2023年4月
上の黒いメニューでは項目を基本的には
アルファベット順で配列しておりますが、その
s-5) の終わりで私 (ひで) は、ある約束を
しました。
「小型原子炉だと、むしろ発電量あたりの
放射性廃棄物発生量が増えてしまう
⇒ proliferation risksが増大してしまう」
という問題を、s-6) で取り上げます ・・・
という約束でしたよね。
その約束を果たします!
次の概念図をご覧ください!
あくまで、説明のための模式図
ですよ。
はい、これでお分かりでしょ? 約束を
果たしました!
あの、正直言うと、このページはこれで
終わってもいいんです!
原子炉のサイズが小さい ⇒ 中性子線が
炉心の外に漏れやすい ⇒ 各種放射性
物質が出来てしまいやすい
という自明な原理ですね。
でも、これで終わっちゃうと、
\’’(;; > O<) / ふざけんな~! 原子炉
技術者でも何でもないシロートのお前が、
そこまで簡単に言い切ってしまっても、
だれが信じるかあ~~!!
といった反応がありますよね?
じゃあ、アメリカの名門Stanford大学の
公表している研究報告だったら??
それを紹介しますね。
英語の研究発表などを読める方は、下記を
お読みください。
Small modular reactors produce high levels of nuclear waste | Stanford News
元を読んでくださった方々には、この
ページはここで終わり。
「英語の研究発表なんて、読めって言われ
てもねえ ・・・」 とおっしゃる方々のために、
いつもどおり私の抜粋・日本語化も以下に
紹介しておきますね。
例によって、< > 内は私からの補足
説明です。
文字色強調も、私。
**************************
Stanford News
Small modular reactors produce high
levels of nuclear waste | Stanford News
(SMRは、大量の核廃棄物を発生 |
スタンフォード ニュース)
2022年5月30日
スタンフォード大学主導の研究の結果、
SMRは高レベル放射性廃棄物という課題を
悪化させてしまうことが判明した。
SMRは核エネルギー利用の将来であるかの
ように、以前からもてはやされてきた。だが
実際には、従来の原発よりも大量の放射性
ゴミを輩出してしまうことが、スタンフォード
大学と <カナダの> ブリティッシュ
コロンビア大学の共同研究で判明した。
By Mark Shwartz
<冒頭部を省略します>
・・・・・ だが核エネルギーにも、リスクはある。
アメリカだけでも、商業用原発が今までに
生み出した使用済み核燃料88,000はトンを
超え、それ以外にも中・低レベルの放射性
ゴミを大量に排出してきた。特に放射能が高い
ゴミは主に使用済み核燃料で、隔離して地下
深く地質処分せねばならない。しかも、
数十万年にもわたって。今のところ、アメリカ
には地下処分場を建設する計画はない。
それに先立ち同国は、ネヴァダ州のユッカ
山脈にある某所に地下処分場を築こうとして
何百億ドルものコストを費やしていた。やむ
なく、今のところ使用済み核燃料は原発敷地
内の冷却プール、あるいはドライ キャスク
(乾燥式の保管用樽) に保管されているの
だが、その総量たるや毎年およそ2,000トン
ずつ増加しているのだ。
単細胞な測定
一部のアナリストたちは、SMRならずっと大型
である従来型原子炉と比べ、使用済み核燃料
の質量を大きく減らせるという見解を今も主張
している。だが、そうした主張はあまりにも楽観
的過ぎると、<本研究で主役を演じた>
Lindsay Krallと同僚たちは述べている。
「単に使用した核燃料の質量を測るだけと
いった単純な測定では、使用済み核燃料や
その他の放射性廃棄物の保管やパッケージ、
処分のために必要なリソースについては、
ほとんど役に立たない」 とKrallは語る。
彼女は現在では、スウェーデンの核燃料・
廃棄物管理社 (Swedish Nuclear Fuel and
Waste Management Company) で科学者
として勤務している。「実をいうと、SMRが
排出する核廃棄物の流れの管理と処分を
分析した研究は、極めて僅かしかない」
SMRの設計としては、何十種類もの設計が
提案されている。本研究ではKrall は
3種類のSMRからのゴミの流れを分析したが
その3種類は東芝、NuScale、Terrestrial
Energy 各社がそれぞれ開発中のものだ。
各社、設計が異なる。そのケース スタディの
結果を、理論上の計算とさらに広範な設計
調査とによって確認した。この3方式の
アプローチにより、著者たちは強力な結論を
引き出すことができた。
「この分析は困難なものだったが、それは
それら3種類のSMR原子炉はいずれも、
まだ実際に稼働してはいないためだ」 そう
語るのは、本研究の共著者Rodney Ewing
だ。Ewingは、スタンフォード大学で
核セキュリティ専攻のFrank Stanton
Professor <教授位の称号> という教授
職を務め、Center for International Security
and Cooperation <国際安全保障・
協力センター、CISAC> でも共同理事を
務めている。「さらに、これら原子炉の中には
独自設計のものもあり、研究ではそれが
さらに障壁となった」 と、Ewingは
述べている。
中性子線の漏れ
原子炉内では、炉心部で中性子線を照射して
ウラニウム原子を分裂させるときに
エネルギーが発生する。その際にさらに
中性子が飛び出し、他のウラニウム原子を
分裂させる。これが、連鎖反応だ。だが
炉心部から漏れ出す中性子もある。これは
中性子線漏れという問題だ。漏れ出た
中性子は周囲の建築資材、たとえば鋼鉄や
コンクリートなどに衝突する。そうして炉心
から漏れ出た中性子を浴びて 「活性化」
した物質も、放射性物質になるのだ。
今回の研究によれば、SMRは原子炉サイズ
が小さいがために、従来型の原子炉よりも
中性子漏れが多くなる。そのため、ゴミの
流れに含まれる物質や量が従来からは
変わる。
「漏れ出す中性子が増えるほど、その中性子
により活性化して生じる放射性物質の量も
増える」 とEwing は語っている。「私たち
の発見では、SMRから発生する中性子で
活性化してしまった鋼鉄の量は、従来の
原子炉と比べ、少なくても9倍に達する。
そうした放射性物質を処分する前には、
慎重な管理が必要だ。それには、経費も
かさむ」
さらに今回の研究で分かったこととして、SMR
で発生する使用済み核燃料は、産出する
エネルギー量当たりでは、従来よりも多くなる。
しかも、従来の原子炉からのゴミよりも、
はるかに複雑な物質となる。
「SMRの一部の設計では、化学的特性が
珍しい核燃料や冷却材を使用せねばならず
その場合には発生する核ゴミは処分までの
管理が難しい」 そう語るのは、本研究の
共著者の一人 Allison Macfarlaneだ。
ブリティッシュ コロンビア大学の公共政策・
グローバル問題学部の教授兼理事である。
「こうした珍しい特性の核燃料や冷却材は
使用後に処分する前に、高価な化学的
処理が必要となる恐れがある」
「核発電業界や投資家たちが忘れては
いけないメッセージとして、核燃料サイクルの
舞台裏では隠れたコストが発生し、それにも
対処せねばならない危険性がある、という
ことだ」 と Macfarlane は述べている。
「原子炉設計者にとっても規制当局に
とっても、こうした原子炉の廃棄物が何を
やらかすのか、把握しておくことが望ましい」
放射線毒性
今回の研究の結論として、全体として
SMRの設計は従来の原子炉のものよりも、
放射性物質の発生や管理要件、処分の
選択肢といった面では劣悪だ。
問題の1つとして、使用済み核燃料からの
長期間にわたる放射線だ。今回の研究チーム
による推定では、今回の研究で対象とした
3種類のMSRから出る 使用済み核燃料の
中のプルトニウムの毒性は、従来の原子炉
からの使用済み核燃料中のPuと比べ、
10,000年後の時点で同じ発生エネルギー量
当たりで最低でも50%高い。
この放射線毒性の強さのため、SMRからの
使用済み核燃料の地質保管場の選定では、
立地プロセスにおいて慎重な検討が必要と
なると、本研究の著者たちは述べている。
「こういった研究を我々がやっているのは、
おかしい」 とEwingは言う。「廃棄物を憂慮し
研究を行って公開文献でレビューを受ける
ようにすべきなのは、新型原子炉を販売して
いる各社や、そうした原子炉を提唱し連邦
政府から補助金などを受け取っている
連中であるべきだ」
*********************
もうお分かりでしょ?
原子炉が小さければ、それだけ中性子漏れも
起こしやすい、ってわけですね。ページの
冒頭で、私が申しあげたとおりですね。
次回にアップロード予定の固定ページは
d-10) とする予定です。
すべての 「原子炉」 では核分裂を起こす
わけですが、
そもそも何のために、核分裂をわざわざ
起こすのか???
という原子炉の根本問題を取り上げます。
逆に言えば
極めて基本的な問題を論じるのですが、
同時にそれは根本的な 「原子炉の本質」
を明らかにすることでもあります。
では、しばしお待ちくださいませ。