付録 w-17) 激烈化した気候の中での
核発電
2024年10月
「やかんをのせたら~」の本来の
問題系ではないので「付録」とします
が、既に発生している深刻な問題なの
で、取り上げておきますね。
既に激烈化している気候変動の中で、
たとえば観測史上最悪クラスの嵐の中で、
原発その他の核発電施設は大丈夫なの
か?
という問題ですね。
実際、先日アメリカ南東部を襲った
ハリケーン「ヘレン」の暴風雨圏には
原発があったのだが ・・・ という
記事が、Beyond Nuclear International
のウェブサイトにあります。それを抜粋
紹介します。
英語の元記事を読める方は、次へ:
Hurricane Helene sends a warning | Beyond Nuclear International
Beyond NuclearのLinda Pentz Gunter
さんの考察
2024年10月1日
私の抜粋日本語化
< > 内は、私からの補足説明
です。
**************************
Hurricane Helene sends a warning
(ハリケーン「ヘレン」の残した警告)
<今回のハリケーン「ヘレン」で、
アメリカのある原発が> 水浸しに
なった。今回は幸運にも、その原発は
閉鎖されていた。だが、次回のハリ
ケーンではそんな港運には恵まれない
かもしれない。
著者: Linda Pentz Gunter.
誰もが知っているように、アメリカは
またもや激化した気象災害による
ひどい被害を被った。その<10月
1日時点での> 最新の実例がハリ
ケーン「ヘレン」で、アメリカ南部の
各地が水没し荒廃した。少なからぬ死者
も出た。
—-(中略)—
アメリカの原発は老朽化が進んでいる
が、その稼働免許期間を延長しようと
する動きがあり、それが特に悪質な
問題である。アメリカの原子力規制
委員会(US Nuclear Regulatory Commi-
ssion、NRC)は <原子力業界の>
飼い犬のような存在で、政府監査院
(Government Accountability Office、
GAO)からの報告書で叱責を受けて
いる。気候変動のため原発の安全性が
どこまで脅かされるかという問題を、
規制委員会が全く無視している、
という失跡だ。
「NRCは、気候変動によるリスクの
激化という危険性を充分に考えて
いない」とGAOの報告書には記され
ている。「一例として、安全性に
関するリスクの評価や特定のために
NRCの使っているデータはほとんど
が過去のもので、将来の気候予測を
あまり利用していない」
むしろNRCは原子力産業と癒着、
気候変動を緩和するためのソリュー
ションの一種として核発電を我々に
売りつけようとしている。
—(中略)— 原発は災害の
源となりえるのだ。今回のハリケーン
「ヘレン」のもたらした実例を見れ
ば、一目瞭然だ。
まず、放射性物質による深刻なリスクを
回避するため、ヘレンの予想経路にある
原発の一部は閉鎖された。災害の予防
措置である。その一例が、ジョージア州
にあるハッチ原発だ。<GEのBWR
原子炉が2基。1975年と1979年稼働
開始で、今も稼働可能> つまり、
発電所があるのにハリケーン襲来の
後で電力を委託必要としていた人々に
とっては、この原発は何の役にも立た
なかったのだ。
次に、フロリダ州のメキシコ湾岸に
あるクリスタル リバー原発の実例を
見てみよう。この原発の敷地内は、
洪水で水浸しになってしまった。幸運な
ことにこの原発は2013年に閉鎖された
のだが、中性子線照射済みの使用済み
核燃料という高レベル放射性廃棄物が
すべて、今もこの原発には貯蔵されて
いる。
「原発敷地全体が水につかった。建物
も、汚水溜めも、エレベーター用の
ステーションも。産業排水貯水池 #5
も洪水のため水が地面まであふれて
いたのが、観測されていた」と、
同原発の所有者であるDuke Energy社
による報告書にある。
——
クリスタル リバー原発の洪水の結果、
放射性物質の漏出はあったのか?
Duke社による報告書を見ると、「まだ
当該現地を調べ、損害を評価しようと
いう過程にあるが、今回の惨事の特徴の
ため排水の総量の推定には困難を伴う
見込みで、現時点ではハリケーンに
よる影響は明確化していない」と、
Duke社はこの報告書で述べている。
換言すれば、<放射性物質の漏出が
あったか否かは> 不明のままで終わる
恐れがあるのだ。
——
問題は、このクリスタル リバー原発の
所有者であるDuke社は、サウス
カロライナ州にあるオコニー原発の
原子炉3基の稼働許可期間の延長を
求めている企業でもある、ということ
だ。このオコニー原発の上流には、
1か所ならず2か所ものダムがある!
上流のジョカシー ダムの背後には
ジョカシー湖があるのだが、その湖の
水位よりもこの3基の原子炉は300
フィート <約91 m> も下にあるのだ。
さらにこの原発のすぐ隣にはケオウィー
湖があるのだが、その水位よりも5
フィート <約1.5 m> 下にある。
万一の場合には、何が起きるのか?
Duke社の主張では、何も問題はない。
水位がダムの最上部を超えてあふれ
出し、あるいはダムが決壊して、原発に
洪水の水壁が直接襲ってきたら?いわば
内陸での津波のようなものだ。<Duke
社によると、そんなことは考えられない
そうだ ~~ 日本でも、福島第一が
メルトダウンした時、関係者が
「想定外」を連発しましたよね>
——
老朽化した原発を改良して、未然の気候
変動の影響から適切に保護するには、
費用が掛かる。
何も改良などせずに稼働を続け、何十万
もの人命を危険極まりないギャンブルに
巻き込むなら、費用はかからない。
何か問題が起きるまでは、<そんな
ギャンブルも続くのかもしれない>
だが言うまでもなく、Price-Anderson法
<アメリカの、原発災害の補償に関する
法律> のため原発のリスクに伴う何千
億ドルものコストは、結局は我々の
納める税金で賄われることになるのだ。
*****************************
Price-Anderson法ですが、それを真似た
法律が日本にもあります。
「原子力損害の賠償に関する法律」です
ね。やはり、電力会社など「責任を負う
事業者」の賠償金額の上限を定めて
います。原発など核施設の大型事故の
場合、被害の規模が巨大すぎて保険会社
もカヴァーしきれないので、こうした
規定を定めているわけですね。
逆に言えば、そんな巨大な損害を招く
核発電なんて、初めからやらないに
越したことはない!
で、上の記事の本題に戻ると、
・ 原発推進勢力は、CO2を出さない
核発電で気候変動の緩和を
と主張しているのだが
(実際にCO2を減らせるのか否かは、
上の黒いメニューの下部、
付録 w-1) w-3) w-8)
を参照)
・ すでに気候変動は激烈化しており、
原発は熾烈なハリケーンなどに絶え
られない
・ そのことは、今回のHeleneの
実例でも明らかになった。
ということですね。
「電気料金を下げるため、既存の停止
中原発をはやく再稼働しろ!」
といった主張がよく聞こえてきますが
上の「原子力損害の賠償に関する法律」
の存在を考えて、ものを言うべき
ですね。
老朽原発を再稼働して何かあった場合、
その損害は大規模に及び、結局は増税
につながるのです。
今の電気料金を少し下げられた → でも
後々、かなりの増税となった
では、多くの市民にとっては、
経済的損失でしかありませんよね。