ウラニウムの「過剰濃縮」について、おさらい

ウラニウム濃縮については本「やかんをのせたら・・・」のページ d-3) で、イランの“過剰な”ウラニウム濃縮問題については f-4) で、すでに説明済みなのですが、まだお読みでない方々のために、以下に簡単に説明しておきますね。

すでに「ああ、そんなこと知ってるよ」という方々は、本日のこの投稿は無視してくださいませ。

「天然ウラニウム」つまり自然界にあるウラン鉱石に含まれているウラニウム同位体の組成は、99%以上がウラニウム238でして、これは核分裂を起こしません。核分裂をするのはウラニウム同位体のうちでも番号(質量数)が奇数のもので、通常はウラニウム235を核分裂させます。その235は、天然ウラニウムの中には1%未満しか含まれていません。

原子炉の中では、ウラニウムを連鎖的に核分裂させて大量の熱を発生させます。その熱で水を蒸気に変え、蒸気タービンで発電するのですね。核分裂の連鎖といっても、兵器ではないので、徐々に分裂させます。したがって、同位体235の「濃度」(比率)を、3-5%程度にまで濃縮します。この濃度にまで濃縮しないと、核分裂を起こせないので、原子炉はただの「巨大な鋼鉄とコンクリートの建物」になってしまいます。

一方、核兵器(原爆)では、一気に「ドカーン」と核分裂させるので、235の濃度を90%以上にまで高めます。

ですから、どこかで・だれかが235の濃度を5%を超えて濃縮しようとしていると、「原爆を作りたいのか?」という嫌疑の視線を浴びることになります。

本サイト「やかんをのせたら・・・」のページf-4) で、「・・・2019年には、U235濃度が20%を超える高濃縮ウランを製造する能力があるとイランは発表し」と述べましたが、なぜ これが国際的問題になったのか、お分かりいただけましたでしょうか?

さらに、今年5月12日のREUTERSの報道によれば、最大で63%にまで濃縮したそうです。
Iran has enriched uranium to up to 63% purity, IAEA says | Reuters
(イラン、ウランを63%まで濃縮、IAEA発表 | ロイター発)

63%というのはIAEAの発表によるもので、イラン自らが発表していた60%をさらに超えるものです。こんな濃度が、発電に不要なのは明らかです。なお、JCPOAの取り決めでは、イランが許可されているのは3.67%まででした。「まったくの発電用」ってことですね。

当然、関係諸国の代表が集まってイランにこうした高濃縮をやめてJCPOAに復帰するよう、交渉することになりますよね。そこで、この前回の投稿で取り上げた会談のような交渉が行われるわけです。
ご理解いただけましたでしょうか?

では次回の投稿では、Al Jazeera英語版の当該記事の紹介に戻りますね。
MoraさんのTweetからです。

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