者の方々もいらっしゃるかも。

問題は、現実には他の識者からも深刻な憂慮が上がっているってことです。そうした「他の実例」を次に紹介しますね。

 

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英国軍の元司令官が、パキスタンの核兵器のコントロールをタリバンが掌握する可能性を憂慮

英国軍の元司令官が、パキスタンの核兵器のコントロールをタリバンが掌握する可能性を憂慮

The Times of India、2021年8月16日付の記事より

正直、泣いてます! 下の9月8日の投稿で私は、タリバンがパキスタンの核兵器を入手してしまう危険性を大いに心配し、アフガニスタンやパキスタン情勢に詳しい読者の皆様からの情報を求めました。無論私としては、「シロートの杞憂」に終わることを願っていたのですね。事情に詳しい方々から、「考え過ぎだ、心配するな!」と慰めていただけることを願っていたのです。

でも。英国陸軍の元司令官で、アフガニスタンで軍の指揮にも当たっておられた軍人が、同様の懸念を表明されたら!??
そんな記事が、今年の8月16日付でThe Times of India紙にありました!やはり、インドはパキスタンの隣国で、しかもお互いに核兵器を保有して睨み合っているだけに、アフガンやパキスタンの軍事情勢には敏感ですね。日本語メディアの多数派とは大違い。

単なる「シロートの考え過ぎ」であってほしかった! でも、ただ泣いていても仕方がないので、その記事を日本語で紹介しますね。

The Times of India、2021年8月16日付の記事
Taliban Afghanistan News: Former British commander cautions Taliban may get control of Pakistan’s nuclear weapons | World News – Times of India (indiatimes.com)
(タリバン、アフガニスタン関連のニュース: 英軍の元司令官、タリバンがパキスタンの核兵器を握る恐れがあると警告)

手に入れたぞ!

手に入れたぞ!

(私による日本語化)

エルサレム発

パキスタンからの積極的な支援がなければ、タリバンがアメリカの支配下で軍事活動を維持し、さらにはアフガニスタンで今回のように勝利を収めることなど、できなかったはずだ。そう主張する英国陸軍の元司令官が、この月曜、イスラム聖戦勢力がパキスタンの核物資を掌中に収めて核武装を行う危険性があると憂慮を表明した。

エルサレムに本拠を置く非営利団体Media Centralのオンライン会議で発言したこの元司令官はリチャード ケンプ(Richard Kemp)大佐で、アフガニスタンやイラクも含む、世界でも特に熾烈な戦場で第一線に立ち軍隊を指揮した。同司令官によれば、「タリバンを作ったのはパキスタンであり、その資金を拠出し支援したのもパキスタンだ」

アフガニスタンでの過酷な戦闘では、この日曜日に勝敗を決する出来事があった。(当時の)タリバン反政府勢力がカブールに迫り、同市に入る前に大統領官邸を占拠、戦闘態勢を整えていたはずのアシュラフ ガニ大統領が他の多数の市民や滞在外国人たちと一緒に、アフガニスタンから脱出したのだ。

ケンプ元司令官によれば、「パキスタンからの支援がなければ、タリバンが20年間もカルザイやガニ政権の下で勢力を保つことはできなかったはずだし、これだけの戦闘を展開することも、ましてや勝利を収めることもなかったはずだ」

だが同元司令官はパキスタンに対する警鐘も忘れてはいない。「イスラム聖戦主義の国家がすぐ隣にあるというのは、パキスタンにとっても大変な危険となる」

ご注文の品を、お届けに参りました~~

ご注文の品を、お届けに参りました~~

この元英軍司令官によれば、「アフガニスタンでの軍事活動の間、最大の脅威の1つとして我々が考えたのは、パキスタンにある核施設や核兵器施設の一部をタリバンが手に入れる、あるいは利用するのではないか、という危険性だ」

その危険性が生じる要因の1つとして、ケンプ元司令官によれば、パキスタン政府とタリバン全体、アフガニスタンのタリバン、パキスタンのタリバン、アルカイーダ、その他の聖戦勢力がパキスタン国内で織りなしている複雑な関係だがある。

「それは深刻な脅威で、忘れては困る。テロリスト集団が核兵器材料で武装するのだから。入手したからといって、必ずしも核ミサイルとして使用するとは限らないが、そうした材料があればタリバンその他のアフガニスタン国内の聖戦勢力は何らかの武装に利用できる」と、ケンプ氏は語った。
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この記事も長いですね。後半は次回に。

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イランの核施設の監視カメラに、新たなメモリーカードのインストール  2

イラン核施設監視に関するアメリカのNPRによる報道記事、後半を紹介します。

NPR、2021年9月12日(JSTでは13日)
元の記事は、下記リンク先に:
https://www.npr.org/2021/09/12/1036491483/iran-iaea-memory-cards-nuclear-site-cameras-jcpoa

筆者: Matthews Schwartz
(私による日本語化)

「この土壇場になってイランがIAEAによるカメラのメモリーカード取り換えを認めたことで、JCPOAを台無しにしたいと願うイラン政府の願いを先送りにした。これがなければ、イランの願う通りの結果になってしまっていたことだろう」 そう語るのは、Crisis Group(国際危機グループ、戦争回避のための調査や政策提言を行う)のイラン プロジェクトでディレクターを務めるAli Vaezだ。「これは、Raisiに対する最初の試金石となるもので、今回の合意によりこの新大統領がJCPOAの再建を願っていることが明らかになった。ただし、テヘランの政治体制の中にあってRaisiが充分な柔軟性を発揮し、苦渋に満ちた政治的譲渡を行えるか否かは、別の問題だ」

せめてお茶でも~~ ケーキの代わりにカメラを

せめてお茶でも~~ ケーキの代わりにカメラを

今回の合意によって、「JCPOA順守を再開するための会談の可能性を残すことができた。おそらく、10月初旬には次の会談ができるのではないか」 そう語るのは、Atlantic Council(アメリカが今後の世界の課題にどう対処すべきかを研究・提言する機関)の「イランの今後イニシアティブ」(Future of Iran Initiative)のディレクター、Barbara Slavin だ。「私の現時点で主な関心事項として、イランの交渉チームは今も姿勢を変えておらず、今まで6回のラウンドの会談の成果の上に今後も進んでいこうとしている」

だがFoundation for Defense of Democracies(民主主義防衛のための基金) というアメリカで新保守主義を推進する団体のシニアーフェローであるBehnam Ben Talebluによれば、他の見方もある。彼によれば、「この交渉を見るときには、騙されてはいけない。これは、パワー ポリティクス(力の政治)なのだ」。彼は、イランの核兵器開発に対し新たな問責決議を設けることを支持している。

二面性・・・

二面性・・・

イラン原子エネルギー機関がこの2月に発表したところでは、IAEAによるレビューができるよう、同機関は引き続き情報の記録を続けるという。だが国連の核監視機関IAEAのこの5月の発表によれば、その2月以来5月まで、IAEAは重要なデータを入手できていないとしていた。Ben Taleblu によると、「今回のIAEAによる“救済措置”によって、この2月から続くIAEAがモニター機器を利用できるという空約束の詐欺的策略が今後も続くことになろう。現実には、制裁を解除しないとモニターのテープやその他のデータを消去してしまうぞ、とイランが脅迫すれば、わずか2-3か月で今回のような危機が再発してしまうのだが」

Grossi は記者会見で、今回の合意がその場しのぎの策にすぎないことを認めている。「これを恒久的な解決策とすることなど、できない。何か月なのか、何日なのかはわからない。だが、決して長期的な対応とは言えない」と、彼は述べている。
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IAEAとはもともと、
1) 核兵器をあきらめな
2) そしたら、核発電をやらせてあげるよ
3) ただし、核兵器を本当にあきらめているか、査察して確認するからね

という「核発電という ”キャンディー” で核兵器をあきらめさせる」
ことを狙いにした機関でした。

それが現実に機能するには、上述の 3)つまり査察がしっかり機能しないと、
意味をなさないことは明白ですよね。

その査察が今回、あるいは北朝鮮のケースでも、しっかり機能できなかった
ことになります。
ならばもはや、現実的には、
・ この「キャンディーあげるから・・」という策を
やめにして、
・ 核兵器と核発電の両方を世界から廃絶する
という選択しかありますまい。

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イランの各施設の監視カメラに、新たなメモリーカードのインストール??

まず、日本語メディアは自民党の総裁選挙での河野太郎候補による「核燃料サイクル
廃止」発言(当然、既存の原発もいずれ廃炉にすることになりましょう)と、
それに対する財界や政界からの反発という話題で賑やかですね。

これについては、本「やかんをのせたら~~」ではあまり取り上げないことにしますね。
理由は2つで、
・ すでに日本語メディアがこれだけ騒いでいるので、ここで取り上げる必要はないで
しょう。本ウェブサイトでは、JCPOA再建交渉の件や、中国のICBMサイロ新設と
それに対する周辺諸国の反応、その他を引き続き取り上げていきますね。
日本語メディアだけを見ていると、世界の核関連の動向で見落としてしまう
問題が多数ある以上、そうした核関連の問題を取り上げることに、「やかんを
のせたら~~」のraison d’etre(存在理由)の一部があると考えておりますので。
・ そもそも私は、現時点の日本では支持政党がありません。つまり、自由民主党をも
支持しておりません。そんな私が、自民党内部の総裁選挙にトヤカク発言するのもねえ ~~

* なお、自民党総裁選挙と核開発の関連については、東京大学の安富教授が
「一月万札」というYouTubeチャネルにある9月17日付のビデオで、
アレコレ解説をしてらっしゃいます。
自民党総裁選過熱!河野太郎は完全に安倍晋三と旧自民党勢力に喧嘩を売った!核燃料サイクル停止発言に見る日本の原子力と核武装の歴史。安冨歩教授電話出演。一月万冊清水有高。 – YouTube
にございます。

ちょっと待て~~飛んで行って、話がある!

ちょっと待て~~飛んで行って、話がある!

では、今回は何を取り上げるのか?
イランの核施設へのIAEA査察に関する報道記事を紹介します。
アメリカのNPRによる報道ですね。

NPR(アメリカの非営利公共放送局)、2021年9月12日(JSTでは13日)
https://www.npr.org/2021/09/12/1036491483/iran-iaea-memory-cards-nuclear-site-cameras-jcpoa
(イラン、核施設のカメラへの新たなメモリーカードのインストールに合意)
筆者: Matthews Schwartz

(私による日本語化)

(写真下)
国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、IAEA)の事務局長Rafael Grossi (右)、テヘラン イマーム ホメイニ国際空港に到着しイラン原子エネルギー機関(Atomic Energy Organization of Iran)の代表代理Behrouz Kamalvandiと会談。土曜日。
AP提供

(本文)
イランの各施設を監視する査察カメラに国際検査官たちが新しいメモリーカードを入れることに、イランが同意した。

国連機関の1つであるIAEAは、イランがIAEAによる調査に協力せず監査活動を妨害しているとの発表をしたが、その数日後に今回の同意が得られた。アメリカも含む西側諸国はイランの不協力を公式に非難することを検討していたとされるが、そうした非難を行うと、2015年の核合意をイランに順守させようとする交渉の今後が危ぶまれてしまう恐れがある。

IAEA事務局長のRafael Grossiはこの週末にテヘランに飛び、イラン原子エネルギー機関(Atomic Energy Organization of Iran)の長と話し合った。Associated Press(AP)の報道によると、Grossiは帰国後に記者団に向かい「イランとは深刻なコミュニケーション断絶が発生していたのだが、解決せねばならない問題は山ほどあるため、断絶しているわけにはいかないことは言うまでもない。その断絶を解消できたと思う」と述べた。

今回の会合の後で両機関は共同声明を発表、「協力し合うという姿勢を再確認し」、対話を続けていくことを約束した、としている。この共同声明ではまた、検査官たちが「問題の発見された危機を修理し、記憶メディアを交換」できると承認している。

査察内容の記録は今後もテヘランで封印されたうえで保管されるため、IAEAの査察官たちは入手できない。だが2015年の核合意を回復するという合意に至った場合には、この週末のこうした合意によって「知識の継続性」が確保できるとGrossiは述べている。さらに損傷のあるカメラも交換できると、同事務局長は語った。

今まで、壊れたままやったんかいな~~?

今まで、壊れたままやったんかいな~~?

今回の展開は検査官たちにとってはちっぽけな勝利にすぎないと思われるかもしれないが、この週末の合意からは、イランの新政権が2015年の核合意を回復させる意欲を有している可能性もうかがえる。この核合意は、包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれる。2018年に当時のアメリカ大統領Donald Trump がこの合意から脱退し、イランに対して新たな経済制裁を実施したことで、この核合意の今後が危ぶまれることとなった。

アメリカのバイデン政権やヨーロッパ諸国は、この核合意の再建に努めてきた。だが先月イランでは強硬派のEbrahim Raisi大統領が就任、この新政権が今後の交渉に応じるか否かが不透明なままだ。今回の同意で、何らかの道が開けている可能性があるというアナリストたちもいる。
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長いので、今回はここまで。
残りは次回に。

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北朝鮮の、新型クルーズ ミサイル発射実験 2

今回の北朝鮮のミサイル発射実験について、The New York Timesの記事、後半を紹介しましょう。
話は前半から続いていますので、前半をまだお読みでない方は、すぐ下の前半紹介を
まずお読みくださいな。

それと、英語の元記事は
North Korea Reports Test of New Cruise Missile as Arms Race Intensifies – The New York Times (nytimes.com)
にございます。9月13日付の記事です。

(私による日本語化)

この韓国のミサイル開発制限が解除されたことに対して、北朝鮮は怒りをもって反応した。「アメリカによる、北朝鮮への敵対的方針が如実に表れている」というのだ。

軍事アナリストたちによると、この解除により韓国は、かなりの破壊力を持つ大型弾頭を装備した弾道ミサイルを製造できることになった。これであれば、北朝鮮がその核兵器を保管している地下のバンカーも標的にできる。北朝鮮の指導層も、戦時にはこうしたバンカーに隠れる。

昨年、文在寅大統領が韓国国防部の国防開発庁(Agency for Defense Development)で会見を持ったおり、同大統領は韓国が「世界でも最大級の弾頭を有する短距離弾道ミサイルを開発した」と述べている。明らかに、ヒュンムー4(玄武4)のことだ。このミサイルは、防衛の専門家たちによれば、北朝鮮全土を2トンの弾頭で標的にできる。

北朝鮮が実施した一番最近のミサイル試射は今年3月25日のことであったが、その際同国は2.5トンの弾頭のある新型弾道ミサイルだと発表した。今月になって韓国のニュース メディアが報道したところによれば、韓国はそれ以上の強力な兵器を開発中だという。つまり、短距離弾道ミサイルで弾頭は3トンに達するという。

空から降ってくる壊滅

空から降ってくる壊滅

こうした兵器開発のつばぜり合いから見て取れるように、両国はお互いを標的にするミサイルの強力化を進めており、飛行距離も弾頭の破壊力も増強し合っている。しかも、迎撃もよりしにくいものを開発している。

「韓国のミサイルの破壊力を増強し、射程を伸ばし、命中精度も向上する。それにより、抑止を実現し韓半島の安全と平和を保つのだ」と語るのは、韓国の防衛相だ。今月の発言である。

北朝鮮が今回のミサイル試験のことを発表した2日後の水曜には、中国のワン イー(王毅)外相と韓国のチョン ウィヨン(鄭義溶)とがソウルで会見、二国間関係ならびに進展しない核兵器削減交渉について話し合う予定だった。

韓半島(朝鮮半島)の緊張が高まったのは2017年のことで、この年に北朝鮮は大陸間弾道弾の試験を3回、そして地下核実験の第6回目を実施、国連からの制裁を受けることになった。そうした試験の後で北朝鮮は、アメリカ本土を核弾頭の射程に収めたと主張した。

行違う二人 ・・・

行違う二人 ・・・

トランプ前大統領は2018年から19年にかけて金正恩と3度にわたり会見を開いたのだが、両首脳は制裁ならびに北の核兵器とミサイルのプログラムに関して、合意に到達できなかった。

昨年10月そして今年1月に行われた軍事パレードで北朝鮮は、新開発の大陸間弾道ミサイルそして潜水艦発射式の弾道ミサイルと見られるものを世界に示した。国連の核監視機関であるIAEAは先月、北朝鮮がその主な核施設であるヨンビョン核施設を再稼働した模様だと発表している。

だが北朝鮮はICBMおよび核装置の試験については、2017年以降実施していない。同国の建国73周年を祝う軍事パレードがこの木曜日に実施されたばかりだが、そこでも新兵器は見られなかった。

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ヨンビョンの再稼働? → 今回のクルーズ ミサイル試験、という流れは、
とにかく気がかりですね。
で、皆様にもお考えいただきたいのですが、こういう状況にあって日本が核発電や
再処理などのシステムを保有することで、本当に「潜在的核抑止」なんてものが実現するのか??? 上の黒いメニューの下の方、ページ g-3) から g-6) で取り上げた問題です。

 

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