世界の心配の種、ザポリージャ原発がグリッドから切断され、
ウクライナ南部では停電があった件の報道です。
「近隣の火事」 が原因だったというのは日本語メディアでも
流れていますが、その 「火事」 が戦闘に由来するものだろう
というのは、だれでも推察できますよね。
原発の基礎知識がある方々なら、「グリッドから切断」 ⇒
「ステーション ブラックアウト」 ⇒ 「メルトダウン」 という
パターンを警戒しますよね。皆様も、かなりドギマギされた
ことと存じます。
何とか接続を回復したまでは、日本語メディアでも報道されて
いますが、さらに最新動向が気になりますよね。
そこで、2022年8月26日付のCNNによる報道を。
いつも通り、私の抜粋・日本語化で紹介します。
< > 内は、私からの補足説明です。
* なお、状況が刻々と変化していますので、以下の記事の
報道内容も、明日には outdated になっている可能性はあります。
その流動性は、あらかじめご承知おき願いますね。
Staff exodus risks safety at Ukraine’s Zaporizhzhia nuclear plant – CNN
Hanging by a ‘thread,’ staff exodus risks safety at Ukraine nuclear plant
(ウクライナの原発でスタッフが脱出、大事故をかろうじて防げているだけ)
CNNのRebecca Wright, Olga Konovalova and Oleksandra Ochman
2022年8月26日 GMT
爆発、占拠 ・・・
“Control”, 私のかなり昔の作品
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ウクライナのザポリージャ発 (CNN) ウクライナ南東部にある
ザポリージャ原発からロシア軍部隊が近隣の町村への砲撃を開始した
とき、同原発に勤務していたエレナは脱出することを決めた。
3月に同原発にロシア軍部隊が押し入って占拠したのだが、それ以降も
同原発で勤務を続けることにしていた。ヨーロッパで最大の同原発の
稼働を続けるため、ウクライナの原発スタッフ数百名が実質的な
人質にされたのだが、その一人となったのだ。
だが同原発周辺では絶えず爆発が発生、自分の息子の生命の安否も
心配になったエレナはリスクを冒して脱出することにした。
「怖かったです。いつも爆発ばかり起きていますから」と、
エレナはCNNに語っている。
エレナ氏の身の安全のため、エレナというファースト ネーム
だけを使用する。
ウクライナ側はロシア軍部隊がこの原発を盾として利用、深刻な
損傷や災害発生の危険性を招いているとして非難してきた。
一方ロシア側は、同原発めがけて砲撃を加えているのは
ウクライナ軍だと繰り返し主張している。
ウクライナのヴォロディミール ゼレンスキー大統領が水曜日
<24日> に国連安全保障理事会での演説で述べたところに
よると、ロシアがこの原発を 「戦闘地域」 に変えてしまった
ため、「世界は放射線による破局の一歩前に立たされて」
おり、同原発の非武装化を進めるべきだという。
「右側を見ると、貯蔵庫の背後のどこかをロシア軍が砲撃して
いる。同時に多数の爆発が発生しており、大型車両の火災の
ようだ」 と、エレナは言う。
同原発周辺でのロシア軍によるこうした行為がもたらしかね
ない事態のため、原発従業員たちの不安が募り、脱出が加速
している。
「ここ2週間ほど、スタッフが大挙して逃げ出している」
そう語るのは、今もなおザポリージャ原発で勤務を続けている
スタッフの一人、ダリアだ。ダリア氏の身の安全のため、
ダリアというファースト ネームだけを使用する。「みんな雪崩
のように、集まって脱出している」
エレナによれば、同原発の従業員たちはそこを占拠している
ロシア軍部隊を怖がっており、機関銃を抱えて歩き回っていると
いう。さらに夜ともなれば、「酒に酔って空めがけて発砲している」
「私たちが脱出する前に、ある男性が殺害された。だから、
私たちは逃げ出したのだ」 と、エレナは言う。ウクライナ議会の
人権コミッショナーDmytro Lubinetsが水曜日に述べたところでは、
この3月から今までに、原発のウクライナ作業員3名がロシア軍に
よる殴打や爆撃で殺害されている。さらに少なくても26人が情報
漏洩のかどで拘留されている。
一触即発
“Facing Off”, 私の作品
「極めて危険な」 状態
同原発に残っている人々にとって、状況は 「日々悪化している」 と、
ウクライナ国営の核発電運営企業エネルゴアトム社のPetro Kotin
社長は言う。
「極めて困難な状況だ。こんな状況の原発に残って作業を続けている
人たちは、本当に英雄だ」 と、Kotinは語る。
Kotinによれば、ロシア軍は2か所のタービン ホールに20台のトラックを
格納していた。 これは最近漏出したヴィデオで明らかになった
ことで、CNNもこれを確認している。
「そうしたトラックの積み荷は爆発性の物質だと思われる。大変
危険だ」 と、Kotinは述べている。
さらに同社長によると、消防隊用の入り口がブロックされている
ため、火災が発生した場合には隣接する原子炉にまで延焼する
危険もある。
Kotinによれば、ロシア軍はザポリージャ原発での発電電力を、
ウクライナの電力グリッドからロシアの電力ネットワークへと
切り替えようとするだろう。このプロセスにおいて、いったん
原発を 「完全停止」 させることになる。その間には、ディーゼル
発電装置を用いて原子炉を冷却する。これは、大変な危険を伴う
と、Kotinは言う。
ウクライナの各発電企業であるエネルゴアトムによれば、木曜日、
ザポリージャ原発はその歴史の中で初めて、ウクライナの電力
グリッドから完全に切断された。同社によれば近隣の灰坑で火災が
発生、同原発と電力グリッドとを接続していた唯一残っていた
電力線の接続が2回にわたり切断した。さらに同社は、「侵略者の
行為」 が原因であるとした。
ロシアが任命した同原発地域の知事は後に、同地域への電力供給を
再開させるための作業が進行中であると述べた。この知事は、この
停電騒ぎはウクライナ側の行為によるものだと非難した。
IAEAが木曜日遅くに発表したところでは、ザポリージャの6基ある
原子炉すべてがウクライナの電力グリッドからは切断された状態に
あった。
暴力による沈黙の強制
“Silenced”, 私の作品
「無力な怒り」
同原発での作業にはさらに重大な危険が伴うようになっており、
もはや最低限しか残っていないスタッフには心理的プレッシャーが
一層重くのしかかっている。同原発に勤務するダリアによれば、
彼女の部署では今や、スタッフは元の10-15%しか残っておらず、
彼らは毎日 「無力な怒り」 とでも呼ぶべき状態にある。
「もうすでに、<ザポリージャ原発にいるのは> 大変つらいです。
でも、いつ・どうやれば出ていけるのか、わからないのですよ」 と、
ダリアは語る。
彼女によれば、同原発の技術スタッフはこの状態の中で無事故で
この原発を稼働させるという 「不可能なミッション」 を成し遂げて
いるのだが、「何もかもがどれだけ大変か、どれだけ大変な事態に
なりかけているのか、世界の人たちは理解していない」。
ダリアによれば、「人間の心理的状態から事故が発生する場合がある。
ザポリージャのような発電所の場合、本当に問題なのは機器ではない。
本当に問題なのは、人間なのだ。人間がどういう決定を下すか、
信号や違反行為、損傷に対してどんな反応をするのか」。
IAEA では目下ロシアと交渉を進めており、同原発の緊急検査をして
稼働状態の安全性を調べようとしている。だがダリアの見方では、
この査察が実現しても、「何も変わらないだろう」とのことだ。
「私の唯一の希望は、ウクライナ軍 <が来てザポリージャを解放
してくれること> だ」 とダリアは言うが、同時にウクライナ軍が
やってくるとロシア軍が何をするか、恐れてもいる。「ロシア軍は
“殺すぞ” と言うことに慣れており、そのための命令もすでに
受けている。だから、みんな脱出していったのだ」。
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見たくない ・・・
私のかなり昔の作品
実際にザポリージャ原発内で勤務してらっしゃる方々による報告との
ことですが、ほんと、怖いですね。
1日も早く、プーティンが正気を取り戻すことを祈っています!
それと、IFRやMSR、SMRといった次世代原子炉を開発・導入した
ところで、「原発」 である限りそこには大量の放射性物質があります。
それを敵国軍隊が占拠し、基地化した場合、防衛軍はうかつに手を
出せませんよね。上記記事と似たような惨事に陥る可能性は
明らかに存在します。
特にSMR (上の黒いメニューの s-1) から s-3) 参照) の場合、
小型の原子炉が多数できるので、そのうち1つでも敵軍に占拠され
たら ・・・
多数ある小型原子炉のすべてを守れというんじゃ、防衛軍も大変です。