e-9) (運動のあり方) 犠牲者が出なければ
反原発運動はポシャるのか??
2024年2月
1月1日以降の能登半島地震で被害に
あわれた方々のため日々祈るとともに、
僅かながら支援金も寄付しております。
で、本「やかんをのせたら~~」の
問題系においては、この地震で志賀原発
にあれこれ問題が生じたようで、この
ところ旗色の悪かった原発廃止の声が
再度、ある程度高まっているようです。
ただ、今までの日本での核発電廃止
運動の歴史を振り返ると、あるパターン
に気が付きませんでしょうか?この
ページでは、そのパターンを問題に
します。
★ まず、チョルノービ(チェルノ
ブイリ)事故以降の歴史を振り返る
1986年 ― チョルノービ原発の大事故
それ以降2~3年ほど、広瀬隆さんの
「危険な話」という書物が良く売れる
など、原発問題への関心が日本でも
高まる
⇔ 通産省(当時、現在の経産省)や
電力会社は合同でヨーロッパや北米の
原発視察団を派遣するなどし、事故
への市民や原発事業者の反応を調査、
「西側の原発は安全」と主張する
プロパガンダを展開(その約25年後の
2011年に、このプロパガンダが無根拠
であったのは証明されてしまい
ましたが)
* なお、このころ私は都内のクリエイ
ティブ エージェンシーでChief Creative
Officerという取締役をしており、
エネルギー庁の関連から原発広報の仕事
も受けていました。(今となると、
後悔!) 上述のように原発推進勢力が
原発事故にすぐに対応してプロパガンダ
に乗り出した、そんな仕事でした。原発
事故にすぐに対応して原発存続の是非を
検討するとか、既存原発の安全向上に
乗り出すとかいうならまだしも、
あくまで「日本の原発は安全です」と
いうプロパガンダを始めたのでした
・・・ ああ!
1999年 ― JCO臨界事故
この事故の後でもしばらくは、日本社会
での原発問題への関心が高まったのを
私は覚えています
⇔ ただし、メディアの報道が「バケツ」
に集中していたのに、私は不満を覚え
ました。世界の核の歴史を振り返ると、
核燃料などの作業場では、バケツ作業で
なくても作業中に放射性物質が臨界に
達してしまった事故は何件か発生して
いるのですが。「バケツ」が問題なん
じゃなくて、核燃料だの核爆弾だのを
作ろうとすること自体が、致死的な
過ちなのです。
2011年 ― 福島第一大事故
この後数年間は、反原発マーチ(デモ)
などが全国的に、特に東日本では盛り
上がったのは覚えてらっしゃると思い
ます。
⇔ さらに時間が経過して「ほとぼり」
が冷めると、一部の原発の再稼働が始
まる。
加えて、2022年に始まったロシアの
ウクライナ侵略などの影響で電気料金
が高騰すると、再稼働容認の声が一般
市民の間でも多くなった
(原発再稼働「賛成」58%・「反対」39%、初めて賛否が逆転…読売・早大世論調査 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp))
2024年1月 ― 能登半島地震で志賀
原発に問題発生(詳細は未発表)
2024年1月現在、北陸電力からは詳細
な発表がありませんし、今までの発表
内容も二転三転しています。
ついでに、2007年3月にも能登半島で
地震があって、そのときにも志賀原発
では問題が発生したのですが、やはり
使用済み核燃料冷却プールの水が
こぼれ出たようです。
(能登半島沖地震:志賀原発の状況 | 原子力資料情報室(CNIC))
* なお、北陸電力がアレコレ叩かれて
いますし、当然のことなのですが~~
私個人としては、北陸電力をかわいそう
に思う面も少しあります。
どういうことか?
上述の原発広報の仕事をしていたころに
日本の某電力会社の某部署の部長さんと
「内輪のお話」をすることがありまして
・・・ (その部署名や個人名は、間違
えても公表できません。その部長さんの
ご子息やご親戚などが、今もXX電力に
勤務してらっしゃる可能性があるので)
それと、北陸電力の原発は志賀原発1つ
だけであるという事実にも、ご注意
くださいな。
で、その部長さんが曰く:
「ほんと言うと、ウチは原発なんかやり
たくないんだ。ウチの場合、黒部ダム
なんかも近いんで、水力主体で間に
合うし、それで東京や関西電力に売電
もできてる。これで商売はやっていける
んで、原発なんていう事故起こしたら
トンデモナイ損害の出るもん、やりたく
ないんだよ!
でも、国の決めた決まりがあって、沖縄
以外の電力会社はどれも、最低1基は
原発を持たないといけないことに、
なっちゃってるんだ。だから、不要でも
イヤでも、原発1つだけ持ってないと、
国が許してくれないんだよ ・・・」
そう語る部長さんの両目が泣きそう
だったのを、覚えています。ひょっと
して彼の涙は、今回のような問題を
予言していたのでしょうか?
ここで考えてほしいのですが、原発を
必要とせず、他の電力会社に売電まで
できている電力会社にも原発を義務
付ける国策って ・・・ 電力のためでは
ないことは、明らかですよね。じゃあ、
「原発のホントの目的」とは??
上の黒いメニューの中ほどにある
ページ g-3) をまだお読みでない方は、
是非ここでお読みくださいな。
★ 何らかの「犠牲者」が出ないと、
反原発運動はポシャるのか??
話を本題に戻して、上述の略史を振り
返ると、いくつかの傾向やパターンに
お気づきだと思います。
・ まず、困った問題ですが、
反原発勢力は「プロパガンダ戦」で
長年負け続けていた
つまり、早い話が、日本の一般市民の
多数派は「国策に基づくプロパガンダ」
に騙され続けていた、ということです。
事実なんだから、ハッキリと認め
ましょうよ。
そんなことを言うと、ただちに
「反原発派は資金がなくて ・・・
仕方がないじゃない」
といった反応がどこかからやって
くるものです。
が、
・ 「仕方がない」と考えてしまうと、
「騙されても仕方がない」⇒「結局は、
原発大国になったのも、仕方がない」
という結論に、現実上はなって
しまいます。
・ 実際には、核プロパガンダに
洗脳されずにいることは、それほど
困難ではありません。たとえば
「日本列島のように水力に恵まれて
いる地域で、何のために原発がいる
んだ? ほんとに電力が目的なのか?」
といった疑問を抱き続けること。それ
には、資金はいりません。そうした
疑問保持だけで、洗脳されずにいる
ことができます。
核プロパガンダに関しては、
「騙された連中も悪い」のです!
・ で、これが本ページの最重要問題
ですが、
どこかで核事故が発生、犠牲者が出た
⇒ 反原発運動が一時的に高まる
⇒ 「ほとぼり」が冷めると、反原発
の声があまり聞こえなくなる
というパターンがハッキリしてますよね。
私がこのページで主張したいのは、
要するに
1)核事故で犠牲者が出た ⇒ 反原発
運動が高まる
というパターンは、逆に言うと、
「犠牲によりかかった運動」じゃ
ないのか?
2)「知られざる(恒常的)犠牲者」は
軽視されている
3) したがって、長期的かつ恒常的に
核発電・核兵器廃絶を目指す
「いつもやってる」運動が必要だ
ということです。
1) に関しては、すぐに
「事故で犠牲者が出たら反原発運動が
勢いづくのは、当たり前でしょ?」
といった反応が返ってきます。
何か異変があったら反応する、という
こと自体は確かに当たり前の話です。
しかし、それが運動の主な動因となって
しまっていたら、次の 2) の「犠牲者」
が実は無視あるいは軽視されてます
よね?
それとそもそも、反核運動とは
「犠牲者」が出ないようにするための
運動では?
2) 「知られざる(恒常的)犠牲者」
何か地震や爆発がなくても、
「普段から」発生している「犠牲者」
がいらっしゃいます。
原発の作業員の皆様や、ウラニウム
鉱山の作業員の方々などですね。
何か異変があったら反応する、という
ことは、逆に言えば「普段から起きて
いることは、気づかれにくい」という
ことでも ありますよね。
核発電との関連では、
日本には現時点でウラン鉱山はあり
ません。カザフスタンやカナダや
オーストラリア、その他から輸入する
ことになります。そうした諸国の
ウラニウム鉱山では、当然、作業員の
方々がウラニウム鉱石の作業を
「普段から」してらっしゃいます。
そして原発では、時期によって人数は
異なりますが、多数の作業員の方々が
被ばくしながらの作業を「普段から」
してらっしゃいます。
こうした「普段の犠牲者」の問題は
あまり報道されず、知られることは
少ないです。
こうした「普段からの問題」を社会に
知らしめるには、「事故とか地震とか
発生 ⇒ 反原発マーチなどが始まる」
というパターンではなくて、
「普段からやっている反核運動」が
必要になりますよね。
3) それにそもそも、核発電推進勢力
は上述のように、原発大事故が
あっても「原発を続けるべきか否か」
など考えず、「日本の原発は安全です
よ~」プロパガンダを始めてしまった
連中です。
反核運動も、「核発電と核兵器がなく
なるまで」何世代にもわたって
「普段から」活動を続けていく覚悟
がありませんと。
それと、「核プロパガンダ」は既に
日本などではかなり成功を収めて
しまっており、その最たる成果が
「核発電は、平和利用」というマヤカシ
です。これについては、本「やかんを
のせたら~~」で、多くのページを
使い実例も挙げて説明してきました。
「核兵器と核発電は不可分」という
歴史的事実を踏まえ、
両者の廃絶という長期的な目標達成
に向けて、
「普段から」活動している、
そんな運動をしたいと、私は願って
おります。
kettle 2015 Oct 19