イラン核施設監視に関するアメリカのNPRによる報道記事、後半を紹介します。
NPR、2021年9月12日(JSTでは13日)
元の記事は、下記リンク先に:
https://www.npr.org/2021/09/12/1036491483/iran-iaea-memory-cards-nuclear-site-cameras-jcpoa
筆者: Matthews Schwartz
(私による日本語化)
「この土壇場になってイランがIAEAによるカメラのメモリーカード取り換えを認めたことで、JCPOAを台無しにしたいと願うイラン政府の願いを先送りにした。これがなければ、イランの願う通りの結果になってしまっていたことだろう」 そう語るのは、Crisis Group(国際危機グループ、戦争回避のための調査や政策提言を行う)のイラン プロジェクトでディレクターを務めるAli Vaezだ。「これは、Raisiに対する最初の試金石となるもので、今回の合意によりこの新大統領がJCPOAの再建を願っていることが明らかになった。ただし、テヘランの政治体制の中にあってRaisiが充分な柔軟性を発揮し、苦渋に満ちた政治的譲渡を行えるか否かは、別の問題だ」
今回の合意によって、「JCPOA順守を再開するための会談の可能性を残すことができた。おそらく、10月初旬には次の会談ができるのではないか」 そう語るのは、Atlantic Council(アメリカが今後の世界の課題にどう対処すべきかを研究・提言する機関)の「イランの今後イニシアティブ」(Future of Iran Initiative)のディレクター、Barbara Slavin だ。「私の現時点で主な関心事項として、イランの交渉チームは今も姿勢を変えておらず、今まで6回のラウンドの会談の成果の上に今後も進んでいこうとしている」
だがFoundation for Defense of Democracies(民主主義防衛のための基金) というアメリカで新保守主義を推進する団体のシニアーフェローであるBehnam Ben Talebluによれば、他の見方もある。彼によれば、「この交渉を見るときには、騙されてはいけない。これは、パワー ポリティクス(力の政治)なのだ」。彼は、イランの核兵器開発に対し新たな問責決議を設けることを支持している。
イラン原子エネルギー機関がこの2月に発表したところでは、IAEAによるレビューができるよう、同機関は引き続き情報の記録を続けるという。だが国連の核監視機関IAEAのこの5月の発表によれば、その2月以来5月まで、IAEAは重要なデータを入手できていないとしていた。Ben Taleblu によると、「今回のIAEAによる“救済措置”によって、この2月から続くIAEAがモニター機器を利用できるという空約束の詐欺的策略が今後も続くことになろう。現実には、制裁を解除しないとモニターのテープやその他のデータを消去してしまうぞ、とイランが脅迫すれば、わずか2-3か月で今回のような危機が再発してしまうのだが」
Grossi は記者会見で、今回の合意がその場しのぎの策にすぎないことを認めている。「これを恒久的な解決策とすることなど、できない。何か月なのか、何日なのかはわからない。だが、決して長期的な対応とは言えない」と、彼は述べている。
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IAEAとはもともと、
1) 核兵器をあきらめな
2) そしたら、核発電をやらせてあげるよ
3) ただし、核兵器を本当にあきらめているか、査察して確認するからね
という「核発電という ”キャンディー” で核兵器をあきらめさせる」
ことを狙いにした機関でした。
それが現実に機能するには、上述の 3)つまり査察がしっかり機能しないと、
意味をなさないことは明白ですよね。
その査察が今回、あるいは北朝鮮のケースでも、しっかり機能できなかった
ことになります。
ならばもはや、現実的には、
・ この「キャンディーあげるから・・」という策を
やめにして、
・ 核兵器と核発電の両方を世界から廃絶する
という選択しかありますまい。