g-10) (ジャパン) 自爆ドローン +
ウォーム ⇒ メルトダウンかも
2025年8月
そもそも、自爆ドローンによるテロ攻撃
は、どのような施設にとっても脅威
です。建物に限らず、電車や飛行機
などにも。
ただ、原発やU濃縮工場のように大量の
放射性物質を格納している施設が破壊
された場合、風向き次第で遠方まで
放射性物質をまき散らす結果になり
ます。つまり、現在のようなテロリスト
が自爆ドローンを使いうる時代にあって
は、核施設は巨大ダーティ ボムに化け
てしまうリスクを有しております。
だから、2021年2月にページ g-6)
で ・・・
自爆ドローンで原発への外部電源供給
ルートを破壊 ⇒ station blackout
+
ウォームとかTrojan Horseとかで、
非常用ディーゼル発電装置の制御コン
ピューターを狂わせる ⇒ 冷却系統の
電源がなくなる ⇒ LOCA (Loss of
Coolant Accident)
~ ⇒ メルトダウンへ
というリスクを、私は指摘したの
ですね。
それを当時の原発反対派の人たちに
話したところ ・・・
・ 原発の仕組みや構造など分かって
いる方々からは、
「わ、確かにそれは重大なリスクだ!
危険極まりない!」
といった反応をいただいたのですが、
そのあたりの理解に欠ける反対派の
方々からは、
「考えすぎでしょ~~ 大げさな」
といったお言葉でした!
しかし、今回の玄海原発のドローン侵入
の件で、多くの方々は「原発への
ドローン テロリズム」のリスクを真剣
にお考えになるようになったこと
でしょう。
エラそーなことを申しますが、
原発反対派でありながら、2021年に
私からの「ドローン テロリズムの
リスク」指摘を嗤っていた方々、
現実をしっかり視て、認識を改めて
くださいな。
そもそも、アメリカの原発では~~
2001年9月の同時多発テロリズムの
元々の標的の1つとして原発も検討
されていたことから、原子炉などへの
ジェット旅客機激突への対策も練られ
ていましたよね。
それについては少なくても2021年初頭
の時点ですでに、
英語版Wikipediaに Vulnerability of
nuclear facilities to attackという
ページがあり、今もあります。
2025年5月25日時点での同ページから
一部抜粋・日本語化して紹介しますね。
いつもどおり、< > 内は私からの
補足説明です。
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核の安全性とセキュリティという領域
で今も拡大を続けている懸念事項の
1つとして、テロリスト組織が放射性
物質が入っている施設を攻撃、広域の
放射性物質汚染を引き起こす、あるいは
自ら核兵器を製造する、という恐れが
ある。そうした核施設としては原発、
民間の研究用原子炉、U濃縮工場、
核燃料加工工場、U鉱山、さらに核兵器
を保管している軍事基地などがある。
そうした攻撃の脅威としては一般的に
数種類があり、1つは特殊部隊型の地上
ベースでの攻撃で、使用不能になると
炉心のメルトダウンや放射性物質の広域
拡散を招く恐れがある設備を攻撃する。
さらに旅客機が原子炉施設に衝突する
などの外部からの攻撃もあり、さらに
サイバー攻撃も考えられる。
——— 米国科学者連盟(Federation of
American Scientists)の発表によれば、
今後核発電の利用が大きく普及するなら、
核施設を上述のような各種攻撃から徹底的
に防御することが必要だ。新型原子炉は
passive safetyという特徴を取り入れた
設計になっており、これは役に立つかも
しれない。アメリカでは原子力規制委員会
(Nuclear Regulatory Commission)が
“Force on Force” (武力には武力で)と
いう戦闘演習を実施しており、アメリカの
すべての原発ではその演習を最低でも3年
に一度は実施することになっている。
軍事紛争においては、原発は標的にされ
やすい。この30年間、軍事衝突や占領、
侵略といった事態では繰り返し原発への
攻撃がなされてきた。
また1980年以降、
Plowsharesという平和団体が原発への
市民としての各種抗議活動を実施 <ページ
g-5) の終わりの方でも紹介>、その結果、
アメリカの原発では異常なまでのセキュ
リティ規定への違反がなされていたことが
明らかになった。特に2012年の同団体に
よる抗議活動を、国家核安全保障局
(National Nuclear Security Administration
は深刻に受け止めている。核拡散防止政策
の専門家たちは、「国家政府の保有する
軍事物資の中でも最も危険なもの<である
核物質>の製造・保管施設のセキュリティ
確保のため、民間のセキュリティ企業を
利用すること」には異議を唱えている。
さらに核兵器用物質が闇市場に出回って
おり、世界的な懸念事項となっている。
加えて、武装集団が主要都市でダーティ
ボムを爆発させる危険性についても憂慮
されている。
**********************************
お分かりの通り、2021年2月、I was
NOT alone だったわけですね。
もう、やめてよ!
私の20分クロッキー
あるいは、ザポリージャ原発では
ひっきりなしにドローン攻撃が。
World Nuclear Newsのウェブサイト
より、2024年7月4日付の記事より、
一部抜粋して日本語化:
Drone attacks continue near Zaporizhzhia plant – World Nuclear News
****************************************
ザポリージャ原発に駐在しているIAEA
の専門家たちによれば、同原発付近に
ある森にドローン攻撃があったとの報を
聞いたが、それに続いて原発の750kVの
スイッチヤード <受け取った電力の切り
替えや配分などを行う設備> のそばで
爆発音が発生、厚い煙が見られた。そして
強風の中、火災が発生したそうだ。消防士
たちが消火活動に励んでいた。この
スイッチヤードは、原発の敷地の外部に
あった。———
7月3日には <原発そばの> エネル
ゴダル <という町> でドローン3機に
よる攻撃があり、送配電用サブステー
ションのうち1台を破壊、作業員8名が
負傷した。そのうち1名は病院での治療を
必要としたと、ザポリージャ原発は発表
している。さらにIAEAの専門家たちが
受けた情報によれば、この攻撃被害の
ため、そのサブステーションにある2台の
変圧器のうち少なくても1台から油が漏れ
だし、また変圧器1台の最上部ならびに
接続線にも損傷があったようだ。そのため、
Radugaという名称のそのサブステー
ションは現在稼働していないのだが、
エネルゴダルも近隣の工場地区も、今の
ところ電力供給を受けているそうだ。
IAEA によると、今回のドローン攻撃から
核の安全性という点でのリスクがさらに
浮かび上がった。ザポリージャ原発に
唯一残っている750kVの外部電力供給線
からは外部電力が供給されており、
同原発の6基の原子炉は現在クール
シャットダウン状態にあるが、その冷却の
ためにはその外部電力が必要である。
その他の安全とセキュリティ関連機能の
ためにも、この外部電力が必要だ。 今の
ところ、この <唯一残っている>750 kV
電力線とバックアップ用の330 kV線とは
利用可能だが、状況は予断を許さない。
先月、エネルゴダルでは16時間にわたる
停電が発生した。この町には、ザポリー
ジャ原発の職員とその家族とが多数暮らし
ている。 Raduga ならびに Luch という
サブステーションへのドローン攻撃が
あったためだ。4月初旬には、ザポリー
ジャ原発の敷地に対してもドローン攻撃
があった。
************************************
似ているようで、異なる2つ
私の20分クロッキー2枚
そこから少し横道にそれますが ~~
情報収集は、複数言語でやったほうが
良いです!
上記の英語版Wikipedia ”Vulnera-
bility of nuclear facilities to
attack”ですが、
2025年5月25日になっても、
日本語版がありません!
これも、日本の反原発派の一部から、
2021年2月に私の指摘が嗤われた原因
の1つだったのでしょうね。
で、日本語でのインターネットでの
情報収集の限界の一例を、紹介して
みましょう:
この自爆ドローン テロリズムの
シナリオでは、
自爆ドローンで原発への外部電源
供給ルートを破壊 ⇒ station blackout
を問題にしていますので、
原発が稼働するには、外部(グリッド)
からの電力供給が必要
という単純自明な事実を弁えておか
ないと、このシナリオは理解できなく
なります。
そこで、この7月下旬に幾度か、殺人
的な暑さの東京で、スマートフォンで
「原発への外部電力供給」を日本語で
検索してみました。
すると:
「原発で発電した電力は変電所なども
含んだ送電グリッドを経由して、
消費施設に送り込まれ ・・・ 」
といった主旨の回答をAIが返して
きました!!!幾度か。マジです!
(7月31日になって、ようやくまともな
回答が返ってきました)
AIはネット上の各種情報を収集・選択
して回答を作文しているので、
インターネットの日本語圏では、
「原発が稼働するには、外部(グリッド)
からの電力供給が必要」という基礎事実
が欠落しているのでしょうかねえ??
もしそうなら、こんな回答をしてくる
のは
AI (Artificial Intelligence、人工
知能)というよりも、
AA (Artificial Absurdity、人工あほ
バカ) とでも呼ぶべきですよね。
一方、同じスマートフォンで同じ日に
英語で
external power supply to a nuclear
stationで検索してみると、
たとえばRedditの
Why does a nuclear power plant
require external power??
のような、質問に合致した回答を
「知性」が返してきました!
やはり、ネットで情報を収集する際
には、複数言語を使う方が賢明ですね。
では、話を戻して
ドローン攻撃は防止できないのか??
残念ながら、極めて困難なのが
現状です。
今回の玄海原発の実例以外にも、
以下もご覧ください:
2018年7月5日、一般社団法人
環境金融研究機構のウェブサイトより
「原発へのテロ攻撃は容易にできる」~仏グリーンピースが、スーパーマンの形をしたドローンをEDFの原発の使用済核燃料の保管建物に、空中から衝突させて実証(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構
で、日本の原発で外部電力供給を最近
強化した実例として、中国電力の島根
原発(2024年12月以来、BWRの2号機
が稼働中。1号機は廃炉作業中。3号機
はABWRで、そろそろ稼働開始の予定が
遅れています)があります。
同社のウェブサイトによれば、次の
ような外部電力供給になるそうです:
一見、外部電力供給を完全に遮断して
station blackoutを起こすには、多数
箇所で送電ルートを破壊せねばならない
ように見えますが、実際には現在稼働中
なのは2号機だけなので、それに
つながっている送電経路だけすべて破壊
すればよいですよね。
たとえば3号機用のルートを2号機に
繋ぎ変えようとしても、2号機の受電
設備自体がすべて自爆ドローンで破壊
されてしまえば、どうにもできません。
あとは、非常用ディーゼル発電機に
頼ることになります。
そのディーゼル発電機はコンピューター
制御されているハズですが~~
核施設でのコンピューター ウォームと
いえば、STUXNETが有名ですよね。
「やかんをのせたら~~」でも、
上の黒いメニュー(項目は基本、
アルファベット順)にあるページ d-4)
で短く紹介しました。
本ページの上でも紹介した 英語版
Wikipediaの
Vulnerability of nuclear facilities
to attack
より、また少し抜粋・日本語化
しますね。
****************************
————-
サイバー攻撃は、頻度も増大しており
より手の込んだものになりつつある。
Stuxnetというコンピューター ウォーム
が発見されたのは2010年6月のことで、
これはアメリカとイスラエルが共同で
開発し、イランのU濃縮工場を攻撃する
ために使用したものと見られている。
濃縮工場の遠心分離機を誤作動させる
ことで、工場に大きな損害をもたらした。
また韓国の核工場企業 (KHNP) に対し
2014年12月にハッキング攻撃があった。
このサイバー攻撃には悪意的なコードを
含んだフィッシング Eメール数千件が
使用され、情報が盗み出された。いずれ
のサイバー攻撃も、原子炉そのものや
原子炉施設には影響はなかった。
**************************************
さらに困った話ですが、制御コン
ピューターの異常でディーゼル発電機
を爆発させることが可能だ ・・・
そんな実験があります。
「夜間を載せたら~~」でもすでに、
ページ g-6) の末尾で短く紹介して
おります。
同じく英語版Wikipediaの
Vulnerability of nuclear facilities
to attack
より
*****************************
———–
アイダホ国立研究所ではAurora Experi-
mentという実験を実施、ディーゼル
発電機の回路ブレーカーを、グリッドの
周期性などを無視して急速にオン/オフ
させた。すると、爆発が起きた。この
脆弱性を、Aurora Vulnerabilityと
呼んでいる。
—————–
**************************************
つまり、ディーゼル発電機の回路のコント
ロールPCをウォームなどで支配し異常な
オン/オフを繰り返せば、爆発も引き
起こしうる、ということですよね。
地球を大事に・・・
私の20分クロッキー
これで、
自爆ドローンで原発への外部電源供給
ルートを破壊 ⇒ station blackout
+
ウォームとかTrojan Horseとかで、
非常用ディーゼル発電装置の制御コン
ピューターを狂わせる ⇒ 冷却系統
の電源がなくなる ⇒ LOCA (Loss of
Coolant Accident)
⇒ メルトダウンへ
という4年半前に私が指摘したリスク
シナリオが、戯言ではありえない
ことは、ご納得いただけたでしょう。
そして原発へのドローン侵入を阻止
する対応策は、今のところ、
ないのです。
あれで大丈夫なの??
私の20分クロッキー
では、たとえばTEPCOのテロリズム
防止策といえば~~
その頼りなさは、すでにたびたび
日本語メディアで紹介されてきまし
たよね。
まず日本の原発全般の脆弱性について
は、少し古い記事ですが、次を。
すでに長いページになっているので、
ほんの一例を:
東洋経済オンライン
日本の原発はテロに対する防御が
甘すぎる
岡田 広行、2016年6月19日
↑ なぜか、URLをコピーできません。
ご自分で検索して見つけてくださいな。
次にTEPCOの柏崎刈羽については、
もう頻繁に報道されてきてますが、
一例として:
NHK
柏崎刈羽原発7号機 テロ対策施設
完成時期
2029年8月に延期
柏崎刈羽原発7号機 テロ対策施設完成時期 2029年8月に延期 | NHK | 各地の原発
自然災害 ⇒ 原発事故、という
パターンにばかり着目していては ~
自然災害を軽視せよ、なんて言って
るんじゃありませんよ!
それにも充分注意しながらも、ある
意味それ以上の警戒を戦争やテロリ
ズムといった人被的事故原因にも
向けるべきだろう、と言いたいの
ですね。
正直、1990年ごろからずっと反核(発電
も兵器も)の立場である私などは、
2011~12年ごろには当時多数発生した
反原発市民団体に協力を求められたの
ですけど、戦争やテロのリスクが軽視
されていたことが心配でした。
当時、周囲の人たちにその心配を説明
しても理解されず、私は「ひねくれ
もの」呼ばわりすらされましたが、
単なる「ひねくれ」などではなく、
現実の深刻なリスクであること、
もう今となってはお分かりですよね?
深刻なリスクってことは分かるけど、どう対応できるのよ??
私の20分クロッキー
最悪の可能性 ー「同時多発原発テロ」
不安を煽る意図は、まったく
ありません。
ただ、現実に想定できるリスクには
対応しておくべきだと考えるの
ですが、日本では肝心の反原発団体
などから、「同時多発原発テロ」という
リスクの指摘が、今までのところ
ほとんど聞こえてこないのですよ。
今までの説明からお分かりの通り、
ドローン攻撃 + ウォーム ⇒
メルトダウン
というパターンの原発テロリズムの
場合、実行にあまり人数は不要です。
ドローンは原発敷地外からリモート
でコントロールするわけですし、
問題はウォームをどうやって非常用
ディーゼルの制御コンピューターに
忍び込ませるか? でも、上述のと
おり、STUXNETは実際にU濃縮工場に
侵入しましたよね。
1つの原発をメルトダウンさせるのに
大した人数がいらないってことは、
大型のテロ組織なら、原発テロリスト
チームを複数編成、「原発対象の
同時多発テロ」をやらかすことも、
可能性としてはある ・・・ 考えたく
ないのですが、こういう問題指摘は、
反原発団体や反核団体がしっかり
やらないと。
平和を守る使命というものが ~~
私のスケッチ、東京湾のビーチ