付録 w-14) 再生可能がコスト最小 ― CSIROの発表

付録 w-14) 再生可能がコスト最小 ― CSIROの発表

2023年9月

オーストラリア政府の研究機関CSIROの
ウェブサイトより
Up to 90% of electricity from solar and wind the cheapest option by 2030: CSIRO analysis – CSIROscope

(「日本政府がFBRに固執を続ける
真意」についての固定ページは、
まだ制作中です)

笑い飛ばす

笑い飛ばす

Homeページで2023年9月終わり
ごろに紹介した、オーストラリア最大の
火力発電企業であるAGLエナジー社が
今後の発電用エネルギー ミックス
での選択肢として、核発電を笑い
飛ばしたことを紹介しましたよね。
その記事の終わりごろ、同国の
CSIRO <Commonwealth Scientific
and Industrial Research Organisation、
オーストラリア連邦科学産業研究機構
という公的研究機関> による報告に
ついて言及しました。
ここでは、そのCSIROによる、
各種発電方法間の費用などに関する
考察を見てまいりましょう。
「原発問題」というと、いまだに日本
では
原発事故 + 核ゴミ (反対派) VS
電力安定供給と電気料金 + CO2削減
(推進派)
という実に奇妙な二項対立がみられるの
ですが、下のCSIROの考察ですぐに
わかるように、事実を誤認した右辺で
あり、こうした二項対立そのものが
不毛です

下のCSIROの報告、かなり長いので
一部を抜粋・日本語化して
紹介しますね。

では、
私の抜粋・日本語化
< > 内は、私からの補足説明
です。

費用が違いすぎる

費用が違いすぎる

************************************
<電源ミックスの選択肢各種のうち>
最大90%を太陽と風力からという選択
が、2030年までにコスト最小となる
見込み ― CSIROによる分析

Paul Graham記者
2020年12月11日

オーストラリアでの発電コストの最新
の推定の結果、グリッドの統合化経費を
含めても、近いうちに再生可能
エネルギーがコスト最小となりそうだ。

風力や太陽エネルギーによるエネルギー
産出費用は既に石炭よりも小さくなって
おり、再生可能エネルギーによる電力の
シェアも、オーストラリアでは既に
23%に達している。オーストラリア連邦
政府は、このシェアがさらに2030年
までには50%にまで拡大するものと
見ている。

ただし、ここまでのシェアになると、
既存のエネルギー システムに再生
エネルギーを統合化するためのコスト
も膨張する。

シェアが小さい間は、太陽や風力
発電所、を新たに設けても、コストは
小さい。また現状なら石炭発電や天然
ガスなどで、再生可能エネルギーによる
発電量の変動を補填できる。だが再生
可能エネルギーのシェアがある程度に達
すると、エネルギー源の大半が再生可能
である給電システムから需要に対応
できるだけの電力を供給できるよう、
それをサポートするインフラ
ストラクチャーに投資する必要が生じる。

原発建設では、よくあること

原発建設では、よくあること

だが2030年までを考えるなら、そうした
インフラストラクチャーなどによる
コスト増大を算入しても、各種再生
可能エネルギー(太陽や風力)による
発電シェアを90%にまで高めた方が、
再生可能エネルギー以外による選択肢
と比べてコストが小さくて済む。
これは、CSIROならびにAustralian
Energy Market Operator <AEMO、
オーストラリアエネルギー市場運営
機関、天然ガスと電力市場の運営や
開発、立案を担当> の新しい推定
による。

エネルギー コストの算定

IRENA <International Renewable Energy
Agency
、国際再生可能エネルギー機関>
によるものをも含む各種の国際的な研究
によれば、世界の大半の地域においては
新しいエネルギー源としては太陽と
風力が最も安価なのだ。

我々CSIROではGenCostという発電
コスト関連の報告書の第3弾を発表する
ためこうした発電コストの推定を行った
が、その結果オーストラリアでも太陽と
風力が最も安価であることを確認
できた。

我々の推定では、石炭火力、天然ガス、
核発電、太陽光(小型と大型の両方)、
太陽熱、風力、さらにまだ現実的では
ないが理論上考えられる各種選択肢
(ある種の核発電など)について、
コストを比較した。

今回の報告で、エネルギー供給
システムに再生可能エネルギーを取り
入れるためのコストを、さらに正確に
推定できた。石炭火力や天然ガス
火力が廃炉になっていくのに合わせ、
再生可能エネルギーを導入していく
のだ。

そうした再生可能エネルギーの導入に
必要となるコストの主なものとして、
エネルギー(電気)の貯蔵施設と
送電線の増設とがある。

蓄電にも手段は複数

蓄電にも手段は複数

貯蔵のコスト

再生可能エネルギーが主なエネルギー
システムでは必ず、貯蔵が不可欠と
なる。

貯蔵とは、再生可能エネルギーに
よる発電量が需要を上回っている間に
それを貯蔵しておく。たとえば、
太陽なら昼間、風力なら強風が長く続く
場合などだ。そして、再生可能
エネルギーによる発電が需要を下回る
ようになった時点で、その貯蔵して
おいた電気を放出する。太陽であれば、
曇天の日や夜間などだ。

オーストラリアで大規模貯蔵施設の
選択肢として検討されているものと
しては、バッテリーと揚水発電所とが
ある。揚水発電では、上流にあるダムに
再生可能エネルギーによる余剰発電電力
で水をポンプ揚水しておき、<必要が
生じたら>それを放水して水力タービン
で発電する。

揚水発電の原理 ・・ ごく簡略化して

揚水発電の原理 ・・ ごく簡略化して

貯蔵技術の総資本コストを1 kWhあたり
のドル金額でみるとどうなのか?
Aurecon と Enturaというエンジニア
リング企業両社がコスト推定を発表して
いる。さらにAEMOではAEMO ISP
つまりIntegrated System Planという
計画を策定しているが、それにも各種
技術のコスト推定が含まれている。

揚水発電所に貯蔵できる電力は、数時間
から数日分である。オーストラリアでは
目下3か所の揚水発電所計画があり、
ニュー サウス ウェールズ州の
TalbingoとShoalhaven、ブリスベーン
近郊のWivenhoeの3か所だ。

バッテリーのコストは低下を続けて
おり、8時間までの電気貯蔵では最も
低コストのものだ。オーストラリア
南部にある大型バッテリー(正式には、
Hornsdale電気貯蔵施設)が、特に
明白な実例だ。

送電のコスト

送電グリッドにさらに再生可能
エネルギーを取り入れるための、もう
1つの主要コスト源が、送電線の増設
である。

今のところ、送電線の大半は炭坑の近く
にある石炭火力や天然ガス発電所から
敷設されている。

だが、今後設けられる大型の再生可能
エネルギー発電用の送電線は、そうした
場所には建てられない。太陽発電
ファームは、雲が少ないオーストラリア
の内陸部および中北部に建設することが
望ましい。風力ファームは一般には、
南部地域や標高の高い地帯に設けたほう
が良い。こうした「再生可能エネルギー
地帯」から伸びる、新たな送電線を
建設する必要があるのだ。

電力の地域間融通の概略

電力の地域間融通の概略

National Electricity Market
<オーストラリア電力市場、クイーンズ
ランド、ニュー サウス ウェールズ、
オーストラリア首都地区、ヴィクトリア、
タスマニア、サウス オーストラリアの
各地域をまとめた電力市場> 内での
各州と州の間を結ぶ送電線にも改良が
必要で、いずれかの週のグリッドで
再生可能エネルギーの電力供給が低下
した場合、州間で電力を融通するの
だが、その融通をしやすくするためだ。

取り入れコストの合計

では、オーストラリアで風力と太陽
エネルギー(ともに変動のある再生可能
エネルギー)のシェアを(最大で90%に
まで)増大させるには、どれだけの
経費が必要になるのだろうか?下の
グラフ
https://blog.csiro.au/2020-gencost/
にある棒グラフ> に、CSIROの推定
結果を要約して示す。2030年時点での
コスト推定をベースにしている。

たこ焼きのコスト

たこ焼きのコスト

風力と太陽で発電するためのコスト
(棒グラフでのライトブルーの個所)は
およそ、MWh(メガワット時)あたり
A$40 <オーストラリアドル、2023年
9月28日8pm JST時点で、およそ
A$ = 95.46円> だ。これは、現在の
市場での平均コストよりも少し小さい。

再生エネルギー発電のシェアを
高めると、蓄電施設のコスト
(棒グラフの黒の部分)および送電
コスト(グレイとダークブルー)が
増大する。再生可能エネルギーは変動
がつきまとうので、シェアを50%
から90%に増大させた場合、再生
可能エネルギーを統合化するための
コストが、 A$4/MWhから
A$20/MWhに上昇する。

シェアが90%になると、総コストは
A$63/MWhになる。だがこれでも、
石炭火力や天然ガス火力を新設する
場合と比べれば、低コストだ。後者の
場合、コストはA$70からA$90/MWh
の範囲になる。(しかも、燃料価格は
廉価で気候変動対策に伴うリスクも
ないという、好都合な想定に基づく
数値である)
*******************************

オーストラリアといっても広大ですので
地域によって再生可能エネルギーの
コストは異なります。まして、
オーストラリアと日本列島を一緒に
論じるつもりは、ありません。日本
列島内部でも、風力に適した地域、
晴天が多い地域、風が使いにくく曇天
も多いが温泉が大量に沸いている地域
など、多様です。
各地域の自然条件に最適化した
エネルギー使用 ⇒ 「地産地消」で
できるだけ自給自足を目指す ⇒ 何か
あった場合には、地域間で融通
というプロットが、上のCSIROの
記事からは読み取れますよね。
そしてこのプロットは、日本列島で
でも適用できるものでしょう。

きみ、体重はいくら? (数値を比べないと、コスト判断はできませんよね) 私の20分クロッキー、男性のモデルさん

きみ、体重はいくら?
(数値を比べないと、コスト判断はできませんよね)
私の20分クロッキー、男性のモデルさん

それと、現時点で日本社会に
はびこっている
電気料金高過ぎ ⇒ 原発再稼働して、
電気代下げて!
という主張は、あまりにも具体的な
数値などが欠落していて、信頼性も
説得力もありません。やはり料金の
問題であれば、このCSIROの報告書の
ように、具体的な数値やその想定なども
明記しませんとね。
それに、ページ s-0) (上の黒い
メニューの中ほど)でも問題にした
ように、LEU価格が上昇したら??
実際、2023年9月28日現在、U価格
はニジェールでのクーデターの影響など
もあって、この3か月ほど急上昇して
いますし。
Uranium PRICE Today | Uranium Spot Price Chart | Live Price of Uranium per Ounce | Markets Insider (businessinsider.com)
の折れ線グラフ参照) 右の
「アーカイブ」下にある2023年9月を
クリック ⇒ 左下のOlder postsを
クリック ⇒ 9月3日付の記事
もご覧くださいな。

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