u-1) (ウクライナ) もう1つのproliferation — 原発そのものが一種の核兵器に??

2022年2月

2022年2月23日(JST)現在、ウクライナの軍事情勢が緊迫しております。
ウクライナ国内には稼働中の原発が4か所もあり、建設中のものも入れると
原子炉は18基にのぼります。
原子炉のタイプは、いずれもVVER、つまり言うなれば「東欧型PWR」だ
そうです。(Nuclear power in Ukraine – Wikipedia に基づくデータ。PWRに
ついては、上の黒いメニューでページ d-2) をご覧くださいな。
メニュー内の項目は、アルファベット順に配列しております)

原発が戦闘に巻き込まれた場合 ・・ ロシア軍も、意図的に原発を攻撃して
しまうほどバカではないはずですが、戦闘のなかで「意図せずに」送電網を
破壊してしまい、原発への外部電力が絶たれた場合 ・・ その原発がメルト
ダウンを起こしえることは言うまでもありません。(外部電源喪失 ⇒ LOCA
⇒ メルトダウン、という流れについては、ページ g-6) の「実際にメルト
ダウンを引き起こした条件
」という段落を参照)
すると、原発そのものが、一種の巨大なダーティ ボム(ページ if-3) の
Dirty Bombの略図を参照) になりかねないですよね。そして今日現在、
日本国内にはその意味での「巨大ダーティ ボムのもと」がもっと多数あります。

この危険性について、ウクライナ危機がこれだけ高まっているのですから、
日本語圏の反原発団体などから問題指摘が高まるものと、私は期待して
おりました。
ところが。2月21日JST現在、一部の新聞社などからは、日本語でもこの問題
指摘があるのですが、反原発団体などからは少数しか聞こえてきません。
私が見つけられないだけであることを、願うのですが。

仕方がない。私が自分でu-x) (ウクライナ) の固定ページ シリーズを作るしか、
選択がないですね。
次にアップロードする固定ページはthoriumサイクル関連にする予定だったの
ですが、ウクライナ情勢がここまで緊迫している以上、「原発がダーティ ボムに
なる危険性」という 「もう1つのproliferation」 も取り上げざるを得ないのです。

「チョー巨大喫煙所」・・こんなもん、作っちゃ困りますよね。 ダーティ ボムはこれ以上に困りものなのです。

「チョー巨大喫煙所」・・こんなもん、作っちゃ困りますよね。
ダーティ ボムはこれ以上に困りものなのです。

まず、ウクライナにある原発

1986年のチェルノブイリ原発大事故はあまりにも世界に知られているので、
今さら説明は不要でしょう。
ただ気を付けて頂きたいのですが、それがあったからといって旧ソヴィエトも今の
ウクライナも原発を廃止したわけじゃなく、今でもウクライナ国内には4か所の
VVER原発が稼働しています。いずれの原発にも、建設中のものを含め4基または
それ以上の原子炉があります。
まず、それらの大雑把な所在地と名称を、下の略地図で。

あくまで、概略地図ですよ

あくまで、概略地図ですよ。 それと、東南端の2地域の独立を、この2月にロシアは承認したと報じられましたが、世界の大半は認めておりません。まあ、原発の位置とは関係しないので、ここでは示しておりません。

原子炉は丈夫だから~~という空しい安心

( – V-) 「東側はいざ知らず、西側の原子炉は分厚い鋼鉄で出来てるんだ、少々の砲弾が
当たっても問題はない」
などという声も、どこかから聞こえてくるかもしれませんね。
まったく的外れの安心です! すぐ上でも言及したページ g-6) の「実際にメルトダウン
を引き起こした条件
」という段落で述べたように、原子炉そのものをいくら頑丈に
したところで、原子炉内外で冷却材を動かすポンプなどの「外部電源」 つまり
「原発を稼働させるために必要な、発電所外部から供給される電源」 が絶たれると、
LOCA(冷却材喪失)に陥り、何とかしないと炉心のメルトダウンに至ります。
原発周辺で砲弾が飛び交う事態になった場合、この外部電源が絶たれてしまう事態は
容易に想像できますよね。しかも、緊急用ディーゼル発電機を動かそうにも、周囲で
砲弾が飛び交う中、原発内に作業員は残っているのでしょうか? 彼らにも、戦闘の
巻き添えになることから避難する権利はあります。

要するに、
・ 国家の正規軍(テロ組織ではなく)が「意図的に」敵国の原発を標的として攻撃することは、少ない
・ が、原発周辺で戦闘が展開された場合、「意図的でなくても」戦闘によって
「結果的に」原発への外部電力供給を断ってしまうことは、充分あり得る。
加えて、緊急用ディーゼル発電機などを稼働させようにも、原発作業員たちも
避難せざるを得ない(戦争ですからね)
・ つまり、原子炉のメルトダウンを招く可能性を否定できない
・ 戦闘の中で、誰もメルトダウンへの対処ができない
・ 水素爆発などが発生、原子炉の格納容器に穴 (福島第一の大事故を思い出して
ください)
・ 放射性物質が漏れ出す
・ 結局、原発が一種のダーティ ボムになってしまった
というパターンですね。
・ 上記に加えて、今では原発をコントロールするコンピューターへのサイバー攻撃も、
深刻な脅威です。

「やめてよ」 私のデッサン練習より(Croquis Cafe 200をベースに)

「やめてよ」
私のデッサン練習より(Croquis Cafe 200をベースに)

以前から警告が

この「戦時における原発のダーティ ボム化」については、今回のウクライナ危機を
待たずとも、昔から警告は出ていました。比較的最近の例を、例によって私の抜粋と
日本語化で紹介しますね。いつもどおり、< >内は私からの補足説明です
Military and terrorist attacks on nuclear plants – Nuclear-Free Campaign (foe.org.au)

Friends of the Earth Australia
2018年2月6日

Military and terrorist attacks on nuclear plants
(原発への軍ならびにテロ組織による攻撃)

国民国家 <単純化して言えば、“国民”という統一アイデンティティを有する人間
集団が構成する国家> が稼働可能な原発に対して何らかの軍事攻撃を行ったことも、
稼働可能な原発を誤って攻撃してしまったことも、歴史上はまだ前例がない。
だが中東では、核兵器拡散につながるとの不安から、一見すると平和利用のような
核施設に対して通常兵器での攻撃が加えられた実例がある。

核施設に対する軍事攻撃の歴史上の実例として、次のものがある。

  • 1979年4月、フランスでイスラエルのスパイがオシラクという原子炉の炉心
    構造物の最初の組み合わせに爆弾を仕掛け、破壊。この組み合わせはイラクに
    出荷されるところだった。<上の黒いメニューでページ c-1) を参照>
  • 1981年、イラクにあった研究用原子炉をイスラエルが破壊。<ページ c-1) を参照>
  • 1991年、イラクの研究用原子炉をアメリカが破壊。<イラクがクウェートに軍事侵攻して占拠していたため、アメリカ率いる同盟軍がクウェートを解放した戦争、
    いわゆる「湾岸戦争」での出来事>
  • 1980年から88年にかけてのイラン・イラク戦争で、両国はそれぞれ相手の
    核施設への攻撃を試みた。<イランとイラクはこのころ、8年間も続く戦争を
    していたのです>
  • 1991年、イスラエルの核施設に対し、イラクがミサイル攻撃を試みる。
    <上述の湾岸戦争で、イラクがイスラエルを巻き込もうとした>
  • 2007年、シリアにあった各施設らしきものに、イスラエルが爆撃を実施。
    <ページ c-2) 参照>

こうした軍事攻撃のほとんどは、「研究用」原子炉に対するものだ。「研究用」と
言っても、兵器用プルトニウムの製造が可能であった。また1987年にイラクがイランの
ブシェーフル原発を攻撃したとき、この原発は既に一部完成していた。

さらに原発を攻撃対象とする意図としては、放射性物質を広範にまき散らすという
ものもあり得る。さらに発電用原子炉を攻撃する場合なら、電力供給を断つという
狙いもあり得る。

核発電を行っている国家が戦争を始める場合、自国の原子炉を停止させるか、
あるいは稼働を続けるのか、という選択を迫られる。後者の場合、敵がその原発を
攻撃すると、放射性物質が広範にばらまかれてしまうというリスクを抱えることに
なるが。原子炉そのものよりも、<原発構内に設置されている>使用済み核燃料の
保管施設には大量の放射性物質が収納されている場合が多く、しかも原子炉より保護の
程度が軽いため脆弱性が増す。

<史上初の水爆開発に関わったアメリカの物理学者> Richard Garwin は、次の質問を
投げかけている。「崩壊した国家が核発電システムを保有していたとしたら?その
原子炉を、安全にメンテナンスできるのだろうか?(IAEAと国連安全保障理事会の
指導の下で)世界は、その国の核施設や警備し、破壊工作や核兵器に転用できる物質の
盗難の防止に努めるのだろうか?その国の、混乱した状況の中で。そんな警備努力は、
ありそうにない」

実際に、IAEAによる安全策が戦争や国内紛争のために遅延された例がある。1991年の
イラク、一部のアフリカ諸国、旧ユーゴスラヴィアなどだ。最近の実例が、
ウクライナである。

「ディーゼル燃料が!」 「この状況で、そんなもん ・・・」

「ディーゼル燃料が!」 「この状況で、そんなもん ・・・」

 

The Chernobyl Factor in the Ukraine Crisis
(ウクライナ危機での、チェルノブイリという要因)

Bennett Ramberg <アメリカの核拡散問題の専門家で、Ph. Dをお持ちです>、
2014年4月14日

www.project-syndicate.org/commentary/bennett-ramberg-calls-attention-to-the-dangers-of-fighting-near-nuclear-power-stations 

<2014年にも、ロシア軍のウクライナ侵攻がありました。その時点でのテキストです>

ロサンゼルス発 – チェルノブイリの原発の大惨劇から28年が経ったが
<この原文は、2014年のものです>、今となってウクライナは別の種類の核の亡霊に
付きまとわれている。ロシアがウクライナに攻め込んできた場合、ウクライナ自国の
原発が軍事標的にされてしまう危険性という亡霊だ。<2014年にもロシア軍による
ウクライナへの侵攻があり、結果としてロシアがクリミア半島(黒海の北部)を併合
しました>  <やはり2014年>3月に<オランダの>ハーグで開催された核安全保障
サミット(Nuclear Security Summit)で、ウクライナ外相代行のAndrii Deshchytsiaは、
<当時行われていたロシア軍侵攻という>事態が悪化して砲弾が飛び交うようになれば、
「多数の核施設が攻撃される脅威があり得る」と述べていた。
同じ3月、この会議以前に、IAEAへのウクライナ大使であるIhor ProkopchukはIAEAの
理事会あてに回状を出し、<ロシアによる>侵攻があれば「ウクライナならびに隣接
諸国の領土が放射性物質で汚染されるという脅威がある」と警告していた。
<ウクライナの首都の>キーフ(キエフ)では、同国議会が当時の危機に対応し、
ウクライナの原発を攻撃から守るための国際監視を要請していた。無論、同国自体も
防御努力はしていたが、資金が底をついていたため、国際協力でそれを強化しようと
したのだ。
このウクライナの不安は誇張されたもので、「悪意による名誉棄損」であったのか?
ロシア政府は、そう見なしていた。それとも、ウクライナの不安を真剣に受け止める
べきなのか?ウクライナ政府にとっては、この不安は現実のものなのだ。1986年より
も後で生まれた者でも、ウクライナ人ならチェルノブイリのような悲劇が戦争で発生
するなら、いかにひどい結果を招くかを理解しているのだ。
戦争状態にある国同士が、果たして核施設への攻撃を避けようとするのか、否か。
それについては、歴史はほとんど何も教えてくれない。1990年代のバルカン半島での
戦争を例外として<1990年ごろまでバルカン半島のかなりの部分を占めるユーゴ
スラヴィアという国があったのですが、91年にそれが崩壊し、各地域・文化集団が
独立に努めました。当然、領土や資源をめぐる争いが発生、複雑な戦争に発展したの
です>、原子炉を保有する国を相手取った戦争はなされていないし、保有国内での
内戦もない。バルカン半島の場合には、紛争初期にセルビアのジェット軍用機が
スロヴェニアのクルシュコ原発の上空を威嚇するように飛行、セルビア人過激派は
この原発を攻撃して放射性物質を拡散させろと叫んでいた。
後にはそのセルビアもNATOに対し、ベオグラード<旧ユーゴスラヴィアの首都でした>
にあるセルビア保有の大型研究用原子炉を爆撃しないでくれと嘆願した。結局、
どちらの原子炉も攻撃されることはなく、この紛争は終結した。
このケースから分かることとして、政治・軍事の指導層は、原子炉を攻撃する前には
再検討をするだろうと考えられる。だがウクライナの場合、各施設の規模がはるかに
大きいため、全世界はさらに大きな不安を抱えることになる。現時点でも、同国内には
老朽化した原子炉15基があって、ウクライナの電力需要の40%を供給している。
(もう何年も前に、大事故を起こしたチェルノブイリ原発の原子炉に隣接している原子炉はシャットダウンしている) 現在残っている原発は4か所で、いずれも加圧水型
<PWRのようなもの、ページ d-2) 参照> でありチェルノブイリのRBMKという
<黒鉛炉> とは違うため、安全性はいくらか良い。それでも、防御装置などが
故障すれば、放射性物質を放出する危険があることに変わりはない。

実際には、原発内部に侵入せずとも、ドローン爆弾で外部からあの電力供給を遮断することは可能なはずです(ページ g-6) の「最悪のシナリオ」という段落を参照)

実際には、原発内部に侵入せずとも、ドローン爆弾で外部からの電力供給を遮断することは可能なはずです(ページ g-6) の「最悪のシナリオ」という段落を参照)

・・・・・(中略)・・・・・

さらに、戦闘員が敵国の原発内部に侵入し、破壊活動をして放射性元素を放出させるぞ
と、敵国を脅迫する場合も考えられる。その他、原発内に誰かが避難して危険な
睨み合いを招く可能性もある。軍の命令や指揮系統の誤り、また先頭から生じる
噴煙のため、原発に爆撃が行われる可能性もある。
上記のいずれのシナリオでも、深刻な放射能汚染が発生しうる。放射性物質の
放出があればだれの利益にもなりはしないが、戦争という事態では想定外の出来事を
常に考えておかねばならない。
ウクライナでそうした事態が発生すれば、放出放射性物質量はチェルノブイリや
福島第一の放出量を超えてしまう可能性もある。<日本で将来、同様の事態が
発生したら、さらにひどい量の放出量になりかねません。なにしろ、原子炉の数が
ウクライナよりさらに多いですからね> 戦争という状況なら、被害を受けた原子炉に
緊急対処チームが到達することもできない恐れもある。原子炉の格納容器などが破壊
されても、放射性物質の放出を防ぐための措置を実施できないのだ。さらに戦闘の
さなかには政府による公的サービスも停止するため、放射線被害を避けようとする
市民は、身を守るためどこに行けばよいのか、どうすれば良いのかもわからない。
そうしたリスクを考え、ロシアのヴラディミール プーティン大統領もウクライナへの
軍事侵攻開始には二の足を踏むことになるのかもしれない。だが、結局は戦争と
いうことになれば、戦闘員は戦闘の場を可能な限り核施設と外部電源供給施設と
から遠ざけねばならなくなる。
緊急時のための発電装置を稼働可能な状態に保つため、原発などの運用者はディーゼル
燃料を充分に保管しておかねばならない。いつでもそうした緊急用発電装置を稼働
できるよう、点検やメンテナンスを実施する必要もある。原子炉のそばで戦闘が行われた
場合には、西側はその原子炉の安全を守り緊急発電装置の稼働を確保するための
舞台を動員する用意をしておくべきだ。さらにメルトダウンが発生した場合には、
西側は戦争当時諸国に対して停戦交渉を始めるよう求め、メルトダウンに対処できる
ようにすることも求められる。<原子炉事故の>被害は甚大なものなので、最悪の
事態に備えておくことは必須なのだ。

雪合戦用新技術?? こんな技術、やめてくれ! おかしな技術は、「隣国迷惑」になる場合がありますよね

雪合戦用新技術??
こんな技術、やめてくれ!
おかしな技術は、「隣国迷惑」になる場合がありますよね

 

Proliferation and Security
(核兵器の拡散と安全保障)

“Nuclear Monitor” 掲載のテキストから抜粋

<なお、原文には典拠を示す 1, 2, 3 — といった小さな数字が随所にあるのですが、この日本語化テキストはあくまで抜粋なので、そうした数字は省いております>

核兵器拡散という問題には、軍事攻撃の可能性や原発へのサイバー攻撃、イランの核開発
プログラムに関与していた核科学者その他の暗殺といった安全保障面での問題も
絡んでいる。

イランの核開発に対し、イスラエルはたびたび軍事攻撃をかけるという脅迫をしてきた。

イランのウラニウム濃縮施設に対するStuxnet によるサイバー攻撃に加え、ブシェーフル
<というイランの町にある> 原発も標的とされており、2011年初頭には同原発で
問題が発生して核燃料の取り出しが行われたのだが、これもStuxnet によるもので
あったのではないか、という見方もある。

1980年から88年にかけてのイラン・イラク戦争では、当時建設中であった同原発は、
イラク軍の爆撃で幾度も被害を受けた。

2014年9月には、イラン当局がウクライナ国籍の男性を逮捕している。ブシェーフル
原発の破壊工作をはたらいた、という疑いだ。この容疑者はロシアから来た専門家
だと自称していたとイラン当局は述べていると、イランの新聞 Hamshahriは報じた。
この破壊工作がどのようなものかは、発表されていない。

さらにイスラエルの情報筋によれば、<イラン中部にある> アラク原子炉の建築物
内部で、2013年終わりに爆発があった。イスラエルのDebkafileというウェブサイトに
よれば、この爆発を隠ぺいすべくイラン政府は全力を挙げていた。Debkafileの推察
では、この爆発の原因として、物理的な破壊工作、コンピューターへのウィルス攻撃、
あるいは使用していた鉄鋼が品質に劣り試験時の激しい圧力に耐えられなかった
ことが挙げられている。

・・・・・ 中略 ・・・・・

<イランの原子力組織の長代理であった>Zarean によれば、「ここ2-3か月の間に、
工場破壊工作を数件、未然に防いでおり、意図されていた破壊を防止できた。
それには、アラクでのIR-40施設の一部での破壊工作も含む」

アラクは建設中であるため、特に攻撃に弱いものとされており、その原子炉や関連
インフラストラクチャーを攻撃しても、放射性の汚染が広がることはないという。
イスラエルの軍事諜報部の前チーフであったAmos Yadlinは、イラクのオシラク重水
原子炉をイスラエル軍が1981年に爆撃した際には、その軍用機の1つのパイロットを
務めていた。<ページ c-1) も参照> その爆撃の時点で、この原発は稼働可能となる
前の段階であった。そのYadlinによれば、「稼働中の原子炉を攻撃することを考える
者はみな、チェルノブイリ惨事の再現をしようとしているのだ。そんなことは、
だれも望まない」

1981年のオシラク原発への攻撃以外にも、2007年にはイスラエルはシリアにあった
原子炉らしき施設を破壊<ページ c-2) 参照>、またイランのアラク核施設への爆撃の
可能性も否定はしなかった。

またAugust 2012年8月には、イランのコムという都市近郊にある地下のウラニウム濃縮
施設への電力供給線を工作者が爆破している。

2014年の8月、イランはイスラエルのドローンを撃墜したと発表した。ナタンズという
イランの町近郊にあるウラニウム濃縮工場に向かっていたドローンだった、という。

さらに、2007年から <この本文テキストの執筆までの間に> イランの核開発に
関わっていた人物で、殺害された者は最低でも5名にのぼっており、そのうちには
ナタンズのウラニウム濃縮工場の工場長代理(2012年に自動車搭載爆弾で爆殺)、
イランの弾道ミサイル プログラムの長、イランのサイバー戦争担当の長
(射殺された)などがいた。

2012年には、イラン当局はある男性を絞首刑に処した。この男はモサドのスパイで、
2010年にイランの核科学者を殺害したと、イランは主張している。
****************


殺人合戦じゃないの!
私の20分クロッキーより

上のテキストは2020年11月よりも前に書かれたものなのでしょう。同月にテヘラン
近郊で起きたMohsen Fakhrizadeh博士というイランの核開発プロジェクトの指導者が
テヘラン近郊で暗殺された件についての言及がありません。この暗殺の件は、皆様も
記憶に新しいことでしょう。

核開発は、軍事的な闇の世界です。当然、必要なら暗殺なども行われるわけです。
これも、核兵器と核発電に反対する理由の1つですね。

そして現在、ロシア軍が核兵器の演習をウクライナ周辺で実施しているのが、広く
報道されていますよね。
そもそも核も含めた大量破壊兵器なんてものは、この惑星に存在してはならないもの
ですが、原子炉はもともと核兵器用Puの製造装置です。本「やかんをのせたら~~」で
しつこいほど説明してきたとおりです。

それに加えて、万一ウクライナに対して核攻撃が行われた場合、送電系統も当然
大損害を受けるでしょう。すると、上述のような原発の外部電源喪失も発生しかね
ないですよね。つまり、
最初に核兵器の爆発 ⇒ 原発の外部電源喪失 ⇒ その原発がメルトダウンして
「ダーティ ボム」化 ⇒ 放射性物質による汚染が悪化・拡大
という放射地獄すら、実現してしまう可能性があることになります。
だから、本当に「国防」を考えるなら、世界からどうやって核発電と核兵器の両方を
廃絶できるか、真剣に検討する必要がございます。

今回は、「戦争時の原発 ⇒ ダーティ ボム化」 の一般的な問題を取り上げました。
次ページ u-2) では、特に2020年現在でのウクライナ情勢との関連で、この問題を
考察します。上で抜粋したBennett Ramberg さんによる、別のテキストから抜粋・
紹介しますね。

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