中国のICBM用サイロ新設、インドにも波紋 2

中国のICBM用サイロ増設に対するインドの反応実例、
Guarding India, 2021年8月26日の記事の紹介を続けます。

Why China is building more missile silos – Guarding India
(中国、ミサイル用サイロを増設する狙いは?)

(私による日本語化)

中国がミサイル用サイロを増設しているのは、なぜか?

この理由としては、次の3種類が考えられる。

1つ目。  中国の政治科学を研究している人たちの一部によれば、今回のサイロ増設によって中国は「警告即発射」(launch-on-warning、LOW)という姿勢に乗り換えようとしているそうだ。LOWでは、敵国からのミサイルを発見次第、それが自国内の標的に到達しないうちに、その敵国へとミサイルを発射する。

LOWつまりLaunch On Warningの概略

LOWつまりLaunch On Warningの概略

中国の核武装戦略は今までは、1964年からあまり変わらずにいた。同年、中国初の核兵器爆発に成功したのだ。 それ以来最近まで、中国の戦略の基本は、核兵器を始めて爆発させた時点からあまり変わっていない。確実な報復をできるようにすることで、核抑止を実現するというものだ。そのために欠かせない要件として、敵からの先制攻撃を受けても、中国の有している核兵器が機能を続けられるように保つことが必要だ。敵からの先制攻撃が通常兵器であっても、核兵器であっても違いはない。このLOWという防衛策へと移行するためには、中国はいくつかの核弾頭をミサイルに装備して、それらをいつでも発射できる状態に保ち、迅速な報復ができるようにしておかねばならない。今のところ中国では、弾頭とミサイルとを警戒オフの状態で保管しており、この両者は指揮系統が異なる。

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

MIRV(1つのミサイルに複数の核弾頭)の概略

2013 年に中国の人民解放軍の軍事分所であるScience of Military Strategy (軍事戦戦略科学)が発表したある文書によれば、中国がLOW方針を実施することは「あり得る」そうだ。 さらに2015年発表の2015年防衛白書には、「迅速な対応」という言及がある。アメリカの戦略軍(US Strategic Command (Stratcom) )のCharles A Richard 司令官は、2021年4月のアメリカ上院での証言で、「中国軍の一部は、すでにLOW方針に切り替えている」と述べた。

だが、サイロだけでは、特に現時点のように建設初期段階では、中国軍がLOWに切り替えようとしていることの断定的な証拠とはならない。

2つ目  サイロ増設により中国は、核弾頭備蓄の増大という目標を実現できる。

もっと作れ!

もっと作れ!

現在、中国が保有している核弾頭はおよそ350個である。非営利団体であるFAS(アメリカ科学者連盟)の核情報プロジェクトを担当しているHans M Kristensen と Matt Kordaの推定によれば、その350個の核弾頭のうち272個は作戦部隊に割り当てられており、残る78個は新設の固形燃料型ICBMであるDF-41に向けて生産された。

地上配備のミサイルは中国には約150基あり、それらで運べる核弾頭数は180から190にのぼり、アメリカの一部を攻撃できる。今回新設中のサイロすべてに単一核弾頭のミサイルを配備すれば、子の核弾頭総数は410から440にまで急増してしまう。完成したサイロすべてにDF-41を配備した場合には、DF-41には1基当たり2から3個の核弾頭を配備できるので、この総数はさらに増大し930から940に達する。

そうするためには、中国は兵器在庫にあるDF-41を増やし、特に核弾頭総数を3倍ほどに増やさねばならない。これは、近未来中には実現できそうでない。だが、サイロ増設の様子からは、中国の核弾頭数増大やDF-41進展の匂いはしていない。
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まだまだ、次回に続きます。

日本語化していて思うのですが、やはりインドはずっと中国とは対立してきただけ
あって、中国の軍備増強などには敏感ですね。日本語メディアの多くが「中国軍 →
尖閣列島、台湾海峡」といった側面ばかりを取り上げ、ニュースの受け手の一部も
「嫌中」といった短絡した反応に走りやすいのに対して、このGuarding Indiaの記事は
中国の動きの裏にある意図を探ろうとしているのが、よくお分かりになると思います。

アジアに限らず、核発電に伴う動きは核武装の動きと連動している場合が少なからずあり、そうした実例も今後とも本ウェブサイト「やかんをのせたら~~」では、
紹介してまいります。

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