The Conversation (ニュース解説や研究発表
を行う、非営利ネットワーク。学術専門家
による解説や意見などだけを扱っている
そうです) のウェブサイトより
The Zaporizhzhia nuclear power plant is a ‘dirty bomb’ waiting to happen – a nuclear expert explains (theconversation.com)
ザポリージャ原発の現状という文脈で、
上の黒いメニュー(項目は基本的に
アルファベット順)のページ d-6) で
私も指摘した「原発のダーティ
ボム化リスク」に関する、専門家の
指摘です。私の言うことも、あながち
戯言ではないとご理解いただけると思い
ます。
いつもどおり、
私の日本語化
< > 内は私からの補足説明です
あとちょっとで ・・・
The Zaporizhzhia nuclear power plant
is a ‘dirty bomb’ waiting to happen
— a nuclear expert explains
(ザポリージャ原発は爆発するよう
セットされているダーティ ボムだ ―
核エネルギーの専門家による解説)
Updated : 2023年7月13日
著者: Tilman Ruff
メルボルン大学、人口と世界保健担当
の名誉主任フェロー
International Physicians for the Prevention
of Nuclear War(核戦争防止国際医師会議
や the International Campaign to Abolish
Nuclear Weapons Australia(核兵器廃絶
国際キャンペーン、オーストラリア)
などの諸団体に関連
崩壊熱 (使用済みも含めた) 核燃料 送電グリッド
ディーゼル発電機 ~~ 燃料があとわずか
冷ましてくれ~~!
********************************
この6月、ウクライナのカホヴカ ダムが
爆破された。次はザポリージャ原発か、
と不安におののくウクライナ市民は多い。
ここ2-3週間、ウクライナとロシア
両国はそれぞれ相手がこの原発への攻撃
を計画していると非難合戦を繰り広げて
おり、市民の憂慮はさらに募っている。
同原発は2022年3月以来今まで、
ロシア軍の占拠下にある。
IAEAは先日、現地の調査を実施したが、
爆薬の存在する証拠は発見できなかった。
だが、この巨大な原発のあらゆる個所を
査察できる許可をIAEAが必要として
いると、同機関は述べている。
そうした状況だが、この原発に攻撃が
加えられた場合、どれだけの危険が
あるのか?その場合、ウクライナと
世界にとって、どのような災害となる
のだろうか?
・・・Twitterからの引用、省略 ・・・
The last sunset
ヨーロッパ最大の原発
ザポリージャ原発の建設が始まったのは、
1981年のことだった。1984-89年に
かけて原子炉5基が発電を開始、6番目
は1995年に稼働を始めた。チョルノービ
原発が黒鉛を減速材に使っていたのと
比べれば、ザポリージャはより近代的で
PWRに類似した原子炉だ。PWRは、
アメリカやヨーロッパで広く稼働して
いる。
<黒鉛炉については、上の黒いメニュー
でページ Th-1) を見つけて
クリック ⇒ ページ終わりにある
「おまけ」を参照。メニュー内の項目は
基本的にアルファベット順です。
PWRについては、ページ d-2) の
略図を参照>
PWR(加圧水型)の原理
ザポリージャはヨーロッパ最大の原発で
ドニプロ川のカホヴカ貯水池の南岸に
ある。同原発は、その貯水池から冷却水
を引き入れている。ロシア軍の侵略以前
には、ウクライナ国内には4か所、合計
で原子炉15基の原発があり、そこで
国内の電力需要の約半分を賄っていた。
ザポリージャ原発は、国内総電力需要の
およそ1/4を供給していた。
同原発には使用済み核燃料の冷却用に
冷却プールがあり、これには電源と
冷却水とが常時必要だ。(原子炉も同様)
それ以外にも乾式キャスクに使用済み
核燃料を詰めて保管する保管施設もあり
これは冷却水で常時冷却する必要がなく
なった使用済み核燃料の保管に使う。
2017年のウクライナからの報告によれば
ザポリージャ原発にあった高レベル使用
済み核燃料は2,200トンを超え、<終わり
にある「訂正」を参照> それは使用済み
核燃料プールあるいは乾式キャスク保管
施設に保管されていた。
メルトダウンまで、あとどれくらい?
今回の侵略が始まってわずか1週間ほど
後、ロシア軍はザポリージャ原発を占拠
した。その際の熾烈な戦闘で訓練施設に
火災が発生、それ以外の施設にも損害が
生じた。
明日の地球??こんなことに、なりませぬよう!
2022年9月、この原発は送電グリッド
から完全に遮断された。原子炉5基が、
コールド シャットダウンされた。残る
1基はホット シャットダウンにされ、
温度は摂氏200度程度だ。これは、
水蒸気を発生させて発電所内で使用する
ためだ。
ウクライナの核エネルギー規制当局は
先月、この残る原子炉もコールド
シャットダウンにするよう命じた。だが
それは実行されなかった。この原発は
広範囲でのメインテナンス作業が必要で
それを遅らせるわけにいかないのだ。
原子炉内にある核燃料には、原子炉を
シャットダウンさせた後でも積極的な
冷却を常時施す必要がある。これは、
使用済み核燃料中には数百種類もの
核分裂生成物があり、その放射性崩壊に
よってシャットダウン後も引き続き熱が
発生しているためだ。こうした核燃料が
原子炉内に長く存在しているほど、
放射能 <放射線を出す能力> も強く
なる。そのため核燃料を原子炉から取り
出しても、なお何年も積極的な冷却を
続けねばならないのだ。
原子炉の積極的・継続的な冷却が中断
されると、どんな悲劇が生じるのか?
それを世界は、2011年の日本、福島
第一の実例で悲劇として目の当たり
にした。
福島第一で放出された放射性物質の
70%以上は、使用済み核燃料から出た
ものだ。通常の原子炉なら、慎重に
設計された漏出防止の層があるもの
だが、福島第一の使用済み核燃料プール
には、そうした層が全くなかった。
古典的な名著とされている1981 年の
著作「Nuclear Radiation in Warfare」
<戦時における放射線> でノーベル
平和賞受賞者で物理学者の著者
Joseph Rotblat は、以下のように
述べている。
PWRの場合、冷却材喪失が
発生すれば1分以内に炉心の
メルトダウンが発生しうる
使用済み核燃料保管プールに損害が発生
した場合、そこから放出される放射性
物質は、原子炉のメルトダウンそのもの
から放出される放射性物質の量を凌ぐ
場合がある。
放射性モンスター
Rotblatの研究により、原子炉や使用済み
核燃料プールに軍事攻撃が加えられれば、
大型の核兵器(メガトン級)よりも大量の
放射性物質放出が発生しうることが
明らかになった。しかもそうした放射性
物質は、半減期も長い。
核物理学者のEdwin Lymanが明言して
いるように、 ザポリージャ原発の原子炉
冷却が停止してしまった場合、使用済み
核燃料が過熱し劣化を始めるまでの時間
は、1日か2日程度だ。.
それからメルトダウン中の炉心が、鋼鉄
製の一次格納容器の床部分に溶け落ち、
さらにそれを溶かして建屋の床へと落ち
ていく。こうなると放射性気体やエアロ
ゾルが大量に環境へと放出され、しかも
爆発を伴って放出される危険もある。
こうした放射性物質の放出はチョルノービ
大事故と同程度になる恐れがあり、複数の
原子炉や使用済み核燃料プールが関与
した場合には、それをしのぐ大規模に
なってしまう危険性すらある。これだけ
の放射性物質がさらに国境を越えて
広がり、風に乗って別の大陸にまで拡散
する可能性もある。そして雨や雪で地上
に舞い落ち、ホットスポットを形成して
しまう。
崩壊 ・・・
攻撃のやまない原発
稼働中の原発が戦闘に巻き込まれ、実際
に一種の放射性物質兵器つまり「ダーティ
ボム」 として兵器利用されたのは、
今回のロシアによるウクライナ侵略が
歴史上初めての実例だ。
IAEA のRafael Grossi事務局長が文書
で述べているように、ザポリージャ原発は
あらゆる点で前例のない攻撃に晒されて
きている。その実例として、次のもの
がある:
— 同原発への度重なる砲撃
— 同原発に欠かせない電源供給の、たび
たびの途絶。事故防止の最後の手段と
して、緊急用ディーゼル発電機を使用
する事態に至ったことが、幾度も
あった。
— 原発全体をロシア軍部隊が占拠して
おり、平常時と比べスタッフ人数が
銃を向けられた状態で作業に当たって
いる。心理的にも身体的にも、ひどい
圧迫を受けている。
— ザポリージャ原発は一種の軍事基地に
作り替えられており、重火器が並び、
地雷やその他爆薬類に周囲を囲まれ
ている。
さらに6月6日にはカホヴカ ダムが
爆破され、原発の大本の冷却水源に
問題が生じた。
ウクライナにあるその他3か所の原発
でも、電源供給の中断が発生してきた。
さらに原発以外の核施設も砲撃を受け
たりミサイル攻撃をこうむる、その他
の損傷を受けている。
U235濃縮、原子炉の冷却、使用済み核燃料の冷却
どれも、大いに電気を食う
核発電の危険を告げる警鐘
ザポリージャ原発の格納容器が意図的に
あるいは偶発的に破壊されるリスクに
ついては、一部の核エネルギー専門家
たちが不適切な過小評価をしてきた。.
だがIAEAも独立系の専門家たちも、
破局が生じるリスクは現実のものだと
強調している。.
ロシア軍は既に、ウクライナの民生用
インフラへの大掛かりな攻撃を行って
いる。それには、電力グリッドも含まれ
ている。ロシア軍がカホヴカ ダム破壊
の背後に蠢いていたことを示す証拠も
ある。ロシア軍がザポリージャ原発を
放射性物質兵器にしてしまう危険性は、
無視するわけにはいかないのだ。
もっとも、同原発はロシアからも近い
位置にあるのだが。.
IAEAはRussia’ザポリージャ原発とその
周辺を非武装地帯とするよう求めてきて
いるのだが、ロシアはそれに同意しない。
そこからも、<ロシア軍が原発の安全に
協力するという> 信頼は持てない。
事故よりも、さらに怖いもの
現実を見れば、<この世界で> 原発が
稼働を続ける限り、我々はいつ重大事故
に見舞われるか分からないだけでなく、
核施設の武器利用という恐怖にも付き
まとわれているのだ。ザポリージャを
見れば、それは明らかだ。
ここまでの安全性とセキュリティ面
でのリスクが伴うエネルギー源は、
他にはない。ザポリージャ発電所が原発
でなく風力ファームや太陽光発電所で
あったなら、世界規模で何世代にも
わたり悪影響をもたらすような重大
事故が発生する危険性は、まさしく
ゼロとなるのだ。まして、核兵器の
拡散や気が遠くなるほど長年にわたる
放射性廃棄物問題などは、発生しえない。
—————————–
訂正: 上記論考への訂正として、
ザポリージャ原発にある放射性核燃料の
公表量について修正を加えた。上記の量
はプールにある使用済み核燃料と乾式
キャスクとに存在している量のみであり、
炉内の核燃料は含まれていない。
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Kettle 2016 Dec 2
そういえば ・・・
私の20分クロッキー
先日アップロードしたページu-5) で
日本語化紹介したBeyond Nuclearに
よるリリースと、内容が類似している
ことにもお気づきと思います。つまり、
メルボルン大学の専門家も、その
リリースと類似した見解だということ
ですね。
私(ひで)自身はライト インスタ
レーションや絵画を創作してきた
アーティストに過ぎず、何の学位も
ありません。しかし、「ひで のいう
ことなど、信じられない」方々も、
核問題の専門家の見解には耳を
傾けるべきでしょう。