The Times of Indiaによるケンプ元司令官の問題指摘の紹介、後半です。
(私による日本語化)
この元英軍司令官はさらにイランや中国、ロシアをも非難した。タリバンを支援しているというのだ。こうした状況ではこの南アジア地域は開発からも取り残されかねないが、その中で建設的な役割を演じることができるのはインドであると、この元司令官は述べた。
ケンプ氏の主張では、「イランもタリバンへの資金や資材提供で重要な役割を演じてきている。今回のタリバンの勝利にも、直接に貢献している。イランは聖戦勢力に資金や武器を与えて支援し、特にアフガニスタン駐在のアメリカと英国の軍人たちを殺害する軍事活動を支援した」
さらにケンプ氏によると、中国もタリバンに資金を拠出して反タリバン勢力の指導者たちを殺害させ、今後はアフガニスタンにある資源を「強奪する」とみられる。
この英軍の元司令官によると、「おそらくインドはこの地域で唯一、アフガニスタンで建設的な活動ができる国だ。だがパキスタンと中国が、インドを排除しようとするだろう」とのことだ。
「ロシアと中国はアフガニスタンを、西側に対する一種の武器として利用するだろう。特にアメリカに対して」とも、ケンプ氏は述べた。
「今回の米軍の無条件撤退のため、こうなることは確実で、予想できた」と語るこの元司令官によれば、ジョー バイデン大統領の政権が米軍の撤退を加速させたため、今回の現状はさらに迅速に訪れた。
その米軍撤退という決定のため、それまでのアフガニスタン政府は意気消沈してしまった。その前政府軍には以前から忠誠心に関する問題があり、そこに汚職や兵士への給料支払いの不定期性といった問題がさらに輪をかけたのだ、とこの大佐は述べている。
この元司令官はさらに、こうした展開のため難民問題が発生するという懸念も指摘した。アフガニスタンからの難民は、結局はヨーロッパに到来するだろう。そしてアフガニスタンは、「以前と変わらぬ暴虐で乱暴な暗黒の支配に戻ってしまう。今回のタリバン政権も、2001年ごろのものと何も変わらないからだ」という考えを述べ、それに疑いをはさむ余地もないとした。
さらに彼の主張では、アフガニスタンの支配をタリバンが再度手に入れたことで全世界の聖戦勢力が活気づき、アフガニスタンはそうした勢力にとっての安住の場となろう。
この元司令官は、アメリカのバイデン大統領による今回米軍をアフガニスタンから撤退した主な理由の1つとして、中国とロシアへの対抗に注力することがあるという主張を非難、「実際には逆効果だ」とした。
彼によれば、聖戦勢力はアメリカの力が衰えたものと認識、西側、特にアメリカに対する敵対を強化することだろう。さらに、我々西側諸国が西側に味方するものと期待していた国々も、西側の安定性に疑問を抱くようになるだろう。
「そうなると、アメリカの優越性が損なわれる」というのは、彼の結論である。
Yossi Kuperwasser氏はイスラエルの准将(予備軍)で、諜報と安全保障の専門家である。以前、イスラエル軍の軍事諜報部門の調査部のヘッドを務め、イスラエルの戦略問題省の長官も歴任した。そのKuperwasser氏も、上述と同様の意見だ。彼が強調している点として、今回のアフガニスタンでの展開のため、イスラエルも含む中東のアメリカの同盟諸国はワシントンの約束を信頼できないものとみなし、脅威に対しては自国で対抗する能力を強化することを主眼とすべきだという重大な教訓を学ぶことになろう、としている。*************
以上、英陸軍の元司令官としてアフガニスタンやイラクの戦場で指揮をとられたケンプ氏による主張を紹介した記事でした。
しかし、それほどの司令官といっても、一人だけの憂慮なら、「考えすぎだよ」と笑い飛ばす読者の方々もいらっしゃるかも。
問題は、現実には他の識者からも深刻な憂慮が上がっているってことです。そうした「他の実例」を次に紹介しますね。